マイホームページ開設以来、ほとんど手つかずのページ、それがこの「そばの道」コーナーでした。一番力を入れたいコーナーだけに、真剣に真面目に取り組みたいという気持ちがかえって壁となって、なかなか前進できずにおりました。また自分の生活を大きく変えてしまうかもしれない分野だけに、結果的にはどうしてもおっかなびっくりの逃げ腰状態になってしまい、中途半端な状況で月日は流れて行きました。その間、自分自身を取り巻く環境の変化(公私とも)に伴い、気持ちの変化もあったりして・・・なんだか言い訳がましく、よく分からない説明になってきているけど、もう一度仕切り直しというか、先に進むための区切りという意味で、これまでの「MY蕎麦」に関しての流れをまとめておこうと思います。

「はかたより」コーナーの中で「なにわつうしん」として日記メールを公開しているけど、2000年6月から約5ヶ月程、大阪で単身赴任生活をしていた時期がありました。今では非常に懐かしく思い出深い日々となりましたが(あまり懐かしがっていると妻からブーイングが聞こえてきそうですが・・・)実は「蕎麦」に関しての特別な思いが芽生えていったのはまさにこの時期でした。

ある日のこと、通勤途中の梅田駅構内「紀伊国屋書店」にて、一冊の本が僕の目にとまりました。その名はズバリ「そばうどん」(柴田書店)定価2800円ナリ。年に1度発行されるこの本との(運命的な?)出会いから物語(?)は始まったのです。たまたま偶然、その本の特集で「関西気鋭の蕎麦店」として大阪近郊の有名な蕎麦屋さんが紹介されていたのです。「関西にも美味い蕎麦屋さんがあるのか・・」「行ってみようかな・・」最初はそんな軽い気持ちでした。元々麺類は大好きで、自他共に認める「めんくい」?でもあるし、食べ歩きは僕の趣味の一つでもあるし、単身赴任中の休日に大阪の街をあちこち歩きながら美味しい蕎麦を食べ歩くというのもいいな〜と、そんな思いで何の迷いもなく、それこそ年に一度買うかどうかの定価2800円もするその本を購入してしまったのです。
それからというもの、この本で紹介されているお店を中心に、休みの度にあるいは仕事から社宅に戻る途中にと、あちこちのお店を食べ歩いたのです。せっかくなので、その食べ歩いたお店というのを一軒ずつご紹介しましょう。

ちなみに「塩ちゃんの満腹日記」より関西圏の蕎麦屋さんを抜粋した一覧表をまとめてみましたので、よろしければご覧ください。






上記「塩ちゃんの満腹日記」で見事!「Aランク」に輝くお店についてコメントしたいと思います。

まず、当時の勤務先が京阪の「香里園」(こうりえん)というところで、隣りの枚方(ひらかた)市にある「天笑」という蕎麦店には、昼休みに何度も出かけました。

「天笑」(大阪・枚方市)
いわゆる脱サラ組の店主自らデザインしたという内装は「自然の素材の店」だそうで、床の土、壁の和紙、一枚板の大テーブルなど、約10坪の無国籍な空間が実にオシャレ。蕎麦は荒挽きと細切りの2タイプで、自家製粉のお店。「関西にもこんなに美味い蕎麦があったのか!」と感動した。あまりに感動したので、どうやって打っているのか知りたいと思い、恥ずかしい話だけどお店に電話して「一度皿洗いで結構ですので手伝わせてもらえませんか?」とお願いしてしまった。「こちらも商売ですのでいきなり厨房に入れることは・・まずお話でしたら・・」と困惑気味の店主から当然の返答。自分のあまりにも唐突で幼稚な行動を反省することになりました。それ位気に入ってしまったのです。

で、こちらの店主が開店前に修行した蕎麦屋というのが、知る人ぞ知る「凡愚」というお店。

「凡愚」(大阪・大正区)
こちらは週4日しか営業しないお店。店主は信州や四国に極上の蕎麦を求めてたびたび足を運ぶというこだわり。一見して芸術家の家かと思えるような変わった一戸建てで、店内に入ると打ち場に手で回す石臼が見えます。挽いている途中らしく白っぽい蕎麦粉がたまっていました。メニューは太切りそばと細切りそばなど。太切りそばは割箸程の太さで豪快でした。僕の前に座ったお客さんは、高級外車で乗りつけた金持ち風のスーツ男。数種類のメニューを頼んだようで、一枚目は塩を一掴みパラパラと蕎麦にふりかけ、汁につけずに食す。蕎麦つう気取りのキザな奴でした。そして隣りのお客さんは、太切りそばを半分ほど残し「こんなん蕎麦やない」と言いたげな表情で無言で立ち去りました。有名店にはいろんな蕎麦つう気取りのお客さんが多いようです。

