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SEVマーシャル850GTを後退灯として活用する
 
〜 付録 : 日産エルグランドの純正オプション後退灯・リコール問題とは 〜

このページでは、絶版のマーシャル850GTフォグランプを後退灯 (バックアップランプ) として
レガシィに活用する事例を紹介するとともに、日産エルグランドの後付け純正オプション部品
におけるリコール問題 (国土交通省の後退灯に関する解釈) についても 触れるものである。

マーシャルブランドの補助灯を、次の3ページに分けて紹介しています(;マーシャル三部作)。
 
 ◎第一部 : SEV マーシャル880フォグランプ の紹介 & HID化の計画 → こちら
 ◎第二部 : SEV マーシャル889ドライビングランプ & 他バリエーションの紹介 → こちら
 ◎第三部 : SEV マーシャル850GT をバックアップランプとして活用するの巻  → (このページ)
 
  このページの構成(もくじ);
 
   1.まえがき(その3)
   2.SEVマーシャル850GTについて
   3.SEVマーシャル850GTを後退灯として活用する
   4.使用インプレッション
   5.日産エルグランドの純正オプション後退灯・リコール問題とは
   6.国土交通省の後退灯に関する解釈
   7.まとめ
   8.あとがき
延べ訪問者数;
 

●2004-03-17 : 新製
●2004-03-21 : 校正、仮公開
●2004-03-22 : 正式公開

【画像1】 SEVマーシャル850GT(ホワイトレンズ・フォグカット)を後退灯として設置した例
SEV マーシャル850GT リヤバンパー下に設置した例 設置部分の拡大図(点灯状態)
 

1.まえがき(その3)
 

以下、前ページ(第二部) : 「SEVマーシャル889ドライビングランプ&他バリエーションの紹介」 の まえがき(その2) からの続き。各ページの 「まえがき」 部分は、連作 (3つでひとつ) になっているのだ。

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前ページ 「SEVマーシャル889ドライビングランプ&他バリエーション (模倣品) の紹介」 の第6章 : まとめ (あとがき) の中で、私は 「マーシャルのおかげで色々な ”人とのつながり” を実感した。」 と述べた。実はこのページで紹介する850GT (角形フォグカット) に関しても、こうした ”人とのつながり (好意)” が縁で入手できたようなものである。

その詳細過程については割愛するが、要するに、絶版品であっても入手のためにそれなりの努力をすれば、その努力に応じた結果がついてくるように思われるのだ。

さてこの850GTであるが、結論から述べると、使用用途を 「後退灯(バックアップランプ)」 として定め、レガシィに装着している。実はもともと私は、車庫入れなど夜間の後退時に、純正のバックアップランプだけでは光量が不足気味だと感じており、視認性・安全性確保のためにもバックアップランプの光量を増やしたいと考えていたのだ。

そういった意味では、現行最新型であるBP型レガシィでメーカーオプションのクリアビューパックを装着した車両は、もともと2つあった後退灯のうちの一つ (右側) がLED式リヤフォグランプに置換されてしまい、残る一つ (左側) しか後退灯として光らなくなるため、いかがなものか と思っている。後続車に自車の存在を知らせるリヤフォグも、確かに被視認性という安全性の向上には有効だが、果たしてリヤフォグが必要なほどの濃霧が発生する頻度と、普段の日常用途でギヤをリバースに入れ後退灯が作動する頻度とでは、どちらが多いのか・・・と考えると、後退灯が一つしか無いというのはちょっと考え物だと感じてしまう。これではまるでひと昔前の軽トラと同等ではないか!

