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■2007年07月16日〜17日 137回芥川賞・直木賞とボロボロの一日

 神田多町・早川書房一階の喫茶店クリスティで午後5時から円城塔の芥川賞待機宴会がスタート。北海道新聞とHBC(北海道放送)の取材が入り、衆人環視の中、羞恥プレイのようなインタビューを余儀なくされる円城塔。例によって淡々とした受け答えで、受賞可能性がほぼゼロであることを縷々説明していると、女性インタビュアーから、「その謙虚さがステキですね」と言われたり。「そういう性格はどのように培われたのでしょうか」などなど。  横で聞いてて爆笑をこらえるのに必死でした。

 宴会には、数理解析研究所前所長の高橋陽一郎氏や、複雑系のえらい人、金子邦彦氏をはじめ、大学関係者が多数詰めかけ、クリスティ史上最高の博士率を記録。博士号保持者が10人ぐらいはいたんじゃないでしょうか。

 ご承知のとおり、候補作の版元は文春の〈文學界〉なんだけど、担当者は5時過ぎにやってきて30分ほど滞在しただけで、他の候補作家のところへ行ってしまいました(笑)。そこまで期待されてないとは……。

 他社編集者も、河出書房新社から2人、角川書店から1人、ファミ通文庫から1人来ていただけで、あとは9割がた、候補者の友人知人恩師。作家で来てたのは同期(?)の伊藤計劃だけ。

 文学賞待機につきあうのは初体験という人ばかりなので、6時過ぎに円城塔のケータイが鳴り、候補者本人が着信通知を見て手を挙げ、「来ました!」と叫んでるのに誰も注目しない。みんなおしゃべりに夢中で候補者そっちのけ。こんな待機会、はじめて見たよ(笑)。しょうがないので、ベテラン(笑)の私が立ち上がって「静かに!」と叫び、円城塔がおもむろに電話に出る。
「はい。はい。わざわざご苦労様です。どうもありがとうございました。」と、この時点ですでに落選は判明。しかしこのあとすかさず、「さしつかえなければ受賞作を教えていただいてよろしいでしょうか?」と平然と訊ねるところが円城塔。静かに電話を切って、
「『アサッテの人』だそうです。というわけで、これから残念会ですね」
 ってそういう芸風だから2ちゃんで粘着されるんじゃないのかキミは。

 まわりの人たちは、それを聞いても「ふうん、そうなの」的な反応で、なにごともなかったように談笑が続く。がっくりしてたのは北海道新聞とHBCの人だけだったんじゃ……。あ、塩澤編集長はひそかに落胆していたらしい。金子教授は、「せっかくオレが来たのになんだそれは」とお怒りでした。「芥川賞ぐらいとれ!」みたいな。

 しかし今回は珍しく下馬評通りの結果。円城塔は、すでに群像新人賞で一度「アサッテの人」に敗退してるわけで、予選ラウンドで負けた相手に決勝トーナメントでまた負けたという構図。唐木前編集長の読みがあまりにも正しかったことが証明された結果でした。

 ところで、芥川賞候補になって依頼が殺到している川上未映子と対照的に、円城塔には他社からほとんどなんの接触もないんだそうで、まあ作風を考えれば当然と言えば当然ですが、頼むなら今がチャンス。意外と筆は速いらしい。

 その後クリスティはにぎやかな残念会に突入したものの、いつまで経っても直木賞の連絡が来ない。しびれを切らして神田を抜け出し、銀座・資生堂パーラーで開催中の桜庭一樹待機会に潜入。こちらはメンバー全員が編集者だったんですが、さすがに待ちくたびれて話題も尽きた顔。沈滞した空気のなか、ついに電話が鳴るが、こちらも落選通知。しかも、『吉原手引草』1作受賞って……北村さんは?

 がっくりしたまま悄然と店を出て、桜庭一樹ご一行様と別れ、7月とは思えない冷たい雨の中をとぼとぼ歩いて、神田ヴェローチェで敗戦コメントを書く。芥川賞とはまったく関係なく激しく盛り上がる円城二次会に寄ってタイ料理をつまんだあと、塩澤編集長と終電で傷心の帰宅。

 Tシャツ一枚で体が冷えたのが悪かったのか、ここしばらくぶり返していた肩痛が一気にひどくなり七転八倒の苦しみ。明け方、痛み止めを飲んでなんとかちょっとだけ寝て、朝10時半に起き出して、アニマックス大賞二次選考会のためノースピア竹芝へ。

