【11月14日(火)】


 ミステリチャンネル12月号の収録。今月の国内編は

○「雨の鎮魂歌」 沢村鐵 幻冬舎
○「ヴィーナスの命題」 真木武志 角川書店
△「顔のない男」 北森鴻 文藝春秋
 「鎖」 乃南アサ 新潮社
 「殺意」 三宅彰 角川書店
 「症例A」 多島斗志之 角川書店
 「天皇の船」 麻野涼 文藝春秋
 「動機」 横山秀夫 文藝春秋 *短編集
○「不可解な事件」 倉阪鬼一郎 幻冬舎文庫
○「雪月夜」 馳星周 双葉社

 みたいなラインナップ(マークは大森評価)。「天皇の船」と「鎖」は未読。全作読んでから収録に臨む――というポリシーだったんだけど、さすがに11月は読むものが多すぎて手が回らない。
 今回は『症例A』をめぐってトヨザキ社長がヒートアップ、香山さんとの対決が見物です。『動機』はめちゃめちゃ評判がいいんだけど、ふたつめの短編以外はそれほどでも。表題作はホワイダニットが一発でバレちゃうのでかなり減点。そういう話じゃないと言えばそうなんだけど。




【11月15日(水)】


 本の雑誌編集部でみのうらさん@風虎日記と「中年おやじに読ませるティーンズノベル」対談(仮)。
 もともとこの企画は、Zero-CONの椎名×北上対談のとき、「ぼくだって薦められれば読むんだよ」と北上次郎が言い放ったので、「だったら薦めて読んでもらおうじゃないの」ってことで、ティーンズノベル推薦リストをオレが無理やり送りつけてやる――という趣旨だったんですが、編集部の検討を経て、もうちょっと一般性のある特集になった模様。

 その結果、北上次郎も交えて編集部で座談会をやって、その場で10作を決めることに。みのうらさん的には「現在のティーンズノベルの広がりを見せるような10本」を選びたかったらしく、秋月こお・あかほりさとる・神坂一あたりまで入れてきてたんですが、予想通り北上次郎は激しく抵抗(笑)。
 結局、対・中年おやじ的にリーダビリティが高いものがほとんどになりました。まあ基本線は北上次郎の顔を思い浮かべつつ大森が選んだやつなので、上遠野浩平・秋山瑞人・古橋秀之・茅田砂胡・須賀しのぶ・田中哲弥・高畑京一郎・とみなが貴和・岩本隆雄・野尻抱介――みたいなラインナップ。バランスから言うと電撃文庫が多すぎなんだけど、北上次郎は異世界ファンタジーが苦手なのでしょうがない。「天使が出てくるとぼくは読むのやめちゃうんだよ」とか言ってるし。
 この10冊がはたしてどう読まれるか、結果が楽しみなことである。




【11月16日(木)】


 まる一日かけて、本の雑誌別冊『文庫王国2000』の2000年度文庫SFベストテン原稿。今回はほとんど国産の文庫書き下ろしSFの話しか書いてません。つくづく翻訳SFは(少なくともオレ的には)話題がないと思った。




【11月17日(金)】


 有楽町マリオンで『スペース・カウボーイ』をやっと見る。じじい版『アルマゲドン』。『アルマゲドン』の十倍面白いが、じじいの話なんだからこんなに派手にしなくてもよかったのに。むしろ『天の光はすべて星』をやってほしかったですね。あるいはハインラインの「鎮魂歌」とか、デル・リイの「いこいのみぎわ」みたいな路線で。
 西部劇と違って、イーストウッドにはSF映画的教養が不足してましたね。シャトルが打ち上げられるところで終わってれば傑作になったかもしれないのに。惜しい。

