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Jリーグ ディビジョン1
札幌は、現在得点ランキングトップのFWウィルを軸に播戸竜二のスピード、また平均年齢24歳と若い選手の勢いを十分に生かしたカウンターで神戸守備陣を揺さぶる。ボール占有率では圧倒的に神戸に主導権を握らせながらも、ピンチを野々村芳和、名塚善寛らベテランの早い判断から凌いで後半へ。後半は岡田武史監督が先に選手交代に動き、和波智広、山瀬功治、今野泰幸といった若手を交代。FWには深川友貴を投入して攻撃的な布陣で延長に臨んだが、結局無得点のまま、勝ち点を1つ伸ばす10とし、代表遠征に伴う休止期間に入った。 一方神戸は、清水戦での敗戦から立ち直るきっかけを得なければならず、前後半合わせて24本ものシュートを放つ積極性を見せた。エース三浦知良も7本のシュートでゴールを狙うなど、前節からの悪い波を断ち切るかのような猛攻を見せ勝ち点を6とした。後半終了間際には、突風と激しい雨に見舞われるハプニングもあったが、これで開幕以来5試合で3試合延長の厳しい戦いで「負けないサッカー」を示して見せた形となった。 神戸・三浦知良「できれば3ポイントとりたかった。でも負けなかったことは大きい。120分やって、疲れたけど、何とか1ポイントはとったからね。(前節の)清水戦のシュート0本に比べれば、今日は前向きに出来たし、シュートまで持っていくことができた。岡田さんとは、去年の天皇杯の時も話さなかったから、あの時(98年6月2日、岡田監督に部屋に呼ばれてフランスW杯代表メンバーから外れたことを告げられた日)以来だね。頑張っているなとか、そんなことを言われたけど、詳しいことは岡田さんに聞いてください。次の柏戦は当然、厳しい戦いになる。その間にナビスコ杯もあるから、いい準備をして次につなげていきたい」 神戸・川勝良一監督「0−0と、120分やって最終的には点がとれなかったが、前節に比べるとDFから攻撃に参加していくという厚みが出てきた。ボールを奪った選手が起点になって、攻撃をするという意識で出来たと思う。ただ、3分の2まで入り込んでからの崩し、攻め手がなかったことを修正していく必要がある。今日は相手が3バックでこちらの2トップについていたので、(2列目の)ダニエルがフリーになる場面が多かった。そこで一度、外にふって、外から中にいけばよかったのだが、センターがあいていたので、そのまま中にいってしまった。今日のダニエルは運動量はいつも通り多かったが、ラストパスの精度が低かった」 札幌・岡田武史監督「特に後半は、相手に押されて厳しい中で、選手が集中を切らさずよくやった。山瀬を代えれば(84分に伊藤優津樹と交代)攻撃力が落ちることはわかっていたが、アウェイだったこともあって、守備を優先した。アウェイので勝ち点1は大きいし、もしかす るとこの勝ち点1が、あとあと効いてくるかもしれない。(試合後カズと話していたが、という質問に対し)元気そうだね、お互い頑張ろうと話した。今日は内容的にはそれほどよくなかったが、1試合ですべてを判断できるわけではない。アウェイだったし、これでだめだというわけでもない。来週はカップ戦もあって、今日の120分で疲れている選手もいると思うので、コンディションを見ながらメンバーを決めていきたい。(3勝1敗1分けという)成績については、まさに勝ち点をもぎとっているという感じ。まだ5試合だから何とも言えないが、とにかくホームでは勝ち点3をとるつもりでやる。このリーグは、混戦になりそうなので、1つ落とすとガクッと順位を落とす可能性がある から、1試合1試合大切に戦っていきたい」
「そんなヤツではない」 無得点での引き分けでに終わったこともあり、試合後は98年6月、フランスW杯を前にしたメンバー登録で当時の岡田・代表監督に外された三浦と、岡田監督の「ニアミス」に注目が集まった。 「話をしたのは、あのとき部屋に呼ばれて以来だね。内容? 岡田さんに聞いてよ。でもがんばっているな、と言う話をしていたね」
「アイロンのかかったシャツ」
神戸は現在、チームが少しずつではあるが安定度を増している状態にある。守備から崩れることがないよう、先制点を奪われることがないよう、サントス、また望月重良が中盤を固めることから作るために、どうしても前線へのボールが入りにくい状態になるわけだ。 そんな中で、望月も「今はチームが安定感を覚えていくときだし、攻撃では難しい面もあるが、まずは守備でしっかりした流れを作らないと」と役割を認識し、声で選手全員を見事にコントロールするサントスもまた「1試合ずつ、良くはなっている」と話す。 「我慢強くやらないといけないということだね。チーム全体の今の状態を考えれば、今ボールが来ない時間帯があったとしても覚悟の上だから」 同時にさらに精度が増したのは、触らない時間が長いにも関わらず、ミスというものを全くしない点だ。この試合でも1本だけ、後ろからボールを取られたが、タッチも含めて、ボールを奪われるミスをすることがない、極めて正確なポストプレーをさり気なく続けていた。こうしたプレーは同時に味方に対して「安心感」、三浦自身の表現ならば「味方への丁寧さ」を携えている。 おそらくコンディションの良さ、自信、余裕、すべて整っているのだろう。得点は奪えないが、奪うための準備は常にできている。正確で、丁寧で、まるで、パリっとアイロンのかかったシャツのような、「折り目正しさ」というものが存在したように思う。
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