【参考画像】 BP型レガシィワゴンのLEDテールランプ(クリアビューパック装着車)
BP型レガシィ・クリアビューパック装着車 LEDリヤフォグの拡大図。外側部分は光らないという。

さてその残った後退灯であるが、ナンバープレートよりも高い位置・・・リヤウィンドウの下端に近い部分に位置していることもあり、わざわざ車両下方の路面を間近で照らすような造りにはなっていないと思われるので、自車 (ドライバー) にとってみると、案外この後退灯は、デザイン優先で夜間の使い勝手 (視認性) に劣るシロモノとして認識されているかも知れない。メーカーの評価部隊に、その実用性の可否判断基準を聞いてみたいものである。

さて、話を光量アップの話題に戻そう。

市販のバックアップランプ用電球の中には、消費電力(W数)が従来のまま、より明るく光る、いわゆる ”高効率タイプ” の置換品も販売されている。だが、それらの改善策は純正互換という物理的な制約条件下でのものであり、残念ながら、それ単独で私が満足できるまでに光量アップを果たすのは困難であると思われた。それに、単に光量を増やすだけなら、ブレーキを踏みながらバックさせれば良いのである。後退灯に加えてブレーキランプ (制動灯) も光ってくれるのだから。私の記憶によると、市販のアイディア商品で、後退時には自動で強制的にブレーキランプも同時点灯させるキットが存在していたように思う。

そういった状況を勘案し、一番手っ取り早く確実な方法を・・・ということで、結局、外付けライトの追加による光量アシストという手段を選択することにした。今回手に入れた850GTは、そうしたアシストランプとしての役割を果たすようなマーシャルの車両セッティング例の紹介である。

(※重要) : なお、法規 (道路運送車両法) への対応については後述する。
 

2.SEVマーシャル850GTについて
 

マーシャル850GTの外観は、次に示す通り。

【画像2】 SEVマーシャル850GT(ホワイトレンズ・フォグカット)の外観
猫目のエンブレムも健在 背面はこんな感じ

大きさは 縦×横×奥行で 約 110mm×約 180mm×約 65mm である。
マウントボルトが首振り式 (関節のように自由に動く) となっており、照射角度の調整が可能であること、配線は+(プラス)側1本のみとなっていること、そして正面に猫目のエンブレムが付いていることなど、まぎれもなく他のマーシャルシリーズと同様の特徴を、この850GTも受け継いでいることが分かる。

【画像3】 SEVマーシャル850GTの構成部品、および製造関連の表記シール
850GTの構成パーツ
純正品であることを示すと思われる、ステッカー

フロントビューを引き締めている、正面周囲の銀色の枠組みは、実は金属製ではなくプラスチック製の外枠にメッキ処理を施したものだ。だからハウジング:バルブボディ (←こちらは金属製) 本体に固定させる際には、そのタッピングねじを強く締め込むことは (強度上) 避けるべきである。

そのメッキされた外枠を取り外すと、簡単に内部が分解できる。マーシャルに限らず、この手の補助灯 (と言うより、この時代の補助灯) は反射板に曇りや錆などが発生して反射効率が低下した場合は、電球を交換するのと同じ要領で反射板も交換することになる。オークションでは、レンズ無しの反射板のみでの出品も時おりあるから、過酷な環境で永く使うのであれば、こうしたパーツも消耗品と心得てパーツストックしておくのも手だろう。

・・・と、ページつぶしの能書きはこれくらいにして(爆)、以下、早速実際の装着作業風景についてごく簡単に紹介したい。
 

3.SEVマーシャル850GTを後退灯として設置する
 

まず最初に検討すべきことは、どこに設置するか?ということである。今回は (左右2個セットではなく) 1個のみの設置である。

バンパーの中に埋め込む・・・という手もあるにはあるのだが、正直に言って今回はそこまで工数をかけるつもりはない。実用上の視認性改善効果が同様に得られるなら、なるべく手間をかけず簡単に設置できる方が良い。その方が、車両を下取りに出す際、ノーマル化する作業も少なくて済む。

よって、マウント方式は、バンパー周辺から吊り下げる方式でいくことにした。大まかに考えると、車体左側、中央、右側、の3部位が候補として上げられる。なるべくドライバーの死角を減らす・・・という目的に対して得られる効果を考え、結局、車体左側 (運転席・・・ドライバーの視線から見た、車両の対角線側) に設置することにした。

もしも車体の右側に設置した場合、車体下部の右側から左方向を照らし出すこととなるが、もともと右側は、ドライバーが後方に振り向けば直接目視確認できる部位であるため、それよりもドライバーの目線上で死角となりやすいであろう対角線方向をメインに照らせるよう、リヤ左側に設置させるのが良いと判断したためだ。

