ユキコさんの事件簿4

 

2004

 

ユキコさん行方不明になる

ユキコさんは、毎晩8時になると我が家へお風呂にはいるためにやって来る。その日は雨がざあざあ降っていた。8時半になっても来ないので、夫は母屋へ様子を見にいった。義弟が言うには、30分前に送り出したとのこと。じゃあ、いったいユキコさんはどこへ行ってしまったのだろう。

その時、庭の片隅からずぶ濡れになったユキコさんがヨタヨタと歩いてきた。明るいところで見ると、背中に葉っぱや土がたくさんくっついていた。夫の推理はこうである。「うちへ来る途中何かにつまずいて仰向けにひっくり返ってしまったんじゃないかな。すぐには自力で起き上がれなかったんだ、きっと」「えーっ、30分もそのままだったってこと?」と私。

肺炎にでもなったら大変と、すぐ着替えさせた。お風呂は省略。暖かくして寝んでもらった。でも、ユキコさんってホントに丈夫。翌朝何事もなかったかのようにぴんぴんして起きてきました。

 

 

 


 

お風呂場で出ちゃった!

ユキコさん、裸になって浴室に足を踏み入れたとたん、ドドーッとウンチをしてしまった。自分でも焦ったのか、手桶にすくって私に手渡そうとした。「ちょっ、ちょっと待って」と手桶をそこに置かせ、まずお尻をシャワーで洗い流し湯舟に入ってもらった。ウンチま みれのお風呂場をとにかく必死できれいにした。泣き たかったよ〜。

今までにも、ウンチの固まりが浴室にコロンと残っていることはあったけれど、これほど大量に爆発したのは初めてだなあ。

 

 

 

長生きの意味

ユキコさんのお兄さんが95歳で亡くなった。やはり痴呆が重く、せん妄もひどかったので最後は有料老人ホームだったとのこと。ユキコさんが慕っていた長兄の死。でも、もう理解できないのだろうか。曖昧な表情でうなずいているばかり。

ユキコさんには妹もいて、やっぱりアルツハイマー痴呆。兄弟姉妹そろって長命だ。でも、ユキコさんを見ていると、その長生きの恩恵を十分享受しているとは到底思えない。どうせ長生きするのなら、旅行したり、映画をみたり、美味しいものを食べに行ったり、お金と時間をめいっぱい使って楽しめてこそ甲斐があるってもの じゃない? でも、こんなふうに考えてしまうのは不遜なことだろうか。