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 映画 日記              池田 博明 


これまでの映画日記で扱った作品データベース  映画日記 前月の分  



2015年2月1日以降、2015年8月31日までに見た 外 国 映 画 (洋画)

見た日と場所 作  品              感    想 ・ 梗  概   (池田博明)
2015年8月17日


DVD
戦火の馬



ドリームワークス
2012年
147分
 スピルバ-グ監督作品。英国で撮影された。地主に対抗して農耕馬ではなくサラブレッドを購入してしまったテッド(ピーター・ミュラン)は妻ローズ(エミリー・ワトソン)に責められる。しかし、息子アルバ-ト(ジェレミー・アーヴィン)はこの馬が生まれた時から知っていた。ジョーイが農耕馬としても使えることを示そうとアルは調教に取り組む。 その甲斐あって荒れ地を鋤で耕すことさえジョーイは覚えた。しかし、せっかく出来たカブも大雨で壊滅してしまった。小作料が払えないので馬を売るほかない。ちょうど第一次世界大戦が始まった。馬は調達されていった。ニコルズ大尉(トム・ヒドルストン)はアルに馬のことは引き受けたと約束する。アルは父親の勲章をお守りに付けた。
 ジョーイは騎兵隊の馬として戦線に参加。ドイツ軍で荷役に使われた。馬好きの兄弟兵(脱走兵として銃殺される)や風車小屋の娘の手を経て、ドイツ軍で使われたが、最前戦で鉄条網にからんだところを救われる。奇跡の馬の話は戦場のアルの耳にも入った。毒ガスで目をやられたアルは指笛を鳴らす。足をケガして銃殺されるところだったジョーイは指笛に反応した。アルのもとへ戻ってきたのだ。競売にかけられることになったジョーイを買い戻そうと戦友たちが協力する。はたしてアルはジョーイを買い戻せるだろうか。

 馬が演技をしているように見える。馬の背景に広がる戦場の描写が大規模。
2015年8月17日


DVD
キングスパイダーvsメカデストラクター



アルバトロス
2005年
86分
 原題は「Creepies II Las Vegaz Attack」、監督・脚本・編集ジェフ・リロイ。遺伝子組み換えによって凶悪な生物兵器クモが作り出された。 人間に咬みついて襲うこの兵器と反撃でロサンジェルスは壊滅した(というのが第1作)。 本作はその続篇で、スーツケースでラス・ヴェガスの事務所に兵器を販売しようとした男のケースから逃走したクモがホテルの通気口などから部屋に入り込み、人を襲う。 通報を受けた軍が出動、戦闘機2機、プラズマ・ビーム発射装置、機動戦士メカデストラクターを向かわせクモを退治しようとするというもの。
 クモを殺すのが唯一の目的なので、巻きぞえをくうラス・ヴェガスの一般庶民はどうなってもよいという主張がされる。デジタル・イメージのはい回るクモは玩具様で動きも定型的。合体してあっという間に戦車並みの巨大なクモに変化する。機動戦士はロボット様のぎこちない動きしかできない代物で『機動警察パトレイバー』のようなスタイリッシュなメカ感覚は無い。
 ホテルの壁面をはい回ったり、ジャンプしたりするクモは建物の三分の一ほどもあるありえない大きさで、ジェットコースターを停めたりつまんで落としたりする。これらCG映像は稚拙。クモと闘う軍人が戦闘機の二人、プラズマ・ビームの二人、メカデストラクターの二人と、たったこれだけというのも奇妙。しかも、隊員ラッド(ローレン・ポール)は命令を無視して恋人クリスティン(スター・ハンセン)に携帯電話でメッセージを送ったり、 やたらにプラズマを発射してクモの反射機能で自滅してしまったりと単細胞に描かれている。指揮官マックギンティ(ロバート・アンブローズ)は最後に燃料切れのプラズマ発射装置ごとクモに突っ込む。 「特攻」万歳感覚である。やれやれ・・・。B級以下の作品だが、IMDbの評価は一作目が2.9で本作は4.7。
2015年8月16日



DVD
クイーン・スパイダー



ユナイト
2003年
87分
 シカゴの廃墟ビルで起きた電気異常を調査に入った技師四名は地下に図面にない特別室を見つける。異常はそこが原因だった。シェリーが配電器を操作すると装置の中心に光が立ち上がり、ディーン(リチャード・グリエコ)とジョーンズ(アンソニー・アシュビ-)が その光に呑み込まれてしまった。原作グレンヴィル・ケース、脚本G.ケース&ロビンソン・ヤング。監督・編集ディヴィッド・ウー。原題はWebs。テレビムービー。
 装置は30年前に秘密裏に研究されていたポータル(瞬間移動装置)だった。二人はパラレル・ワールド(英語ではAnother Universe)に転送されてしまったのだ。 その世界で長老とよばれているモレリ博士(コリン・フォックス)がポータル発明の共同研究者だった。彼のポータルは別の世界でほかの暗黒世界を開いてしまい、 暗黒世界ではクイーン・スパイダーが支配しているという。クイーンは女をエサに、男を兵として変身させているという。兵隊となってしまった兵蜘蛛が人間を襲う世界なのだ。 クイーンや兵隊に咬まれると兵隊に変身してしまう。
 博士の研究ノートを持参したシェリー(ジェフリー・ダグラス)とレイ(リチャード・ヤーウッド)がディーンの後を追ってポータルを通ってくる。ポータルは遇然開いたり、急に閉じたりと制御できなかった。博士はノートを手がかりにポータルを復活させ、人類をもとの世界に戻そうと努める。
 ディーンはエレナ(ケイト・グリーンハウス)に別世界のルールを教わる。仲間のクレイン(ディヴィッド・ナーマン)はなかなか心を開かない。
 隠れ家にもクモ兵たちの襲撃が迫る。

 咬まれると変身してしまうという設定は吸血鬼ものと共通。ゾンビものとも同じである。
2015年8月8日




DVD
ラブド・ワン



MGM
122分
1965年

 トニー・リチャードソン監督の傑作The Loved One。とはいうものの日本版がビデオでもDVDでも出ておらず、輸入盤を購入。もはや輸入盤もレアものでした。脚本テリー・サザーン&クリストファー・イシャーウッド、製作・撮影ハスケル・ウェクスラー。IMDbの評価は7.3。
 英国から映画業界で働く叔父フランシス・ヒンズリー(ジョン・ギールグッド)を訪ねて来た自称詩人のデニス・バーロー(ロバート・モース)は勝手がちがうアメリカ文化に戸惑ってしまう。ラブド・ワンとは死者を意味する葬儀屋の隠語。「イギリス流のブラック・コメディの最たる作品だが、あまりに英国風味がきつすぎて、全世界的に売れなかった。これが笑えたら、あなたは正真正銘のイギリス通」(狩野良規『スクリーンの中に英国が見える』より)。
 デニスは霊園のエンバーミング(死化粧)を行う娘エイミー・タナトジェネス(アンジャネット・カマー。フランス語でエイメは愛されしもの=ラブド・ワンという意味。タナトジェネスは死の種族という意味)にひと目ぼれ。盛んにデートを申し込み、プロポーズさえする。 しかし、エイミーは死体の表情を造る医師ジョイボーイ(ロッド・スタイガー)にも求婚されている。ジョイボーイの母親(アイリーン・ギボンズ)はベッドでテレビを見ながら大食いを繰り返す毎日。

 山形浩生の「Harper’s Bazaar」の紹介はこんな風。
 “すっごいブラックな映画。主人公が、失業中の若い男と、その男が惚れた女の子なのね。ある日、男が出勤途中のその女の子を見かけて、ふとあとをつけていくとその女の子は、お墓で働いてるの[ここは山形さんの記憶違い。叔父が首吊り自殺をしてしまい、葬儀を仕切る羽目になったデニスが葬儀社で出会った女の子がエイミー。葬儀社の女性は黒服が制服なのだが、エイミーは白服。デニスは英国からアメリカに来て慣れない仕事、サウナ風呂の管理とかに就くが失敗続き(池田註)]。
 お墓といっても、欧米だと特に金持ちは火葬とかしないで、死体に防腐処理して安置所に置くでしょう。それを庭園型にして、その女の子が遺族予備軍をそこで案内して、あなたの愛した方 (The Loved Ones) は、このようなすばらしいお庭で永眠なさるんですよー、といって売り込むのだ。で、彼女はまた死体の防腐処理の助手もやってる[彼女の仕事は死化粧であって防腐処理まではしていない。一方、デニスはペット葬儀社に務める。ペット葬儀社は囁きの霊園を首になったシュルツが始めた事業で、低く見られている(池田註)]。
 まあそんな仕事もあって、あんまり明るい女の子ではなくて、引っ込み思案なんだけれど[彼女の自宅というのが崖っぷちに建てられて、きしいでいる床に穴のあいた木造家屋。家の端にブランコがあり、彼女はそれに乗って揺れて楽しんでいるのだが、下はそのまま崖下という危険な場所で、デニスは家が揺れる度に気が気ではない(池田註)]、その子の数少ない楽しみというのが、新聞の人生相談欄を読むことで、 その女性回答者の優しい誠実でロマンチックな回答ぶりをとても楽しみにしてるのね[導師バラモンと名乗っている回答者は男子二人組。原作や映画でも女性とは称していないようだ(池田註)]。
 で、男はその子となんとかデートに成功するんだけれど、女の子はそんなに乗り気じゃないのだ。で、男が結構強引に迫るんだけれど、女の子がなびかないと、「きみの仕事は欺瞞に満ちたインチキの詐欺だ、きみは薄汚いネクロフィリアだ」と糾弾して、その子はすっかりおびえて混乱しちゃうのね[エイミーがデニスに失+するのは、彼の詩が自作ではなく他人の詩の引用ばかりであったから。一方、デニスのほうからすると有名な詩の引用だとわからないのは教養がないからだということになる(池田註)]。。
 で、職場に行くとその一方でお墓の防腐処理の先生[これがジョイボーイ(池田註)]がその子をお気に入りで、これまた迫ってくるんだ。で、女の子はもう錯乱状態になって、だれかに相談しなきゃと思って思いあまって、泣きながらあの人生相談を載せてる新聞社にいくの。あの人生相談の女性なら話をきいてくれるだろうと思って。するとその欄の担当の人が、その回答者ならいまこの新聞社の向いのパブにいるよ(あ、これイギリス映画ね)と言うので、行ってみると、そこは薄汚い、客層も下品な連中ばかりで、その中でひときわ下品なデブの飲んだくれおやじが、ネーチャンどうしたい、とか言って、その子は縮みあがりながらも、あの人生相談の方にどうしてもお話したくて、というと、そのオヤジが言うんだ: 「あれはオレだ。あんなのおれがいい加減にでっちあげてるんだよ。そんなもん真に受けて、まったく信じられないばかだ。おいみんな、聴いたか!」 それにあわせて、酒場中の連中が「ぎゃはははは」と大笑いして、それでも女の子が、もう半狂乱になりつつも「あたしはどうすればいいでしょう」と言うと、その相談員は 「知るかよ、好きにすりゃいいだろ」 と一喝して、酒場中がさらに大笑い、もうその女の子はもう錯乱して、決定的に絶望して、職場に戻って死体用防腐剤を自分に注射して自殺しちゃうのだ。”

