環境政策フォーラム第80 会定例会

原子力エネルギーシステム

シンポジウム

2015/4/21

ホテルニューオタニ

 


金子和夫氏の著書「「原 発」、もう一つの選択」のシンポジウムに招待されたので出かけた。

トリウム炉は将来の問題としておいておき、当面は超ウラン元素、すなわちプルトニウムやマイナーアクチニドを消滅することを目的とするというが、金をか け、リスクを冒してそのよう な消滅技術を開 発したとしても核分裂生成物は消滅することはできないので中途半端で無駄だというのが著者の考えだ。プルトニウムのような核兵器拡散リスクと核分裂生成物 の向う数百年の住 民への脅威と混同している社会の問題なのかもしれないが、研究の方向がなにか間違っていると思う。強烈な放射線を放つ核分裂生成物を含む使用済み燃料の再 処理 は困難だ。プルトニウムを消滅のために分離した途端に核兵器への転用をしようという不届き者がでてくるだろう。それに金もかかる。米国のように混ざった まま、なにもしないで管理した場所に保管するのが賢いのではと思う。

NURIS 2015でもドイツの研究者Christoph PISTNER, Matthias ENGLERT, GerhardSCHMIDT, Gerald KIRCHNERがPartitioning and Transmutation (P&T)の現状ついて、プルトニウムとマイナーアクチニドを消滅させても、FPが減らないので今の最終埋葬法で不十分としている。

金属ウランなどの分離精製はアルミ製錬とおなじく揮発法にくわえて電気化学で分離するのが乾式再処理の基本。使用済み燃料からフッ化物揮発法でまずウラ ン、プルトニウム、マイナーアクチニドと核分裂物質混合物を分離する。その原理は固体の二酸 化ウラン、プルトニウム、マイナーアクチニドを六フッ化物(六フッ化ウランの沸点56℃)にして固気分離するということのようだが、核分裂生成物の例えば セ シウムのフッ化物は融点が682℃で固気分離は可能だが、プルト ニウム、マイナーアクチノイドも六フッ化物になり、やはり気体となるので分離は核分裂生成物を固気分離したあとウラン、プルトニウム、マイナーアクチニド は 蒸留分離するのだろうか?そしてフッ化物塩に溶かすには水素で還元し て4フッ化物にするのだろうが、副生するフッ化水素の処理も面倒だ。

炉物理計算をした三 田地紘史らが言及している酸化物沈 殿法は、フッ化物熔融塩に酸素を入れて沈殿させる方法でアイディアの段階だ。

また核分裂生成物を含まない真っ新なウランならいざ知らず核分裂生成物を含むウランを六フッ化ウラン気体にした場合、同伴する核分裂生成物の漏えい防止を どうするのか?多重コンテ インメントも必要となり、高度の技術を要す。全て放射線遮蔽壁を隔てた遠隔操作となるだろう。だが、福島でのロボットの惨状を見ればかなり難しい事が推定 できる。

私はパークロルエチレンプラントで塩酸の雨を浴び、フッ化物を中間反応物とする有機合成による抗菌剤製造で多量に発生するフッ酸の無害化プラントのほうが 多段有機合成プラントより大きかった思い出がある。これに核分裂生成物が加わるのだ。

2014年のハルデンでの照射実験j準備に4,000万円支払い、今後5年の概算7億円かかる見込そうだが、組成分析や化学反応・分離操作などは誰がどこ で担当す るのだろうか?

April 21, 2015 


トップページへ