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1133

石油の起源

2007/07/02

●19世紀初め以来、有機(生物)起源説と無機(非生物)起源説とが対立してきたが、生物起源説は石油のなかに生物のヘモグロビンやクロロフィルの誘導体 であるポルフィリン類、コレステリン、カロチン、テルペンの誘導体などのように光学活性をもつ生物由来の有機物が微量ながら石油の中にふくまれているた め、 いままでは生物起源説が主要な説であった。頁岩などの堆積岩の中に含まれるケロジェン(Kerogen)は有機物の塊で炭素や酸素の含有量で4つのタイプ がある。ここからガス、石油、石炭が生成したと考えられている。

大陸地殻の5%に相当する窪地に土砂が溜まった堆積盆地に油田、ガス田は存在することも生物起源説を裏つけるものとされてきた。

最近、分析技術の進歩でバイオマーカーであるポルフィリン類の分析の精度があがり、石油の元になった生物まで特定できるようになった。いずれも独立栄養で 光合成をする植物プランクトンである。

イタリアの中生代白亜紀(1億年前)の根源岩たる黒色頁岩はシアノバクテリアを共生している藍藻

中東の中生代の石油は(ハプト藻または円石藻)が主体。これは同時に二硫化硫黄を発生させ硫黄循環に重要な役割を果たす。

サハリン、カルフォルニア、秋田、新潟の新生代の石油は珪藻が主体

中生代には渦鞭毛藻(うずべんもうそう)も石油になった。サンゴは渦鞭毛藻を共生して光合成している。

以上朝日新聞

●しかしコンドライトという隕石の破片にもケロゲンという炭化水素が含まれている 。水星、金星、地球、火星など珪素系の岩石で構成される地球型惑星はコンドライトが集積してできたと考えられている。塵状の星間物質にもケロジェンが含ま れている。このため、トーマス・ゴールドが「地球深層ガス」 で唱えた無機(非生物)起源説も否定はできない。

堆積盆地の土台である基盤岩中に油ガス田が形成されている例も多い。基盤岩は、マグマが地下深部で冷えて固まった深成岩を主体としており、炭化水素の生成 には無関係と言ってよい。従って、それら基盤岩中に胚胎する油ガスは、上位の地層あるいは下位の地球深部のいずれかから供給されたことになる。すなわち、 基盤岩の周囲や上位に分布する若い堆積層中で生成された油ガスが基盤岩中に滲み込んだ可能性(生物起源説)と、地殻深部に伏在する油ガスが基盤岩中の断裂 を通じて上昇移動した可能性(無機起源説)の2つが考えられる。

無機起源説の始まりは、元素記号の周期律表で著名なロシアの化学者メンデレーエフが1877年に石油の無機成因説を唱えた頃にまで遡る。

無機起源説では一般に「地球創生期に隕石などによって取り込まれた炭化水素が断裂を通じて地殻深部から上昇移動し、堆積盆地では基盤岩に至るまで垂直方向 に幾重にも油田は存在する(1950年代のロシア、クズリャツェフの法則など)」と説明されているトーマス・ゴールド説がある。

地球深部のマントル中で炭化水素が有機合成反応で無機的に生成されたとする無機成因説も2005年の米国石油地質家協会(AAPG)にでてきた。ベトナム 沖の堆積盆地下に伏在する結晶質基盤岩で次々と大規模油ガス田を発見したことなど、無機起源炭化水素の可能性を暗示するような珍しい油ガス田が世界各所で 出始めたことが理由として挙げられる。米国科学アカデミーは2004年9月に衝撃的な論文を発表した。これによると、インディアナ大学、カーネギー地球物 理研究所、ハーバード大学、ローレンス・リバモア国立研究所の研究者で構成される研究チームは、このたび室内実験で地球深部を再現し、その結果、上部マン トルで大量の無機起源炭化水素が生成し得ることを示す結果を得た。