 自殺の現場の隣室で緊急の処理をしていたジョイボーイは、エイミー殺害の疑いを持たれるとデニスに相談する。デニスは葬儀社が提案している死者をロケットに載せて宇宙に埋葬する新企画の棺桶にエイミーを収納してしまう案を提示、ジョイボーイには自分を英国に帰す一等席の航空機代金を要求する。ロケットはシュルツの甥のグンター (ポール・ウィリアムズ)が冗談半分に開発したもの。ばれずにロケットは宇宙に向かって打ち上げられた。テレビでその様子を確認したデニスは英国行きの飛行機に乗る。

【参考文献】イヴリン・ウォー『ご遺体』(光文社古典新訳文庫、小林章夫訳)、『囁きの霊園』(早川書房、吉田健一訳)。


 題名が似ているため間違えて購入してしまった『The Loved Ones』は、ショーン・バイン Sean Byrne 監督・脚本の2009年オーストラリア製のスプラッター映画。84分。ご遺体(The Loved One)が複数形になっている。IMDbの評価は6.7。
 ドライブ中に道路に出て来た血だらけの青年(後でこの青年がローラの犠牲者のひとりだったことが分かる)を避けようとして事故を起こし、同乗の父を死なせてしまった美青年ブレント(クサヴィエ・サミュエル)は、6ケ月後、大学のダンス大会に恋人のホリー(ヴィクトリア・タイン)と出かけようと約束していた。ロッカー室で彼はクラスメートのローラ(ロビン・マックリーヴィ)に誘われるが、断る。しかし、断られたローラの眼にはただならぬ光が宿っていた。一方、ジェミー(リチャード・ウィルソン)は警官ポールの娘ミア(ジェシカ・マックナミー)を誘うことに成功する。
 父を亡くしたブレントは飼い犬と共に岩のぼりで気晴らしをしていたが、山頂で休んでいると何者かに拉致された。気がつくと彼はローラの父親(ジョン・ブランプトン)に拉致されてきたのだった。父親はローラを溺愛しており、娘の望むことならなんでもかなえてやろうとしていた。娘は気に行った青年を拉致し、抵抗できないように脳をドリルで損傷した後、自宅地下の穴倉に閉じ込めて飼育しているのだった。彼らの餌はやはり拉致した人肉や獣肉だった。
 帰宅しないブレントを心配した母親カーラは警官ポール(アンドリュー・S・ギルバート)に捜索を依頼する。警官は山頂でブレントの携帯電話やiPODを発見する。飼い犬が家に戻ってきたが、金づちで殴られており、やがて息絶えた。一度は逃げ出そうとしたブレントは捕まり、足を床に止められ、額にドリルで穴を開けられて、いたぶられる。ダンス大会ではミアは色情狂の正体を表し、主宰者から退場を命じられる。ホリーはブレントが「ローラに誘われた」と言っていたことを思い出し、警官に情報を告げる。警官がローラの家に着くと家のなかは血だらけだった。ブレントが自傷用に首から下げていたカミソリで捕縛のロープを切って反撃したのだった。果して彼は地獄のような状況から脱出できるのだろうか。
2015年8月15日



VHS
怒りを胸に振り返れ


1980年
英国
101分
 リンゼイ・アンダーソン監督がマルコム・マクダウェルを主演にリメイクしたTV作品。基本的なプロットは原作の戯曲と同じである。場面はジミーの部屋のみ。屋台や町には移動しない。アリスン(ライザ・ベインズ)、ヘレン(フラン・ブリル)、アリスンの父レッドファーン大佐(ロバ-ト・バ-)、クリフ(レイモンド・ハーディ)。
 映画的な編集や演出はほとんどなく、舞台をそのまま収録したような出来である。セリフを聞かせるものとなっている。ジミーがトランペットを吹くシーンもなく、最後の場で隣室でトランペットを吹き鳴らすのが聞こえてくるといった扱いになっている。1980年でもTVで放映されるほどの現代的意味が作品にあったということなのだろうか。セリフのもつ重層的な意味が理解できないため、真の理解には到達しそうもない。
2015年8月12日





DVD
怒りを胸にふり返れ

1959年
英国
101分
 トニー・リチャードソン監督の長編映画第1作。白黒。もとは初演が1956年5月8日、ロイヤル・コート劇場でのジョン・オズボーン作の演劇。脚本はナイジェル・ニールとオズボーン。リチャードソンは「本質的には代わり映えのしない演劇の映画化」と自己評価している。「映画監督としてのわたしの最大の欠点は、自分が書くことを大好きな余り、書き上げられた脚本を大切にしすぎて変えられないというところにある、と自分では思っている」(『長距離ランナーの遺言』より)。
 開巻、ジャズと踊りのリズムが交錯する。トランペッターがスイングする。ジム・ポーター(リチャード・バ-トン)である。
 演奏を終えて家に帰ると狭いアパートの一室にはアリソン(メアリー・ユーア。舞台でも同じ役)が眠っている。そっと横にすべりこむジミー。
 翌朝、ジミーは隣室の友人クリフ(ゲイリー・レイモンド)に声をかける。アリソンはジミーの妻だが、ジミーは妻の態度に不満があるらしく、毒づく。中産階級出身の妻と労働者階級出身の自分との溝に怒っているようだ。トランペットの音も階下の家主を刺激する。
 ジミーとクリフがふざけあった拍子にアリソンにぶつかりアイロン台を倒し、アリソンの手にやけどをおわせてしまう。
 ジミーとクリフは屋台の駄菓子屋。一方、病院で治療を受けたアリソンのやけどは大した怪我ではなかったが、妊娠していることを告げられる。中絶を訴えるアリソンに医師は聞かなかったことにすると答える。
 屋台を訪れて妊娠を告げようとするアリソンだったが、ジミーは怪我のことをうるさく訴えるのだろうと悪態をつくばかり。屋台の権利をくれたママ・タナー(イーディス・エウァンス)が夫の墓参りに来たというので、ジミーは彼女をサポートする。
 アリソンの友人ヘレナ(クレア・ブルーム)が電話で巡業公演中に家に泊めてくれないかと相談。アリソンは快諾するものの、ジミーは自分との結婚を心よく思っていない(らしい)ヘレナが嫌いだった。
 四人の奇妙な共同生活が始まる。ジミーはヘレナの嫌がることばかり言う。ヘレナは受け流すが、ジミーにはそれが気に入らない。
 屋台店の隣にインド人(S.P.カプール)の衣料売りが加わった。ジミーはヘレナの舞台のリハーサルがあることを思い出し、クリフとともに冷やかしに行く。袖にはアリソンもいた。「なにをしに来たのよ」とたしなめられるが、ジミーとクリフは野次をとばし場面の切り替え時にとび出していってリハーサルは大混乱。
 日曜。ヘレナはアリソンを誘って教会に行くという。ジミーは教会が大嫌い。争う二人。ヘレナはアリソンに実家へ帰ることを薦める。アリソンも納得。ジミーに電話が入る。ママ・タナーが脳卒中で倒れた。危篤のタナーのもとへ駆けつけるジミー。しかし、アリソンは同行しない。彼女は家を出ていくのだった。
 死に際にタナーはジミーに「自分をダメにしないで」と言葉を遺す。
 アリソンの父が車で娘を迎えに来る。実家へ向かう車の前にふらふらと出てきた男をひきそうになる。男はジミーだった。部屋に戻ったジミーはアリソンの置手紙を見る。ヘレナはアリソンが妊娠していることを告げる。ジミーは大事なひとが死んだんだ、馬鹿な女が妊娠したからそれがどうしたと開き直り、ヘレナの平手打ちをくらう。ハッとするジミー。ヘレナに接吻し、ふたりは倒れこむ。
 ヘレナはジミーの愛人となった。やや戸惑うクリフ。屋台をやめたいと訴える。ジミーとヘレナは映画館に入る。現地人との戦争を描いた映画である。二人の話し声はほかの客に注意される。
 屋台へ戻るとインド人が市場から追い出されるところだった。客にニセモノを売ったのか。いや、同業者から値段が安すぎるとの非難が原因だった。おとなしく退去するインド人を留めようとするジミー。しかし、インド人はインドではカーストの外だったと告白して去っていく。
 クリフを駅まで見送る二人。ジミーも屋台をやめようかと思っている。待合で酒を注文する二人。ふと気づくとやつれたアリソンがいた。ジミーはその場を去る。ヘレナはアリソンが流産し片道切符で来たことを知り、身を引く決意をする。部屋に戻って荷造りをするヘレナ。ジミーは駅へアリソンを探す。やつれたアリソンと再びやり直す決意を示すジミーだった。

