読書録

シリアル番号 1312

書名

ポストキャピタリズム 資本主義以降の世界

著者

ポール・メイソン

出版社

東洋経済

ジャンル

経済学

発行日

2017/10/5発行

購入日

2017/11/01

評価



原題:Postcapitalism by Paul Mason

著者はジャーナリスト。

黒沢の「天国と地獄」鑑賞のために上洛したとき、東京駅構内の書店で衝動買い。書評には翻訳は最低とあるが確かに。

経済学の歴史の部分でコンドラチェフの50年周期の波動がかなりクローズアップされている。その要因としてシュンペーターは技術革新を挙げた。第1波の 1780 - 1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840 - 1890年代は鉄道建設、1890-1940年代の第3波は電気、化学、自動車、1940-1990年代の第4波はコンピュータ・デジタル技術、1990 -2040代の第5波はインターネット。コンドラチェフの波は黒点周期の振幅のゆっくりした振動と同期しているという。

情報はローコストでコピー・ペーストできるゆえ、情報はオープンソースになる。市場経済は情報経済と共存できない。第5波、すなわちポスト資本主義の中心 になるのはドラッカーの指摘のとおり「普遍性を持つ、教育のある人間」である。マルクス資本主義は労働者に知的能力の向上を強制すると予想した。すなわち テクノロジーに長け、情報をクラウドに蓄積し、性・環境保全・事前事業に対し超リベラルな態度をもち政治に無関心な人々が出現する。

インターネットは階層社会を破壊する。権力と統制すなわち階層性(産業資本主義)を維持しようともがく独占・銀行・政府とネットワークとの闘いが現在、行われている。

情報はマルクスの唱えた労働価値説を崩壊する。結果、アダムスミスの神の手は消えてなくなり、市場は機能しなくなる。製品のコストがゼロで所有権が弱い場合、資本主義は崩壊する。具体的には自 動機械が、売れもしない商品を市場に大量に供給するようになる。金融政策でマネーを市中に出回らせても、インフレは生じない。(クルー−グマンが提唱した方策は無効となっている)労働者階級は財産を奪われた階級であるが、自動機械とオフショアリングが彼らを駆逐した。こ れがトマ・ピケティが指摘したことだ。でも彼らは無力で革命も起こせずただ悲惨なだけ。

情報資本主義時代にはグローバルサウス(中国やブラジル)の仕事場は高い生活水準を達成する。かれらが富裕国の労働者と同じ軌道に乗る。米国のゲームデザイナーが永久に生き残ることはない。

人口の高齢化のために日本の年金債務は2050年にはGDPの500%になる。すなわち金融危機が生ずる。人口爆発はこれからサブサハラで発生する。気候 変動もある。グローバル・エリートはこの現実から目をそらしている。「歴史の終焉」は確実にやってくる。米国はフラッキングでエネルギー自給に邁進。金融 システムは国有化?ベーシックインカム?1%の富裕層は消えてなくなる。


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