 12時から食事をしつつ2時間の会議で候補作(日本代表)が決定。終了後、アニメの国のえらいひとたち(氷川竜介、藤津亮太、小川びい)と浜松町のタリーズで20分お茶を飲む。  氷川、藤津両氏は、サイゾー8月号の宇野常寛原稿についてる「最新オタク・マスコミMAP」によると、御用ライター文化圏に分類されるらしい。シャカイ派の80年代ノスタルジィ中年だそうです。ふうん。ノスタルジィで言うならむしろ70年代派なんじゃ……。小川びいは朝日新聞に原稿書いてるのに、MAPには名前も入ってない。まだまだってことか。更科修一郎と宇野常寛はセカイの中心にいるのにな!
 ……というような話はまったく出ず、もっぱら京アニの監督人事が話題でした。ふうん、そんなことになってのか。全然知らなかったよ。

 それを詳しく聞くヒマもなく、目の前の文化放送メディアプラスに駆け上がって、大竹まことゴールデンラジオで直木賞予想がはずれた反省会。
「専門家が候補作をみっちり全部読んで予想したのに、それでも全然当たらなかったわけだよねえ。書評家っていう肩書きははずしたほうがいいんじゃないの」と大竹まことはやたらにうれしそう。あんたの予想だって当たってないだろ!

 メインディッシュのゲストがいとうせいこう氏だったので、スタジオで立ち話。芥川賞の感想を聞くと、「川上未映子を応援してたのにとれなくて残念、でも、(今は売る本がないから)どうせならもうちょっとあとで受賞するほうがいいよね」などなど。いとうさんの一昨日のライブにも来てたらしい。
 そういえば、昨日は未映子さんが神田組に合流する話もあったんですが、ケータイが圏外だったので家に帰ってしまったらしい。着信履歴を見て折り返したら、「気持ちを切り替えて仕事しよと思うて、帰って原稿書いてるんです」だって。そのエネルギーを見習いたい。若いってすばらしい。

 ラジオ終了後、砂袋のような体をひきずって西葛西にもどり、さいとうよしこがかつて通っていたという近所の光カイロプラクティックへ。プリペイドカードが余ってるので試しに行ってみたんだけど、背骨の矯正は確かに効いた気がする。ガチンとはめてもらっただけで肩の痛みは劇的にやわらいだ。すばらしい。2003年の春も2004年の秋もかなり長引いたのに、カイロプラクティックがこんな効くとは。一回4500円と高いけど、その値うちはありました。


■2007年07月15日 ディアルガVSパルキアVSダークライ

 トキオを連れて午後1時出撃。
 DSのダークライが劇場でプレゼントされるキャンペーンのおかげで、子連れが大挙して押し寄せ、台風にもかかわらず妙典のワーナーマイカルは大混雑。完売寸前でなんとか2時の回に潜り込み。
 ポケモンカードゲーム用のダークライ・カードもプレゼントされるので、劇場に腰を落ち着けてDSのダークライをダウンロードしてしまうとすでに任務終了の雰囲気が漂う。映画は15分ぐらいでもいいんじゃないかと思うんだけど、わりあいちゃんとした内容。しかしポケモンというより「ゴジラ エビラ モスラ 南海の大決闘」だな。


■2007年07月14日 Media Skinでケータイ生活

 auの端末をtalbyからオレンジのMedia Skin(京セラ製)に機種変更。ボタン押しにくいシリーズの最新版。 西葛西メトロセンターの安売ショップで9500円ぐらいでした。 液晶じゃなくて2.4インチ有機ELディスプレイ。
 画面が小さいのでワンセグTV映像が非常にきれいに見えます(笑)。 しかしイヤフォン端子(平型コネクタ)になにかささってないとワンセグを受信しない仕様はどうなのか。ま、コネクタだけつけておけばいいんだけど。

 Talby時代は定額契約してなくてケータイサイトをまったく見てなかったから、今浦島状態。世の中、こんなことになってたのか。
 とりあえあず、モバイルSuicaはめちゃくちゃ便利。Edyとnanacoも入れたのでもう財布を忘れても大丈夫だ。

 GPSで現在位置を地図上に表示してくれるサービスも便利(地図は若干見にくい)。これが「ひとナビ」ってやつか。さらに音声認識までついてて、住所や駅名を電話にしゃべると漢字に変換され、それをクリックするとそこまでの経路だの時刻表だの地図だのを表示してくれるのである。すごいなあ。