 午後6時、赤坂に回って、《週刊現代》2色ページの誌上対局企画、『勝ちにいく麻雀』の闘牌開始。ホスト4人が4週ずつ持ち回りで対局相手2人を呼び(うちひとりは必ずプロが入る決まり)、半荘2回やって、その模様が記事になるシステム。12月は綾辻さんがホストで、ゲストに呼ばれたのが飯田譲治氏と大森。
 飯田さんは竹書房主催の「麻雀最強戦」第6回で優勝。最強位を獲得したキャリアを誇る。ホストの綾辻さんは、双葉社の主催する麻雀名人戦で優勝。第30期名人位のタイトルを持つ現・名人。さらにプロ代表の金子正輝氏は、「牌流定石」の創始者で、最高位戦日本プロ麻雀協会の現・最高位。
 対するオレは、公式戦どころか競技麻雀の経験さえほとんどない(日本推理作家協会主催の新年麻雀大会で4位になったのが唯一の経験)素人ですからね。失うものは何もない(笑)。
 とはいえ、うしろには牌譜を採る係りの人が控えてるので、一回戦の最初は緊張しました。記録に残ると思うと、つい趣味よりセオリーを優先したりして打ち方が変わるね。棒テン即リー全ツッパリな世界にはなかなか行けません。
 というわけで、一回戦はろくに見せ場もつくれないまま3位に終わったんだけど、2回戦東一局の配牌から事態は意外な展開を……ということで、あとは週刊現代を見てね。
 とにかく綾辻名人には足を向けて寝られません。ラストはぜったい金子プロにまくられると思ったのに。神様仏様綾辻様。ありがたいことである。
 飯田さんのカメラで撮影された記念写真はここ
 終了後は近くの寿司屋で打ち上げ。じつは今日が初対面の飯田さんと最近の邦画の話とか、Gセイバー話とか。




【11月18日(土)】


 神田・早川書房地下のリヴィエールで、ミステリチャンネル《ベストブックス》の年末年始スペシャル、2000年「闘うベストテン」の収録。メンバーは、香山二三郎・豊崎由美・吉野仁・大森望のレギュラー陣に加えて、関口苑生・茶木則雄・西上心太・杉江松恋の各氏。
 国内編は本命不在の状況であまり盛り上がらないんじゃないかと心配されたんですが、最後の最後であっと驚く結末が。『木製の王子』を読んでる人は、見て笑ってください。こういう趣向はベストテン史上初かも。あまりにも意外。
 しかし小川洋子の『沈黙博物館』は関口さんとトヨザキ社長がそこまで推すほどの傑作ですか? いやまあ悪くはないけど。あわてて読んだ関口推薦作では、伊井直行『服部さんの幸福な一日』のほうがよかったな。これは村上春樹的ファンタジーの秀作。出久根達郎『紙の爆弾』もいいが、後半ちょっと話をつくりすぎ。

 収録終了後は、主に海外編の見学に来たT田(扶桑社ミステリー夫妻とかもいっしょに神田西口商店街のコロンブスで打ち上げ。
 張り切って店をさがしに走るトヨザキ社長の先導でさらにもう一軒。もう閉店というころになって、杉江松恋に召喚された福井健太一行が新宿からタクシーを飛ばしてなぜか合流。若者に残り物の料理を立ち食いさせるトヨザキ社長とか。
 終電が終わる時間、神田で福井健太がいて……とかいうと思い出したくない記憶が甦るが、結局、新宿から来た人々はふたたび電車で新宿にひきかえして朝まで飲んだらしい。オレはとっとと電車で帰りました。




【11月19日(日)】


 安息日。新人賞の下読みとか。




【11月20日(月)】


 銀座シネパトス1で『カル』。
 ビデオで見た『シュリ』が今年のワーストワンにしてもいいぐらい最低の出来だったので、『カル』の評判にもやや疑いを持ってたんだけど、こっちはまあまあ。しかし韓国の人は吹き抜けの螺旋階段を上から撮るのがどうしてこんなに好きですか。ミステリ映画的にはもうちょっとフェアネスを重視してほしいところ。主演の『八月のクリスマス』コンビはいい感じ。『シュリ』よりははるかにおすすめです。

