タイの灯ろう流し

「ローイ・クラトーン」 スコータイ
祭りの日それぞれへ / 燃えあがる仏跡たちへ

タイの古都スコータイのムアン・カウ(古い町)は、何千何万もの小さな炎に包まれ、700年もの時を経た仏跡たちは、赤く燃え上がる。ワット・マハタートの降魔の仏は、人々の暮らしを見守るかように、その炎のなかにやさしく浮かびあがった。おぼろ雲にかすんだ満月の光の下、祈る姿は途絶えることがない。子供の手を取っていっしょに流してあげる母親。ひとつのクラトーンに火をともし、祈るカップル。ほのかにゆらめくろうそくの炎と祈り。水面に映る合掌する仏徒の姿。わたしは、その情景にしばらく見とれていた。


 

 

満月の夜、小さな炎に包まれ赤く燃え上がるワット・マハタート塔堂北面。ワット・マハタートは、スコータイ王朝時代、もっとも重要な寺院だった。

 

 

 

太陽が沈み、あたりが夕闇に包まれるころ、ひとつまたひとつと炎が灯されていく。缶でできたアルコールランプのようなものに灯油が入れられ、炎は燃え続ける。

 

 

 

スコール雲の紅色の残照にワット・マハタートの降魔(ごうま)の仏が浮かぶ。仏の正面に満月が昇るのは、もうすぐ。

 

 

 

 スコールの雲もすでに東の空へと去っていた。ワット・マハタート前の池は、クラトーン(蓮華の器)が流されるのを静かに待っている。

 


祭りの日それぞれへ/燃えあがる仏跡たち
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