<旧車シリーズ 210>


MAZDA COSMO SPORT (L10A)


 西ドイツ・NSU社とバンケル型ロータリーエンジンのライセンス契約を結んだ東洋工業が、苦難の開発の末、執念で実用化に成功し、世界初の2ローター・ロータリーエンジン搭載車として1967年に発売したのがコスモスポーツである。心臓部は10A型と呼ばれる2ローターエンジンで、排気量は単室容量491ccX2、9.4の圧縮比から110psの最高出力と13.3kgmの最大トルクを発生した。ロータリーエンジン用に専用設計されたボディはセミモノコック方式で、全高は1165mmと異様に低く、コスモスポーツの未来的なイメージを一層強調した。サスペンションはウィッシュボーン/ド・ディオン・アクスルの組み合わせであった。車両価格は148万円と高価で、東洋工業の高級セダン・ルーチェの2台分に相当した。
 翌1968年のマイナーチェンジでL10B型が登場。ホイールベースを150mm延長して直進安定性を高め、フロントグリル下部にはブレーキ冷却口が追加された。10A型エンジンはポートタイミングの変更により最高出力が128psに向上、トランスミッションは5速に進化した。
 コスモスポーツは月産数十台のペースで1972年まで生産が続けられた。

 未知のエンジンを搭載するコスモスポーツの誕生は、超未来的なスタイリングも相俟って、業界に大きなインパクトをもたらしたことが容易に想像できます。個人的には、現代のハイブリッド車や燃料電池車よりも遥かに大きな衝撃を巻き起こしたのではと推察しています。
 私は小学生時代、街で偶然このクルマの走る姿を目撃し、暫くの間、その光景が目に焼き付いて離れませんでした。驚くほど低い車高から放たれた類稀なる存在感は、おそらく一生忘れることはできないでしょう。一度でいいから、こんなクルマを作ってみたいものですね。

推定年式:1967
撮影時期:1988年6月
撮影場所:福岡県福岡市 クラシックカーフェスティバル会場にて