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「強化パーツの”強化”とは?」 の巻

 述べ訪問者 :  (since 06, Sep./2004) 

 
 1.ネタ振り
    ↓
 2.お題目
    ↓
 3.私的考察
    ↓
 4.独り言
    ↓
 5.まとめ
    ↓
 6.あとがき
    ↓
 7.結論(再掲)
 
 
 1.ネタ振り
アフターパーツマーケットでしばしば目にする 「強化品」 には、何が 「強化」 されているのか、判りにくい ものが多い。中には、「どんな性能が」 「何と較べて」 強化されたのか、まったく判らない ものもある。

例えば 「強化ボルト」「強化AT」「強化ATF」
強化ボルトや強化AT、はたまた強化ATFって、一体何なのだろうか?
ボルトの何が強化されたのか? ミッションの何が強化されたのか? フルードの何が強化されたのか?

また、強化と言うからには 比較対象がある わけで、仮にその比較対象が純正部品だとすると、メーカーが課した各種耐久試験(※注1)クリア したであろう純正部品に対して、何がどう強化されているのだろうか。
 

(※注1):各種耐久試験
自動車メーカーが社内で実施する試験以外にも、部品供給メーカーが自前で行う場合もある。
通常は 単体試験 → Assy試験 → 実車試験 などというように、個々の部品レベルからシステムや系、そして実車での試験へと段階が進んでいく。具体的には、強度試験(回転曲げ、疲労など)、シール試験(面圧、漏れ、にじみなど)、冷熱試験(ヒートショックなど)、防錆試験(被水、塩害、暴露など)、その他、数えられないほどの各種機能&耐久信頼性確認試験があるはずだ。
 
 2.お題目
強度・剛性パーツの場合は、見た目である程度の 向上効果(効能)の有無”推測” できそうな場合 もある(※注2)

しかしながら、オイルや添加剤、ガソリン改質剤、燃焼改善剤、マグネットの類、アーシングやコンデンサの類などは、外から見えない・作用が分かりにくい・効果があっても遅効性・さらには改善原理自体がまったく不明な場合もあって、消費者には何が何だかよく判らない。いや、あえて内容を判りにくくしているのでは? とさえ思える 「強化パーツ」 も少なくない。

これらは、ユーザーの間で 言葉だけが一人歩き してしまったような ”強化品” の一例であると思う。

そして何より不透明なのは、(仮に百歩譲って、「強化」 されたことが事実だとしても) こうした いわゆる 「強化」 パーツによって 次に得られる効果が何であるのか。結局、それを使ったら、次にどんな良いことが起こるのか。実際に享受できるメリットが何であるのか・・・について 明確ではない ことも、大きな問題であろう。

ところが世の中には、自分のクルマの使い方では何ら 純正品でも問題無い のに、そのような 「強化品」 を ありがたがって 購入したり装着したがる人々も多いようだ。

さらに言うと、ショップもそういった人々を うまく取り込むと商売が成立する(※注3) のを良く実感し、「強化○○」 「強化△△」「水平対向専用○○」、はたまた 「謎○○」 「謎△△」 なる 怪しげなパーツ(※注4) を販売しているように私には感じられてならない。

今回のお題目は、このへん(↑)について考えてみたいと思う。
 

(※注2):推測できそうな場合
材質・重量・形状・隅Rの大きさ・穴の配置・表面処理・加工状況・溶接状態などを勘案すると、可能な場合がある。

(※注3):うまく取り込むと〜
まるで一種の宗教団体か? と思わせるような、怪しいショップもあると聞く。

(※注4):怪しげなパーツ
それにしても、自社のお客様に提供するパーツに対して 「謎○○」 とは、よくもネーミングできるものだ。結局それは 「お客様主義」 ではなく、単なるショップの都合による 「自己主義」 じゃねぇのか?
 

 3.私的考察
世の中の、特にスバル車ユーザーの間で もてはやされている、いわゆる 「強化品」 には、実に不明瞭な部分が多いと思う。どんな部分がどのように不明瞭であるのか、ザッと挙げてみよう。あくまでも思いつくままに、ザッとである。

<↓そもそも 「強化ボルト」 って、一体何だ?>

◎材質そのものが強化されているのか?
  (鋼材? SUS材? インコネル? 強度区分のランクアップ?)
金属組織が強化 (※注5) されているのか?
  (組織の微細化? 鋳巣の排除? 介在物フリー化? 結晶方向性改良?)
添加剤 (※注6) が強化されているのか?
  (Si 配合率アップ? Mn 配合率アップ?)