 定額なのでケータイ小説もどんどん読める。livedoorケータイ小説サイトで配信中の田中啓文の新作「ミミズからの伝言」を読んでみた。
 「ファックスあるある大事典」のおかげでミミズ生食が大ブームになり、自宅でミミズ養殖の副業をやってたOLがめちゃくちゃ儲かるんだけど、忙しすぎて呪いの言葉を吐きながらミミズの世話をしていたところ、そのミミズがたいへんなことに(笑)。
 面白いじゃん! 配信が終わったらどこかの小説誌に載せると吉。

 それにしてもlivedoorのケータイ小説は、飯野文彦とか浅暮三文とか牧野修とか配信してて、これはどこの異形コレクションですか。

 あと、関西文学賞の受賞作とかも無料配信されてて、アングラカジノで負けた借金を払ってもらうかわり、伯父さんの依頼で茶の湯を習うことになったダメ男の話とか、けっこう面白い。 あ、高橋源一郎がネタにしまくったので有名な、例の「うわさのベーコン」も無料配信中。

 ちなみに、はじめてダウンロードした着うたフルは「もってけ!セーラーふく」(おやくそく)。 それにしても、今までケータイの電源は1回充電すれば1週間保つ生活だったのに、1日でバッテリー切れに。 世の中の若者のケータイがすぐ電池切れになる理由がやっとわかったよ。

 メディアはmicroSDカード。SDスロット用アダプタ付きの1GBがamazonで1,270円。安くなったもんだ。届いたのを見たらあまりに小さくて笑う。歯についた海苔みたい。


■2007年07月12日 グラインドハウスin月島

 旭倉庫のブロードメディア・スタジオ試写室で2本立ての内覧。 タランティーノの「デス・プルーフ」は大傑作。今年のベスト確定。「アポカリプト」を抜いたね。すばらしい。

 日本公開版は1本立て興行なので、アメリカ版より30分ぐらい長いらしい。しかし予告編は「マチェテ」だけしかやらない模様。まあ、Youtubeで見られるからいいか。
 オリジナル・バージョンにこだわる人は、8/25から1週間だけTOHOシネマズ六本木ヒルズで二本立て興行をやるらしいので、そちらをどうぞ。もっとも「デス・プルーフ」は長いバージョも見たほうがいいと思います。


■2007年07月11日 金原ひとみインタビュー

 文化放送大竹まことゴールデンラジオで直木賞直前予想。持ちネタなのでらくちん。終わったあと、2階のティールームでMEN's EXの映画評連載の打ち合わせ。2000年から続いているコラム(途中1年間の中断あり)なんですが、担当者と顔を合わせるのはこれが初めて。といっても、新担当者は4月に他社の女性誌から移ってきた人なんですが。

 浜松町から飯田橋に移動して、5時から角川書店本社で金原ひとみインタビュー。〈野性時代〉9月号の金原特集用ですが、タイミングがタイミングなんで、最初の話題はもちろん、週刊ポストで報じられた「『蛇にピアス』婚」について。彼氏がピアスをしてるというのは誤報だそうです。内緒にしてたのは金原さん側じゃなくて、彼氏側の会社の事情だったらしい。それにしても、親にまで結婚したことを黙ってたとは……。

 あとは『ハイドラ』の噛み吐き実践体験談とか。小説のために体を張ってるというか、全人生を注ぎ込んでますね。全身小説家。文学者の鑑だと思った。

 終了後は神楽坂・牛丸で打ち上げ。食べたいものの筆頭が「生肉」だそうで。めちゃくちゃ痩せてるのにしっかり食べてました。どこに入るんだろう。


■2007年07月10日 Emobileカードに乗り換え

 いちばん出っぱりが少ないコンパクトフラッシュ型のD01NXにしました。端末は初期費用込み1円。7月の利用料は無料(といっても、強制的に1年契約のライトデータプランにされてしまうので、結局プラス3000円分は払うことになる。と思う)。

 場所によっては実測で2Mbps以上出るらしいが、西葛西駅前では500kbps。それでもAIR EDGEと比べると天と地の差。ただし、仕事場のマンションの中では、圏外〜微弱。ビル内の受信状況は相当悪いらしい。地下鉄駅構内でも使えないし、いまのところ汎用性はAIR EDGEよりだいぶ低そう。


