ゆうばり国際ファンタスティック
映画祭2002・報告

キネマ街道

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ヤング・ファンタ・グランプリは「猟奇的な彼女」

審査員、参加者、市民による「夕張の選択」は素晴らしい!!

 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2002が、2月14日から18日まで開かれた。今年で13回目。日韓ワールド・サッカーの年ということで、韓国との交流、そして地元で映画のロケをサポートするフイルムコミッションが大きなテーマになっていた。「キネマ街道」には、昨年以上の90枚の名作看板が並び壮観。来年二月にオープンする予定の映画資料館「シネマのバラード」の準備も進んでいた。映画の資料展示とともに、人々の映画にまつわる記憶、交流の歴史にも出会える場になりそうだ。

 ことしは、マスコミ関係者はいくぶん少なめだったが、参加者は、昨年を上回っていたと思う。そして地元ボランティアの皆さんの熱意はたいへんなもの。これまでにも増してとても温かな歓迎を受けた。ゲストの皆さんも、本当になごんでいた。夕張は「映画とふれあえる街」に、着々と成長していると感じた。蓄積は力だ。

 「猟奇的な彼女」の画像ですヤング・ファンタスティック・グランプリには、クァク・ジェヨン監督の「猟奇的な彼女」(韓国)が選ばれた。全く納得。一瞬もあきさせない圧倒的な魅力の傑作だった。映画祭参加者による投票で選ばれるファンタランド作品部門でも大賞に輝いた。全編が、こんな楽しいコメディは、そうそうあるものではない。観ている人を楽しませようという監督の思いが詰まっている。なによりも、文字どおりパンチのあるヒロイン役のチョン・ジヒョンの魅力の虜になった。口が悪く暴力的だが、強くて華麗で美しい。頼りないけれど優しいキョヌ役チャ・テヒョンのピュアな演技も忘れがたい。

 「グラス・ティアーズ」の画像ですこのほか、ヤング・ファンタ部門では「ドニー・ダーコ」(リチャード・ケリー監督)と「グラス・ティアーズ」(キャロル・ライ監督)を観た。どちらも、青春映画の力作。出だしはややもたつき気味ながら、次第に個性的な映像による力を発揮する。ともに、今後が楽しみな若手監督だ。「ドニー・ダーコ」は、ディスコミュニケーションで不気味な雰囲気。「グラス・ティアーズ」は、コミュニケーションの希望を示してさわやかだった。この違いが、審査員特別賞が「グラス・ティアーズ」に送られた理由かもしれない。作品の水準としては互角だった。そして、南俊子賞は一癖ある「ピーピー兄弟」(藤田芳康)。ことしは、3賞をアジア勢が独占した。

 ファンタスティック・オフシアター・コンペティションのグランプリは「山崎係長解放戦線」(上乗直子監督)に決定。クレイ・アニメに実写やCGなどを取り入れて、新しい表現を見せたことが評価された。審査員特別賞は「ナッツ」。ラストのインパクトが受賞に結びついた。

 「害虫」の画像です招待作品「害虫」(塩田明彦監督)に打ちのめされた。すべてのシーンが新鮮でシャープ。人間の深みへと視線をとどかせている。劇場映画デビュー作「月光の囁き」(1998年)が、1999年のゆうばり映画祭で審査員特別賞と南俊子賞をダブル受賞しているが、その卓越した人間洞察にみがきがかかった。主演の宮崎あおいは、芸幅の広い性格俳優になる可能性を秘めている。

 招待作品「ミレニアム・マンボ」(ホウ・シャオシェン監督)は、現在と真摯に向き「ミレニアム・マンボ」の画像です合った佳作。主人公に寄り添い模索する映像から、監督の切実な問いが静かに伝わってくる。スー・チーの魅力も爆発だった。夕張の雪のシーンや往年の名作の看板が並ぶキネマ街道が、実に魅力的に描かれている。それは、単に美しいだけでなく、道を見失った主人公の、ほのかな希望として示されていた。10年かけて撮りつづける連作の、偉大なる第1章だ。

 「エネミー・ライン」(ジョン・ムーア監督)は、クロージング上映としては珍しい戦争・アクションもの。MTV、CM出身の監督らしく、映像の切れは、抜群。変な形で恋愛などを持ち込まず、男たちの友情の物語に徹した志しも共感できる。ただ、やはりアメリカにおける英雄的な個人の活躍という枠を超えていない。ボスニア現地の人たちとの交流がもっと描かれて良いと思う。主人公クリス・バーネットは、一人の力で生き残った訳ではないのだから。

フイルムコミッション・シンポジウム

 フイルムコミッション・シンポジウムは、今年のゆうばり映画祭のひとつのハイライト。大林宣彦監督、ホウ・シャオシェン監督らを招き、人と人の出会いを何よりも大切にする夕張らしい切り口で、今後のフイルムコミッションのあり方を示した。大林監督の新作「なごり雪」の縁で飛び入り参加した伊勢正三さんは、熟成された「なごり雪」を披露してくれた。このほか、20年間に1,000作品を手掛けた字幕翻訳家の第一人者・戸田奈津子さんのトークでは、若き日の仕事のなかった苦労やフランシス・コッポラ監督との出会いなどのお話を聞くことができた。


音声データ(Real形式)

水野晴郎監督と三田佳子さんグランプリを受賞したクァク監督

大林監督のトーク伊勢正三さんの歌

ホウ・シャオシェン監督キャロル・ライ監督

戸田奈津子さんのトーク塩田監督と宮崎さんのトーク


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Visitorssince2002.02.15