旧版です。参考までに残しています。


 社会福祉関係者が参考にすべき、共通の行動規範=倫理綱領は
いくつかありますが、日本のものでは、「日本ソーシャルワーカー協会」
のものが一番包括的で良いと思います。
  本当は一項ずつ、小山流の「解説」を加えたいくらい、良い内容で
す。ぜひ、参考にしてほしいと思います。

NASWのものやIASWのものと、比較検討したりしてもらえたら幸いです。
疑問等がありましたら、どうぞメールを下さい。

ソーシャルワーカー倫理綱領(日本ソーシャルワーカー協会)
1986年4月26日宣言

前文
 われわれソーシャルワーカーは、平和擁護、個人の尊厳、民主主義という人類普遍の原
理にのっとり、福祉専門職の知識、技術と価値観により、社会福祉の向上とクライエント
の自己実現を目ざす専門職であることを言明する。
 われわれは、社会の進歩発展による社会変動が、ともすれば人間の疎外(反福祉)をも
たらすことに着目する時、この専門職が福祉社会の維持、推進に不可欠の制度であること
を自覚するとともに、専門職の職責について一般社会の理解を深め、その啓発につとめる。
 われわれは、ソーシャルワークの知識、技術の専門性と倫理性の維持、向上が専門職の
職責であるだけでなく、クライエントは勿論、社会全体の利益に密接に関連していること
に鑑み、本綱領を制定し、それに賛同する者によって専門職団体を組織する。
 われわれは、福祉専門職としての行動について、クライエントは勿論、他の専門職或い
は一般社会に対しても本綱領を遵守することを誓約するが、もし、職務行為の倫理性につ
いて判断を必要とすることがある際には、行動の準則として本綱領を基準とすることを宣
言する。

原則
1.(人間としての平等と尊厳)人は、出自、人権、国籍、性別、年齢、宗教、文化的背
景、社会経済的地位、あるいは社会に対する貢献度いかんにかかわらず、すべてかけがえ
のない存在として尊重されなけれぱならない。
2.(自己実現の権利と社会の責務)人は、他の権利を侵害しない限度において自己実現
の権利を有する。
  社会は、その形態の如何にかかわらず、その構成員の最大限の幸福と便益を提供しな
ければならない。
3.(ワーカーの職責)ソーシャルワーカーは、日本国憲法の精神にのっとり、個人の自
己実現、家族、集団、地域社会の発展を目ざすものである。また、社会福祉の発展を阻害
する社会的条件や困難を解決するため、その知識や技術を駆使する責務がある。

クライエントとの関係
1.(クライエントの利益の優先)ソーンャルワーカーは、職務の遂行に際して、クライ
エントに対するサービスを最優先に考え、自己の私的な利益のために利用することがあっ
てはならない。また、専門職業上の知識や技術が、非人間的な目的に利用されないよう自
戒する必要がある。
2.(クライエントの個別性の尊重)ソーシャルワーカーは、個人・家族・集団・地域・
社会の文化的差異や多様性を尊重するとともに、これら差異あるクライエントに村しても、
同等の熱意をもってサ一ビスや援助を提供しなければならない。
3.(クライエントの受容)ソーシャルワーカーは、クライエントをあるがままに受容し、
たとえクライエントが他者の利益を侵害したり、危害を加える恐れのある場命であっても、
未然に事故を防止し、決してクライエントを拒否するようなこどがあってはならない。
4.(クライエントの秘密保持)ソーシャルワーカーは、クライエントや関係者から事情を聴
取する場合も、業務遂行上必要な範囲にとどめ、プライバシー保護のためクライエントに
関する情報を第三者に提供してはならない。もしその情報提供がクライエントや公共の利
益のために必要な場合は、本人と識別できる方法を避け、できれば本人の承詔を得なけれ
ばならない。

機関との関係
1.(所属機関との綱領の精神)ソーシャルワーカーは、常に本倫理綱領の趣旨を尊重し
その所属する機関、団体が常にその基本精神を遵守するよう留意しなければならない。
2.(業務改革の責務)ソーシャルワーカーは、所属機関、団体の業務や手続きの改善、向上
を常に心がけ機関、団体の責任者に提言するようにし、仮に通常の方法で改善でさない場
合は責任ある方法によって、その趣旨を公表することができる。
3.(専門職業の声価の保持)ソーシャルワーカーは、もし同僚がクライエントの利益を
侵害したり、専門職業の声価を損なうようなことがある場合は、その事実を本人に指摘し
たり、本協会に対し規約第7条に規定する借置をとることを要求することができる。

行政・社会との関係
1.(専門的知識・技術の向上)ソーシャルワーカーは、常にクライエントと社会の新し
い二一ズを敏感に察知し、クライエントによるサービス選択の範囲を広げるため自己の提
供するサービスの限界を克服するようにし、クライエントと社会に対して貢献しなければ
ならない。
2.(専門的知識・技術の応用)ソーシャルワーカーは、その業務遂行によって得た専門
職業上の知識を、クライエントのみならず、一般市民の社会生活の向上に役立てるため、
行政や政策、計画などに積極的に反映させるようにしなければならない。

専門職としての責務
1.(専門性の維持向上)ソーシャルワーカーは、同僚や他の専門職業家との知識経験の
交流を通して、常に自己の専門的知識や技能の水準の維持向上につとめることによって、
所属機関、団体サービスの質を向上させ、この専門職業の社会的声価を高めなければなら
ない。
2.(職務内容の周知徹底)ソーシャルワーカーは、社会福祉の向上を目ざす専門職の業
務や内容を一般社会に周知させるよう努力しなければならない。この場合、公的な場での
発言が個人としてのものか、専門職としての立場によるものかを明確にする必要がある。
3.(専門職の擁護)ソーシャルワーカーは、実践を通して常にこの専門職業の知識、技
術、価値観の明確化に努める。仮にもこの専門職が不当な批判を受けることがあれば、専
門職の立場を擁護しなければならない。
4.(援助方法の改善向上)ソーシャルワーカーは、同僚や他の専門職業家の貢献や業績
を尊重し、自己や同僚の業績やサービスの効果、効率について検討し、援助方法の改善、
向上に心がけなければならない。
5.(同僚との相互批判)ソーシャルワーカーは、同僚や他の専門職業家との間に職務遂
行の方法に差異があることを容認するとともに、もし相互批判の必要がある場合は、適切、
妥当な方法、手段によらなければならない。

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