実際には、マフラーにあまり接近しないようにする (接近してしまうと、路面を照らす際、近接物のマフラーのが映し出されることとなってしまうためである。例えば、マフラーの左側に設置した場合、マフラーがマーシャルの前を遮(さえぎ)る形となり、車両右側への配光がNGである。また、マフラーからの熱害を避けるよう考慮した結果でもある)。

そういった観点から、レガシィのバンパー下部やアンダーパネルをのぞき見ると、おお! 車体の左側、マフラーの右側に、ちょうど利用して下さいという感じで車体に (利用されていない) 穴があいているではないか。マーシャルフォグランプの現物を用いて位置を仮合わせしてみると、なかなか良い感じであった。そこで 【画像4】 に示すように、市販のアングル材をブラケット代わりとし、その穴を利用して車体に固定させることにした。

【画像4】 ブラケットを介し、リヤバンパー根元付近のフレームに固定設置
リヤバンパー根元付近のフレームに固定 仮設置したときの様子(未配線)

設置の際の注意点としては、

 ◎実用上、駐車場の車輪止めに引っかからない高さに設置する。
 ◎路面照射の際、マフラーなど近接物の影ができないよう位置調整する。
 ◎ハーネスの防水をしっかりする。

といった点であろうか。
なお、バックアップランプとして使用するためには、マーシャルの+側の素線をバックアップランプ回路から分岐配線させなければならない。つまり、シフトレバーをリバース (バック) に入れたときに+12Vが通電する回路に結線させる必要がある (−側の素線は、ボディアースでOK)。

BGレガシィの電気配線図集にてバックアップランプ回路を確認すると、テールランプ右側のコネクタから分岐させる方法が簡単であると判断できた。マーシャルの+側の素線を延長し、ここに接続した。以下はその作業風景である。

【画像5】 テールランプ右側のコネクタから後退灯の信号を分岐させる
右テールランプの配線から分岐させる コネクタなど配線を引き抜いたところ コネクタの後退灯回路から分岐する

なお、アンダーフロアから車体内への配線引き込み方法については、スペアタイヤ収納部に設けられている水抜き用の穴を利用して引き込んだ。ここは、通常はグロメット (ゴムキャップ) でふさがれている部分である。また、この 「水抜き穴〜マーシャル本体」 の間では、配線が若干長くなるため、たるまないようにタイラップなどで一部ボディに固定している箇所もあることを、念のため付け加えておく。

こうして無事にマーシャル850GTがレガシィのリヤバンパー下に設置された。あとは、夜になって光軸の微調整を行えば良い。
 

4.使用インプレッション
 

夜になるのを待つ。辺りが暗くなる。いよいよ光軸の微調整だ。マーシャル850GTを点灯させ、ちょうど良い方向を照らし出すよう上下左右(首振り)方向を定め、ブラケットに本固定する。

次に運転席に座り、ギヤをリバースにシフトし、実際に車庫入れをしてみた。

【画像6】 リバースギヤ連動で光るマーシャル850GTの様子
明るく光るマーシャル850GT

おおお!バックミラー越しであっても、後方が十分に明るく照らし出されていることが実感できた。それでいて、必要以上に明るくなり過ぎていないことも確認。850GTは、もともとレンズがフォグカットなだけあって、たとえ1個の設置であっても、路面を照らし出す左右方向への広がり具合はさすがである。

これで、後続車側からの被視認性も上がることだろう。そして何より、当初の目的である深夜の車庫入れなどの際にも、後方視界に対する安心感が得られる。・・・結果は期待通りで上々の仕上がりとなったと言える。
 

5.日産エルグランドの純正オプション後退灯
   に関するリコール問題とは
 

さてここで今回、レガシィやマーシャルとはまったく関係が無いと思われる、日産エルグランドの純正オプションに関するリコール問題を突然取り上げるのはなぜか?

