「おい、アストロメリア!!
 魚が釣れたから使ってくれ」


 勢い良くドアが開け放たれると、
 籠を担いだバイオレットの豪快な笑い声が響いた

 突然の来訪者

 ずかずかと足音を立てて歩く彼に、
 アストロメリアは相変わらずの無表情で諌める



「調理中です
 埃を立てないで下さい」

「悪ぃ、とりあえずここに置いとくからな」

 ドシャッ

 アストロメリアの注意を聞いていたのか、いないのか
 派手な音を立てて籠を下ろすバイオレット

 見た目も中身も豪快な彼には無理な注文だったのかも知れない

 バイオレットの後ろに控えていたロイドが、
 申し訳無さそうに両手を合わせている


「海賊は釣りもするんだね」

 籠の中を興味深そうに覗き込むメルキゼ
 バイオレットは、まさかここにメルキゼがいるとは思っていなかったらしい

 微かに目を見開いた――…が、
 彼がエプロンを身に付けている事を知ると更に驚きの声を上げた




「…騎士様よ、あんたらは客なんだ
 こっちに気を遣うこたぁ無いんだぜ?」

「私の単なる趣味だから気にしないで
 アストロメリアに無理を言って厨房を貸して貰っているんだ」


 一匹の大きな魚を手に取ると、
 メルキゼは慣れた手付きで三枚におろして行く

 彼がアストロメリアを気遣って調理台に立っているのなら止めただろうが、
 メルキゼの心底楽しそうな表情を見て、バイオレットは言葉を飲み込んだ

 好きでやっているのなら構わない
 食事のメニューも増えるし、互いにメリットがある


「……好きな奴は本当に好きだからな」

「バイオレットは料理しないの?」

「昔は当番制で飯作ってたらしいけどな
 アストロメリアが来てからは、ずっとこいつがやってるぜ
 僕も一度だけ手伝ってみた事はあるんだが…
 大不評でな、仲間全員から料理禁止令を食らっちまった」


 ふっ

 バイオレットの視線が遠くなる
 どうやら昔を思い出しているらしいが…




「たった一度の失敗で禁止令…って、厳しくない?
 最初は誰だって上手には作れない物だけれど…」

「確かにそうかも知れません
 しかし…騎士様はあの惨劇
 目の当たりにしていないからそう言えるのだと思います」


 物凄く不味かったのか
 それとも食中毒でも起こしたか

 もしくは、その両方だろうか


「…バイオレット、何を作ったの?」

「パスタだ
 うみうし入りのな」

 共食いですか



「スミレちゃん、厳密に言えば違います
 うみうし入りのパスタではなく、
 あれはパスタ入りうみうしです」

 何それ
 本気で、何なのそれ


「昔食った、丸鳥の中に米を詰めて焼いた料理が美味かったんだ
 だからそれを他の食材でアレンジ出来ない物かと思って…
 それでうみうしの中にパスタを詰めてみたんだが」

 発想は悪くない
 しかし組み合わせは最悪

 というより
 どうやって詰めた!?



「ふっ…この僕の手に掛かれば、
 生きたうみうしにパスタを詰め込む事くらい造作も無い」

 生きてたんだ…
 それは当のうみうしも、さぞ驚いた事だろう


「素材の味を丸ごと楽しんで貰おうと思ってな
 うみうしは一切、加熱無しで作ったんだ」

 丸ごとはダメええぇぇ…ッ!!
 ナマはもっとダメえぇぇぇー…ッ!!!!



