Bi-Weekly Column 1/8「Eye from the SHOT
日本人の可能性を示す 藤田俊哉の「体脂肪率」


「体脂肪を減らそう!」
 今年も、そんな記事が、女性雑誌で特集される季節がやって来た。
 そんな贅肉と無縁の選手もいる。
 ジュビロがファーストステージ優勝を決めた日、MF藤田俊哉は、延長にも衰えることのない運動量で、試合をコントロールしていた。
 体脂肪は、チームのメディカル班の測定で3%だという。仮に測定上の幅が生じたとしても、5%前後だと言えるだろう。
 例えば、水泳では浮力の役目を果たすなど、脂肪にも役割はある。サッカー選手なら一般的に10%前後だが、一桁台、しかも5%となるとマラソンより、陸上の中長距離ランナーに相当する。
「天然の体です。もちろん体調維持は重要な仕事ですが、あえて言えば、大好物の魚をよく良べるくらいなんです」
 藤田はそう説明する。
 800、1500メートル等の中距離は、筋肉、心肺機能を限界まで使い切る過酷な種目で、スピードとスタミナ、その両方が要求される。
 そして、じつは短距離でも長距離でもなくこの「中距離」こそ、現在のサッカーでは最重要と言われる長さなのである。現在、欧州の練習には中距離のインターバルトレーニングが採り入れられているほどだ。
 フランスW杯を前に、ブラジル代表などの医療スタッフに話を聞くチャンスがあった。
 彼らが徹底的に管理していたさまざまなデータなかで、印象的だったのは体脂肪率の数値である。ブラジル代表の平均はじつに5〜7%、その理由をチームドクターに聞いた。
「現代のサッカーでは、スピード、スタミナ、運動量と、すべての能力を1試合フルに維持する高度なフィジカルを求められる。このくらいの体に絞らなくては戦えないでしょう」
 サッカーにおいで、戦術の変化とともに見逃すことができないのは、選手の肉体そのものに求められる能力、適性の変化である。ワールドクラスとの差にはいくつもの要素があるが、そのうちのひとつは、体格だけではなく、体力の違いも大きい。
 3%という数値は、スピード、スタミナの両・方を高度なレベルで使う、先端のサッカーの理想像でもあり、過酷な日程をサバイバルしたジュビロのシンボルともいえる。
 藤田の肉体は、サッカーにおける日本人の身体的能力の可能性を、雄弁に物語っているのかもしれない。

(週刊サッカーマガジン・'99.6.23号より再録)

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