・・・それは、日産エルグランド (とセレナ) に設定された純正 後付けオプションの 「バックランプスポット (照明灯)」 が、「後退灯の個数は2個以下」 と定めた保安基準に適合しないと判断されてしまい、改善措置 (実質的には改悪か?) を取らなければならないという憂き目に遭った・・・ということがあったからだ。

【画像7】 日産エルグランドの純正オプション ”バックランプスポット” とは
 

elgrand_完2.gif (11593 バイト)

要するに、後退灯には 「2個以下のこと」 という保安基準が存在するわけだ。しかし、日産エルグランドの場合、かなり微妙な判断が加わったことから、あえてここでも紹介することにしたものである。

まずは、リコールの親記事(ソース)を以下に示す。

<国土交通省 ・ 平成15年12月2日>
 
◎日産エルグランド後部視認向上用バックランプスポットの自主改善の実施について
  → http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/09/091202_.html
◎該当箇所の説明図
  → http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/09/091202/01.pdf

上記URLから、関連部分を以下に一部引用する(引用部分は、一字一句変えず)。

<↓引用、ここから↓>

平成15年12月2日 

自動車交通局技術安全部審査課 
リコール対策室 

 本日、日産自動車株式会社及び株式会社アルティアより、後付装置として株式会社アルティアが設計・製造し、日産自動車株式会社がディーラーオプションとして販売したバックランプスポット(後退灯)について、道路運送車両の保安基準に不適合になると解釈されたことから、自主的に市場措置を実施することとした旨、国土交通省に報告がありました。

不具合の内容
 ディーラーオプション部品として販売された、バックランプスポットを取り付けた場合、同時に点灯する後退灯は2個であるものの、車両に装備されている後退灯と合わせて、灯室数が3個となり、後退灯の個数は2個以下と定めた保安基準に不適合となると解釈されることが判明した。

対策の内容
 全車両、後退灯の灯室数が2個以下となるように、車両左側の後退灯に接続されている電気配線を切断し取り除き、電球の再組み付け防止のため、ソケット部にシーリング材を封入する。

対象製品
 バックランプスポット
 平成9年5月から平成15年9月までの間に販売した約6,150個

<↑引用、ここまで↑>

このように、私が今回後付したマーシャルについても、その目的を後退灯として使用する限りにおいては、日産エルグランドにて取った (取らされた?) 措置と同様な措置を取らなければならないと言う点で、決して他山の石 (無関係) ではないのだ。
 

6.国土交通省の後退灯に関する解釈
 

ここで上記内容を整理しよう。

 ◎対象部品は、ディーラーオプションとして設定された純正後付部品である。
 ◎その部品を装着する場合、同時に点灯する後退灯は2個としていた。
 ◎ところが車両に備わっている後退灯を含めると、灯室数は3個となる。
 ◎点灯数が2個であっても、灯室数が3個あるので保安基準不適合と判断された。

ここで特徴的であるのは、一番最後に示した 「たとえ点灯数が2個であっても、灯室数が3個であればNG」 という判断である。つまり、見かけ上の点灯数だけではなく、構造的な灯室数までもが、判断対象とされるのだ。この判断に対して日産側が取った対応策は、何と

 ◎対象全車両の左側後退灯に接続されている電気配線を切断取り除く
 ◎電球の再組み付け防止のため、ソケット部にシーリング材を封入する。

ぐお〜! ななな何と、配線を切断するのみならず、ソケットにシール材を封入して、電球を未来永劫、物理的に組み込みできないようにまでしなければならないとは・・・。たとえ電球が入っていなくても、構造上灯室と見なされる恐れのある要素については、それを徹底的に排除するという姿勢を示したことになる。何という徹底さ!!非情さであろうか!