ちなみに大阪狭山の「摂河泉」の店主も、こちら「凡愚」で修行したそうで、そちらもしっかりとした食感で美味しい蕎麦でした。
店主夫妻もとても人の良さそうな方でした。

「土山人」(兵庫・芦屋市)
続いては芦屋の住宅街にある蕎麦屋さん。「天笑」のように芸術的センスの良さが感じられるお店。脱サラ・自家製粉という点では前述のお店と同様。一度店休日に行ってしまいシャッターが閉まっていたので(マンションの1階)お店が見つからず、隣のマンションの管理人に教えてもらいました。そして再度出直して行ったのはちょうどお昼時、店内は満席状態。お客さんの雰囲気がすごく上品で、さすが芦屋のお金持ち!といった客層でした。

「なかじん」(京都・東山三条)
狭い通りの古いアーケード商店街の途中にある蕎麦屋さん。夜の営業時間開始と同時(6時かな)に行きました。奥行のある黒いカウンター席のみでオープンキッチン。蕎麦三昧を注文しました。店主に勧められるまま、まずは塩で蕎麦を食しました。これが美味いこと!手臼粗挽き蕎麦のストレートな香りと食感が口の中に広がりました。酒肴も充実のお店です。「上野藪そば」で修行した店主は料理の腕前もお見事のようです。実はこのお店は後で紹介する「かしわぎ」のご主人に紹介してもらったので、その旨を伝えました。ごちそうさまでした。

「玄」(奈良・福智院町)
完全予約制とのことで、せいろ蕎麦とおろし蕎麦を事前に電話予約して行きました。春鹿酒造のはなれとのことで、古い平家建ての雰囲気のあるお店です。開店直後に一番乗り、畳の部屋でゆっくりといただきました。蕎麦は冷たく、しっかりとした細い麺で、香りも抜群。とろりとした蕎麦湯も美味しかったです。是非もう一度行ってみたいお店ナンバーワン。無駄を省いた完成度の高さが、素人の僕にも分かったような気がしました。福岡の「瑞祥庵・そば勢」のご主人もオススメの蕎麦屋さんです。店主も非常に丁寧な方でした。

・・・と、以上はあくまで「蕎麦」を食する目的で行ってきたお店です。要するに昼間のお店です。
で、こちらのお店は「プラスお酒」が加わり、更に思い入れを込めて紹介します。

「かしわぎ」(大阪・中央区)
初心を貫き、定年退職後に蕎麦屋を開店した柏木さんのお店。グルメ本で見て探し当てたのですが、どうも休業中といった感じで「ああ閉店しちゃったのかな〜」と思っておりました。それから数日後、電話がつながり、移転したことが分かりました。以前の場所より「なんば」から遠くなりますが、歩いていける場所でした。蕎麦はニ八。田舎と白雪(更科)、相盛りの二色もあります。ビールや蕎麦焼酎の蕎麦湯割りなどを飲みながら、そば焼団子、味噌焼などの蕎麦酒肴系+ネギネギ小鉢、砂ずり酒蒸しなどのつまみをいただき、最後に蕎麦でしめる。といったコースです。昭和一桁生まれの柏木さんは、物静かな雰囲気で非常に優しく親切な方です。奥様が対照的に明るくおしゃべりな方で、なんだかミスマッチがマッチしているようで(?)ついつい長居してしまうお店です。カウンター席なのでご夫婦と会話ができるのです。仕事が早く終った時に、大分遠回りにはなりますが時々寄らせてもらいました。

一度、僕が休みの日に蕎麦を打つところを見せてもらったこともありました。カウンター隅に座ってメモを執りながら拝見させていただきました。お茶を出していただいたり、説明をしていただきながら、丁寧な蕎麦打ちを教えてもらったのです。その後、そのまま開店してお酒をいただいたのも自然な流れ(?)でした。どうぞいつまでも、無理せずマイペースでがんばってください。

つづく・・・    今しばらくお待ちください・・・

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