作成者 | BON |
更新日 | 2007/04/22 |
水道事業の統合について。平成13年度の水道法改正により,施設統合を伴わない事業統合も可能になりました。規模の拡大による効率化を図るためにも,今後の計画立案時に考慮すべき重要性が増大することが見込まれるでしょう。
![]() |
水道事業の統合 水道事業の統合にあたっての確認事項等について。 |
![]() |
広域化 水道と広域化について。このページともかなりかぶりますが。 |
【参考】
(1)水道の統合に関する制度
水道の効率化の一手法として,規模のメリットを追求できる広域化があり,行政的にも積極推進されています。法的にも,平成13年度の水道法改正で「施設連絡を伴わない事業の一体化」が可能になったほか,簡易水道事業の統合についてはそのための補助制度があります。
![]() |
水道法 今回の水道法の改正関係はこちら。 |
![]() |
水道の種類 簡易水道事業や飲料水供給施設の一種として統合に関する情報を掲載。ややこしいですが。 |
【備考】
1)合併関連制度
市町村合併に伴い水道事業の統合が必要になる場合があります。市町村が複数の上水道事業を運営すること自体には問題はありませんので,当面市町村の合併を優先して,水道事業の合併を後回しにすることも有力な選択肢です(南アルプス市など)が,このような場合でも将来的には水道事業も合併を想定していくべきでしょう。
市町村の合併を行う場合,水道料金のように,市町村のサービス水準に関する調整は,合併協議会を設立してここで調整することとなります(そうしないと特例措置が受けられない)。詳しい制度などについては,市町村統合の窓口に掲載された情報が参考になると思います。
![]() |
【合併相談コーナー】 総務省による市町村合併の説明コーナー。 |
市町村合併に伴う水道の対応については,日本水道新聞3030303に,2月13日付事務連絡,2月17日付の全国水道担当者会議で厚生労働省の基本姿勢が報道されています。大まかな内容は以下のとおり。
市町村台併に併せて新規水道事業認司を受ける方法は主に水道法第六条に基づくもの。合併に係る市町村が経営する水道事業体が
1 合併前に規定(法十一条)に基づき廃止される自治体側の事業が廃止許可を得る。
2 新自治体の水道事業では以下のような認可申請書を作成提出する。
3 水道用水供給事業の場合,給水対象である水道事業者とそうでない水道事業者の合併は給水対象の増加には該当しない。よって変更認司の必要はない。
以上ですが,正確を期す必要がある場合は以下のサイトでご確認を。
![]() |
市町村合併の際の水道事業認可及び統合について@【厚生労働省事務連絡のページ】 厚生労働省の通達原文。 |
![]() |
【改正水道法の施行について】@【厚生労働省健康局水道課】 労働省の通達文のページです。 |
4)合併の類型
市町村が合併する際の水道事業の統合は,大きくわけて以下の4種の類型が考えられます。
5)料金格差の是正
水道事業体の統合にあたって最も大きな障害は通常は料金体系の違いです。逆説的な話ですが,広域水道で複数の市町村に末端供給している場合などはもともと地域同士の結びつきが強く,合併もスムーズに進んでいるようです(さいたま市,つくば市など)。料金体系の違いをどのように取り扱うべきかについて検討してみます。
一般に,自治体同士の統合などは,サービスレベルが異なる場合,負担は少ない方,サービスは充実している方に併せることにより統合への障害を取り除くのが普通です。これは,合併のように特殊な負担を伴う事業をスムーズに進めるためにやむを得ないところがあるのですが,このやり方を踏襲すれば,水道料金も低い方に合わせることになりがちです。(下項目の1に相当。)この場合,独立採算を前提とする水道では,いくら規模のメリットが出るとはいえ,すぐに収入欠損が表面化します。
料金格差の解消については,
などが想定できると思いますが,制度上の問題なのでどれがよいかは事業体の事情を勘案しないと一概には言えません。基本計画の一テーマとして,その能力を有するコンサルなどに相談なさるとよいかと思います。
市町村合併による水道料金の統一の実態については詳細に調査された事例がありますのでご参考ください。
![]() |
市町村合併と水道料金@【NJS環境経営工学研究所】 市町村合併時の水道料金の実態を紹介。 |
6)市町村合併時の手続き
認可手続きをどのようにするかについての流れを簡単にまとめると以下のようになります。具体的に提出する書類の様式などについてはなにぶんにも社業で収集作成しましたので私の一存では掲載できません(^o^)ゞ
【備考】
上下水道の所掌部署が一体化して上下水道局等を設立する例がここのところ目立っていますが,その理由はなんなのでしょうか。この件について問い合わせをいただいたのをきっかけに少し調べてみました。
まず,上下水道部署の統合のメリットについて整理すると,以下のようになります。
技術的交流
海外の水道事業では上下水道(さらに水資源環境まで)を一体で取り扱っている場合が多く,国際交流や意見交換の視点からも上下水道一体での事業推進が望ましいものと考えられます。また,名古屋市のように,将来的な流域管理をにらんでいる例もあるようです。
これらメリットに比較すると,積極的なデメリットはあまりありません。統合途中の作業がいろいろ面倒くさく,その分でメリットを相殺してしまう場合がある,という程度しか指摘できません。
部署組み替えにかかるコスト
現在の体制が分離であるなら,これを一つの組織にするための負担は決して無視できるものではなく,その犠牲を払ってまで一つの部署とする必要はないのではない場合も多いようです。
技術的,コスト的なアプローチ手法の違い
これは多分に日本的なものかもしれませんが,厚生労働省所管の上水道事業が独立採算の公営企業としての性格が強いのに対し,国土交通省所管の下水道事業が社会福祉のための公共事業としての性格を強く打ち出しているため,技術的には関連性のあるはずの上下水道事業の間に,特にコスト感覚の点において相違が見られます。この一種の「すれ違い」は,そのまま技術的アプローチの違いに投影されており,自発的な統合が進まない原因にもなっているように思います。
ただ,上下水道の統合のもう一つの背景として,下水道事業への企業会計導入の動きがあることについては触れなければならないでしょう。上水道事業は企業会計が原則なので,下水道の会計手法を変更する作業にあたって,上水道の経験豊かな職員を使うことが考えられ,この際に合わせて上下水道部局の統合をしてしまうことには合理性があると思います。もしかしたら,このような理由によって,今後,上水道,下水道部局の統合が進むのかもしれません。
【備考】