よいか、読者諸君、よく考えてみてくれたまえ。

このバックランプスポットは、上記サイトの構成図 (または、【画像7】) を見る限りにおいては、特に車両直後の路面周辺を重点的に照らし出すためのものだ。その取り付けは、ミラーマウント (車両のほぼ最頂部) であること、また配光方向が後続車に向けたものではないことは、誰の目にも明らかだ。つまり、この 「バックランプスポット」 なるものが点灯する場合、その光は上から下方向に、ほぼ垂直方向に照射されるダウンタイプの ”スポット” ライトなのである。よって、(後ろ向きには光らないので) 後続車からの被視認性を期待するべきものではないと考えられる。

【画像7】 問題とされた ”バックランプスポット” の拡大図
問題の日産純正オプション 「バックランプスポット」

一方、車両にもともと備わっている後退灯は、垂直なリヤゲートに埋め込まれているため、車両の後方全体に向かって光を放つものである。つまり、後続車にとっても、「あぁ、あのクルマはバックするんだな。」 と容易に車両の動きを気づかせる効果を合わせ持つものである。

オプションのバックランプスポットを装着したクルマは、今回の ”改善措置” という名の左側後退灯の機能廃止措置を受けた場合、そういった 「後続車に対して、自車がバックしますよ」 という意志動作を他の車両に伝達するための手段を減らされてしまうことになるのだ。そのため、もしも、もともと備わっている車両右側の後退灯の電球が球切れしてしまったなら・・・後続車にとっては、路面垂直方向にしか光らないバックランプスポットを視認することは困難であると思われるので、「エルグランドがバックしてくる」 とは思われず、新たな事故の原因となりかねないと思うのだ。

特に、夜間ならまだしも、明るい昼間だったとすると・・・これは 「改善対策」 ではなく、かえって車両を危険な状態におとしめていることになるのだと考えるのは、私だけでは無いはずだ。

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ところで、世の中には 「悪法も法なり。」 という言葉がある。

歴史上の有名どころでは、徳川第五代将軍・綱吉が定めた 「生類哀れみの令」 という法律がある。要するに、無類の犬好きであった将軍様が、犬畜生を殺生するな、大切にしろ、もしも虐待しようものなら打ち首や獄門にする・・・といった内容で定めた法令であったようだ。言い伝えによると、魚を捕る真似をして投網をしただけでも処罰の対象になったという。生き物を大切にするという心がけは、もちろん大切であるけれど、それが度が過ぎると悪法になる、という好例だ。

今回の日産エルグランドの例にも、同じ様な臭い・・・を感じてしまうのは、私だけではないハズだ。
上記サイトには、

 > <問い合わせ先>
 > 自動車交通局技術安全部審査課
 > リコール対策室
 > (内線42352、42353)
 > TEL:03-5253-8111(代表)

と明記されているので、読者のかたで、もしこの自主改善に関するお上の解釈に関して何かご意見がある方は、上記の 「自動車交通局技術安全部審査課 リコール対策室」 に直接打診してみると良いだろう。
 

7.まとめ
 

絶版の (一部マニアの間では人気の) マーシャル850GT・ホワイトレンズ・フォグカットを後退灯 (バックアップランプ) としてBG型レガシィのリヤバンパー下に設置した様子について、ごくごく簡単に紹介した。当初の目的に対する改善効果は上々で、手間をかけずに設置した割には、なかなか満足のいくものに仕上がったと言えるだろう。

ここでは、取り付け方法 (ブラケットの仕様) や配線分岐方法 (コネクタのピンアサイン) といった個々の特定の情報について述べるよりも、設置するに至るまでの背景や考え方、その後の課題など、より広い (と思われる) 視野に立ち、それらに重点をおいてページを作成したつもりである。

ところで日産エルグランド (とセレナ) のリコールについて触れたのは、このページを作成してサイトに上げようと考えていたときに、ちょうどタイムリーに私のアンテナにその情報が飛び込んで来たためである。メーカー (スバル車と日産車) も取付形態 (純正オプションとDIY自己設置) もまったく異なるが、内包している課題は、実はどちらも同じじゃないか、と。

日産自動車がコネクタをシーリングさせてまで対応したその一件を、そのままこのページで公開することは、実は私自身にとっては冒険であった。なぜならば、メーカーとして社会的な責任を負う企業とクルマ好きの一個人という違いはあっても、保安基準という法規制の前ではどちらも同じ立場であるから、もしも日産が採った対応策を知りながら、自分のクルマに同様の対策をしないとなると、それは確信犯になるのではないか? と、私自身、今なお自問自答しているからである。正直に言うと、私は自分のクルマに標準装備の後退灯について、その電球を抜き取るのは良いとしても、車両コネクタを二度と修復不可能な状態にまで変えたくはない、という気持ちが心の底に残っていることに気づいてしまったのだ。

