◎石川禎浩著『中国共産党、その百年』(筑摩選書)

 

 

昨年は中国共産党結党百周年だったらしいし、いろんな意味でタイムリーな本と言えるでしょうね。とりわけ「第三章 毛沢東とかれの同志たち」の「5 毛沢東の遺産−−法と歴史」という節に書かれていることは、よその国のEEZにミサイルを落とす中共の態度がどこから来ているのかがわかって興味深い。

 

次のようにある。「また、法による支配についても、さすがに共産党が正面切ってそれを否定するには至っていないが、実質的に法治主義ではなく、人治主義を採っていることは、しばしば指摘されている。毛沢東時代はそれが極端であったのに対し、毛の後はそれが合議制、あるいは集団指導体制にシフトして薄まったに過ぎず、今日では「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が持ち上げられ、再び特定指導者の意向が法の前に立ちはだかるようになった。党指導者はさておいても、少なくとも党が法律の上にあること、また「法治」が「法の支配」ではなく、「法を利用した(党の)支配」を意味していることは、今も昔も変わらない(211頁)」。

 

この「党>法」という図式は、最近のコロナ対応などの国内法に対してのみならず、ミサイルの件もそうだけど、香港や南沙諸島や尖閣の件などの国際法に対しても当てはまる。中国の最近の情勢については防衛白書を読むことをお勧めする。中国に関しては最初の方の30頁から記述されている。

 

そのやばさは、次のような記述からもわかる。「こうした中で、「世界一流の軍隊」を目指す「強軍思想」が提起され、2017年第19回党大会で党規約に「習近平の強軍思想」が明記され、人民解放軍を指導する思想となった。強軍思想とは、習氏が進める国防・軍改革の理論的な柱であり、党の軍隊に対する絶対的な指導、軍事能力の強化による強軍改革、軍民融合を最重要視、科学技術による軍の振興、法に基づく軍の統治といった内容を含むものである」。

 

あるいは、「また、中国は、軍事や戦争に関して、物理的手段のみならず、非物理的手段も重視しているとみられ、「三戦」と呼ばれる「輿論戦」、「心理戦」及び「法律戦」を軍の政治工作の項目としているほか、軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させるとの方針も掲げている」。

 

ここで言う「法律」とは、選書本で言うところの「法を利用した(党の)支配」を意味することに留意すべきでしょうね。まったくやばい。そんな国にEEZにミサイルを落とされても、統一教会ばかりを問題にしている日本ってマジで大丈夫?って思う。

 

 

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※2023年4月28日