◆「臆病」の進化的な利益 ◆
人跡未踏のジャングル奥深くに分け入り、そこで遭遇した原住民の部族が、
「皆とても臆病」という性格を持っていた場合、それはどう解釈したらよいか?
「臆病ではない人は生き残れない」ということなのだろう。
未知のものに対する恐怖、という感情は誰でも持っている。
例えば、先の見えない真っ暗な洞窟に踏み込むのはとても怖い。
過去に痛い目に会った経験はなく、未知だが、体の底から意味もなく怖い、
という感情が湧くことがある。
そういう感情は、「未知な危険を避ける」という(進化的な)利益があって
遺伝子的に受け継がれて来たものなのでしょう。
すくなくとも数万年前までは、人間はとても危険な環境に生きていたし、
人間の感知能力や知識は有限で限界のあるものなので、未知の危険を避けるために
「恐怖」「臆病」の感情システムは有効に働き、そういう人が生き残って、
その名残が現在に引き継がれているのでしょう。
言語を使うようになってからの人間は、知識を伝達し共有することができるので、
遺伝子的、とは別に「文化的な臆病」という効果も働き継続されています。
(文化的模倣子 = ミーム、ともいう。)
- あの洞窟の奥には、悪魔が住んでいるから行っちゃなんねぇ
- 神様のばちがあたるぞ
- 山奥に入ると天狗にさらわれるぞ
- 山神の祟りにあうぞ
- あそこは幽霊が出るぞ
いろんな言い伝え、伝承、掟、噂があるでしょう。
それらの内容がそのまま正しいとはいえないかもしれませんが、
それにより、危険のある場所へ行くリスクが減り、共同体の死亡率が減って
村が存続する、という効果があることにより、言い伝えは継承されてきた
のでしょう。
科学的におかしいから、という観点で簡単に切り捨てられない
(役に立つ)言い伝えもある、ということです。
2004/06/13 Takakuni Minewaki
2004/06/29 modified Takakuni Minewaki
↓ 「自殺」という不思議なミーム
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