【2月17日(土)】


 泣きながら起きてミステリチャンネル《ベストブックス》の収録。『黒い仏』対決がメイン。香山さんにはこの面白さがわからないのかっ。いや、万人向けじゃないっていうのは確かにそうなんですけど。万人向けの小説なんてつまんないじゃん。しかしネタバレなしでこの小説の話をするのはほぼ無理。トヨザキ社長は最後の最後でぽろっとク××××とか言っちゃうし。わかってても関係ないと思いますが。

 馬場に出て、ユタまわりで帰宅。




【2月18日(日)】



『SFが読みたい!2001年版』(早川書房)の「ベストSF2000」結果がbk1でいちはやく公開。S澤担当本強し!
 90年代ベストの結果が載ってないのは品切本が多すぎるから? かわりに90年代ベストのブックガイドをやろうと思ったけど、めんどくさいので次回。というか、bk1のコラムのネタにするかな。




【2月19日(月)】


 新宿東口・滝沢別館で戸梶圭太インタビューfor《映画秘宝》。T辺くんはみごと戸梶圭太にハマったらしい。小説家としてはきわめて秘宝向きのタイプだと思いますがどうですか。「激安犯罪」発言にT辺くん大ウケ。「『赤い雨』にやられました」と言う人は違うなあ。
 個人的に笑ったのは「スプリングスティーンが嫌い」話。作中にスプリングスティーンが出てくるという一点で、『GO』と『バトル・ロワイアル』は同列らしい。




【2月20日(火)】


 11時、新宿三丁目の辰巳出版でスタジオ・プロテウス仕事。H系の青年マンガ誌まで含めて、青少年に有害と思われるコミックはコンビニの別コーナーに置くこと――みたいな条例だか法案だかが通りかけているらしく、マンガ出版には死活問題らしい。コンビニ流通に頼りすぎてきたツケだとも言えるけど。




【2月21日(水)】


 トーレン社長のお供でお昼に銀座・菊水。喫煙具とパイプの老舗。なんかデンマークに住んでるパイプ職人から、日本で売れないかとパイプを預かってきてるんだそうで、その交渉の通訳を担当。
 トーレンは極端なハマり症で、昔はパイプなんか全然吸ってなかったのに、この4、5年で首までどっぷり。コレクションが400個だか500個だかあり、すでに10万ドルぐらいつぎ込んでいるらしい。社長は趣味も豪快である。
 パイプ屋のおやじは、戦前から銀座で商売してますって感じの東京人。トーレン持参のパイプをひとめ見るなり、
「うーん、この人はヘタだね、どうも。それにこういうかたちは日本人にゃ向かないんだよ」
 とか言いたい放題。いやまあオレは通訳するだけだから関係ないんだけど。デンマークの有名パイプ職人の作品はけっこう扱ってて、こないだデンマークにも行ってきたそうですが、無名の中堅クラスはあんまり相手にしたくない感じ。それでも、
「まあ買いたいってんじゃないけど、せっかく持ってきていただいたんだし、なんだったらひきとりますよ」
 とのお言葉を頂き、こちらの言い値で商談成立。
「じゃあちょっと待ってて」といきなりとなりの銀行へ行ってキャッシュ千ドル下ろしてきてその場で現金取引。こういう世界もあるんですねえ。

 しかしその後、トーレン社長はその店でパイプ四本買って現金で17万円とか支払ってるのだった。いっそトレードしたらよかったのに。いや、半分は「友だちに頼まれた分」だそうですが、怪しいと思う。

 パイプショッピングのあとは、トーレン社長と名鉄メルサの8階の松江料理屋で鰻まぶし(お重に入った上品版ひつまぶし)を食べる。ほんとは鯛飯の店らしい。

 5時、九段会館ティールームで、トーレン社長をとり・みき氏に引き合わせる会。河出書房新社のとりさん担当は、《20世紀SF》担当のI藤さんなんでした。やっぱりというか当然というか。
 打ち合わせが終わってロビーで立ち話しているところに高橋良平氏が通りかかり、トーレン・スミスのあまりの変わりように茫然。
「どうしちゃったの。あんただれ?」
 とか。まあ体重が50キロ近く増えてるから、半分は知らない人なので。日本にいたころのトーレンは極貧にあえいでて栄養失調状態だったらしい。

 なぜ良平さんが通りかかったかと言えば、九段会館の3階で6時から《小松左京さんの古希と田中光二さんの還暦を祝う会》が開かれるため。オレは出席予定じゃなかったんだけど、《小松左京マガジン》の会費を払う使命があるのでそのままずるずると会場へ。

 高千穂遥氏と東京めたりっく通信話。高千穂さんはオレよりあとに申し込んで、オレよりはやく開通したらしい。
「800kbps? 遅いねえ。うちは1.3mbpsぐらい出てるよ。『レジストリのかけら』ちゃんと入れてる? Windows98環境だとMTUの値がダイアルアップに最適化されてるから、ADSLにしたらレジストリいじらなきゃダメなんだよ」
 と講釈される。べつに800kbpsでもたいして不満はないのだが、高千穂さんに負けてると思うとすごく悔しい気がするのはなぜ。
 しょうがないので家に帰ってからgoogleで検索して、『レジストリのかけら』を入れてみました。
TMT非公式板からリンクされてるCATV研究所のユーザー速度測定で調べると、1.3mbpsぐらい出るようになった模様。もっともレジストリ変更前の数値はここでは計測してないので、実際どのぐらい速くなったかは不明。でもとりあえず高千穂さんに負けてないようだからよしとしよう。貴重な情報ありがとうございました>高千穂様。
『教養』もちゃんと読みます許してください。小松さんの奥さんはページを繰る手が止まらず一気読みしたんだそうで、「こんなことは『日本アパッチ族』以来」だとか。