「うみうしは最後まで皿の上で蠢いていました
 活きの良さが裏目に出ていたとも言えます」

「せ…鮮度抜群じゃな…」

 鮮度の良さが、
 ここまで嬉しくない料理も珍しい


「スミレちゃんに『さあ食え』と言われたものの、
 全員が雷に打たれたかのように硬直してしまいまして
 なかなか最初の一歩を踏み出すのに勇気が要りました」

 気持ちはわかる
 さぞ怖かっただろう




「蠢くうみうしを押さえ付けて包丁を突き立てると、
 切れ目の入った腹部から粘液に光るパスタ
 まるで寄生虫の如くウネウネと滑り出てきまして…」

 恐らく食堂は絹を裂くような男の悲鳴に包まれた事だろう


「ご存知ですか?
 うみうしの体液って紫色なんです
 この粘液に染まったパスタはこの世の物とは思えませんでした

「怖かったぜ…
 あれが地獄って奴だ…」

 瞳に涙を浮かべながら、
 当時の惨劇を振り返るロイド

 まさに地獄絵図だったのだろう



「何が怖いって…
 あのグロいパスタを無表情で食うアストロメリアの姿が!!」

「……私ですか?」

「ああ、お前がだッ!!
 あんな寄生虫の塊りを眉ひとつ動かさずに食うんじゃねえ!!
 もう…何かに取り憑かれたみたいで怖かったんだぞ…ッ!!」


 それは怖い
 というか、ゲテモノを食べても表情、変わらないんだ…

 恐るべし鉄面皮



「味自体は決して悪くはありませんでした
 見た目よりも味…とは良く言ったものです」

限度ってもんがあるだろ!?
 見た目が悪過ぎんだろうが!!
 あれを粘着質な音を立てながら『美味い』って食うお前の姿!!
 料理よりもお前の姿の方が化け物みてぇで恐ろしかったんだッ!!」


「両親に『ご飯は残しちゃダメ』と言い聞かせられて育ったもので
 実家が農牧業だったせいもありまして、その辺は厳しく教育されました」

「つーかアレを飯として認識する時点で間違ってんだろうがッ!!
 下手すりゃ中毒症状でぶっ倒れる可能性だってあったんだぞ!?
 お前は親御さんから『命を大切にしろ』とは教わらなかったのか!?」

「ロイド…お前、そこまで言うか?



