霧ヶ峰

車山

車山(1,925m)は日本百名山、霞ヶ峰の主峰である。ビーナスラインを利用するとき何 度も近くを通過したり、八島ヶ原湿原でキャンプした時も登ったことはなかった。というわけで2003年9月第一週に蓼科の女神湖畔に 避暑で訪れた折、ここを散策することにした。コースは車山肩の駐車場出発し、車山に登ったあと、車山湿原を一周して帰るというもの。総距離5.65km、 累積登り273m、累積下り271m。

ジープで車山肩の駐車場に9:00着。火曜日のため、駐車場はガラ空き。9月に入って、皆、働き出したのだろう。南風が強く、すこし寒い。前日、蓼 科山の中腹から双眼鏡で見た車山の山頂にはいままでその存在を知らず、見たこともなかったレーダードームがあった。富士山山頂の気象観測レーダーが衛星写 真に取って代わられたのち、補完するために建設されたと聞く。車山肩からは時々切れる雲の中にこのレーダードームがみえる。ヤッケを着込んで登りはじめ る。すぐ暑くなってヤッケはザックにしまう。霧ヶ峰一帯は強風のためか、樹林帯はなく、草原に覆われている。当然、全山お花畑である。ギュボウシ、マツム シソウ、ワレモコウ、トリカブトもう盛りを過ぎていたがウスユキソウ(エーデルワイス)の群落が散見される。良く見ると、鉢伏山ほどではないが、レンゲツ ツジの潅木さえ沢山ある。

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車山中腹から車山肩と八島ヶ原湿原方面を望む(右下は車山湿原)

小1時間で山頂に立つ。車山肩から登る人は我々を含め、3パーティーだけなのに、下ってくる人が次第に増え、山頂にも大勢の人が居る。白樺湖方面か らスキー用のリフトで登ってくるのだ。山頂から振り向くと霞ヶ峰グライダー滑空路と八島ヶ原湿原がよく見える。八島ヶ原湿原のキャンプ場の草原と管理棟の 赤い屋根、手前の植林したと思しき矩形の針葉樹林が見える。若い頃、美ヶ原でグライダーを見たと記憶していたが、あれは霧ヶ峰だったのだと気がつく。1機 のグライダーが滑走訓練をしているのが見える。蓼科山の山頂は雲の中だ。最近、登った鉢伏山の方角をみるが、これも雲の 中である。

車 山山頂の360度パノラマ

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車山山頂の気象レーダードーム

登ってきたと反対側の急斜面を車山乗越しの鞍部に向かって下る。沢山の消防用のノズルのようなものが斜面に林立しているので何かと思ったが、多分人 口雪を降らすための散水ノズルなのだろう。次第に晴れあがり、車山のドームも青空のなかにくっきりと浮かび上がる。車山乗越しの鞍部から霧ヶ峰湿原に向 かって歩く。この谷間は穏やかな風が草原を吹き渡り、カンカン照りなのに心地よい。蝶ヶ深山には登らず、湿原に沿ってあるく。湿原の植物の赤みがかった色 がきれいだ。車山肩の方向には山小屋が木立に囲まれて見える。沢渡の方角から尾根道を車山肩の方向に登って行く、多人数の一団が見える。

湿原の斜面が次第に急になると、低部を小川が流れはじめ、次第にV字渓谷を形成し始めるのが見える。草原も尽き、谷間はミズナラの林の中に入ってゆ く。その先に沢渡があるはず。車山に登る途中すれちがった女性ハイカーと再会する。多分、車山乗越しからリフトで帰るのだろう。沢渡には数軒の別荘と山小 屋があった。植林した針葉樹林からエンジンソーの音が聞こえててくる。間伐しているのだろうか。ここで沢を対岸に渡り、車山肩に向かって尾根を登りはじめ る。登り始めの木立の木陰で昼食とする。

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左下は車山湿原、右手前はコロボックル・ヒュッテ、車山レーダードームは中央、はる か左に蓼科山

先ほど見えた大人数の一団が上った尾根筋の右側の草原には休止中のスキーリフトが見える。スキー場の半分は休業せざるを得ないと予想されている。そ のうちの一つなのだろう。このような施設をどうして沢山作ったのだろうと時代の狂気をおかしくおもう。左手下方には先ほど下ったミズナラの林が見える。そ の林は谷筋だけにあり、上部はなだらかな斜面をもつ蝶ヶ深山の草原である。振り返れば、間伐していた針葉樹の植林地の向こうに八島ヶ原湿原が見える。約1 キロ登ればそこは車山肩である。車山湿原から見えたこぎれいなコロボックル・ヒュッテで小休止。(Hotel Serial No.282)今日3時間半かけて走破した広大な草原を眼下に、ケーキとコーヒーをいただく。コロボックルとはユニークな名前だが、アイヌの小人伝説に 由来するものと想像した。

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コロボックル・ヒュッテのテラスでお茶とケーキ

午前中に車山が終わってしまったので、北八ヶ岳の縞枯山と横岳の間にある坪庭を見ておこうとジープでピラタス横岳ロープウェイ駅に移動する。高低差 466メートル、片道7分のロープウェイは往復1,800円だが、双子池や亀甲池、茶臼山を訪れて気になる場所なので、一度は訪れてみようと往復する。横 岳から流れ出したと思われる溶岩流が冷えて固まった、浅間山の鬼押し出しのようなところだ。横岳は登りたいとおもうような山ではなかった。車山は正面によ く見えた。

車山から美ヶ原にかけての地形は楯状火山とその溶岩台地と考えられてきたが、現在では安山岩質の組成を持つ火山の浸食地形と解釈されているようである。特 に美ヶ原の台地の先端は、どこも急激な断崖となって落ち込んでいる。

September 3, 2003

Rev. November 24, 2017


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