疲労強度 (※注7) が強化されているのか?
  (有限寿命→10の7乗回以上の寿命化?)
◎表面処理が施されているのか?
  (軟窒化? ショットピーニング? メッキ? 防錆? T5処理(※注8)?)

環境性能 (※注9) が強化されているのか?
  (脱クロム化? リサイクル性向上?)
◎製造方法が強化されているのか?
  (サイクルタイムの減少? 規格公差の縮小? 歩留まりの低減?)
◎製品コストが強化されているのか?
  (末端販売価格の低減?)

<↓そもそも 「強化AT」 って、一体何だ?>

◎内部部品の材質が強化されているのか?
  (クラッチフェーシング材の変更? 気孔率の改善? 摩耗寿命の向上?)
◎製品構造が強化されているのか?
  (オイルグルーブの改良? 多板クラッチの枚数増? 油圧アップ?)
◎油圧回路が強化されているのか?
  (各部 クリアランスの縮小 (※注10)
   プリチャージ性向上? シール材の寿命拡大?)

ATの電子制御ユニット (※注11) が強化されているのか?
  (TCU=AT用ECUの学習領域拡大?
   ロジック&定数の最適化? プログラム応答性向上?)

◎ケースやハウジングの金属組織が強化されているのか?
  (組織の微細化? 添加物付加? 介在物レス化?)
◎ケースやハウジングの寸法や材質が強化されているのか?
  (肉厚アップ? 補剛リブ増強? 形状変更? アルミ→鋳鉄化?)

◎製造方法が強化されているのか?
  (サイクルタイムの減少、規格公差の縮小、歩留まりの低減など)
◎製品コストが強化されているのか?
  (末端販売価格の低減など)
 

(※注5):金属組織が強化
一般に、組織が粗大化すると強度も低下する傾向にある。また、結晶構造が偏っていたり、内部に巣や介在物(異物)があると、表面からではなくそこがクラックの起点となってしまうこともある。

(※注6):添加剤
添加剤の配合割合によって、疲労強度や高温耐力は大きく異なってくる。素材メーカーは、この部分に関する特許を持っていることもあり、重要な分野である。

(※注7): 疲労強度
一般の金属材料では、S−Nカーブで時間が10の7乗(サイクル)以上となる入力荷重領域では、無限寿命である。

(※注8):T5処理
アルミボルトを想定。

(※注9):環境性能
全世界的に、六価クロムや鉛は、製造工程を含めて使われない動向(取り決め)となっている。

(※注10):クリアランスの縮小
油圧回路内の各部クリアランスが縮小すると、漏れ油量が減って効率(応答性)の向上につながる余地がある。

(※注11): ATの電子制御ユニット
制御のマッチングの出来如何によってATの変速品質(ショック、ラグなど)が決まると言っても過言ではない。
 

 4.独り言
極端な話、純正部品に 防錆剤 を塗って
   「ノーマルよりサビにくくしました(ので強化品です)!」
ってコトでパーツを売ったとしても、確かに強化品 とも言えるわけだ。

中には何がどう強化されたのか、比較数値を持たずに漠然と ”強化品” と称して売られているパーツも多々あると思われる。そんなパーツは 「なんちゃって強化パーツ」 だよね。

あるいは、ここで (お客様の立場から販売経営者の立場へと) 見方を変えると、大した原価でもないものをイメージ商法よろしく高額で売りつけることが可能な、お店側に多大な利益をもたらすパーツは 「売り上げ利益・強化パーツ」 ってことになるよね。

買い手をダマし、売り手が儲かるパーツも、確かに 「商売繁盛強化パーツ」 と言えよう。・・・これじゃ、消費者がダマされていると言う点で、いわゆる ”壺商法(※注12)” など大して変わりがない。