「上部マントルあるいは地殻下部に炭化水素が大量に伏在する」という大胆な仮定をおく。堆積盆地は、一般に大陸地殻に生じた割れ目や弱線部に沿って形成さ れた凹地に、地表付近の堆積物が流入して形成されたものである。大陸分裂の際に、マントルの上昇流によって大陸地殻が裂ける場所では、地殻が幅広く引き延 ばされて薄くなり、その表面は凹地となって周囲から大量の堆積物が流れ込む。実際、世界の大規模な油田の多くは、中生代以降の大陸分裂で分かれた各大陸の 輪郭の屈曲点や縁辺部に位置することが多い。もし上部マントルに大量の炭化水素が伏在するなら、大陸地殻が分裂した個所はそれら炭化水素が最も上昇移動し やすい部分となろう。また花崗岩などの深成岩には、主として垂直方向に卓越した割れ目が発達していることが知られており、これら割れ目が炭化水素を上昇移 動させる通路として機能したとも考えられる。大規模断裂を通じて地殻内部を上昇移動した炭化水素は、堆積盆地の下底に滲み出し、高浸透性の地層や地層中の 微細な割れ目を通じて上昇し、低浸透性の泥質層などにより炭化水素は一時的に上昇を妨げられ、次第に集積する。こうした炭化水素の集積場を、我々は油田や ガス田と呼んでいるのかも知れない。オマーンからイラクにかける巨大油田地帯がザグロス衝上断層帯に平衡しているのは偶然ではない。

もしこうした仮説が正しいなら、人類はプレート境界やトランスフォーム断層など地殻深部にまで達する大規模断裂に沿った地域を探鉱することにより、地殻下 部に眠る膨大な炭化水素の存在が確認できるかも知れない。

以上日本エネルギー研究所研究員中島敬史の報告

独立行政法人海洋研究開発機構の大河内直彦(新潮45 2011/7)によれば

深度200kmで生成されたキンバリーのダイヤモンドの炭素13の含有量は1.1%で地表の生物の炭素比率と一致することがわかった。こうしてビッ グバンで生成された炭素13の比率とは一致しないことが確認され、無機合成説が不利になった。

ヘリウム3は135億年前のビッグバンで生成したもので、ウランやトリウムの崩壊で生成するヘリウム4で希釈されるため、生物由来の化石燃料に含ま れるヘリウム3は0.000137%しかない。しかるに新潟から秋田にかけて産生する天然ガス中のヘリウム3は一桁多く、地球深層ガスは無機起源であるこ とをしめしている。

グリーンタフのガスはヘリウム3含有量から無機起 源説で も説明できるが、日本海の底にたまったヘドロからとも説明もできる。グリーンタフは貯留岩ではなく根源岩であり、比較的粗いためガスがでてくる。しかし シェールガスはもっと緻密な根源岩である頁岩をフラクチャリングしてガスを流出させるわけで、これは深層ガスをトラップしたものとは考えられず生物起源で ある何よりの証拠であろう。

スカンジナビア半島は花崗岩であるが、ここに3.8億年まえに隕石の衝突でできたシリヤン・リングという直径52kmのヨーロッパ最大のクレーター がある。リングの一部である三日月型の湖シリヤン湖(Siljan)はスウェーデン中部、 ダーラナ県にある。この割れ目から深層ガスがでるのではと期待され、1986年に脱原発まで決めて6,000m試掘したが、ガスは見つからなかった。



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こうしてゴールドの無機説は一部の説明しかできなく、ほとんどの化石燃料は生物紀元であると認識されるようになった。

深層ガスとは関係ないが、ノルウェー南部の港町スタバンゲルの南西方約 310km のノルウェー領北海(水深 60〜 70m )に位置するエコフィスクなどの北海ガス田からのガスはノルウェー側にトレンチがあり、パイプラインの敷設が困難なため、英国にあげて、スワップすること にした。

Rev. November 27, 2012


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