 ジミーは観客の共感を拒むアンチ・ヒーローである。理不尽な怒りを妻にぶつけて争いを巻き起こす。大学を出たというもののコンプレックスを秘めていて仕事にも精が出ない。 リチャード・バ-トンはそんな気むずかしく荒々しい男を演じていた。
2015年7月17日




DVD
マッチポイント



2005年
BBC
124分
 脚本・監督・主演はウッディ・アレン。主演はスカーレット・ヨハンソン。元プロ・テニス・プレーヤーのクリス(ジョナサン・リース・マイヤーズ)は、アイルランド出身。テニス・コーチをしているうちに、英国の富豪の息子トムと親しくなり、その妹クロエ(エミリー・モーティマー)と付き合うようになる。しかし、クリスはトムの婚約者ノラ(ヨハンソン)の官能性に惹きつけられる。ノラはトムの母親にアメリカの女優はトムにふさわしくないと疎んじられ、嵐のなか、草原へと出て行く。追いかけたクリスはノラと関係を持つが、その後は、ノラは未練を残すクリスにお互いの婚約者を大事にするように諭す始末。クリスはクロエと結婚、その父親の会社の重役に取り立てられ、トントン拍子に出世していく。
 クリスが一度覚えた金持ちの味は忘れられるものではなかった。一方、トムは母親の意見を聞いてノラとの婚約を解消。ノラはアメリカへ戻った。
 子供が欲しいと妊娠を願うクロエとの義務化したセックスに飽きていたクリスは、英国に戻っていたノラと再会。かつての恋心が高まる。ノラも女優業が軌道に乗らず、追い詰められていた。激しく燃え上がる二人の恋情。とうとうノラは妊娠。クリスはクロエとの離婚を迫るノラを持て余すようになる。決断を一日伸しにしていたクリスだったが、とうとう休暇を取っていたという嘘をノラに見やぶられてしまい、クロエにばらすと迫られてしまう。上流階級の身分を捨てて、将来のない女との結婚に踏み切れるのだろうか。
 クリスの決断の時間が迫って来る。
 スカーレット・ヨハンソンの官能性が際立つ一作。とはいうものの、身勝手な男の物語なので、いったい作家が何を訴えようとしているのかが理解できない。アカデミー脚本賞やゴールデン・グローブ脚本賞にもノミネートされているものの、この脚本のどこが画期的なものなのかが、ちっとも判らない。
2015年5月15日




DVD
夕陽の群盗




パラマウント
1972年
93分
 ロバート・ベントン脚本・監督第1作『Bad Company』(悪い仲間)を「夕陽の群盗」と名付けたセンスに脱帽(日本公開は1973年)。撮影が名手ゴードン・ウィリス。
 徴兵を逃れてオハイオから西を目指したドリュー(バリー・ブラウン)は街で金を盗んだジェイク(ジェフ・ブリッジェス)と知り合う。ジェイクは仲間と一緒に西を目指していた。仲間はロニー(ジョン・サヴェイジ)とローガン(ダモン・コファー)、シムズ(テリー・ハウザー)と10歳のブーク(ジョシュア・ヒル・ロイス)。ドリューは戦争で死んだ兄の形見の懐中時計を大切にしていた。
 かれらの行く手にはさまざまな困難があった。ウサギを撃って仕留めたはよいが、さばき方を誰も知らない。ジェイクも見よう見まねであった(あまりうまくない)。農夫(チャールズ・タイナー)に金を払ってチキンとカブラ葉を分けてもらうが、農夫は常に若者たちに銃を向けている。ジョー(ディヴィッド・ハドルストン)を頭とする強盗一味ホッブス(ジョフリー・ルイス)、ジャクソン(レイモンド・グース)、オリン(エドワード・ローター)、ノーラン(ジョン・クェイド)には早朝襲われて身ぐるみはがされてしまう。途中で駅馬車を襲撃する計画で馬車を止める役のシムズはそのまま駅馬車に乗り込んで逃げてしまう。鶏泥棒に入った農家で窓際のパイを盗もうとしたブークは頭を撃たれてしまう。ドリューも腕を撃たれて負傷。ロニーとローガンはジェイクと別れて去っていく。リーダーのジェイクの言うことを聞いていても良いことがない、命令されるのがイヤだと言う。しかし、二人は結局、ジョー一味に襲われて吊るされてしまっていた。
 ジョー一味の子分たちはジェイクたちも襲撃に来る。しかし、ジョーから「人に銃を向けたら一秒以内に撃て」と教えられた二人の戦いが効を奏して、子分たちを殲滅。ホッブスから懐中時計を取り返すドリューの靴底に隠された紙幣を見たジェイクはドリューが最初に仲間になるために押し入ったという宝石店襲撃の話がウソだったことに気づく。ジェイクはドリューを殴って去った。その後、荒野をさまよったドリューはジェイクへの復讐心をたよりに生き延びた。保安官が強盗狩りをしているのに加えてもらい、ジョー一味になっていたジェイクと再会。ジェイクの釈放を保安官に相談したものの失敗。ジェイクを逃がして、一緒に銀行強盗一味を結成するのだった。
 1973年に山田宏一+和田誠のシネブラボーで高く評価されていた作品。やっとDVDが発売されて見ることが出来ました。[昔、いちど見ていたが、すっかり忘れていました]
2015年5月1日




DVD
遊星からの物体X


1982年
109分

 ジョン・カーペンター監督のリメイク作品だが、よりキャンベルの原作に近い。ジェニファー・アイス(Eiss)の『500本特選カルト映画 500 Essential Cult Movies』(2010)に選出されている(5点/5点満点)。リメイク作品がオリジナルより良くなることはあまりないが、リメイクの本作のほうが良い例と評価している。賛成である。
 ノルウェー隊の隊員がヘリコプターで執拗にシベリアン・ハスキー犬を追跡し銃撃している。やがてヘリはアメリカ隊の南極基地に着陸。出迎えたアメリカ隊員たちに発砲するためやむなくノルウェー隊員は射殺された。通信が途絶えたノルウェー隊基地を調査したマクレディ(カート・ラッセル)とコッパー博士(リチャード・ダイサート)は半分焼かれたような死体を持ち帰る。ノルウェー隊が残したビデオを見て長い間埋もれていた円盤を爆破したらしいことが分る。やがて、犬小屋の犬が怪物に変身するのを目撃。火炎放射機で焼き尽くしたものの、物体Xは次第に人間にも同化していっていた。最初の犠牲者は気象学者ベニングス(ピーター・マロニー)だった。即座に焼き殺したマクレディを隊長ギャリー(ドナルド・モファット)は非難する。ベニングスとは10年以上の知己だったのだ、と。しかし、そいつ(Things)はベニングスになりかけていたのだ。誰がその生き物に同化されたニセ者イミテーションなのかが分からない。生き物の細胞は同化してその人間そっくりになってしまうからだ。生物学者ブレア(ウィルフォード・ブリムリー)は生き物を調べているうちに恐怖心からか、部屋に閉じこもりがちになった。血液テストでそいつは識別可能とされたが、識別を試みた血液は何者かによって袋が破られてしまった。隊員のなかの誰かがニセ者で妨害しているのだ。ブレアが自分を無くし、基地の機器を破壊し始めた。全員でやっとのことで押さえつけ別棟に隔離した。
 マクレディは自分を陥れる生き物の罠に気づいた。敵も味方もはっきりしない危険な状況のなか、血液テストを決行し、誰がニセ者かを調べていく。地球科学者ノリス(チャールズ・ハラハン)か、生物学助手フュークス(ジョエル・ポリス)か通信士ウィンドウズ(トーマス・ウェイツ)か、技師パーマー(デビッド・クレノン)か、技師チャイルズ(キース・デビッド)か、コックのノールス(T.K.カーター)か、犬の調教師クラーク(リチャード・メイサー)か。女性がまったく出て来ない。
 音楽はエンニオ・モリコーネ。ミニマル系の効果音響風の音楽をつけている。1951年の映画音楽もディミトリー・ティオムキンという大物でした。特殊メイクは『ピラニア』のロブ・ボッティン。コアなファンのブログがある。
 
