問題4-3-2 解説

地震1のP波初動のデータを用いた発震機構の作図の手順は以下の通りです.

  1. 極中心の等面積投影図にトレーシングペーパーを重ねて初動分布をプロットします.
  2. 初動分布は北東-南西と北西-南東の2つの節面で4象限に分かれるようにみえます.
  3. トレーシングペーパーをシュミットネット上に重ね,反時計回りに約 45° 回転すると,節面として適当な大円が選べるので写し取ります.同時に,赤道上で大円から 90° 離れた点に大円の極として記号 ♦ をプロットします.
  4. トレーシングペーパーの回転を元に戻した状態です.節面は妥当のようにみえます.
  5. 2番目の節面についてはトレーシングペーパーを時計回りに約 45° 回転し,押し引きの境界になるような大円を探します.その際,1番目の節面の極がその大円上に誤差範囲で重なることも必要です.図のように大円を写し取り,その大円の極についても ♦ でプロットします.
  6. トレーシングペーパーの回転を元に戻した状態で観察します.典型的な横ずれ断層で,断層面は垂直から 10° 傾いていることが分かります.
地震1のP波初動のデータを用いた発震機構の作図の手順

地震2についても以下のように同様に作業します.

  1. データ点の分布は地震1と同じですが,白黒のパターンが異なります.
  2. 初動分布は中心付近で北東-南西に引きが,その両側で押しが分布しているようにみえます.
  3. トレーシングペーパーをシュミットネット上に重ね,反時計回りに約 35° 回転すると,節面として適当な大円が選べるので写し取ります.同時に,赤道上で大円から 90° 離れた点に大円の極として記号 ♦ をプロットします.
  4. 回転を元に戻して観察すると,押し引きの境界となる節面は妥当のようにみえます.
  5. 2番目の節面についてはトレーシングペーパーを先ほどと同じだけ反時計回りに回転し,1番目の大円から 90° 離れた大円を写し取り,押し引きの境界に矛盾しないのでこれを採用します.
  6. 回転を元に戻して観察すると,典型的な正断層であることが分かります.
地震2のP波初動のデータを用いた発震機構の作図の手順
近接して発生した2つの地震の震央付近の海嶺とトランスフォーム断層の分布

地震1は横ずれ断層の発震機構ですので,トランスフォーム断層で発生したと結論できます.トランスフォーム断層の走行が北西-南東ですので,走行 N45W の節面が断層を表わします.断層面は垂直でなく南西 80° の傾斜角ですが,典型的な右横ずれ断層で,プレート運動の方向と一致します.地震2は正断層の発震機構ですので,海嶺で発生したと考えられます.断層の走行 N35E は北東-南西の海嶺の走行と大体一致します.2つの節面のうちどちらが実際の断層であるかは発震機構からは分かりません.北西傾斜の節面の傾斜角は 40°,南東傾斜の節面では 50° となります.

以上は, 10° の粗い間隔の経緯線のシュミットネットによる作図ですので,得られた結果には多少の誤差があると思われます.例えば地震2の作業 (e) で,2つの大円が端の方で交差するような取り方も可能で,その場合には小さな横ずれ成分も含む正断層ということになります.地震学者は2つの節面が直交するという条件のもとに,計算機で繰り返し計算して,観測された押し引き分布に最もよく適合する解を探すそうです.