◆「自殺」という不思議なミーム ◆
日本の自殺者数は増え続け、ここ数年は3万人を超えています。 毎日 80 人以上が自殺している計算になります。 何でこんなに多いのか。なんとかならないでしょうか。
昨年の自殺者、最多の3万2082人
2003年に自殺した人が過去最高の3万2082人に上ったことが、 厚生労働省が10日に発表した人口動態統計で明らかになった。 前年より2133人の増加。景気低迷などが影響したのではないかと 見られる。(2004/06/10 新聞記事)
そもそも「自殺」という行動は、進化的に見てとても不思議な現象です。 他の生物はこんなことはしません。 生きて、繁殖することによって進化してきた 「ヒト」が、なんでこんな事をするのか?
「自殺する」という遺伝子が組み込まれているのだろうか? たぶんそうではない。
(子供を持つ前に)自殺した人の遺伝子は受け継がれないから。
たぶんこれは「ミーム」だ。 文化的に継承されている。
自殺、という行動を知らなければ、思いつきもしないのではないか? 現代では、誰かが自殺すると、それが大きく注目されて、何が理由で、 どうやってそこに至ったかが報道される。それによって、人々の頭に 「どういう場合に・どうやって・自殺する」というパターンが入り込んでしまう。 そして自分が似た状況になった時に、そのパターンを想起してしまう。
考えてみると不思議な気がするが、「自殺」と「遺書」はいつのまにか セットになっている。 自殺の際には、遺書を書いて、なぜ自分がそうするかを残す、ということが 慣例として続いている。この「遺書」はまさにミームの遺伝子だ。
遺書を書かないで、皆が理由不明で死んでいったなら、たぶん自殺は これほどまでに多く継続してはこなかっただろうと思う。
▼ 人口動態で見る年齢別自殺数
> 厚生労働省 平成15年 人口動態統計月報年計(概数)の概況 (Link)
毎年人口動態概況が出るたびに見てみるのですが、 いろいろな観点から興味深いです。
自殺については、大変面白い、というかただならぬ事態であることが 読み取れます。
上記 2003 年分の、年齢別死因順位 (Link) を見てみると(右表に要約)、 総数では、死因「自殺」は青年〜働き盛りの年代で最多の死因になっています。 全世代の死亡に対する割合は 3.2% と低いのですが、この年代での 特異な多さは何とかしないといけないと思わせられます。
年齢 自殺の順位 死亡数 15-19歳 2位 503 20-24歳 1位 1209 25-29歳 1位 1862 30-34歳 1位 2170 35-39歳 1位 2078 40-44歳 2位 2352 45-49歳 2位 2710
この上の年齢では悪性新生物(ガン)が急激に増えてきますが、 自殺の死亡数は 60 歳くらいまで多いままです。
性別ごとの自殺数を見てみると、以下のようになっています。
男性 女性 年齢 自殺の順位 死亡数 自殺の順位 死亡数 15-19歳 2位 314 1位 189 20-24歳 1位 842 1位 367 25-29歳 1位 1321 1位 541 30-34歳 1位 1582 1位 588 35-39歳 1位 1556 2位 522 40-44歳 1位 1906 2位 446 45-49歳 2位 2217 2位 493
女性よりも、男性の方が3倍も自殺数が多い事がわかります。 これは生理的な違いからなのか、それとも社会的な要因からなのか?