2015年4月30日




DVD
遊星よりの物体X



RKOピクチャーズ
1951年
89分
 原作は「ミステリー・ゾーン」のプロデューサーも務めたジョン・W・キャンベルJr、製作はハワード・ホークス、監督はクリスチャン・ナイビー。原題はThe THINGS from Another World。
 北極に未知の飛行物体が墜落した。ヘンドリー大尉(ケネス・トビー)の指揮する調査隊が組織され、極地に派遣されるものの、ヒトの血を養分に成長する怪物が出現して、隊員たちは怪物に立ち向かうことになる。
 熱爆弾で掘り起こそうとしたため円盤は爆発飛散したが、一行は放り出された「物体」を、研究所に持ち帰った。その夜、「物体」は威力を振るいはじめ、飼い犬3頭を噛み殺して逃走した。その残骸の一部を調べた博士(ロバート・コーンスウェイト)は、この「物体」が遊星より飛来した植物組織の生物で、動物の血を吸って成長し、人類より知力、腕力に優れた怪物であることを突き止めた。ひとり博士は怪物退治に反対し、 人類の知的遺産として研究対象とすべく強く主張する。博士は怪物本人の説得もこころみるものの、怪物に殴られて鎖骨を折り、失神してしまう。
 博士の娘ニッキー(マーガレット・シェリダン)は、ヘンドリーの恋人だったが二人の間に立って苦しんだ。しかし、研究所の温室に根を下ろした「物体(ジェームズ・アーネス)」はやがて所員に向かって攻撃を開始してきた。ガソリンによる火焔攻撃から、電気まで動員して、やっとこの怪物を鎮圧したのだった。
2015年4月24日



DVD
イギリスから来た男



USA
1999年
89分
 スティーヴン・ソダーバーグ監督、レン・ドップス脚本、エド・ラックマン撮影、テレンス・スタンプ主演の復讐譚。
 原題Limeyは英国人を意味する。ジェニファー・アイス(Eiss)の『500本特選カルト映画 500 Essential Cult Movies』(2010)に選出されている(4点/5点満点)。
 9年間の刑期を終えて出所したウィルソン(スタンプ)にはやるべきことがあった。ロスで事故死した娘ジェニーの死んだ原因を突き止めることである。刑務所に手紙をくれたエド(ルイス・ガスマン)や娘の友人だったイレイン(レスリー・アン・ウォーレン)に話を聞き、娘が付き合っていたテリー・ヴァレンタイン(ピーター・フォンダ)がキー・マンだということが分かってきた。レコード・プロデューサーのテリーは1966年から1967年のアメリカを懐かしむ金持ちだったが、一度だけヘロインの取引に手を出したことがあった。ウィルソンはひとりで倉庫の組織に乗り込み、いちどはぶちのめされて放り出されるが、隠し持った拳銃で組員を撃ち殺す。テリーのパーティに出たときも様子を怪しんで近づいてきた用心棒を殴って突き落す。テリーの隠れ家に乗り込んでいくときも一人だ。悪者を相手にしているとはいえ、警察が関与しないのは奇妙。麻薬取締官はテリーの周辺を探っているのだが。冒頭に響く「ジェニーのことを話せ」という声はテリーを追い詰めた父親の声である。娘は麻薬取引に抗議し、やめさせようと警察に通報しようとした(既にそのとき取引は終わっていたのだが)という。警察に通報しようと電話機を取り上げたというのだが、実はその行為は父親が犯罪に手を染めようとするたびに娘がする一種のくせだった。通報をやめさせようと争ったテリーは彼女を死なせてしまった。死体をマネージャー(バリー・ニューマン)が事故に偽装して始末したというわけである。
 こまかいフラッシュ・バック・ショットが娘の過去の印象を含めて思わせぶりに使われているが、何度も同じ映像が出てくるために、まるで主人公のトラウマのように感じられてしまう。もったいぶって、話の展開を遅くしているだけだ。ピーター・フォンダの魅力も出ていない。IMDbの評価は7.1。アメリカ人は精神分析的な表現が好きなようだが、もはや陳腐である。
 俳優インタビューでは監督はあまり演技を付けたりしないで自由に演じさせてくれるということだが、編集で何とか恰好をつけるつもりで撮影しているのではないだろうか。
2015年4月23日





DVD
夜の大捜査線




MGM
1967年
110分
 『波止場』のロッド・スタイガーの名演に魅かれて、『夜の大捜査線』を見た(以前に見たことがある)。脚本はスターリング・シリファント、ドキュメンタリー・タッチの撮影はハスケル・ウェクスラー、編集ハル・アシュビー、監督ノーマン・ジュイソン。製作はミリッシュ。
 撲殺されたコルバートの死体を発見したパトロール警官サム・ウッド(ウォーレン・オーツ)は、夜明けの列車に乗り換えようと待合室にいた黒人刑事バージル・ティッブス(シドニー・ポワチエ)を連行する。署長ギレスピー(ロッド・スタイガー)は着任直後で、殺人課のベテラン刑事だというバージルに捜査を手伝ってもらう。手持ちの小型カメラと50ミリのマクロレンズやロケ撮影用の手持ちカメラが使われている。
 財布を拾った容疑者(スコット・ウィルソン)を逮捕、事件は解決したかに思えたが、死体を検分したバージルは犯人は右利きだと主張。言い争う署長とバージル。その様子を見たコルバートの妻(リー・グラント、アクターズ・スタジオ出身の女優、赤狩りで仕事をなくしていた)は警察の捜査に不信感を抱き、市長には黒人刑事を捜査に加えないのなら工場や仕事を引き上げると宣告。仕方なく署長はバージルに引き続き捜査を依頼する。
 この映画が製作された1967年当時は公民権運動のまっただなかだった。各地で焼打ちがあった。そんななか差別意識をテーマにした作品は一種の賭けだった(監督の説明)。
 コルバートの工場進出を快く思っていなかったエンディコットに面会した際に、いわば尋問されていると気付いたエンディコットがバージルを平手うちした途端、バージルは氏を殴り返した(市長は前署長ならすぐに黒人を射殺しただろうと言う)。怒りが収まらない氏は住民に指示したらしく、バージルを痛めつけようと狙う住民たちが現れる。ギレスピー署長はバージルを列車で逃がそうとする。そして、署長が挙げた容疑者はなんとサム巡査だった。バージルはサム巡査に妊娠させられたというデロレスの話から真犯人に迫っていく。
2015年4月22日



DVD
ピラニア





ユナイト
MGM
1978年
93分
 ジョー・ダンテ監督・編集作品、製作チャコ・ヴァン・リューウェン(筑波久子)、製作総指揮ロジャー・コーマン、脚本ジョン・セイルズ&リチャード・ロビンソン、特殊メイクはロブ・ボッティン。
 『JAWS』に影響されて製作された動物パニック・ムービーの1本だが、ジョー・ダンテの記念すべき初長編。しっかり演出されています。ジェニファー・アイス(Eiss)の『500本特選カルト映画 500 Essential Cult Movies』(2010)に選出されている(3点/5点満点)。
 夜になり山で道に迷ったらしいハイカー、デビッドとバーバラは柵の破れ目から旧軍の施設に入り込む。気晴らしに施設内の池で泳ぎ始めた二人は突如水中の何かに恐れて絶命。
 人探しの代行会社の雇われ社員マギー(ヘザー・メンツィス)は行方不明のカップルを探し始めていた。山での生活を始めていたポール(ブラッドフォード・ディルマン)に道を聞くが、半世捨て人のポールは気の無い返事。しかし、押しの強いマギーは彼をジープに乗せて山へ探索に入る。
 軍の施設に入った二人。行方不明の女性のネックレスを発見、施設内のプールの水を抜こうとしたマギーは、突然現れた中年の男に襲われる。男はロバート・ホーク博士。排水を止めようとしたのだ。排水されたプールの底からは白骨化した死体が見つかった。
 ジープを盗んで逃亡を図った博士は運転を誤って横転。ケガをして二人に助けられる羽目に。口の重い博士だったが、施設で養殖されていた殺人魚ピラニアは北ベトナムの生態系を破壊する目的で研究された遺伝子工学を応用した毒に強い品種だという。
 ダムが開かれると排水と一緒に川に出たピラニアがさらに下流に出る。下流ではポールの娘スージー(シャノン・コリンズ)らのサマー・キャンプ中だ。さらにその下の新しいリゾート地の湖畔も開場してにぎわっている。ポールは筏で川を下っている間に親しかった老人ブランディ(ジャック・カードウェル)、釣りをしていた父子の父親などのピラニアの犠牲者を目撃、水門を開かせないように急ぐ。 間一髪、水路の開門を阻止した。
 駆けつけた軍隊の大佐(ブルース・ゴードン)やメンジャーズ博士(バーバラ・スティール)は、殺人魚の存在を秘密にしようとしていた。監禁状態から脱走し軍用車を盗んでサマー・キャンプへ二人は向かった。途中でパトカーに捕まって留置場へ入れられてしまう。マギーの機転で脱獄。
 サマー・キャンプでは恒例の水泳大会が始まってしまった。水泳が嫌いなスージーは女教師ベッツィ(ベリンダ・バラスキ)の入れ智恵で怪我のふりをして参加をさぼっていたが、デュモン先生(ポール・バーテル)に見つかった。しかし、ピラニアで湖はパニックが始まっていた。ポールは川下のリゾートに急ぐ。
  リゾートを開発したジャック(キーナン・ウィン)は人々に歓迎のメッセージを送っていた。古い品々を寄せ集めた見かけ倒しのリゾート施設である。大佐やメンジャーズ博士がポールよりも先回りして来ていた。ジャックも隠ぺい工作に加担していた。したがって、マギーやポールの説得工作も功を奏さない。
 ポールは軍のプールが塩水だったことを思い出した。本来のピラニアは淡水産の熱帯魚である。冷水で塩水環境で繁殖する品種を開発したのだ。警告が間に合わず、ピラニアが人々を襲撃し始め、湖はパニックになる。ボートを奪ったポールとマギー。ポールは使わなくなった精錬所の毒を放出しようと考えていた。増水で水中に没していた機械室の弁を開いて毒を放出する。息が続くカウント100の間だけ操作を待ち、その後ボートを全速で走らせるという計画だった。弁を開こうとするポールにピラニアの群れが襲い掛かる。カウント後、精錬所からやっと離れてロープをたぐると、端は切れていた。ポールはやられてしまったのか。しかし、ボートの後方、水中から血だらけの手が上がった。
 地獄のような湖畔でメンジャーズ博士が「毒で魚は全滅した。責任を追及する。海に出ていくことはないので安心」と答えていた。しかし、ピラニアは塩水に耐性を持ったはずだ。海の波が浜辺に打ち寄せている。

