読書録

シリアル番号 1337

書名

司馬遼太郎で読む日本通史

著者

石原靖久

出版社

PHP研究所

ジャンル

歴史

発行日

2006/2/17第1刷

購入日

2018/04/01

評価



著者は編集者。

加畑蔵書。

磯田道史の「司馬遼太郎」で学ぶ日本史」では今の日本の成長鈍化を説明できていない。ほとんどカオス理論的に色々な要因を引用して、たまたまそうなったとしか説明していない。

この本では歴史を儒教との関連で説明している。儒教のその延長上で最近の国の不調を説明しているのであろうかという問題意識でこの本を紐解いた。

司馬は鉄器文明は中国の森林資源を枯渇させたゆえに当時の漢は停滞した。司馬は停滞したがゆえに儒教が広がったと理解した。日本は多雨のために森林再生があり、停滞し ない。そこで平安時代のお手本だった漢のように停滞せず、土地私有制の鎌倉政権が誕生。室町時代には武家政権は弱体化したが、かえって自由を得た日本の庶民の生活スタイルはこの頃、確立。倭寇 も活躍。そして北条早雲、斎藤道三、織田信長、秀吉戦国時代にはいった。この戦国時代は沸騰するような陽の時代である。

家康が天下を取ってから豹変して守りに入り、社会の成長をとめ、儒教による締め付けで徳川家のみが繁栄を維持する時代を継続させた。これが元来、日本がもつ流動性の高い、 階級制のない国を身分制で固めて窮屈にした経緯である。この儒教秩序がついにひっくり返って再び浮上できるようになったのが明治維新。ただ、たった一人で浮上することはできなく、グループを作って上昇運動をする。小栗忠順、高杉晋作、大 村益次郎がその中心人物。

アジアは儒教の軛から抜け出すことができず、日本におくれをとった。

満州事変はロシアの南下を止めた防衛戦争。ところがすぐ山県有朋が華族制度を作り、自分がそのトップに収まり、儒教流に社会の対流を止めようとした。そして士官 学校という一種の宗教学校で純粋培養された自称エリートを増産した。彼ら軍事官僚は客観的に認識する能力に欠け、野郎事大に陥り、明治の先輩がリアリズムで築き上げた遺産を 食いつぶしたのである。そもそも、日本には戦争に必要な石油がなく、戦争する資格も能力もなかった。しかるに当時、日本を私物化した軍事官僚達にはそれが理解できなかった。こうして軍事官僚に占領された日本は敗け、マッカーサーの2度目の占領に引き継がれた。

戦後の復興期をすぎるとアジア的、政間業の癒着と横暴が再発しているように見える。現に安倍政権下で官僚が驕り、勝手しはじめた。これで日本は確実に沈む。

ところで肝心の中国はどうなるのだろか?多民族が入り混じる中国大陸では互いに民族同志が切磋琢磨している。過去に偉大な文明を築いたように、これからます ます発展するように見える。毛沢東が共産主義を導入したのも毒を持って毒を制するという目的を持っていた。これで日本が再度落ち込みつつある儒教的沈滞文化の影響を消し去ることが出来れば恐る べき隣国となろう。

しかし磯田道史の「司馬遼太郎」で学ぶ日本史」のように「共感」が大切などと主張する歴史家は確実に儒教擁護派=NHKなどにもてはやされる。これを見ると危険が忍び寄っていると思わざるを得ない。


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