マリンブルーの水彩絵の具を 零したような 空に
どこからか迷い込んできてしまった 真っ白な雲が ひとつ
そこから伸びる
一筋の 飛行機雲―――――
そして。
彼も、彼女も。
お互いを常に――― 確かに、感じていたから。
そのカードはちょうど一ヶ月前、彼の元へと送られてきた。
たった一言の、メッセージ付きで。
『使うんじゃないわよ!』
使っちゃいけないものを・・ どうして送ってくるんだよ?
相変わらずの彼女の様子に、彼は思わず笑みを零したのであった。
微かなモーター音とともに開かれたドアの向こうには。
彼女が一刻たりとも忘れることのなかった人物が。
恥ずかしそうに。
照れ笑いを浮かべながら。
彼女の好きな笑顔で。
確かに、そこにいた。
「シンジ!!」
彼女はそう彼の名を呼ぶと、そのまま凍り付いたように立ち尽くしてしまう。
そんな彼女に笑い掛けながら、彼は後ろ手に持っていた赤いカーネーションの花束を差し出す。
「アスカ、誕生日、おめでとう」
「あ、ありがとう・・・
・・・って、あんた、なんでここに居るのよ!」
「アスカの誕生日だから・・・
理由になってない?」
彼は彼女の瞳をまっすぐに見て、また、笑う。
「あ、あんた、今の時期はずっと日本に居るんじゃなかったの?
ドイツに居るなんて、聞いてないわよ」
「うん。 だって、このために今日、こっちに来たんだもん」
「あ、アンタばかぁ?!
そのためにわざわざ来たっての!?
だいたい連絡の一つもしないで、もしあたしが居なかったりしたらどうするつもりだったのよ」
彼女は、目の前の現実が未だ、信じられなかった。
なぜシンジがここにいるの?
そんな暇はないはずなのに?
こんな事、全然期待してなかったのに。
「そのときはそのときかなって」
彼はそう言うと、照れくさそうに頭を掻きながら、また笑った。
「それに・・・ なんとなく、逢えそうな気がしてたし」
彼女は大きな溜息をひとつ吐くと。
「あんたって・・・ 昔っから思ってたけど・・・・」
今度は満面の笑みを湛え。
「ホントに、ばかね」
そうして。
彼の顔を、瞳を、その蒼い瞳で、体中で、見詰め。
「シンジ・・・・」
素足のまま、一歩、踏み出し。
彼の首に、彼女の細い腕を、すらりと絡めた。
彼女のふわりとした匂いが、彼を包む。
彼女の長い髪が、彼の頬をくすぐる。
彼女の蒼い瞳が、彼の黒い瞳が、お互いを映し出す。
「シンジ」
「なに?」
ふたりは、至福の笑顔になると。
「ありがとっ」
ふたりの間には空気さえなくなり。
一年ぶりに、ふたりは、
吐息を交えた。
時に、西暦2023年12月4日
惣流アスカラングレー 22歳 碇シンジ 22歳
ふたりはまだまだ成長中
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