2015年2月17日



DVD
マイ・ボディガード


20世紀フォックス
1980年
97分
 1981年4月1日に小田原オリオン座で『フラッシュ・ゴードン』と一緒に見て以来で、ベストテンに選出されることもないものの、隠れた青春映画の傑作「My Bodyguard」が2013年にDVDで発売されていた。脚本アラン・オームズビー、俳優でもあるトニー・ビルの初監督作品。


     意外なひろいもの 『マイ・ボディガード』      池田博明

 山の手から下町へ転校してきたクリフォード・ピース(クリス・メイクピース)は十五歳、ハイスクールの2年生。父親(マーティン・ムル)はホテルの雇われ支配人だが、副支配人のグリフィス(クレイグ・リチャード・ネルソン)は後釜を狙って告げ口に余念がない。その原因となっているのが祖母(ルース・ゴードン)、バーで男性にモーションをかけたり、きわどい話を平然とする。
 巻頭、クリフの自転車を捉えるシーンがある。ホテルに戻ると、祖母は「TVを見すぎると男はインポになる」と力説している。
 さて、そのクリフだが、登校すると、学校ではムーディ(マット・ディロン)を首領とする不良グループが同級生をカツアゲしていた。それに従おうとしないクリフはさっそくなぶられる。湿らせたトイレット・ペーパーのつぶてを投げつけられる。恐喝を批判したため、クリフはロッカーにゴミを入れられたりと、ますます肩身が狭くなる。
 そこへ噂のリッキー・リンダマン(アダム・ボールドウィン)が登場する。大男でボウっとしているようだが、弟を撃ち殺したという噂があり、ムーディも一目置いている。クリフはリッキーに興味を持ち、話し掛けるが、取り合ってもらえない。ムーディらにロッカーに閉じ込められところを助けられたのが縁で、リッキーはクリフのボディガード役を一回だけ引き受ける。しかし、それが終るとボディガードを断り、再び無口なリッキー。クリフはリッキーに話しかけたり後についてみたりするが、リッキーは「オレにかまうな」と言う。ただ、一緒に歩いているうちに少しずつリンダマンのこころは開いてくる。二人で一緒に廃品利用のオートバイのシリンダーを探すと、あった! 相乗りで疾走するバイクが心地よい。
 リッキーはクリフの家にも来る。祖母はリッキーの手相を見て、「感情が豊かだ、女が惚れる。生命線も長い、成績もいい」と言う。副支配人のグリフィスの告げ口で総支配人ドブス(ジョン・ハウスマン)が視察に来るが、祖母と意気投合してしまい、告げ口は効を奏さなかった。
 ムーディは新手の用心棒マイク(ハンク・サラス)を雇って仕返しに来る。やられ放しのリッキーは、大切なオートバイも壊されて、池に捨てられる。姿を消すリッキー。
 夜のホテルに現れたリッキーはクリフに6ドルを借りた。リッキーは後を追ってきたクリフに、事件の真相を話す。父親はTVばかり見ていた。二歳からリッキーが育てた弟がいた。九歳で万引きの天才だった。一緒に父親の銃をいたずらしているうちにもみ合いになり、銃が暴発、弟は頭から血を流しながらも親父に叱られることを心配していた。「兄ちゃんが悪いんだよ」と言っていた。オレはそのとき笑っていた、そして、弟の手に銃を握らせたんだ、頼られる価値のない男さ。リッキーは姿を消した。
 やがて池から引き上げたオートバイを引いて姿をあらわしたリッキーに、ムーディやマイクがからむ。今度はリッキーはマイクを殴り倒す。クリフはムーディと殴り合う。喧嘩の仕方をリッキーは教えるのだった。「ガードしろ」「鼻を狙え」と。     (1981年4月記)

2015年2月15日



DVD
波止場



1954年
コロムビア
108分 
 元ボクサーのテリー・マローン(マーロン・ブランド)は友人のジョーイを屋上へ呼び出すように組織に言われて、飼育していたハトを口実にジョーイを呼び出す。ところが、ジョーイは屋上から突き落とされて死んでしまった。ジョーイの父親や妹イディ(エヴァ・マリー・セイント)は港湾労働者をたばねるジョニー(リー・J・コッブ)の仕業だと推測する。ジョーイが犯罪調査委員会に召喚されて、証言をするはずだったのを阻止しようとしたのだ。これまでも証言台に立とうとした労働者は消されてきていた。
 テリーはジョニーには恩義があった。幼い頃に両親を亡くし、施設で育った自分たち兄弟を助けてくれたのだ。
 港湾地区を教区にする神父(カール・マルデン)は組合を正常化して立て直そうとする。教区で集会を開くが、集まった労働者は十人足らずだった。ジョニーに偵察を依頼されたテリーも集会に参加していた。教会の外からの妨害で人々が解散し逃走する際に、テリーはイディを助ける。二人は幼馴染だったが、イディは落第すれすれのテリーを覚えてはいなかった。修道尼育成系の大学で宗教を学習するイディは教員を目指していると言う。
 神父にとことん協力すると言われて証言する気になったデューガン(バット・ヘニング)が、事故にみせかけて殺された。神父は労働者たちを説得しようと演説する。テリーの気持ちは揺れる。ジョーイに最後に会った人物としてテリーに召喚状が来た。揺れるテリー。ジョニーはテリーの兄チャーリー(ロッド・スタイガー)に弟の説得を命ずる。迷うチャーリーはタクシーでテリーを説得しようとする。しかし、「まだ証言するかどうか、決めかねている」というテリーを翻意させることが出来なかった。その晩、チャーリが殺され、フックで吊られて見せしめにさらされた。怒ったテリーはジョニーに復讐しようとする。神父は私憤での制裁を止め、公聴会での証言を勧める。
 テリーの証言によって、ジョニーは陰の親組織からも見放され窮地に追い込まれた。しかし、テリーも孤立無援になってしまう。仲間や少年たちからも無視される。遠くに逃げようというイディの頼みを振り切って、テリーは「自分の権利を守る」と港湾へ向う。ジョニーたちから殴られて重傷を負うテリーを、神父は「歩け」と励ます。闘う労働者たちの先頭に立つのだ、と。
 脚本はバッド・シュールバーグ。監督はエリア・カザン。

 マーロン・ブランドは1951年『欲望という名の電車』でエリア・カザン監督と組み、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。アンジェラ・エリーゴは『死ぬまでに見たい映画1001本』で、『波止場』を「アメリカ映画史上最高の1本」と評価。マッカーシズムが吹き荒れた時代、最初に脚本を書いたアーサー・ミラーは、非米活動委員会で証言したカザンと決別、カザンは証言者仲間のバッド・シュールバーグに脚本を依頼した。カザンとシュールバーグの評判は失墜し、『波止場』も弁解の道具だと批判された。カザンはテリーが抱くさまざまな忠誠心の葛藤は、自分が感じていたものだと認めている。
 アンジェラは記す。“車の後部座席でテリーがチャーリーと対決するシーンが特に有名だが、ほかにも忘れられないシーンがある。ブランドがセイントの小さな手袋をいじっていて、自分の手にはめてみるシーン。可愛がっていたハトがすべて、彼を崇拝していた近所の少年に殺されているのをテリーが発見したシーン。テリー4がドアをたたき破ってイディの部屋に入り、自分を愛してるといえと迫って、嫌がる彼女にキスしたまま床にしゃがみこむシーン”。
 裁判での証言が労働者の搾取者を追い詰めるという作品の主軸は、アメリカならではの「話せばわかる」という感覚である。しかし、現代にはISイスラミック・ステートのような話が通じない敵もいることを思うと、暗澹とした気持ちになる。
 『波止場』は、フレンチ兄弟の『カルト映画』にも選ばれている。

 塩田明彦は『映画術』(2014、イーストプレス)で、マーロン・ブランドが台詞ひとつ言うのにも、もごもご言い淀んで時間をかける、いわゆる「リアルな芝居」が台頭してきて、それまでのシンプルな芝居が失われていく。省略と行動で語られていた映画の話法が後退してしまったことで、かえって映画が複雑さを失ってしまったと指摘していた。この指摘はセリフの少ない『波止場』には当てはまらない。
 


