第5回 水道技術国際シンポジウム 5th International Symposium
作成者  師匠
更新日  2001/05/30

 標記研究発表会,当時北大の学長であった丹保先生の基調講演要約です。私は本会にはほとんど参加できなかったのですが,水循環に関する哲学として非常に示唆に富む内容なので,掲載させていただきました。

第5回水道技術国際シンポジウム
 ここで掲載したのは基調講演のみですが,幅広い討議があったとのことです。

【参考】


第5回水道技術国際シンポジウム

北大 丹保総長の基調講演 「近代後への都市・地域水システムの展開」

 産業革命を経て約200年におよぶ「近代」という人類の大増殖の時代は、今地球の容量限界に至って終わろうとしている。これからの時代は近代後であり、地球環境制約の時代である。

 近年までの我が国の都市水システムは、水道は「清浄な水を、豊富に、且つ低廉に市民に供給」し、下水道は「都市の衛生と発達を促し、公共水域の保全に資する」という固有の目的をそれぞれ持ち、個別に整備される縦割り水行政で、双方が共に水循環サイクルの直列の一部であることを認識したものではなかった。

 大阪や横浜等河川下流部都市では、下水処理水が放流された河川水を水道原水として利用しているが、生物化学的処理を主体とする近代下水道は、懸濁物とBOD成分以外の質に対しては高い制御性を有しない。また、最近では様々な合成化学物質に由来する内分泌攪乱物質(いわゆる環境ホルモン)による健康障害が問題になってきている。

 このことから次の時代(つまり近代後)に来る都市・地域水代謝システムは「必要な水質の水を、必要な量だけ供給する」ことを「水資源の適切な使い分けと使い回しによって、最小価格(最小のエネルギー消費)で達成する」ように設計し、「水利用と排除(水代謝)にあずかる都市・地域が水環境に対して直接適切な責任を持つ」ことを技術と経営の目標とすべきである。

 丹保先生から近代後の水道の一つの形態として以下のような提案があった。

 全ての水道水に高品質を求めるのではなく、例えば飲料水は水循環サイクルの上流の厳密に管理された保全区域から良質の原水を取水し、膜ろ過等の精密な処理をして給水し、その他の量的に大きな割合を占める非飲料水は、下流側の利水地点に近い流域面積の大きな河川から取水し、必要に応じて高度処理を経た下水のリサイクル水を加え、現用水道系を転用した一般水道で供給する。 渇水期においては、非飲用系に対する高度下水処理水の混入度を増して対応する。

【備考】
当稿は私の師匠よりいただいたものです。


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