このページは、日産自動車のリコールの悲哀 (・・・いや、私が勝手に悲哀と思っているだけで、メーカーにとってみれば、至極当たり前の対応をしたまでであるが・・・) について触れていながら、その裏では、実は私の自分自身の行為に対する問いかけともなっているのだ。本来ならば、単なるマーシャル850GTの紹介だけで済ませてハイおしまい! としても良かっただろうが、私の性分からそうすることができなかったのだ。

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それにしても気の毒なのは、エルグランド購入当初、何も知らずに純正オプションのバックランプスポットを装着してしまった一般ユーザーだろう。まさかこのバックランプスポットを装着してしまったせいで、もともと車両についていた本物の後退灯の機能を殺されてしまう (配線カット) だけでなく、再発防止策と称してシーリング (コネクタつぶし) まで施されてしまうのだから・・・。

今回、保安基準に不適合と判断され、対策措置が必要と告知 (発布) されたのが、つい先日の平成15年12月2日である。該当のエルグランドはすでに旧型で、現行型に変わってからも年月が経っているから、今後は何らかの点検や整備を受けるためにディーラーに入庫する頻度も高くなっていくだろう。そういった意味では、対策実施率の上昇はまだまだこれからが勝負、になるだろう。

ところで、該当車両がディーラーに入庫した際、ユーザーには対策実施前にちゃんと説明があるのだろうか? 例の国土交通省のサイトでは、

 > 新聞の朝刊(12月3日付)に社告を掲載するとともに、
 > 日産自動車株式会社ホームページへの掲載及び
 > 販売会社店頭でのポスター、チラシ等による告知を行う。
 > 自動車分解整備事業者には、日整連発行の機関誌に掲載し告知する。

と記載されているだけで、実際の現場でのユーザーに対する告知義務やその方法については何ら触れられていない。まさかユーザーに事前説明無く、ひっそりと対策が実施される・・・なんてことは無いとは思うが。ある日、点検整備を終えた愛車を受け取ってみると、いつの間にか車両の左側後退灯が潰されていた・・・なんてことがあったら悲しいな。

ユーザーの中には、「車両左側の後退灯を潰されるくらいだったら、いっそのことオプションのバックランプスポットの方を取り外してくれ!」 と嘆願する者も出てくるかも知れない。つまり、ユーザーサイドにも

◎対策をそのまま受け入れ、車両左側の本来の後退灯を潰すことを受け入れる。
◎対策は受け入れがたいので、原因となったバックランプスポットの方を取り外す。

といった選択権が与えられてしかるべきであるから、クルマの世界でもインフォームド・コンセント(※)は重要であると考える。

(※注);例えば医師が患者に対し、あらかじめ治療内容やそれによって
      得られる効果・副作用などについて十分な説明を行い、患者側は正しく
      理解・同意・選択をしたうえで、自己の自由な判断でその治験への参加
      を確認する、というように、相互理解と信頼による意志疎通を図ること。

インフォームド・コンセント無いまま後退灯を勝手に潰してしまったら、それこそ新たなトラブルの元にもなりかねない。

ところで、気の毒なのはユーザーばかりではない。
国土交通省から 「保安基準に不適合である」 と突きつけられてしまった日産自動車も、それ相応の損害 (対策費用の追加負担) を被ったことだろう。・・・いや、さらには、メーカー(日産)に純正採用されるべく、(おそらくは)製品仕様図を提出して承認印を取り、また (おそらくは) 指定された各種評価基準もクリアさせていながら、犯人扱いされて市場措置への対応に追われることとなった(株)アルティアこそが、一番気の毒な存在かも知れない。
 

