【7月26日(木)】


 徳間ホールで、ウェス・クレイヴン製作総指揮の『ドラキュリアン』……じゃなくて『ドラキュリア』。ちなみに原題はDracula2000。
 クリストファー・プラマーがヴァン・ヘルシンク役なんですが、これが現代物。ロンドンで棺が盗み出されるまでは上々の滑り出し。これは拾いものかも、と思ったんですが、わざわざマルディグラのニューオリンズに行かなくてもねえ。後半はエンド・オブ・デイズ的な展開になっちゃってちょっとがっかり。ドラキュラの正体にはちょっと茫然とします。これは新説。いや珍説か。

 暑いのでタクシーに乗って六本木。GAGAでコーエン兄弟の『オー・ブラザー!』をやっと見る。原作はホメロス『オデュッセイア』(笑)。1930年代のミシシッピ州を舞台にしたミュージカル神話というか寓話ですね。コーエン兄弟版「南部の唄」? 脱獄囚三人組のリーダー、ユリシーズ役をジョージ・クルーニーがすごく楽しそうにやってて、まあだれも嫌いになれないタイプの映画でしょう。

 休刊というかリニューアルになるらしいアスキー・ネットJの最後の原稿を書く。




【7月27日(金)〜29(日)】


 突貫工事の翻訳(?)仕事はだいたい終了しチェック段階に移行。つじつま合わせがあまりにもたいへん。
 なんかすでに近刊予告も出ちゃってるらしいですが、モノは映画版『FINAL FANTASY: The Spirits Within』の小説版。英語版を日本語版にローカライズするのが基本なんだけど、角川が持ってる権利は翻訳権じゃなくて商品化権なんで、英語版ノベライズ(2バージョンある)は素材のひとつという感じ。まあ、その昔、原書で100枚しかないノベライズを250枚までブローアップした仕事(大森名義ではありません)のことを思えば、まだ翻訳に近いか。ディーン・ウェスリー・スミスのノベライズはそんなに悪くない出来だし。ただし完成版の映画とは若干違っちゃってるので、部分的には大幅な修正が必要だったり。
 さらに恐ろしいことに、スニーカー文庫からはショートバージョンも刊行予定。それならFF好きのスニーカー系作家のひとをだれか見つけて、ノベライズ翻訳をライトノベルっぽく書き直してもらったらどうですか。と提案したんだけど、時間の関係でむずかしいらしく、かといってショートバージョンの英語版ノベライズは出来がよくないので、結局ロングバージョンの原稿をリライト/ダイジェストすることに。そんなことやってる時間があるのか、はたして。  だいたいこの仕事は、「FFXをやったつもり」で、その時間を投入してクリアする予定だったのに、すでに大幅な超過勤務状態。

 第二回小松左京賞の一次予選通過作品をどんどん読む。へんな話が多いのが今回の特徴。本命不在?
 オンライン出版される林雅子のデビュー作『神の手』の解説原稿。刊行されたらリンクを張る予定。




【7月30日(月)】


 推理作家協会の懇親パーティ@飯田橋エドモント。夏枯れなのか、珍しくがらがらで快適。宮部みゆきさんはちゃんとFFXやってるらしい。うちはまだPS2が発掘できてません。オマケのDVDは見たんだけどなあ。
 新潟からやってきた一条理希さんとは初対面。荻野目悠樹と三人で下のティーラウンジに流れて育児話(笑)。荻野目家では7月に男の子が生まれたばかりなのである。名前は七生。それを「ななせ」と読ませるのはどうか。二人目が生まれたら名前は決まってるね。しかし三人目に「エディプスの恋人」という名前をつけるのは勇気がいると思う。うちの場合は一人目がトキオなので、二人目は男で「カケル」。もちろん三人目は長女で名前は「少女」だ。大人になったときがちょっと問題。って、結局どっちも筒井康隆つながりかい。




【7月31日(火)】


 小松左京賞一次選考通過作を読了。たまっているSF系新刊の未読処理に着手。といっても夏枯れが激しい感じなので、こうなったらもうハリポタでもやるしか。




【8月1日(水)】


 15時、角川春樹事務所で第二回小松左京賞の最終候補作決定会議。結果はここを参照。まあだいたい予想通り。いちばんへんな話と二番めにへんな話はやはり残らず。これが筒井康隆賞なら残るのに……の声も(笑)。残った中で大森のイチ押しは『今池電波聖ゴミマリア』かな。作者は町田登志夫じゃなくて町井登志夫です>タニグチリウイチ

 会議終了後、渋谷にまわって、できたばかりのセルリアンタワー東急ホテルへ。ファミ通エンタメ大賞の授賞パーティなんですが、会場が地下なのが惜しい。
 出席者はSF関係者多数。小説部門最優秀賞の野村美月「赤城山卓球場に歌声は響く」は、合唱部の女子大生が卓球魔人と対決する少女小説らしい。設定は面白そうなんですが、これで小説になるのか?
 優秀賞の人は、NIFTY-Serve SFフォーラムのチャットに夜な夜な参加していた時代のオンライン知り合いだと判明。世間は狭い。

