問題3−2−1 解答
(1) 本文で導いた通り, \(g_0\) は \[ g_0 = \frac{GM}{R^2}, \] です.高さ \(h\) では,この式の \(R\) を \(R+h\) で置き換えて, \begin{eqnarray*} g & = & \frac{GM}{(R+h)^2} = \frac{GM}{R^2}\frac{R^2}{(R+h)^2} = g_0\frac{1}{\left(1 + \frac{h}{R}\right)^2}, \\ & = & g_0\left(1 + \frac{h}{R}\right)^{-2}. \end{eqnarray*}
(2) \(h\) は \(R\) に対して大変小さいので, \(|h/R| \ll 1\) として近似すると, \[ g = g_0\left(1 + \frac{h}{R}\right)^{-2} \approx g_0\left(1 - \frac{2h}{R}\right). \]
(3) (2)の式を次のように表します. \[ \frac{g}{g_0} - 1 = -\frac{2h}{R}. \] これに \(h\) = 0.32 km, \(R\) = 6400 km を代入すると, \[ \frac{g}{g_0} - 1 = -0.0001. \] 即ち,重力加速度は 0.01% 小さくなり,体重計は 5 g 小さい値を示すことになります.
問題3−2−2 解答
(1) \(GM/R^2\) と \(\omega^2 R\) の計算結果は次の通りです. \[ \frac{GM}{R^2} = 9.820\ \mathrm{m/s^2}, \quad \omega^2 R = 0.034\ \mathrm{m/s^2}. \]
(2) \(\omega^2 R\) と \(GM/R^2\) の値の比を体重に掛けます. \[ 50\times \frac{0.034}{9.820}\times 1000 = 173\ \mathrm{g}. \] この値は,高い測定精度が必要な場合にはかなり大きいです.市販の体重計などは,使用される国の緯度を考慮して設定されているようです.また,日本のように緯度の差が大きい国に向けた製品では,地域設定の機能も設けているそうです.
(3) 自転による赤道上での地表の速度を \(V\) とすると, \(V=\omega R\) と表せますので,地球の自転による赤道上での遠心力による加速度は, \[ \omega^2R = \frac{V^2}{R}. \] 東向きに \(v\) で運動する物体の受ける遠心力による加速度は,この式の \(V\) を \(V+v\) で置き換えて,さらに \(v/\omega R \ll 1\) として近似すると, \begin{eqnarray*} \frac{(V+v)^2}{R} & = & \frac{(\omega R + v)^2}{R} = \omega^2 R\left(1 + \frac{v}{\omega R}\right)^2 \approx & \omega^2 R \left(1 + \frac{2v}{\omega R}\right), \\ & = & \omega^2 R + 2v\omega. \end{eqnarray*} よって,遠心力による加速度は静止状態に比べて \(2v\omega\) 増加します.
(4) (3)の式の \(2v\omega\) の値と北極での重力加速度の値との比を計算すると, \[ \frac{2v\omega}{GM/R^2} = \frac{2\times 1 \times(7.292\times 10^{-5})}{9.820} = 1.485\times 10^{-5} \] となり,この値を体重に掛けて \(0.743\ \mathrm{g}\) 減少します. 0.7 g は小さいですが,航行中の船上で行われる重力測定などでは,必ずエトベス効果の補正が必要になります.
なお,エトベス効果はコリオリ力の鉛直成分です.地球の自転によるコリオリ力については, → 3-4 自転とコリオリ力 や → 問題3-4-1 を参照してください.
問題3−2−3 解答
(1) 天体の半径を \(R\) とし,赤道での自己重力と遠心力を等置して \(\omega\) について解きます. \begin{align*} \frac{G(4\pi/3)R^3\rho}{R^2} & = \omega^2R, \\ \omega & = \sqrt{\frac{4\pi}{3}G\rho}. \end{align*} (2) \(\rho\) = 5500 kg/m \(^3\),\(G\) = 6.674\(\times\)10\(^{−11}\ \mathrm{m^3\,kg^{−1}\,s^{−2}}\) を代入して計算すると, \(\omega = 1.240\times 10^{-3}\ \mathrm{s^{-1}}\) .自転周期 \(T=2\pi/\omega\) は, \(T = 5.067\times 10^3\ \mathrm{s} = 1.41\ \mathrm{h}\) .地球が破壊される限界の自転周期は約 1.4 時間です.