8.あとがき
 

さて、我が身を振り返り、レガシィでの対応はどうするか。

本来、保安基準というのは、車両が道路上を通行する際の安全性を確保させるために示した一定の基準である。そのなかには、もちろん、普遍的な項目もあると思うが、時代の変化(技術の進歩、環境の)とともに見直しすべき項目もあろう。

マーシャル850GTの設置は、夜間の視認性確保と被視認性向上のための、ささやかな改善策である。これが有るのと無いのとでは、果たしてどちらの方が危険度が少ないだろうか・・・。

だが、そのような実用上の効果とはまったく別の次元において、そのままでは保安基準に適合しないことは明白であるから、少なくとも車検の際にはキレイさっぱりと取り外すことになるだろう。さらには、せめて通常は本体にハードカバーをかけて、少なくとも (後退灯としての) 光が外に漏れることの無いように配慮してみようか・・・?

【画像8】 マーシャル純正のハードカバーを装備した状態
マーシャル純正の角形ハードカバー

今この場では、それ以上の確約もそれ以下の画策も言えないのが、ツラいところである。やはり、物事にはメリットとデメリットがあったのだ。改造には、1枚のコインのオモテとウラ、表裏一体の変化がついてまわってくるのだ。

ただ、他の例では、単にメリットとデメリットのバランス点が物理的に移動するような事例が多かったと思う。具体的には、「サスペンションスプリングをハードにすると、コーナリング性能は向上するが乗り心地は悪化する」 とか、「ブレーキパッドを効きの良い物に替えると、ダストと音がひどくなる」 ・・・といった具合である。ところが今回このページで紹介した事例は、そういった物理的なバランス点の移動ではなく、メリットに対するデメリットが ”法的な” 領域へと飛び火してしまったという点が異なっている。そこには、従来のクルマいじりとは違った難しさ (課題) がある。

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最後になるが、自動車メーカー側から見た
  ◎リコール
  ◎改善対策
  ◎サービスキャンペーン
  ◎軽微な変更届出

違いについて触れておこう。

◎リコール(速やかに届出)
  設計または製造の過程において、保安基準に不適合な場合。

◎改善対策(速やかに届出)
  保安基準には適合しているが、安全上や公害防止上の理由に
  より放置できない場合。

◎サービスキャンペーン(事前報告)
  保安基準に適合しており、改善対策にも該当しないが、仕様向上
  のため使用者に通知を行い対策を行う場合。

◎軽微な変更届出(事後報告)
  「自動車型式指定実施要領附則4の2(通達)」で規定されている。
    ・変更によって型式が同一と認められる
    ・保安基準に適合することが明白な変更
 
  に該当するもので、例えばスパークプラグの型式追加、バッテリー
  サイズの追加など、明らかに保安基準に適合しているものに
  ついては、従来はメーカーは構造変更申請→認可後に変更して
  いたが、現在では事後届出により変更できる制度に変更された。

さて、上記 第5〜6章 で紹介した日産エルグランドの後退灯の場合、事実上は 「自主改善」・・・すなわち、メーカーが自主的に市場措置を実施する例・・・であるが、このページ内では、少々厳しいが、あえて 「リコール」 という表現を使用させてもらっている。

その理由は、「改善対策」 や 「サービスキャンペーン」 がどちらも 「保安基準に適合する」 ものとして実施される措置であるのに対し、上記日産エルグランドの後退灯の場合は、結果的にであれ、「保安基準に適合しない」 と判断されてしまった・・・という見地からである。もしも関係者の方がこのページをご覧になった場合は、その点をご了承願いたい。

なお、われわれ一般のエンドユーザーは、時として、不具合を生じた車両に対してメーカーが行う市場措置のことを、何も考えずにすべて 「リコール」 という言葉で画一的に混用しているが、それは間違いである。少なくとも、保安基準に適合しており、仕様向上のために事前に通知して対策を行う 「サービスキャンペーン」 と、保安基準に適合しない 「リコール」 との区別くらいは、キッチリとできるようになるべきである。

以上をもって、マーシャル補助灯・三部作 をとりあえず ”” とする。

 <マーシャルブランドの補助灯の紹介シリーズ>
 
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