■2007年07月06日 神田「小鍛治」@朝日新聞

 今朝の朝日新聞朝刊の東京川の手版は、「都心の中でドーナツ化」「バブル期過ぎて住民消えた」という見出しで、神田の変貌をリポート。
 その代表として、洋菓子と喫茶の店「小鍛治」が昨年閉店したことを書いている。いわく、日本橋と秋葉原の間で神田の地盤沈下が進み、住民も減った。街は衰退し、その象徴が「小鍛治」の閉店。客が減り、この街ではもう喫茶店は立ちゆかない……。
 20年来「小鍛治」をちょくちょく利用していた人間としては非常に感慨深い記事なんですが、ひとつだけ小さな問題がある。この記事にはどこにも書かれていないが(同じビルの8Fを借りたいと言ってきた消費者金融を断った話は出てくるのに)、「小鍛治」のあとがいったいどうなったかというと、ドトールになっているのである。喫茶店、やってるじゃん!
 ガラス張りの外見はまったく「小鍛治」そのものなので、看板だけドトールになってると非常に不思議な感じですが、神田はヴェローチェとか珈琲館とかチェーン系のカフェが山ほどあるのだった。ま、喫茶店とは別物ってことかもしれませんが。


■2007年07月06日 ゴーレム降臨!@三省堂神保町本店

 前半30分は滝本誠SF史。
 1978年ごろ、東銀座の喫茶店「樹の花」で滝本さんが『ダルグレン』のペーパーバックを読んでいると、横でゲラの赤入れをしていた黒丸尚から、「そんなもの読んでるの?」と言われた話がすばらしかった。「SF観光局」のネタにしよう……ってこの面白さがわかる人が何人いるのか。

 後半は、若島正、渡辺佐智江、山形浩生と登壇し、豪華メンバー揃い踏みに。 しかし、そのとたん、まったく話が回らなくなってトークは停滞。欧州で活躍するファンタジスタばかりを中盤に揃えすぎてボールがまわらなくなる蹴球チームのようなことに。後方からボールを散らす配給係を引き受けるべき柳下毅一郎が「オレの仕事じゃないよ!」という顔で逃げ腰になったのが敗因か。いや、それはそれで各人のキャラが楽しめたけど、翌日、佐智江姐さんのきびしい叱責メールが同報されてきました(笑)。以下、無断引用。
大森、滝本、樽本、柳下、山形、若島へ(アイウエオ順、敬称略)

 あれだけ20数年ぶりのベスターとか騒いでおいて、なによあのトークショー。あなたたちみたいな最強のメンツが揃うなら、はじめからちゃんとオーガナイズして大森あたりを進行役にしてちゃんと話してくれたら、対談としてまとめてどこかに掲載してもいいような、後世に残るかもしれないスリリングな話が展開されたはずじゃない。あたちがこう言うのには、ちゃんと理由があるんでちゅ!(以下略)

 これに関連して、もう一個の爆笑ネタ。
「ゴーレムの翻訳で苦労はありませんでしたか?」と柳下に問われた佐智江姐さんが一言。
「蜜蜂レディの会話シーンを訳してるあいだじゅう、頭の中にずっと『とっとこハム太郎』のテーマソングが流れて、それが大変でした」
 司会(じゃないと主張する)の柳下があっさりスルーしたのでそれだけで話が終わっちゃったんだけど、あとで聞いたところ、要するに8人の蜜蜂レディが、佐智江さんの脳内ではハムちゃんずのなかまたちに変換されていたと。リボンちゃんとかマフラーちゃんとか、配役も決まってたらしい。

 後日、ネット上の感想を見てると、山形浩生について、「こんな、なんていうか真っ当な感じの方だとは思わなかった!もっと、こう東浩紀さんみたいな人を想像してた。」というコメントがあって爆笑しました。


■2007年07月04日 『SRE』vs『虐殺器官』@神田多町

 伊藤計劃氏の退院祝い特別企画――というか、打ち合わせの席に無理やり押しかけて早川書房の裏のタイ料理屋(S澤編集長ご贔屓)でメシを食いました。ゲストは芥川賞候補作家。円城vs計劃の対決はやりとりの呼吸と間合いが微妙でなかなかスリリングでした。

『虐殺器官』は早くも2刷が決まったそうで、二重にめでたい。しかし『Self-Reference ENGINE』がもう3刷とは……。芥川賞候補効果が加味されたとはいえ、そんなことでいいのか! 世の中まちごうとるよ。
 もっとも『虐殺器官』のほうはミステリ方面でも意外と評判がよく、『このミス』ランクインも期待できそうな気配。本格的な国際軍事謀略サスペンス(しかも「ぼく」の一人称)なので、「どうせSFだろ」と思ってパスしてる人もぜひ。

 芥川賞待機宴会は神田開催が濃厚になりつつある模様。〈文學界〉には、まあ勝手にやってくださいということなんでしょうか。さすがだ。



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