ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006・速報
-ヤング・ファンタ・ノミネート全6作品を観る-

市民会館

映画祭スナップ写真

 第17回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006に、2月25日から参加した。今年の目標は、ヤング・ファンタスティック・コンペ部門のノミネート全6作品を観ること。25日に、一気に5作品を観ることができた。

「イド」 「陶器人形」(中国、ツアン・ジャーベー監督) 伊藤歩が主演する初の中国映画。不気味で不可解な死が連鎖するミステリー・ホラー。ツアン・ジャーベー監督は、日本映画シナリオと監督の研究にも取り組み、沢山の本を翻訳。1990年来日、日本映画学校へ留学。川喜多記念映画文化財団に入り、映画の研究をし続けてきた。ホラーをよく研究しているのは分かるが、作品は、やや生煮えの印象だ。

 「イド」(日本、不二稿京(ふじわら・けい)監督)の不二稿京監督は、 塚本晋也監督作品「鉄男」(1987)で、女優・撮影・特殊小道具・特殊メイキャップを担当。「オルガン」(1996)で脚本・出演し、初の映画監督を担当した。「イド」は、「オルガン」に比べ、かなり洗練された映像。時間をかけて丹念に作り上げたことが分かる。猥雑でグロテスクだが、とても宗教的な作品だ。

「シチズン・ドッグ」 「シチズン・ドッグ」(タイ、ウィシット・サーサナティアン監督)は、傑出している。レトロなファンからマニアまでの絶賛を浴びた「怪盗ブラック・タイガー」のウィシット・サーサナティアン監督の第2作。タイ映画のニューウェイブというよりも、世界のニューウェイブの水準にある。厳密な色彩設計と天才的なひらめき。クスクス笑いに、ちくちくと風刺も込めたシュールなロマンティック・コメディだ。

 「三差路ムスタング少年の最後」(韓国、ナム・ギウン監督)は、ビターでブラックなギャグ満載。パンクな才気は感じるが、表現もストーリーも、それほど新鮮ではない。

 「血の涙」 「血の涙」(韓国、キム・デスン監督)は、奇跡的な傑作「バンジージャンプする」のキム・デスン監督の第2作。斬新でエッジの効いた映像が素晴らしい。しっかりとつくり込まれた脚本による堂々たる歴史大作。すでに貫禄すら備えている。作品の完成度は、ピカ1。ただ、ヤング・ファンタという新しい才能を発掘するコンペのグランプリにふさわしいかどうかは、意見が分かれるだろう。

 26日も、ヤング・ファンタスティック・コンペ部門の作品を観る。最後の6作目。「日が暮れても彼女と歩いてた」(日本、高柳元気監督)は、序盤のギャグが寒くて白けたが、若い女性たちの日常を淡々と描くうちに彼女たちが輝きはじめる。会話も良い。後半では、計算したとは思えない素晴らしいシーンが登場。映画の神様が訪れたのだろう。なかなか清清しい。

 「子ぎつねへレン」 「子ぎつねへレン」(河野圭太監督)は、オホーツクを中心にロケされた作品。キタキツネの生態調査の第一人者で、野生動物の保護・治療に尽力し、写真家・エッセイストでもある竹田津実の「子ぎつねヘレンがのこしたもの」を原作にしている。視覚、聴覚、嗅覚が不自由な子ぎつねを見つけた少年が、必死で育て、最後には「子ぎつねの母親」になって、看取るまでの話し。種を超えた家族関係の構築。夕張で、こういう映画を見ると、素直に感動し泣ける。

  「プロデューサーズ」は、トニー賞12部門、史上最多受賞のブロードウェイ・ミュージカルを完全映画化した。原作は、メル・ブルックスにアカデミー脚本賞をもたらした1968年の映画。これをブルックス自身の脚本と作詞作曲で2001年にミュージカル化。その舞台で演出、振り付けを担当したスーザン・ストローマン自身が初監督した。初監督とは思えない、余裕のある出来栄え。ブロードウェイ恐るべし。ミュージカルの素晴らしさを味わった。危ないネタを満載しながら、ぎりぎりのところで笑いに変える絶妙な手さばき。これだけネタが詰まっていれば、何度でも観たくなるだろう。

 



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Visitorssince2006.02.26