 当時の恐怖を思い出して震えながらも、
 紫のパスタを頬張るアストロメリアの姿が
 いかに恐ろしかったかを熱弁するロイド

 惨劇を引き起こした張本人という手前、強くは出られないのか
 遠慮がちに突っ込みを入れながら引き攣った笑みを浮かべるバイオレット

 そして、そんな2人に挟まれながら
 終始、無表情を貫き通すアストロメリア

 海賊達の中で浮いた存在に見えたが、
 この3人、凄く仲が良いという事に間違いはないだろう


「案外…良いトリオじゃな…」

「性格、合わなさそうだけど、
 意外とバランスが取れてるのかもな…漫才トリオとして」

見ている分には面白いよね」


 ぴたっ

 急に動きを止める海賊3人
 彼らはおもむろにカーマインたちを振り返る

 そして――…


「その言葉…
 あんたらにだけは言われたくなかった…ッ!!」


 絞り出すかのようなロイドの声に、
 大きく頷くバイオレットとアストロメリア

 彼らから見れば、カーマイン達の方こそ漫才トリオ

 しかし
 結局は、どっちもどっちである






「……で、そんな事を言っている間に
 料理が完成してしまったのだけれど…」


 いつの間にか、テーブルの上には大量の料理
 バイオレットたちが持って来た魚がふんだんに使われている

 喋りながらも手はしっかり動かす

 生き方は不器用だが、
 料理の手際だけは良いメルキゼである


「もう出来たのか!?」

「煮魚、焼き魚、フライにお刺身、炒め物…
 お酒に合いそうな味付けにしてみたけれど、
 他にも食べたい物があったらリクエストしてくれ」

「いえ…もう、充分…です」


 ずらりと皿が並んだその光景は、
 宴会というよりは給食に近い物がある

 結局、一品も作らず終いだったアストロメリア
 このままでは悪いと思ったのか、鍋を手に取り洗い始める



「…じ、じゃあ…僕たちも皿、運ぶか…」

「あっ…そ、そうだな…
 後は俺らでやりますんで、騎士さんは休んでて下せぇ」


 黙っていたら、全ての仕事をメルキゼ1人でこなしてしまう

 そもそも自分達は持て成す立場だった筈だ
 それなのに、接待するべき相手1人が働いているという現状

 流石にこのままでは立場が無い
 慌てて手伝いを始める海賊たち



 ……しかし

 ロイドはともかく、バイオレットはキャプテンである
 その立場上、普段からあまり手伝いをしていないらしい

 明らかに慣れていない手付き
 ひしひしと伝わる危機感に、周囲に戦慄が走る


「ちょっ…き、キャプテン…」

「スミレちゃん、皿を運ぶのはロイドに任せて下さい
 手伝って頂けるのなら、こちらの洗い物をお願いします」

「そ…そうか…?
 僕がやったら皿をことごとく破壊しそうなんだが…」

「鍋とフライパンを磨いて下さい
 これなら誤って落としても割れません
 そこの棚にクレンザーがありますので」

「お、おう…」


 スミレちゃん、初めてのお手伝い

 そんな一文が脳裏に浮かぶ光景だ
 慣れないながらも懸命に手伝おうとするその姿は、見ている分には微笑ましい

 ……あくまでも、遠くから見ている分には




「うわっ!?」

 バイオレットが悲鳴を上げる
 間髪置かず、戸棚の中から雪崩のように落下する調味料の缶

 派手な音が響き渡る
 戸棚の中身を見事なまでにぶちまけたのだ


「……うわ…お約束だなぁ……」

「カーマインよ…
 お主、こんな時でも落ち着いておるのぅ…」

「うん…何となくお約束的展開で予想出来てたからさ…」


 手伝おうとして、余計な仕事まで増やす
 どうやらこのキャプテン、ドジっ子属性を備えているらしい

 戸棚の周囲に散乱した調味料の缶を眺めながら、
 驚くよりも先に感心する騎士(偽)たち一行



「スミレちゃん、大丈夫ですか?」

 流石は片腕と言うべきか
 アストロメリアだけは真っ先にバイオレットを心配して駆けつける

 …ただし、あくまでも無表情のままだが


「あー…驚いた
 うっかり大砲をぶっ放しちまった時並みに驚いた」

「……その様子だと怪我は無いようですね

 ぽりぽり

 頭を掻きながら気まずそうに笑うバイオレットに、
 一先ず周囲は安心する


 ―――…が


「……っ…と…あ、危ねぇッ!!」

 戸棚の上に乗っていた粉袋

 先程の衝撃でバランスを崩したらしいそれは、
 ゆっくりと傾き――…カーマインの頭上目掛けて落下した


「どええええええッ!?」

「わっ…あ、危ない…ッ!!」


 頭を庇いながら屈み込むカーマイン
 咄嗟に両手を差し出すメルキゼ
 呆気に取られるシェル
 凍りつくバイオレットと、どこまでも無表情なアストロメリア

 そして


 ばふっ


 盛大な粉塵が巻き上がった
 粉の直撃を見事に受けたメルキゼとカーマイン

 その姿は、まさに黒板消し攻撃を受けた教師

 メルキゼはまだ大丈夫だ
 頭にターバンを巻いているし、エプロンも着用している
 その被害は着替えて顔を洗えば済むレベルである

 しかし
 最悪なのはカーマインだった

 見事なまでの白髪鬼と化している



「…カーマイン…一気に老けたのぅ…」

「流石に…ここまでの展開は想像してなかったな…」


 まさか自分にまで被害が及ぶとは思わなかった
 身も心も真っ白になりながら、『俺も、まだまだだな』と呟く

 ちなみにメルキゼは、
 俯いたまま肩を震わせている

 不幸中の幸いだったのは、
 完成した料理を全てロイドが運び終えていてくれた事だろうか


「申し訳ございません、すぐに湯と着替えを用意します」

 タオルを手にアストロメリアが駆け寄って来る

 カーマインはそれを素直に受け取ったが、
 メルキゼの方は相変わらず肩を震わせたまま顔を上げる素振りが無い



「……どうした、メルキゼ?」

「お怒りは尤もの事だと思います
 本当に、お詫びの言葉もありません」

「いえ…失敗は誰でもする事ですし、
 こんな事で怒るような奴じゃないんですけど…」


 どうも様子がおかしい
 それに肩の震えが気になる

 アストロメリアも不審に思ったのか、
 恐る恐るメルキゼの顔を覗き込んだ


 その瞬間



 ぶえっくし!!


