安倍政権発足直後の脱原発デモ

グリーンウッド

 


民主党政権での脱原発デモには何回か参加したが、安倍政権でどうなのか興味をもってでかけた。

学習院生だったとき指導教官の社会学者清水幾太郎にそそのかされて安保反対デモのため国会にでかけ、樺美智子さんが亡くなった事件を目撃した経験を持つ西沢さんも一緒である。奇しく も官邸の主人は岸の孫に変わっていた。西沢さんにとっては感慨深い経験だと感想をもらしていた。西沢さんによれば当時と現在では大きな差があり、今回は全く緊張感が なく、別世界だといっていた。安保闘争後、清水幾太郎は転向し、反米核武装論者になったのには閉口とたと西沢氏は語る。

少し早く着いたのでデモの中心になる若い人と話をした。デモは通産省前、国会議事堂、官邸の3か所でおこなわれるという。脱原発政党がなぜ分裂してしま うのか聞いたところ、共産党も、社民党も孤高が好きだ。その他の党はばらばらでどうしようもないとあきらめ顔であった。それでもめげずよく頑張るな と思う。通産省まえのテントは東京新聞を出している中日新聞社の土地かと聞くと、いや通産省の土地だという。不思議な構図だ。

腹が減ったので溜池に下り、うまいカレーを食べて6時ころまで時間調整。いよいよ首相官邸に行こうとすると道路封鎖で入れない、やむを得ず議員会館の間の 道を登って 国会議事堂裏に出たが、首相官邸にゆくには国会議事堂を大きく時計方向に迂回せよという。岸の頃の国会議事堂の三角形の敷地は長四角形に大変更されてい る。指示にしたがって小雨の中を議事堂一周し、まず議事堂前の集会を見る。つ いで首相官邸前にゆく。官邸と国会議事堂前と通産省まえにそれぞれ3000人とすれば総勢9000人弱は集まっていたことになる。まー雨にもめげず、よく 続いていると感心して帰った。岸のやったような右翼の動員がないので平安なものだ。

デモがなぜ継続しているのか興味をもってみているとやはりネットが裏支えているようだ。組織員メンバーは知的な若者だが参加者は中高年のおじさん、おばさ んが多い。かっての安保世代かもしれない。人間の本能は太鼓の音で鼓舞されるようで、太鼓が主役であった。日蓮宗も太鼓を利用している。

今後の予定を書いた「たんぽぽ舎」のビラをもらう。帰宅して此処が行った2012/11/21のインターネット放送を開けてみる。 京都大学原子炉実験所の海老沢徹助教の講演後の質疑が興味ふかかった。海老沢徹助教は「原発は自国に向けた核兵器」であるという明治天皇の玄孫(やしゃご)にあたる憲法学者竹田恒泰氏の名言を引用する。

http://www.ustream.tv/recorded/27139394
http://www.ustream.tv/recorded/27139859


海老沢徹助教はPWRはBWRより高濃縮の10%ウランまたはプルトニウムを使う。そして反応度制御はホウ酸濃度で行う。ph調節のためリチウムを加える ので トリチウムの発生が多い。このトリチウムはメンテナンス時環境にでる。また蒸気発生器細管破断時は安全弁経由で一次水が環境に放出される。トリチウムは内 部被ばくをもたらすから怖い。定期検査で圧力容器をあければでてくるものだ。BWRに比べてトリチウムは多いといえる。ドイツのPWRの定期検査からでる 放射能はBWRより多く、幼児の白血病がおおいということもPWRのトリチウムの発生が多いことと関係がありそうだ。このトリチウムはメンテナンス時環境 にでくる。トリチウムは内部被ばくをもたらすから怖い。定期検査で圧力容器をあければでてくるのでこれがドイツ癌発生がおおい原因の一つだろうと推察し た。日本はそういう観点でデータ整理した学者がいないから不明である。

通常PWRの格納容器の設計圧は4気圧、容積は60,000m3で圧力容器の200倍だ。BWRの20倍に比べて大きなへだたりが ある。しかるに大飯1と2号機のPWRは容器内に常備している約1250トンの氷で温度と圧力を下げるアイスコンデンサー付きのため容積50,000m3で 大きな差はないが、設計圧はたったの1気圧である。これでは水素爆発したら持たない。そして窒素置換するには大きすぎるので、必ず爆発する。なぜならセシ ウムが触媒になるからだ。というわけで大飯1-2号機はメルトダウンしたらBWRとおなじように、かなりやばい。アイスコンデンサーは文字通り氷を格納容 器内部に備蓄しておいて安全弁から出る水蒸気を凝縮することにより格納容器の設計圧を4気圧から1気圧に下げることを意図したものだ。しかしメルトダウン すれば水素がでてきて氷でも水素は液化できない。これは設計思想そのものが破綻しているわけ。菱商事が元請だが実際には MHI設計。まったく素人の設計だ。日本では大飯1,2号機だけですが世界に他にあるか知らない。これはBWRと同じくらい封じ込め能力は低い。原子力規制委員会は2012/12/20、国内に 24基ある加圧水型原発のうち、運転停止中の関西電力大飯原発1,2号機(福井県)について、過酷事故を想定した原子炉格納容器の水素爆発防止装置の設置など、特別な 基準を設ける方針を決めたそうだ。でも私はそれならなぜBWRも特別の規制を検討しないか不可解。

崩壊熱の除去は蒸気発生器で行うのが基本。まずタービン駆動の給水ポンプ、非常用に海水を切り込めるようにしてある。運転員の訓練が大切になるがこの点ではPWRはBWRよりはるかに 優れている。

海老沢徹助教はPWRはBWRと同じように危険だといっている。しかし質問者はすこし違う見解をもって質問した。私自身もPWRよりBWRの方がやばいと考えて本まで書いている から、質疑応答の内容はどうでもよいのだ が、ここで今まで調べても分からなかったことを知る。それはスリーマイル島のPWRの格納容器は大きすぎるので運転中に窒素置換していない。したがってメ ルトダウンで発生した水素 で3回も水素爆発を繰り返した。人が出入りするハッチが変形するくらいであったが、それでもセシウムは漏れなかった。また水素燃焼熱で内部のケーブルや電 気機器が燃えてしまった。にもかかわらず福島のようなことは生じなかった。結論として海老沢徹氏がなんと言おうとPWRはBWRより優れているといえる。 これを我が「原発敗戦」に書き込まなかったのは残念。せめてHPに書き加えよう。

長い間警官とにらみ合っているとそこに友情がうまれるようで、西沢さんとそろそろ帰ろうかと帰路につくと警官からご苦労さんと言葉を掛けられる始末。

朝日新聞にスリーマイル事故後電力会社がつかった原発安全神話作りのための広告費が2兆円を超えるそうだ。この広告費をうけとったのは新聞とテレビだから 共犯関係にあることは間違いない。NHKは共犯関係にはないが、役所の代弁をしているから金の流れがなくとも同罪。

Rev. December 30, 2012

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