2015年2月1日以降、2015年8月31日までに見た 日 本 映 画 (邦画)会長

見た日と場所 作  品              感    想 ・ 梗  概   (池田博明)
2015年8月18日



NHK総合
団地ともお
夏休みの宿題は終わったのかよ?ともお



NHK
2015年
50分
 TのスキマのHPより、
 終戦の日って喜べばいいんですか? 悲しめばいいんですか?
 この問いに明確に答えられる“大人”は果たしているだろうか。
 今年は「戦後70年」という節目ということもあり、例年以上に多くの戦争関連の番組が各局で放送されている。
  特にNHKは、日本人捕虜の肉声を公開した「密室の戦争」、原爆投下直後に撮影された写真に映った被爆者の証言を元に最新技術でその真実に迫った「きのこ雲の下で何が起こっていたのか」、日米双方のプロパガンダ映画を検証した「憎しみはこうして激化した~戦争とプロパガンダ」、特攻作戦立案の軍の機密資料や幹部の証言を追った「特攻~なぜ拡大をしたのか~」、従軍看護婦の証言を通して戦争を描いた「女達の太平洋戦争」など、連日『NHKスペシャル』を中心に多くの戦争ドキュメントが放送された。
  70年語り尽くされていたかに見えた「戦争」だが、決してそんなことはなく、新しい切り口や新証言などが数多いことが驚きで、現場レベルの作り手の“意地”のようなものが垣間見えた。
  また、NHKではドキュメント以外でも戦争をテーマにしたものを放送している。
  そのひとつがアニメ『団地ともお』だ。 『団地ともお』は主人公である小学4年生の男子・ともおと、彼が住む「団地」の人々の日常を描いたコメディアニメである。
 今年2月最終回を迎えたが、今回、普段『あさイチ』を放送している枠で特別編「夏休みの宿題は終わったのかよ?ともお」として新作が放送された。『団地ともお』らしい脱力感でバカバカしい笑いを中心としながらも、全力で戦争と向き合っている名作だった。
  クレジットを見ると原作者である小田扉が原案・脚本を担当(脚本は山田隆司も担当)、ストーリー監修に柳澤秀夫が名を連ねている。『あさイチ』でもお馴染みの方だろう。柳澤秀夫は、1990年から91年にかけて、湾岸戦争の数少ない西側諸国の特派員としてイラクに残って多国籍軍の空爆後の様子を伝えたジャーナリストだ。後藤健二さんが殺害されたとき、『あさイチ』の冒頭で進行を遮ってコメントした
 (※参照:後藤さん殺害事件で「あさイチ」柳澤キャスターの珠玉の1分間コメント)ことが大きな話題を呼んだことで記憶に残っている人もいるだろう。
(※注:以降、ネタバレを含みます。なお、この回の再放送は8月18日(火) 午後1時5分~の予定)
 冒頭に引用した「終戦の日は喜べばいいのか、悲しめばいいのか」という問いは、この『団地ともお』でともおが担任の教師に質問したものだ。
 「戦争終わったのは嬉しいけど、負けて終わって人がいっぱい死んだことは悲しいし、どっちかなぁと思って」と何気なく発したものだ。しかし、その何気なさ故、戦争の複雑さを浮き彫りにさせている、事実、担任教師は絶句し、答えられない。
 今回放送された『団地ともお』の特別編「夏休みの宿題は終わったのかよ?ともお」は、夏休みのともおの日常を通して、こうした何気ない一言がいくつも挿入されている。
  物語は大きく2つの軸で進んでいく。ひとつは、ともおが与えられた夏休みの宿題である「戦争についての作文」だ。もともと勉強や作文が苦手なともおは苦心しながら、ああでもない、こうでもないと考えるのだ。もうひとつは、ともおと同じ団地に住む女子高生・青戸さんの補講だ。その補講で「この国の近代史を教えてこなかったことが心残り」という教師が日本の近代史の授業を始め、やがてその授業に町の人々が「面白そう」と集まっていく。
  こう書くと、いかにも戦争の話ばかりをしていると思ってしまうかもしれないが、まったくそうではない。 あくまでも本筋がそうであるだけで、普段の『団地ともお』がそうであるように、本筋以外のおバカな日常が延々と描かれている。
 毎朝のラジオ体操、向日葵の観察、公園の陣地取り……、昼間は毎日のようにソーメンをすすり、宿題は先延ばしし、クワガタ採りに熱中する。 そんな日常の端々で、あくまでも日常会話の延長として、戦争についての話が団地の住民の間で交わされる。
  「なんで戦争って起こると思う?」 「そりゃ戦争したい人がいるからよ」
 「なによそれ。そのありきたりな意見、そんなことを言うアンタみたいなのがいるから平和になるための話し合いが進まないのよ。まず戦争なんかしたいと思う人がこの国にはいないって前提で話を始めないとね。進まないのよ、話が」
 「非常識なことが常識になっちゃう時間なんだぜ、70年って」
 「だれだって戦争は嫌に決まってますよ。でも戦争を強く否定するあまり、戦争を語ったり、学んだりすることを避けることもあるんじゃないかって」
 そんな中でともおはたまたま道で出会った老人の荷物を運ぶ手伝いをしたことで、彼の戦争体験を聞く機会を得る。
  最初はすぐに帰ろうとしていたが「冷えたスイカがある」という一言ですぐに思い直し部屋にあがったのだ。 彼の話を聞いているうちにともおは言う。
  「なんか負けた話ばっかでつまらないな。勝ったときの話とかないんですか。 正直ピンと来ないんだよなぁ。戦争は悲惨だ、悲惨だって言うけど、負けたから悲惨なの? もし勝ってたら8月15日は勝ったのを祝う日になってたの?」
  それに対し、老人は激昂する。 「勝っても負けても戦争は戦争だ! じゃあ、君はいい戦争があるとでも言うのか! 戦場では人を殺すんだぞ! あの戦争を知らないガキが生意気言うな!」
 さらに、ともおは「戦争についての作文」を書き終わった同級生が「最後は『あの過ちを繰り返さないと亡くなった人たちに約束したいです』で締める。チョロいだろ?」と言っているのを聞いてやはり疑問を浮かべる。
  「でも、死んでいった人はホントにそんなこと聞きたいんだと思うか? 昔の日本人にそういうのってケンカ売ってる気がしねえ?」
 ともおは遊ぶことと食べることにしか興味がない少年だ。勉強も苦手だし、スポーツも得意ではない。 調子に乗って、バカなトラブルをたびたび起こしてしまう子供らしい子供だ。
  「常識とされること」やその「前提」には無頓着だし、そもそも知らない。 けれど、いやそれゆえに時折、ハッとするような視点の一言を言ったりもするのだ。
  世界地図を眺めながら、いつかの公園での陣地争いを思い出すともお。
  ともお「日本は島国だから国境に線があるとか意識したことねえよな。オレ、戦争って国境があるから起こるのかと思ってよお」
  同級生「むしろ国境があるから無駄な争いが抑えられているのかもよ」
  ともお「団地の部屋が巨大な一部屋になってみんなで暮らすとしたら、それはそれで楽しそうだけど、ケンカは増えるだろうな。屁するたびに白い目で見られてさ」
  ともおはずっと頭をひねりながら考え、それでも答えが見つけられずにいる。頭の中の整理がつかないまま、いてもたってもいれずに、ともおは自転車を飛ばす。怒らせてしまった老人の元に。そして、グチャグチャの頭の中そのままに、時折言いよどみながら語る。
  「見ず知らずの……、しかもちょっと成績の悪いオレみたいな子孫のために……、いいとか悪いとかじゃなくて、昔の日本人が必死だったって思うと……、どう言ったらいいか分からないけど……、オレ、2学期は成績をもうちょっと上げて、先祖たちに命がけの甲斐があったとちょっとは思ってる……」
  柳澤秀夫は、後藤健二さん殺害事件に対するインタビューで「戦争とか前線とか紛争のなかには、いつも繰り返される、どうにもいたたまれない不条理なものが凝縮されている」とした上でこう語っている。
  「考えていく、というのが大切だと思うんですよね。簡単に答えが見つかるわけじゃないし、そういう方法がどこかにあるわけじゃないけど、考えることを止めてしまったらおしまいだし、考えつづけることがとにかく大切なことだと思う。考えることをあきらめちゃ、絶対にいけない。 四六時中考えているのはつらいし、夕方になれば夕飯、何食おう、とか、日常生活に埋没していくのことも無理のないこと。でも、それは、時々でいいから、どこかに、自分の記憶の中に呼び戻して、考えていかないといけない」
 出典:『GALAC』2015年6月号
  日常を大切にしながら、日常の中で、その日常がなければ考えられないことを考え続ける。 それこそがきっと、僕らができる正しい「戦争」への向き合い方だ。
2015年8月6日