もちろん、ちゃんと目的が伴った、まっとうな強化パーツもある (だろう) ことは否定しない。

メーカー純正品、あるいは 同様な他社ライバル品 に対し、実際に機能試験や耐久信頼性試験を行って 定量的な改善結果 が得られた強化品もあると思うが、単なる宣伝文句で (売れりゃ良い的に) 飾り立てた 「なんちゃって強化品」 の方が多いような気がしてならない。

商品パッケージや取扱説明書に 強化内容が明示されていない ので、買う側も 判断に苦しむ 場合が多い。雑誌記事も、参考にはなっても 決定打にはなりにくい。誤認記事も多い(苦笑)。

だから、何がどう強化されているのか中身がよく分からないのに、言葉の持つ響きのみで 飛びついて 「(自称)強化パーツ」 を買おうとする人が、オレにはまったく信じられない。ショップやメディア (雑誌記事) に踊らされているだけじゃないのか?
 

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・・・でもまぁ、極論すれば、仮に買う人にとって 「強化」 の意味がまるで分からなかったとしても、それを装着する (or 単に購入する) ことで 「幸せ」 になれるならば、それも 「アリ」 かも・・・と思うようになりましたよ、ええ。ハッピーなら、他人が口を挟む必要も無いんじゃないかってね。

装着することで、「幸せ度・(心の)満足度」 が強化されるパーツ。それも確かに ”強化パーツ” なのかも。

いや、たとえ自分のクルマに装着しなくても、単に買って 手元に置いておくだけ でも幸せになれるパーツの方が、貢献度は高いかな。何せ、わざわざ工賃や工数をかけて装着しなくっても満足が得られるのだから、こんなお手軽な 「強化パーツ」 は他には無いよね。・・・もちろん、そういった場合は、クルマにとっての ”機能的な” 強化度合いは不明だ (というか、まったく無い) けれどもね。

ただし! 自分がハッピーになれるからといって、そのワケの分からない、いわゆる ”強化品” を 他人に盲目的に勧めるのだけは勘弁してくれ って感じだな。もしも提供するなら、笑いのネタ として情報提供するだけにとどめておいて欲しい。

たとえば
   「私はこの商品が信じられなかったけど、どうしても実際に試してみたくて
    結局買っちゃった。・・・でも案の定、全然効果が無かったよ、ダハハ。
    いや〜、もったいないから 分解して中身を見ちゃいました
    想像を超えた チャチさ加減 には驚きましたよ、えぇ。良い勉強になりました
    皆さんも、驚きの中身をご体験しては?」
などという具合だ。

そのような 「笑いのネタ」、「都市伝説(※注13) としての嘲笑の対象」 として以外で他人に真剣に購入を勧めるのならば、その具体的根拠もいっしょに提示すべきである。が、そういう輩は往々にして 宗教じみた説明 に走るので、やっぱり ”強化品” を他人に盲目的に勧めるのは勘弁してくれって感じだな、コリャ。

さらに言うと、いくら ”うまい商売” になるからといって、理論的根拠や比較数値を持たず、具体的な説明も無しに売り込もうとするショップも 淘汰されてほしい と切に思う。これと同様なことは、「強化○○」 に限らず、もっと色々なパーツについても言えるのだけどね。

これを読んで、思い当たるフシのある人、ない人、カヤの外の人、内の人、その他色々な人がいると思う。
中には気分を害する人も多々いるかもしれないが、上記は私が日頃から強く思っていることであり、本当に素直な感想なのだ。
 

(※注12):壺商法
種別としては、いわゆる霊感商法の一つにカウントされる。詳細については、
「兵庫県警察」 サイト内の
「生活安全情報-悪質商法−手口」
あるいは 「神奈川県警察」 のサイト内の
「神奈川県警/悪質商法にご用心」
などといったページを参照のこと。

(※注13):都市伝説
「明確な根拠が無いのに、あたかも事実のように人々に伝えられている内容」 のこと。もちろん都市部以外(=地方)で伝聞されていることも含む。
当サイトの ”なぐり書き” の中では、
  「WPC加工の都市伝説」 の巻
を例として取り上げている。

 5.まとめ
売り手は、売ろうとしている ”自称” 強化パーツが、最低でも
 (1)比較対象の明示 ・・・ 一体、他の何に対して強化されているのか
 (2)強化内容の明示 ・・・ どんな機能や性能が強化されているのか
 (3)メカニズムの明示 ・・・ どういった理論・原理・メカニズムで強化されるのか
を示さなければならない。

