尼崎浄水場訪問 Amagasaki Wpp
作成者  BON
更新日  2002/11/16

 土木学会環境工学委員会のワークショップで訪問しました,阪神水道企業団,尼崎浄水場訪問記録です。深層オゾン接触槽や,浄水池上部の民地利用など先進的な取り組みで有名な同浄水場です。当日お世話になりました関係各位に感謝申し上げます。m(_ _)m

尼崎浄水場【阪神水道企業団】
 尼崎浄水場の公式HP。阪神水道企業団ホームページへ。
尼崎浄水場訪問記録
 11月8日午後訪問。天気は晴れ。

【参考】
 浄水場や水道施設の訪問記録についてはどんどん行っていきたいと思っております。もし取材させていただけるところがありましたら是非お教えください。


尼崎浄水場訪問記録

 平成14年11月8日午後,表記委員会の会合に併せて行われた見学会に参加させていただき,阪神水道企業団の尼崎浄水場を訪問させていただきました。浄水フローにそって優れたその様々な取り組みを紹介し,今後の設計等に参考にさせていただきたいと思います。

 まず,全面更新にあたっては,水の運用についての,2ルートある供給系のうち北側路線を拡充により強化,ここからの供給に必要な暫定ポンプ施設などを設置したうえで既設浄水場を全面撤去しているとのことで,この決断が自由で全面的な更新に大きく寄与しているものと思われます。

 そもそも,前例のない革新的な取り組みをいろいろ盛り込むことはなかなかできないものです。尼崎でこれができた背景には,異動が少なく職員の専門性が確保されていること,歴史的な経緯からチャレンジ精神を是とする風土があったことなど,などが挙げられるとのことです...これが実は一番参考にしなければならないことなのかもしれませんね。

フロック形成池

 フローの始点は着水井です。 フロック形成池は上下う流式を採用しているそうです。フロック形成池に限らず,各種の池について極力上向流,下降流を基本としたとのことです。これは,横流によって生ずる遠心力の影響を小さくし,均等流を実現するための設計思想であるとのことでした。
 

オゾン発生装置

 オゾンの生成は,隣接する大阪酸素株式会社より直結で酸素の供給を受けることができるメリットを活かし,空気方式ではなく酸素方式を採用しています。

 酸素方式ではコロナ放電が発生しないため青白い色はないとのこと。オゾン発生器の側面には「水の戦士ピュアリン」の活躍を称える絵が描かれています。(^o^)ちなみにピュアリンとは,この浄水場のPRビデオに出てくるヒーローです。
 

オゾン接触池

 全体に省スペースに対して意欲的な設計となっていますが,これは,高度処理導入をきっかけとした甲山浄水場との統合がその背景になっているとのことです。

 写真のオゾン反応池は深層式です。活性炭は排オゾン処理を兼ねる効果も見込んで上向流の流動床方式を採用し,省スペースに資しているとのことです。
 

汚泥脱水設備

 コジェネの導入により汚泥を造粒脱水し,園芸用に全量売却しているそうです。尼崎浄水場からの汚泥は活性炭が少量混じっているのですが,逆にこのことが家庭内園芸用途には脱臭効果があるとして重宝されているとのことです。水道用と家庭用では期待される吸着能が異なるが故に,水道用としては使用済みでも家庭用としてベンゼン環等を吸着するためには未使用と同じレベルの吸着能が残っているためとのことで,このお話は新鮮でした。なお,ここの発生土を利用した園芸用土は隣のホームセンターでも購入可です。
 

応急給水栓

 全体に見学者スペースを充実しています。見学者用のPRビデオ(水の戦士ピュアリン)の作成,廃止した甲山浄水場の機材などを利用した展示館の併設,場内配管の一部の露出,傾斜板沈殿池やオゾン処理施設へのぞき窓の設置などが目立つところですが,見学者に見える部位には化粧型枠を用いてそうでないところは打ちっ放しにするなど,細かい工夫も見られるようです。また,阪神大震災の教訓を生かし,応急給水用給水栓を設置しているとのことで,写真はその給水栓です。
 

浄水池上部利用

 浄水池上部の有効活用としてホームセンターを誘致。見た感じでは,地下が浄水池になっているとは思えません。奇しくも訪問の前日,11月7日にオープンしたばかりとのことでした。このへんの経緯については,第52回全国水道研究発表会でも発表されていますのでご参考まで。

 最後に,質疑や講義のなかで,リスクマネジメントの基本的な考え方を講義いただきました。水道が抱える可能性のある水質リスクについて6群に整理したうえで,そのうち対応の必要性の高い疫学的リスク,化学物質リスクについて個別に精査しているそうです。

 想定最悪のケースとして,「上流の京都市でたとえばクリプトの大流行が発生しても,安全な水道水を供給することができる」レベルの確保を目標に設定し,そのための浄水方法を技術的に精査確立,毎日リアルタイムの水質情報を公開することでアカウンタビリティを果たし,一連のルールの遵守を自らに課すことで責任を明確にする,という流れになっているとのことなっているとのことでした。

【備考】


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