NHK総合
終戦70年企画
NHKスペシャル


NHK
2015年


 終戦70年特集としてNHKスペシャルで放送されたドキュメンタリーを七作を見た。
 8月6日(木)「きのこ雲の下で何が起きていたか」(19:30~20:35)。原子爆弾投下直後に御幸橋で撮影された二枚の写真から被爆者の様子を再現する。写真に写っていた被爆者で存命する方の証言をもとに、赤子を抱いた姉の嘆きや皮膚がむけて垂れ下がった被害者、油を塗って火傷を治療しようとした人たちの列などを再現映ゾウを造る造る。
 証言できる被爆者が減っている現在、貴重な仕事であると感じた。クローズアップ現代で「被爆者の声が届きにくくなっている」という報告があったばかりだった。中学校で被爆体験を話した被爆者が「私達は原発には疑問を持たざるを得ない」と発言したところで、校長が「それは政治的な発言だ」との判断で、話をさえぎったという報道がなされた。こんな規制をする校長がいることが情けない。ゲストで学校によばれている被爆者がどんなことを言っても、それは、被爆者の観点からの発言として許容すべきである。校長が異なる観点を生徒に話す機会はいくらもあるではないか。民主主義が根付いていないのだ。
 8月7日(金)「戦争とプロパガンダ」(22:00~22:50)はアメリカ軍が戦意昂揚を目的に撮影したフィルムをどのように編集したかを従軍カメラマンの証言と未編集フィルムを参考に考察する作品。民間人が崖から飛び下りて自決する場面は、アメリカでは日本人の<狂的>な行動を宣伝するのに活用された。同じ場面が日本では<英雄的>行動として称賛された。
 8月8日(土)「特攻 なぜ拡大し続けたのか」(22:00~22:50)。昭和19年、フィリピンでの特攻の戦果が称賛され、終戦に向けて一矢報いないことには良い条件で交渉ができないという思いが、特攻を続けさせた。<一撃講和>という考えである。天皇もこれを了承していた(近衛首相の証言)。沖縄陥落後の御前会議(昭和20年6月8日)でも主戦派の空気に押されて海軍大将・豊田副武は本土決戦を主張した(海軍の原稿は戦況は悪化と悲観的だったにもかかわらず)。練習機にばく弾をくくりつけて特攻に繰り出すような状況だったのだ。
 8月9日(日)「“あの子”を訪ねて」(21:00~21:50)。長崎で被爆した山里小学校37名は永井隆氏の編集になる作文集『原子雲の下で』で有名になった。しかし、戦後の歩みは子供たちにとってつらいものだった。被爆者の烙印や孤児となった少年少女たちになんの補償もなかったのだ。ひとりひとりが自分で生きる道を選択しなければならなかった。足にケロイドができた少年はアメリカ軍のABCC患者として中学まで記録を取り続けられた。彼にとって同級生の前で呼び出されることは屈辱だった。なんらかの障害があるだろうから被爆者であることを言ってほしくないという近親者の声もある。過酷な体験を聴かせられる子供の親からの文句も来る。被爆経験を語り継ぐことも難かしい時代になる。
 8月10日(月)ドラマ「一番電車が走った」(19:30~20:45)。広島の原爆投下直後から路面電車の運行再開に努めた広島電鉄の人たちや運転をになった女子中学生の物語。事実をもとにしたドラマ。
 8月11日(火)アニメドキュメント「あの時、僕らは戦場で-少年兵の告白」(19:30~20:40)。沖縄で1944年10月に組織された護郷隊に召集された少年兵たちの告白。14歳から17歳の少年たちを遊撃戦(ゲリラ攻撃)に使おうと計画された。1944年12月、17歳未満でも召集可能な法律に変更、このときの条件は14歳以上の志願者であることだったが、実際には志願に限らう候補者が集められ、断われば死刑と脅されていた。隊員たちを大本営の命令のもと、陸軍中野学校の出身者が指導、「一人一殺」の精神を少年たちに叩きこんだ。殴る蹴るの指導で臆病風を払底させ、考える余裕を持たせない機械に鍛え上げていく。1945年4月11日に米軍沖縄上陸時、沖縄本島北部にいた護郷隊隊員は約1000名。4月17日真喜屋部落攻撃では家を焼かせられた。5月恩納岳山頂付近に立てこもった隊員が攻撃された(少なくとも36名が死亡、歩けない負傷兵は銃殺された)。6月23日に沖縄が陥落した後も隊員は活動を続けよと命令されていた。義勇兵役法により兵役年齢が引き下げられた。7月16日に護郷隊解散。
 8月13日(木)ドキュメント「女たちの太平洋戦争」(22:00~22:45)。日本赤十字病院の看護婦たちは准看だったが、卒業後12年勤務すると正看になれた。その制約が彼女たちを従軍看護婦として招集する口実になった。看護婦とはいえ兵站病院やさらに前線の野戦病院での勤務は過酷だった。薬も用具もない前線で看護はほとんど不可能、死体処理に明け暮れする毎日。当時十代後半から二十代前半の少女たちは兵士の死に慣れていった。ビルマやフィリピンでの戦地では戦死するよりも病死する兵隊のほうが多かった。歩けない者は静脈に空気を注射するように命じられた。昨日まで看護していた兵士が看護婦の注射で苦悶して死ぬ。つらい経験だった。やがてビルマの抗日戦線部隊の反撃が看護婦たちの身にも襲い掛かった。銃撃や爆撃を受けて亡くなる仲間たち。戦後、+ん壕のなかで看護していた兵隊さんと出会った看護婦は「お世話になりました」とお礼を言われて返す言葉がなかったという。「看護なんてものをしてあげられなかった」んだからと。
 8月16日(日)ドキュメント「終戦:知られざる七日間」(21:00~21:50)。玉音放送後も戦争停止命令(8月22日午前零時)が出るまでの一週間、徹底抗戦を模索する動きがあった。 外地の兵士たちに敗戦を納得させるのは簡単ではなかった。150万人の支那派遣軍がいて南支では勝っていたのだ。8月16日の大本営発表は「来攻スル敵ニ対シテハ自衛反撃スエシ」とあった。 このくだりが反撃=抗戦と読み取られた。海軍の特攻隊・震洋の事故で111人が死んだ。 この不慮の事故が米軍と抗戦中と伝わった。8月18日に偵察飛行のB32が横須賀から離陸した飛行機に攻撃され、 米軍の軍曹が死亡した。組織的な反抗とみなされれば本土攻撃もされかねない危険な事態であった。 徹底抗戦を主張する上官に反論した中尉がいたことは特筆すべきであろう。

【参考】内藤初穂『極限の特攻機 桜花』(中公文庫)。
2015年8月1日




NHK衛星放送
21:00~
玉音放送を作った男たち




NHK
テレビマンユニオン
2015年
89分
 脚本・演出は佐藤善木。終戦時、情報局総裁だった下村宏に焦点を当てたドラマ。
 下村役は柄本明、その妻役に原田美枝子。今年、玉音の原ばンが公開された。映画『日本のいちばん長い日』でも描かれた8月14日から15日の近衛師団の青年将校たちの反乱もあるが、それ以前の下村の工作が中心に描かれている。もともと日米開戦などばかげたことだという認識を持っていた下村だったが、昭和16年の太平洋戦争開始直後に出された「放送番組は全て国家目的に即応しうること」という方針の下ではなすすべがなかった。昭和18年に日本放送協会の会長に就任、昭和20年4月には鈴木貫太郎首相に懇われて情報局総裁となった。下村はラジオ放送で真相を明らかにすることと、天皇に大号令を検討してもらうことを意図していた。昭和20年7月26日にポツダム宣言、8月1日に玉音放送に向けての動きが始動、8月8日に天皇への拝謁ができ、下村の説得に天皇は「大変よい参考になった」と答えられたという(下村宏『終戦記』昭和23年)。
 8月9日と14日の御前会議で終戦の詔勅を決定。下村はただちに放送計画を策定、聴取率が高い正午を方法時刻に定める。録音の準備を始める。近衛師団の畑中少佐が放送阻止に動いたが、玉音レコードの所在をつきとめることが出来なかった。皇軍は放送協会も占拠したものの、空襲警報発令下、放送の監督は東部軍司令部にあって放送局にはなかった。畑中少佐は司令部の高島参謀長に直接交渉したが、天皇の決定を絶対視する参謀長を翻意させることが出来なかった。15日早朝に皇居内にて畑中少佐は自決、監禁されていた下村たちも解放された。
 玉音の放送後に説明放送をしたのは和田信賢アナウンサー。
2015年6月6日





レンタル
ルパン三世



東宝・TBS
2014年
136分
 モンキー・パンチ原作の実写版。アニメ版1stシーズンに関しては「日曜日にはTVを消せ」No.3として取り上げたことがあった。その当時はこの画期的なアニメが多くの人に受け入れられるとは思えなかった。じわじわと評価が高まってシリーズ化され、『攻殻機動隊』などの先駆けともなったのである。
 実写版は70年代に『念力珍作戦』という珍作があった。ルパンの軽妙な行動を実写化するのはなかなか難しい。山本又一郎脚本、北村龍平監督の演出は銃撃戦などのアクション場面中心で目が廻るような忙しさである。知的なエンターテインメントには仕上がっていない。
 シンガポールの美術館から古代の金メダルを盗む不仁子(黒木メイサ)チーム、ケースのガラスを丸く切り取ったところで床に穴が開き、ルパン(小栗旬)がメダルを横取りする。オートバイで逃走するルパンを途中で待ち受けていたのはマイケルだった。
 香港国際警察では、ドーソン率いるワークスという盗賊集団の会合があると銭形(浅野忠信)が説明していた。彼はインターポールの警部。会合ではドーソンが引退を表明、ワークスの次期会長には昨晩の盗みで成果をあげた者を任命すると宣言、メダルを持っていたのは不二子だった。ルパンがメダルを渡したのはマイケルだったが。不二子とマイケルの間にはいったいどんな関係があるのだろうか。後で兄と妹の関係だったと説明される。ドーソンが金庫を開いたとき、外から盗賊たちがやって来る。マイケルの一味だった。混乱のなか、ドーソンはマイケル一味のロイヤルの銃弾に倒れる。クレオパトラのネックレスとルビーが盗賊たちのターゲットになる。
 次元(玉山鉄二)、五右エ門(綾野剛)が加勢して、富豪で裏社会の大物プラマックに挑み、お宝を手に入れるために動き始める。クレオパトラの首飾りなんて、命を張ってまで盗みたいものなのだろうか。物語を進めるその動機が納得いかない。
 レンタル店ではほとんど借り出されていた。映画ってこんなものなのか。
2015年6月4日