 三村美衣といっしょに西葛西にもどり、上京中の母親が主催する「お食い初め」イベントを見学。はじめて見ました。ふうん、こんなふうにやるのか。

 つづいて恒例の江東区花火大会を見物に、ベビーカー押して川べりまで。途中、めちゃくちゃ暑くて死ぬかと思ったんですが、川っぷちにたどりつくといきなり涼しい。
 花火後は母親に子守をまかせて、駅前のビッグエコーで朝までカラオケ。




【8月2日(木)】


 笹塚の本の雑誌社で、探偵特集の座談会。21世紀最強の探偵を考える――みたいなお笑いネタ。北上おやじは外遊中で、司会は浜本社長。茶木さんがまたしてもプロジェクトXネタで暴走し(最近そればっかりやん)、新保さんが冷静に突っ込むパターン。なんか、根本的に趣旨が違う座談会になってる気が(笑)
 終了後、三人で食事。編集部で教えてもらった寿司屋は見かけによらずヒットでした。教えてもらわなきゃぜったい入らないと思う。笹塚10号通り商店街侮れず。




【8月3日(金)〜5日(日)】


 FFノベライズ原稿手直しを続行。とりあえず第一稿をつくってからのほうが時間がかかってるような。だらだらやってるせいかも。入力は速いんだけど、直すのはすぐ飽きるからなあ。どう直してもかまわないとなるとなおさら時間が。
 しかしいいかげんタイムリミットなので、適当なところで切り上げて送信。




【8月6日(月)】


 さいとう妹一家と九十九里浜に海水浴。妹の旦那が運転するレンタカーのワンボックス車でいったんですが、さすがにうちからは近い。湾岸乗ってからは2時間でした。
 千葉は異様な涼しさで、高原に避暑にきたんですかという感じ。風が強くて波が荒く、泳いでる人はほとんどいません。いやオレは泳いだけど。海があればふつう泳ぐでしょう。夏なのでさすがに水温はそう低くないし。
 夜は宿の近くの寿司屋で近海魚食いまくり。べらぼうにうまい。




【8月7日(火)】


 あまりに寒いので夏をあきらめてプール+クアハウス。クルマなので楽勝。
 西葛西にもどり、さらに宇都宮方面へと帰るさいとう妹一家を見送ってから、京橋メディアボックスで『インポスター』試写。
 P・K・ディックの短編「にせもの」(ハヤカワ文庫SF『パーキー・パットの日』収録)が原作。去年のうちにだいたいできてたのにアメリカでもまだ公開されてない最新作。冒頭の未来描写はちょっとどうかと思いますが、主人公が逃げ出してからの展開は見事。よくできてます。映画オリジナルのオチも納得できる範囲だし、そのまま撮ったら思いきり暗い話になるところに、多少の救いを用意するあたりもうまい。
 SFおたく的には満足できる作品に仕上がってるんだけど、問題は地味なこと。仮プレスでは、ディックの名前が最初に来てるんだもんなあ。その次にメジャーなのが主演のゲイリー・シニーズって……。
 よく考えたら自分が翻訳した作品が映画化されるのはこれが初めて? しかしスペンス・オルハムがスペンス・オーラムだったとは。増刷があれば直したいかも。
 ちなみにプレスではクローンと説明されてますが、映画でも原作でもにせものはクローンじゃなくて人造人間。そりゃクローンのほうがわかりやすいかもしれないが、それだとますます『シックス・デイ』になってしまう気が。

 有楽町マリオンの日劇東宝にまわって、FFの完成披露試写。坂口監督の舞台挨拶見て、字幕の最新版をチェックしようと思ったら、すでに空席ゼロ。すでに2回見てるので、舞台挨拶後は外に出て食事。終わり頃にもどってきて、ラストの夢のシーンだけ確認する。うーん、やっぱり画面だけじゃわかりにくいと思う。攻略本といっしょに売る作戦?
 ゲームと違って劇場映画では観客側に時間をコントロールするすべがないので、キャラがイベントをクリアしてフラグが立ったあとも、意図的にもうちょっと間をおかないと見ててしんどい。CGIがいくらリアルになっても、生身の肉体の生理を持ってるわけじゃないので、計算通りにしか動かない。そのへんをどう克服するかが今後の課題かも。役者が監督のいうことを聞きすぎ。
 セルアニメでも同じ問題は抱えてるわけですが、そっちは長年のノウハウ蓄積とお約束である程度までクリアしてるし、キャラがリアルじゃないので気にならない。
 まあしかし、見てるうちにCGIキャラに対する違和感がどんどんなくなってくのは凄いね。だったら実写で撮れよ。とは思いません。


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