特に、(3)の強化メカニズムを示す際には、売り手側の一方的な理論は避けて、普遍的な原理でわかりやすく説明される ことが望まれる。例えば、「回転する棒に からみつくオイル」 などは、こうした 解りにくい例(※注14) の一つだ。他にも冒頭でちらっと例を出したような、「水平対向専用オイル」 なんてのも、こうした例 に挙げられると思う (※注15)

逆に、買い手は、自分が欲しいと思う部品について、「何と較べて、どうして」 強化されるのか、その理由について深く探る ことが望まれる。また、自分が満足している強化品 (プラシーボ効果品を含む) を、根拠無く他人に勧めてもいけない。

ただし、「オレは欲しくなったら、とにかく絶対に手に入れないと我慢できない。散財しても気にしない。」 という精神的幼児は、この限りではない。買いたくなったら買うが良い・・・こんなヤツは、SEXしたくなったから シちゃった、あの時ガマン出来なかったんだ・・・とか言って、あとで ”出来ちゃった婚” するのがオチだろう。とは言い過ぎか。
 

(※注14):解りにくい
「非ニュートン系」 自体は定義があるが、それでは実際にその理論(というより、単なる区分だなコリャ)が、直接その製品にどのように作用しているのかの説明が、ブッ飛んでいるように感じられる。したがって、その製品によって得られるであろう改善効果の説明もウソくさく感じられてしまう。

(※注15):こうした例
「水平対向エンジンは、ピストンが水平に寝ているのでシリンダーの下側が摩耗しやすく・・・云々・・・。」 などという説明は、実働時 (=暖機後+筒内圧がかかった状態+慣性力が働いた状態、etc.) の動的な挙動を全然反映していないと考えられるので、煽動広告の一種に含めても良いのではないか。

 6.あとがき
前述のごとく、私個人としては、
   ◎アフターパーツメーカーには、「強化」 の具体的内容の明示、
   ◎マーケッティング会社には、根拠のない煽動的販売広告の自制、
   ◎雑誌媒体や我々ユーザーには、製品や言葉の意味を深く考えてみること
を期待したいが、これらはいずれも 実現がなかなか難しい。理由は簡単だ。

   ◎アフターパーツメーカーは、営利追求企業であってボランティア団体ではない。
   ◎雑誌社は、商品や広告スポンサーの顔を潰すような批判記事を載せにくい。

だから、我々消費者が賢くなって、消費者主体の 正しい情報我々自身で発信する ことが、実は 真実への近道 (※注16)   となるのだ。

いわゆる 「強化品」 に騙(だま)されてはいけない。
いわゆる 「強化品」 を盲目的に他人に勧めてもいけない。

満足するヤツは、自分一人で満足していろ!
(うまい話は百害あって一理無し。買う前に 「なぜ」「どうして」 強化になるのか考えろ!)

最後に、もしも君たちの身近で、いわゆる 「強化品」 を手にして幸せそうにしているヤツらを見かけた場合、諭(さと)すように考えを仕向ける のは良いとしても、決して本人を前に嘲笑してはいけない。逆恨みされるのがオチである。
 

(※注16):真実への近道
ユーザーひとりひとりの声がメーカーに届き、そして反映され、明日の製品の品質向上へとつながっていくことは確実にある、と考える。逆に、お客様第一主義(CS)を重要視するメーカーには、少なくとも、そうした姿勢が求められる。でなければ、今後の世の中で勝ち残っていけない。
 7.結論(再掲)
ということで、再度、結論を述べておこう。

いわゆる 「強化品」 で、装着対象車の機能や
信頼性が本当に強化されることは少ない。
  ♪うむ、間違いない。
 

その多くは、単に販売店の売上げを強化させる
だけの 「なんちゃって強化パーツ」 ではないか?
  ♪うむ、間違いない。
 
さらに、そんな 「強化パーツ」 を有り難がって
真っ先に入手するスバヲタに限って、装着せずに
結局ヤフオク行き としてしまうことが多い。
  ♪うむ、間違いない。
 

※当サイトは独自の視点から 「都市伝説 撲滅運動」 を推進してまいります。
 

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