読書録

シリアル番号 1137

書名

マルチチュード上下

著者

アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート

出版社

NHKブックス

ジャンル

哲学・思想

発行日

2003/1/20初版第1刷
2006/12/15初版第5刷

購入日

2008/3/14

評価



原題:Empire by Michael Hart and Antonil Negri 2000 Harvard College

アントニオ・ネグリ、マイケル・ハートの本を初めて読んだのは2008年の「帝国 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性」であった。2013年になって「コモンウェルス(上)―<帝国>を超える革命論」であった。

 三部作になる本著は書評では知っていたが、買い控えていた。2008/3/13の朝日の記事でアントニオ・ネグリ氏が来日していることを知り、有隣堂で購入。

現在の世界をありのままに理論化しようという試みで難解だが、なかで理解できたところを列挙する。

従来型の軍隊はハブを中心にスポークが放射状にひろがるように指令が広がる。しかしゲリラ組織は多中心的ネットワークである。このモデルの究極形態は分散 型、またはフルマトリックス型である。こうした群れには「断頭型モデル」では対応できない。そこでベトナムで採用された「環境剥奪型モデル」という陰惨な 手法が採用される。

さて今、世界は国民国家を統合した超国家<帝国>への体制変革期である。このような権力の空位期間には腐敗が蔓延する。なにも中国のこいとをいっているのではなく、米国の例えばエンロン事件、ロシアのオリガキーだ。

現在出現しつつある主権形態は完全に軸足を資本の側に置き、資本と労働との対立関係を乗り越えるための調停メカニズムは一切持っていない。このためにリスクが高まり、大きな政府が必用となっている。タキトウスは「国が腐敗すればするほど、法律が増える」と言った。

サボタージとは工場の機械の歯車を壊す目的で木靴(サボ)を投げ入れる行為から発している。

超国家<帝国>は新しいマグナ・カルタを必要とする。君主とグローバル貴族(多国籍企業、超国家的機関、支配的国民国家)の間に締結するのだ。その内容は 平和との安全、グローバルな生産力を一新すること、地球の人口全体を生産と交換の回路に組み入れる。貧困の解消と最貧国債務の帳消し、潜在的生産力の現実 化、民営化のプロセスの逆転。土地、種子、情報、知識などの生産資源の共的アクセスを創出させる。

このためにはグローバル貴族とマルチチュードの共闘が必須となる。

地政学はあくまで国民国家の内と外との概念だから<帝国>内部の問題解決には役立たない。

木下氏によるとアントニオ・ネグリが新しい本をだしたようだ。「叛逆―マルチチュードの民主主義宣言」-NHKブックスという。内容は2010年代初頭、 「アラブの春」に始まる直接抗議運動が世界中に広がった。専制的な政府、強欲な金融業界、民意を無視する政治に対して立ち上がり、支配体制を揺さぶった人 びとこそ「マルチチュード」である。かれらが見せた新しいヴィジョンとは何か? 代議制の機能不全はどう克服されるのか? 〈帝国〉論で絶対的民主主義を説いた論者が、満を持して放つ具体的提言の書とある。

Rev. April 1, 2013


トップ ページヘ