浜益地域の維管束植物

 

福地郁子・五十嵐 博・金上由紀・桂田泰恵・
笈田一子・高橋美智子・与那覇モト子

 

(1)維管束植物目録

2.ノート

 (1) 分布上、興味深い温帯性植物

 調査地域は、石狩市の北方にある厚田村、浜益村および増毛町の一部(雄冬)にあたり、樺戸山塊と暑寒別山地の日本海側沿岸部にある。温帯性植物が北海道においてそれらの分布限界に達する種々の例は、宮部金吾、舘脇操、渡邊定元の先達によって指摘されてきたが、私たちのまとめの中では、それらの温帯性植物として以下の植物が挙げられる。それらについて伊藤・日野間ほかによる「環境調査・アセスメントのための北海道高等植物目録」による北限分布地を()内に付記する。

 ヒメハイホラゴケ(後志)、ヒメヤシャブシ(留萌・宗谷)、ツノハシバミ(留萌)、クリ(石狩)、ヒナタイノコズチ(石狩)、キバナイカリソウ(石狩・留萌)、ミツバアケビ(留萌)、ワサビ(石狩)、クズ(留萌・上川)、ドクウツギ(留萌・上川)、ミツバウツギ(空知・上川)、フギレオオバキスミレ(石狩・空知)、オオサクラソウ(石狩・留萌)、ハクウンボク(留萌・上川)、サワフタギ(留萌・上川)、スナビキソウ(石狩・宗谷)、タチカメバソウ(留萌・上川)、カリガネソウ(石狩・空知)、クサギ(空知・上川)、ジャコウソウ(留萌)、クロバナヒキオコシ(石狩・留萌)、アゼナ(留萌・上川)、タニウツギ(留萌・上川)、ノビル(石狩・空知)、アサツキ(留萌・上川)、ワニグチソウ(石狩)、シオデ(石狩・上川)、クロミノコジマエンレイソウ(胆振)、ナガイモ(石狩)、アイアシ(後志)、チガヤ(石狩・上川)、ショウブ(上川・宗谷)などである。

 上記のち、特にヒメハイホラゴケは後志まで知られていた隔離分布種として、またヒナタイノコズチ、ワニグチソウ、クロミノコジマエンレイソウ、ナガイモ、アイアシも北限を延長したことから、それぞれ特記される。さらにキバナイカリソウ、ミツバアケビ、クロバナヒキオコシは、留萌(樺戸山塊と暑寒別山地を北限地として知られていた隔離分布種である。

 

 (2)分布上、興味深い高山植物

 浜益村から聳えている黄金山、あるいは海岸の海蝕崖には、ミヤマイワデンダ、ハイマツ、ミヤマハイビャクシン、ホソバツメクサ、ハクサンイチゲ、ミヤマハンショウヅル、モミジカラマツ、ミヤマハタザオ、ミヤマダイコンソウ、イワキンバイ、チシマザクラ、タカネナナカマド、エゾシモツケ、エゾノシロバナシモツケ、レブンサイコ、シラネニンジン、ミヤマホツツジ、コケモモ、モイワシャジン、アサギリソウ、ミヤマアズマギク、トウゲブキ、ハクサンチドリなどの高山植物が認められる。これらの高山植物は、いずれも決して高山に達していない低い標高の場所で崖地中心に生育している。

 

 (3)海岸植物

 海蝕崖直下の岩礫地や草原にはハマツメクサ、エゾマンテマ、ホソバノハマアカザ、ハマアカザ、ミヤマトウキ、カラフトニンジン、マルバトウキ、カワラボウフウ、オカウツボ、ハマオトコヨモギ、ピレオギク、フォーリーアザミ、エゾオグルマ、シコタンタンポポ、エゾスカシユリ、ネムロスゲなどが生育しており、厚田や浜益の小規模な砂丘にはオカヒジキ、ハマエンドウ、センダイハギ、ハマベンケイソウ、スナビキソウ、ハマニガナ、テンキグサ、アシボソ、アイアシ、コウボウムギ、コウボウシバなどが見られる。特に海岸砂丘に対して砂丘そのものを破壊する所が少なくないので、保護上注意が必要である。

 

 (4) その他、保護が望ましい植物

 (1)から(3)まで挙げてきた植物のほかに、コウホネ、ヤマシャクヤク、エゾノチャルメルソウ、バシクルモン、ネムロブシダマなど、貴重植物種やRDB指定種が含まれている。これらを含めて、調査地域の植物相の特徴が存続していくことを望んでいる。

 

 

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ボタニカ15号

北海道植物友の会