 主賓の小松さんは、体調不良につき自宅の書斎からテレカンファランス参加。テレプレゼンスでも存在感が大きかったり。いつまでもギャグを飛ばし続けて話が一段落しないのが司会者泣かせ(笑)。

 一次会終了後は、祥伝社のI野さん、関口苑生、川又千秋、山田正紀、今野敏など各氏と銀座・月のしずく。主に山田さんとSF話。「誉められてばかりじゃなにも言われないのと一緒」という声に応えて「ゼリー・ビーンズの日々」の説明過剰を厳しく批判する。これっててっきり上遠野浩平『ぼくらは虚空に夜を視る』の山田正紀版変奏曲だと思ったんだけど、そうじゃなかったらしい。山田さんが考えてることは鏡さんが考えてることよりずっとわかりにくいと思うんですがどうですか。




【2月22日(木)〜27日(火)】


 すでに2週間締切を過ぎた『ハイペリオンの没落』の解説を泣きながら書く。『ハイペリオン』と『没落』とつづけて読み返してるうちに1週間たってしまったのだった。こういうスタンダードな傑作の解説には向いてない気が。
 週刊現代の『黒祠の島』書評、アニメージュのコラム原稿、マイクル・コーディの新作『クライム・ゼロ』の推薦文、アスキーネットJのオークションウォッチング原稿、小説すばるの書評などなど、たまりにたまった仕事を猛然とかたづけてやっとひと息。本気で仕事を減らさないとどうにもならないなり。
 さらにbk1のコラムを2月中に更新すると前回書いたのを思い出し、あわてて原稿に着手。結局、2000年の推薦作ベスト50でお茶を濁す。翻訳SFはほんとは20冊も推薦できないんですが。

 23日は、急遽決まった鶴巻和哉監督インタビュー@三鷹GAINAX。送られてきた地図を持ち、どんどん先に立って歩いていくS澤編集長。たしか井の頭通り沿いだと思ったのにどうして井の頭通りを横断してまっすぐどんどん歩きつづけるのか。「地図を読めない男」以前の問題だと思った。

『フリクリ』完結記念ってことだったんですが、最終巻はまだ見てないので、3階の応接室(?)で見せてもらう。うわっ、メディカル・メカニカの××××ってほんとに××××だったんですか。このバカSFぶりには茫然。ふつう考えてもやらないよな。話を聞くと直前に決まったことらしいんだけど、『フリクリ』らしいといえばらしい。

 VoiceATOK14がようやく届いたので、ViaVoiceからインストール。音声認識の精度をあげるために自分の声を覚えさせるんですが、イアフォンマイク使って例文をどんどん朗読するのがけっこう楽しい。読み終えた部分はテキストの色が反転、つっかえたりまちがえたりすると警告音がブーっと鳴ってやりなおし。けっこうムキになりますね。

 本来は、VoiceTrekで録音したインタビューのDSSファイルを読ませて、自動テキスト化するのが目標だったんだけど、なぜかVoiceATOKがDSSファイルを認識してくれない。マニュアルではDSSにも対応してることになってるのになあ。
 しかし、自分の声で試したところ、朗読っぽい読み方なら95パーセントぐらいの認識率を記録する一方、ふつうの会話だとヒット率がガタ落ち。講演の再録ならなんとか使えるかもしれないが(「青年の主張」なら完璧)、座談会やインタビューの起こしに使うのはむずかしそうですね。ViaVoiceのインターフェイスもわかりにくい。




【2月28日(水)】


 一通り緊急の仕事が終わったので、東映本社試写室で清水崇の最新作『富江 re-birth』。面白いシーンは3分ぐらい。上映時間90秒なら傑作になったかも。『replay』とどっちがよりダメかは難しい問題ですが、いずれにしてもそのへんで最低を争うレベルでしょう。いくら企画物でも、せめてシーン単位でもうちょっとなんとかしないと。これなら清水厚の『ヘビ女』のほうがまだ意欲的だと思った。こういう映画見にくる客は過去の伊藤潤二映画をだいたい見てるはずで、いままでのおさらいみたいな話はぜんぶ不要では。柳下日記はまだ誉めすぎ。問題は脚本じゃないと思う。

 SFオンライン最新号の中村融による『SFが読みたい! 2001年版』レビューが、幻想的掲示板2で話題になってるという話を聞いてあわてて見にいく。
『読みたい』の総括の最大の問題は、要するに読んで面白くないってことでしょ。メリハリがないから、とりあげられてる本を読みたい気にさせる力がない。まあベスト20のガイドって性格からして、そうなるのは無理もないし、求められている通りの無難な原稿とも言える。
 一方、個性的なら(執筆者の主張がはっきりしていれば)それでいいのかって問題もあって、たとえば鷲巣義明のSF映画年間総括はいくらなんでもあんまりでしょう。『マグノリア』を入れろとは言わないが、『マルコヴィッチの穴』も『スリーピー・ホロウ』も『呪怨』も、一言の言及もなし。それで「SF映画に特に傑出した作品が少なく、ホラーよりのベスト10になってしまった」と言われても……。
 急遽ピンチヒッターに立って時間的余裕がない仕事だったという点を割り引いても、納得しがたい。トップの三本が『発狂する唇』『リング0』『うずまき』って、それは個性的すぎると思うなあ。
 添野知生担当『SF関連ビデオ目録』の★★★採点のほうが納得できるっていうのはちょっとどうか。あ、関係ないけどこの目録のコメントは熟読すると爆笑です。『SFが読みたい』全体の中でもこれがいちばん労作かもしれない。



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