 銀座から新橋にまわって徳間書店。
 今日の仕事は、徳間デュアル文庫で来年の1月と2月に出る「書き下ろしハイブリッド・エンタテインメント・アンソロジー」シリーズ『ノベル21』の第一弾と第二弾の巻末につく山田正紀×西澤保彦対談の司会。
 ちなみに参加作家の顔ぶれは、一冊めの『ノベル21/text. BLUE 少年の時間』が、上遠野浩平・菅浩江・杉本蓮・平山夢明・西澤保彦・山田正紀。二冊めの『ノベル21/text. RED 少女の空間』が、青木和・大塚英志・梶尾真治・小林泰三・篠田真由美・二階堂黎人。
 SF/ミステリ/ホラーのハイブリッドってことらしい。
 近くの和食屋に場所を移して行われた山田×西澤対談の詳細は、西澤日記既報の通り。山田さんがいろいろと熱弁をふるってましたが(ネタを用意してくる人は違うね)、西澤さんもじゅうぶん役割を果たしていた気が。

 対談でいちばん笑ったネタは、

大森: 西澤さんはこれまでSFと本格ミステリのハイブリッドを書いてきてるわけですが、今後新たなハイブリッドの予定は?
西澤:小説推理にいま書いてる『両性具有迷宮』がハイブリッドです。
大森:なんのハイブリッドなんですか?
西澤:「森奈津子」とパズラーのハイブリッドです(きっぱり)。

「森奈津子」はすでに一ジャンルらしい。そこから森奈津子テーマのオリジナル・アンソロジーはどうかという話になり、タイトルも決定。
『屍鬼・奈津子』
 ほんとは当然『四季・奈津子』で中編4編という話だったんですが、さすがにそのまんまはまずいんじゃないかと。集英社ならいいのか。

 対談終了後、お茶の水パセラで第二回「輝け! 神保町ムード歌謡祭」。倉阪鬼一郎・C塚K子+集英社組ぐらいだろうと思ったら、東雅夫・森奈津子・南智子・日下三蔵・AZM・T内Y一の各氏も来ててすでに歌いまくり状態。

 T内くんと言えば、いま出てるYOUNG YOUの島村洋子コラムにも堂々登場。「T内は顔がいいのになぜ女にモテないか」が綿密に分析されているのだった。
 茶木さんにそのコラムの話をしたら、あっさり一言、
「T内がモテない理由? そんなの決まってるだろ。セックスがヘタだからだよ」
 だそうですが、経験者の証言を待ちたい。ってそれじゃ『EdTV』か。

 カラオケのほうはムード歌謡祭に突入して以降、36歳以下の人は参加できない状態。生まれる前の曲ばかり聴かされた若い人たちはご苦労様でした。
 さいとうよしこは「いつでも夢を」を山田正紀とデュエットしたのが自慢らしい。




【11月21日(火)】


 怒濤のトークシリーズがやっと一段落したので仕事を再開。




【11月22日(水)】


 年末の各種映画ベストテンに向けて未見作消化中。本日は市川妙典のワーナー・マイカルで『チャーリーズ・エンジェル』と『インビジブル』。
『チャーリーズ・エンジェル』はすばらしすぎ。『MI:2』とか『ワールド・イズ・ノット・イナフ』とかがどんどんバカに見えてくる映画。ハリウッド娯楽アクションはチャーリーズ・エンジェルだけいればいいんじゃないの。
 それにしても、パーティ場面のひとつはジャパニーズ趣味で、BGMがまたしてもピチカート・ファイブの「ツイギー・ツイギー」。アルトマンの『プレタポルテ』でかかるのもこの曲じゃなかったっけ? しかも『SUKIYAKI』と同列の扱い(笑)。
 日本公開バージョンはルーシー・ルーの役を松田聖子で撮るのはどうか。いやまあ叶姉妹でもいいですが。

『インビジブル』はバーホーベン的な毒気がもうちょっと欲しかった。ていうか、この展開ならやっぱりポルノにしないと。

 マイカルは、西葛西からなら15分で行けて、午後9時以降だと1200円になるので結構べんり。商店街はずいぶん店が増えてきたし。24時間営業になればもっとうれしいんだけど。


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