 盛大なクシャミと共に、
 凄まじい粉塵が巻き起こる

 それらは見事なまでにアストロメリアを直撃した


「―――…。」

 アストロメリアの眼鏡が真っ白に曇る
 銀髪なので目立たないが、恐らく頭にも粉を浴びているだろう

 粉塵を吸い込んでしまったのか、微かに咳き込む背中が痛々しい



「メルキゼ…お前、クシャミを我慢してたんだな…」

 彼が俯いたまま肩を震わせていた理由は最悪の形で判明した

 ずずっ、と鼻水をすするメルキゼ
 どうやら鼻に粉が入っていたらしい

 いや
 今はそんなことよりも


「アストロメリアさん…大丈夫ですか?
 ほらメルキゼ、お前もちゃんと謝れよ」

「…いえ、騎士様の責任ではありません
 私に謝罪の言葉など勿体無い…気にしないで下さい」


 元はと言えば、バイオレットのドジが原因である
 カーマインやメルキゼの方が被害者だ

 アストロメリアのとばっちりも相当なものだが――…





 ばっ!!

 突然、メルキゼが両手を広げ、天を仰ぐ
 勢いで再び粉塵が舞うが、この際そんなものはどうでも良い

 周囲が何事かと見守る中、
 彼は声高らかに叫んだ


「おお、神よ!!
 粉まみれな我らを赦したまえ!!」

 突然何だ

 というか
 どういう懺悔だ



「ちょっと待て
 メルキゼ、何が一体どうした!?」

「…謝りたかったけどアストロメリアが謝罪の言葉は要らないって言うから
 だから、とりあえず天に向かって許しを請ってみたのだけれど」


 いや
 それはスケールが飛躍し過ぎだろう

 というか、何故そんな発想に辿り着く!?


