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ジュビロ磐田×FC東京
風邪で4人が体調を崩し、また疲労もある中、前半はパスミス、連携の合わないプレーに苦しみ、逆に東京はゴール前に高いボールを上げ走り込むなどの猛攻撃で磐田を揺さぶろうとした。 前半29分、膠着状態に入りかけたところで、磐田は、FW中山雅史、高原直泰が奇襲に出る。東京のGK土肥洋一がボールを蹴り出そうとする瞬間に、FWの中山がラッシュ。中山のこのラッシュにボールコントロールをミスした土肥のパスを、すかさずフォローに入った高原が拾ってこれをドリブルでゴール前まで持ち込んで土肥のファールを誘う。これがPKとなって、服部年宏が落ち着いて決めて先制。結果的には、これが虎の子となって、磐田は後半も「勝つサッカー」に徹して、苦しい中での白星をもぎ取った。 これで開幕3連勝とJリーグでただ1チーム開幕ダッシュを決め、首位を堅持。来週は4日にナビスコ杯、7日は鹿島戦、さらに日本代表に選ばれれば再び9、10日とミニキャンプに招集されるなど、チャンピオンチームの苦悩が続く。どん底で得た白星は、勝ち点3以上の価値を持つ勝利となった。
17日の広島戦(4-1)に続いてPKを決めたゲームキャプテンの服部「悪い試合なら悪いなりに勝てたことだけが収穫の試合だった。東京は、ラグビーのように強い風の中でハイパントみたいなのをガンガンあげてくるすさまじい攻撃で、後半はDFも耐える格好になった。フランスから帰国して中4日のゲームだったが、緊張感のためかそうコンディショニングを崩さなかったのが、個人的には良かったと思う」 体を張った守備を見せ、チームをリードした名波浩「FC東京は非常に鍛えられたチームで最後まで攻めてきていて(磐田が)主導権を握り続けたということはないが、勝つサッカーをまっとうできたとは思う。今週、来週もコンディション的には厳しい試合が続くけれど、常に勝っていけば、内容がともなってくる。FW陣が(この日はフリーを外す場面があったために)もっと早く結果を出す(取れるときに得点をしておくという意味)ことだと思う。きょうは非常に寒い中で(サポーターには)応援してもらった。今後もがんばりたい」 守備からチャンスメークした中山「(鼻炎と風邪気味で)走った後に咳き込むのが苦しかった。なんとか止めたかったんだが……。あの場面は、スライディングしてキーパーをびびらそうと思った。タカ(高原のこと)があそこでついて来てくれていたのは見えなかったが、あのお陰で無駄追いをせずに済んだし、(やろうとした意図を高原が理解してくれていたのだとしたら)それはそれですばらしい連携だと思う。(名波が結果を早く出すこと、とコメントしたことについて)そう、チャンスもあったし追加点は取れた。その意味では情けない」 昨年、顔面骨折をした因縁のカードで先制点をお膳立てした高原「その話を気にする必要はないし、考えることもなかた。勝ったことは良かったと思う。あの場面ではGKがいいポジションを取っていたので、コースがないと思い、切り替えした。中山さんとのコンビネーションでは今日が一番良かったと思う。この1、2試合目はなかなかうまく噛合わなかったが、これから去年のセカンドステージのように精度を高めたい。磐田にいる限り、これからも日程の厳しさは続く。移動する辛さなんて言っていられない」
「体を張るとはどういうことか」
受けたインパクトの大きさに関係者も選手も、多くの材料を整理できないまま迎えたこの3節で、最悪と見えたあの試合にそれでも救いともいえる、「光明」があったことを、名波、服部は言葉以上の説得力で示したのではないか。「体を張ったプレー」の存在である。 前半、後半を通じて、名波は一体何度スライディングを試み、ボールを奪い、あるいはボールを奪い返しただろう。主にカウントしたものだけでも、15本はある。服部は、相手の再三の「ハイパント攻撃」を体で防ぎ、随所に効果的なスラディングを見せた。 2人は、フランス戦でも、実に果敢にスライディングをしてチャンレジを繰り返した。特に、体のない名波がジダン、アンリといった選手に対抗できていた理由は、体を張ってのスライディングだったことは、実に逆説的な結論だったともいえる。 「そのことはもの凄く意識してプレーするようになったと思うし、きょうもそれは忘れなかった。体を張ることは、まず小手先うんぬんじゃなくてやらねばならないと思う」 試合後、服部は輪を離れた所で言葉に力を込めていた。 名波のプレーの熟成について表現を変えるならば、「献身」とも言える。彼がこのところ試合で挑む「スライディング」には強い哲学が伴っているかのようでもある。代表のユニホームを着てからの名波のプレーはこうした傾向にあったが、イタリアでプレーしてからはそれが顕著になった。 過去2度、代表が手も足も出ずに完封負けを喫した国際試合を思い出す。パラグアイで0-4で敗れた試合も、95年にブラジルに0-3とイングランド遠征でひねられた試合も、スライディングさえできないような距離でプレーを許し、体を張ることさえできなかった。さらに、スライディングで体を張って、泥、雨水にまみれても挑もうという気迫も足りなかったのかもしれない。 この日の試合自体、何ということはなかった。内容も特筆するようなものは、ない。しかし、2人のベテランが肉体的な疲労をものともせずに見せ続けたスライディングに、フランスでの大敗から再スタートを切るに十分な材料があった。そう確信する。
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