「突然そんな意味のわからない懺悔をされてもさ、
 神様も雲の上で困惑してるんじゃないかな…」

 というかメルキゼよ
 謝罪と懺悔は違う


粉っぽくてごめんなさい

「いや、言葉を変えれば良いってもんじゃなくてだな…」

 というか
 そろそろ粉から離れろ

 頼むから思考を粉から切り離してくれ





「…あー…騎士さん、騎士さん
 湯の用意が出来たんで、粉を洗い流して来て下せぇ」


 背後から遠慮がちな声がかかる
 振り返るとバケツと雑巾を手にしたロイドの姿

 その表情に疲れの色が見えるのは、恐らく気のせいじゃないだろう


「……カーマイン、お風呂に入っておいで」

「お前は?」

「私は着替えて顔を洗えば大丈夫
 でも君は全身が粉まみれだから、ちゃんと洗い流した方が良い」

 叩けば、いくらでもホコリ…もとい、粉が出て来そうな状態である
 このままでは周囲に粉を撒き散らかして、迷惑な事この上ない



「それじゃあアストロメリアさんも一緒に入りましょう
 メルキゼ、別に構わないよな?」

「…うん、仕方が無いね
 後で着替えを届けるよ」


 カーマインの事になると嫉妬深いメルキゼである

 不満そうに不貞腐れる
 しかし、だからと言ってアストロメリアを粉まみれで放置するわけにもいかない

 何せメルキゼは彼に粉を掛けた張本人なのだ


「というわけで、行きましょう」

「…いえ、私は後で」

「アストロメリア
 騎士さんたちが良いって言ってくれてんだ、入って来い
 さっさと粉を洗い流して、この銀世界の片付けを手伝え」


 雑巾で床を拭きながら、ロイドが切実に訴える
 ちなみに彼の隣りではシェルがモップを手にしている

 後始末という、
 ある意味最大の貧乏くじを引いた2人かも知れない



「それではご案内します」

「あ…はい、お願いします」


 浴室に向かうアストロメリアとカーマイン
 着替える為に、メルキゼも厨房を後にする

 …粉を撒き散らかしながら

 後に残されたシェルとロイドは、
 げんなりとした表情で天を仰いだ




「…ところで、バイオレットはどうしたのじゃ?
 先程から姿が見えぬのじゃが…」

「さっき、アストロメリアに出入り禁止処分を食らってたな…」


 料理どころか厨房に入る事すら禁止

 少々厳しいような気もするが、
 アストロメリアの気持ちもわからないでもない


「キャプテンに手伝って貰うとなると…
 更に仕事が増えそうな気がするんでな
 いっそ締め出した方が効率が良いって事なんだろうよ」

「うむ…その点に関しては拙者も異論は無いのぅ」


 ごしごし
 モップと雑巾が床を磨く音が響き渡る



「…すまねぇな、ボウズ
 お前にまで手伝わせちまって…」

「ここでお主を見捨てられる程、非情にもなり切れぬ
 それにロイドよ、お主はどうも放っておけぬのじゃ
 掃除くらいしか手伝えぬが…この程度ならいつでも呼んでおくれ」

 にっこり
 微笑む少年の姿は、まるで天使のようだ


「お前…いい子だな…」

 流石は騎士見習いなだけある

 思春期真っ只中のせいか少々生意気部分もあるが、
 根は素直で優しい、良い子なのだろう

 海賊相手でも物怖じしない度胸も気に入った



「俺、昔からガキは大嫌いだったんだが…
 お前みたいな可愛い子になら懐かれても悪い気はしねぇな
 目からウロコが落ちるってのは、こういう事なんだな…」

「そう過大評価されても困るのじゃ
 拙者がお主に肩入れするのには理由がある」

「…うん?」

「お主は拙者の恋人によく似ておるのじゃ」

「……………。」


 それは
 喜ばしい事なのか

 微妙過ぎる評価に思わず押し黙るロイド

 どうせなら父親に似ていると言って欲しかった
 それならイイ話的な展開に持ち込めたのに

 しかし…
 よりによって、恋人って…

 四十路男としては困惑せざるを得ない




「…念の為に聞くが、それは顔か?
 それとも性格が俺と似てんのか?」

属性じゃな」

「…は?」


 思わず手を止め、聞き返すロイド

 そんな彼を知ってか知らずか
 シェルは更に言葉を続ける


「与えられた数多くある選択肢の中で、
 常に最低最悪の貧乏くじを引き当てる不運のアビリティ
 最年長にもかかわらず周囲からの扱いは適当微妙なポジション

 待て

 …何?
 何なの、この言いたい放題



「仕事量のわりに評価は低い
 不満はあれど、口に出す勇気は無いヘタレ脆弱気質
 溜め込んだストレスで自ら更なるダメージを受ける真性のドM属性じゃ」


 何というサンドバッグ状態
 ここまでボコボコに言われるような事…何かしたか?

 というかボウズ…
 俺からの評価を履がえさせる気か



「…と、まぁ…そんな所が拙者の恋人と良く似ておるのじゃよ」

全く嬉しくねぇ

「ふっ…そう申すな
 これから暫くの間、仲良くやろうではないか」


 渋い笑みを浮かべる少年

 天使の微笑み?
 いいや、これは悪魔の微笑

 ロイドは手にしていた雑巾を思わず取り落とした



「……俺…やっぱりガキは嫌いだ……」

 むしろ今まで以上に苦手になりそうな気がする
 落ちたウロコを再び眼球に貼り付けたい衝動に駆られるロイドだった





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