レンタル
紙の月



松竹
2014年
126分

 角田光代の原作を早船歌江子が脚色、吉田大八が監督した。梅沢梨花(宮沢りえ)はわかば銀行で正社員になったばかり、外回りの銀行員。吝嗇な金満家・平井(石橋蓮司)はお茶の準備がてら彼女の体に触れようとしたとき、孫(池松壮亮)に見られて思いとどまる。奇妙な出会いをした若者に彼女は魅かれ、夫(田辺誠一)との生活で抑圧していた欲望を全開させる。仕事が軌道に乗ったお祝にペア・ウォッチを買った彼女に、夫はほどなく高級腕時計を贈ったりするズレぶりを示す。彼女の隣でミスの多い行員・相沢(大島優子)は女子は毎日見られていると助言する。監視役の冷静な上司・隅(小林聡美)、若い女子職員に甘い次長(近藤芳正)など、きびしい管理の目を盗んで梨花は証紙を偽造し、客の預金を横領する。
 ミッション・スクール時代、梨花は「愛のこども募金」で外国の子供の礼状がうれしくて、父親の財布から5万円を盗って募金したことがあった。つつましく行う趣旨の募金で梨花の5万円という金額は、かえって趣旨を曲解する行為とされ、募金は中止になってしまう。しかし、梨花には納得がいかなかった。シスターに反論する梨花。困っているひとに貢ぐことは神聖な行為ではないのか、と。
 大学の学費が支払えず困っていた大学生・光太に貢ぐ行為も梨花のなかでは同じことだったかもしれない。しかし、その大学生は梨花を利用していただけだった。
 横領が発覚して梨花の「みじめな自分を見下している」という言葉に、隅は「みじめだったの?あなたは? 私も(お金と時間があったら)自分がしたいことを考えてみた。徹夜ぐらいしか思いつかなかった。みじめなのは私だと思っているんじゃないの」と迫る。
 犯罪人を描いているのだが、悪女という感じはない。宮沢りえに共感してしまう作品である。
 
2015年5月6日


DVD
はやぶさ
遥かなる帰還


東映
2011年
136分
 地球と火星の間の小衛星イトカワからサンプルを持ち帰る偉業を成し遂げた探査機「はやぶさ」。打ち上げから帰還までの間に数々のトラブルと困難の克服の物語があった。山根一眞の原作を西岡琢也が脚色、瀧本智行が監督した。
 2003年5月9日の内之浦宇宙センターからの「はやぶさ」打ち上げを見守る新聞記者・真理(夏川結衣)とその父親で町工場を経営する東出(山崎努)。東出ははやぶさの部品の試作品を作っていた。ほとんど儲けはないものの、夢のある仕事だった。
 プロジェクトマネージャーは山口(渡辺謙)。実際のプロマネは川口淳一郎なので映画の登場人物名は全員変えている。例えば広報担当のJAXAの的川(まとがわ)泰宣教授は丸川(藤竜也)といった具合。はやぶさには四機のイオンエンジンを搭載していたが、早い段階でそのうち一機が動かなくなる。エンジン担当の藤中(江口洋介。実際は國中均)とメーカーから派遣されている森内(吉岡秀隆。原作には登場しない)は復旧に頭をしぼる。その後もリアクションホイール=姿勢制御装置の故障(2005/08/15)、小惑星表面へのタッチダウンやり直し(2005/11/26)、サンプル採取失敗の不安、通信途絶による行方不明(2005/12/14)など、次つぎと続くトラブル。はやぶさに優先的に通信アンテナの使用を許可していたNASAもその措置を止めるという提案をするほどだった。
 7年間の数々の困難を乗り越えてはやぶさが帰還したのは2010年6月13日。翌日、カプセルの回収に成功した。
 映画では姿勢制御のために「はやぶさ」に指令を送るプログラムデータのやり取りにフロッピー・ディスクを使っている。「まだそういう時代だったんだなあ」と驚いた。

参考文献 山根一眞『はやぶさの大冒険』(マガジンハウス、2010年)
2016年11月19日



NHK 
BSプレミアム
獄門島




NHK
2016年
120分
 金田一耕助役は長谷川博己。金田一は復員船のなかで鬼頭千万太から三姉妹の殺害を予言し伝えられたにもかかわらず、なすすべもなく犠牲に供してしまう。これまでの映画化ではだからといって金田一を追い詰める描写はなかった。このたび2016年版は金田一がかなり自責の念にかられる描写に特徴がある。冒頭、逗留6日目の金田一の朝で始まるが、もはやすべての殺人が起こってしまった後の朝である。犯人の手がかりも謎も解けずに金田一はいらいらしている。
 金田一は寺を尋ねて了然和尚(奥田瑛二)を前にすべての謎を解いて話すが、嘉右衛門の操り人形と化した了然和尚や村長、医師洪庵の所業を嘲笑う。罪もない女子を殺した単なる殺人者にすぎない、偉そうにしているが、村長や洪庵は島を逃げ出したぞと、三人の権威をつぶして、あたかも快感であるかのように笑うのである。犯罪者に共感するところの多いこれまでの金田一像とはまったく異なる不愉快な金田一像を作り上げたものである。
 脚本は喜安浩平、演出は吉田照幸。市川崑監督の映画はスター総出演といった華々しさがあったが。今回の演出では役者が地味である。娯楽ミステリーとして描かれてきたこれまでの『獄門島』とは違う因果の陰惨さが描かれていて、後味が悪い。
2015年1月~ 横溝正史&金田一耕助シリーズ



TBS
1977年

テレビ東京
 古谷一行が金田一耕助を演じるテレビ作品がDVD(朝日出版)で発売された。1970年に講談社から横溝正史全集が発刊されたとき、大学の図書館で借りてそれらの全集のなかの代表作を読んだ私はその世界に魅了された。
 石坂浩二が金田一耕助を演じた映画(1976)は、就職してから小田原東宝劇場で見た。TBSのテレビドラマ版第1作は1977年だったが、リアルタイムで見た覚えはない。古谷一行主演の横溝正史シリーズはすべて最近見た。DVDで販売されることになったので、映像京都スタッフの仕事ぶりを賞でる意味からも注目したい。
 DVD販売は第1シリーズ第1話は工藤栄一監督『犬神家の一族』全5回(1977年4月2日~4月30日)を最初に、第2シリーズの第1話の池広一夫監督『八つ墓村』全5回(1978年4月8日~5月6日)、第1シリーズ第5話の斎藤光正監督『獄門島』全4回(1977年7月30日~8月20日)、第1シリーズ第2話(1977年5月7日~5月21日)の蔵原惟繕監督『本陣殺人事件』全3回と続く。鈴木英夫監督『悪魔が来りて笛を吹く』全5回。森一生監督『悪魔の手毬唄』全6回。
 『犬神家の一族』。古谷一行が金田一に決まるまではいろいろな人が候補になったという。MBS青木民男の同僚のプロデューサーの娘が森繁久彌と『三男三女婿一匹』で共演していた古谷を推薦してくれたようだという(古谷の証言)。“俳優陣もセットも豪華でしたね。日数も、特に映像京都の場合にはかかりました・・・工藤さんが一週間くらいスケジュールをオーバーしたのかな。その割を食ったのが(第2話の)蔵原さん”(古谷)。横溝正史がこの工藤演出の『犬神家の一族』を見て感心し、以後いっさいを映像京都のスタッフに任せることにしたという。題名を変えないことが条件で犯人を変えてもよかったという。第1話の撮影は森田冨士郎。
 『八つ墓村』は、辰弥(萩島真一)と美也子(鰐淵晴子)が主役。密かに辰弥を慕う春代(松尾嘉代)が対比される。要蔵(中村敦夫)は松竹版映画『八つ墓村』の山崎努ほどの異形ではない。諏訪弁護士(内田朝雄)が後半にも登場してくる。
 『獄門島』。テレビ版第1シリーズでもっとも視聴者の評価が高かった。斎藤光正監督は思い切ったケレン味の強い演出をしていた。分鬼頭の女主人を浜木綿子が演じて強いアクセントになっている(市川崑監督版では太地喜和子が演じた役柄)。市川崑監督映画版第三弾の『獄門島』では本鬼頭の住み込み女中かつの(司葉子)を嘉右衛門の愛人で早苗の母親と設定している。市川映画版で坂口良子は島の理髪店の娘で金田一の情報源のひとり。彼女の父親(三木のり平)が草書で書かれた俳句を講釈する。
 『本陣殺人事件』は蔵原監督で撮影が大映の名手・牧浦地志。本陣の女主人・淡島千景が貫禄を示す。脚本は安倍徹郎で、本陣の一柳家の因縁を丁寧に描いている。これより以前にATGで製作された高林陽一監督の映画作品(1975年。美術を西岡善信、撮影を森田富士郎という映像京都の超一流スタッフが当ったものの)は、展開が遅くて退屈だが、機械的なトリックをそのまま見せている。
 『悪魔が来りて笛を吹く』の脚本は石森史郎。泥臭い展開で人間関係も複雑。
 『悪魔の手毬唄』の脚本は田坂啓、撮影は大映の渡辺貢で、監督は早撮りの森監督。鬼首村出身のスター・大空ゆかりこと別所千恵子役が夏目雅子(当時19歳)で、第1回の村人に歓迎されての登場シーンから華やか。他にもキラ星のような女優陣-佐藤友美(青池リカ)、池波志乃(青池リカの娘・里子)、川口敦子(別所春江)、日色ともゑ(井筒屋の女将)で、楽しめる。他のキャストは大塚道子(由良の当主・敦子)、渡井直美(由良泰子)、 村瀬幸子(由良五百子,手毬唄を金田一に教える老婆)、鈴木瑞穂(仁礼の当主・嘉平)、新海百合子(仁礼の娘・文子)、松村康世(文子の母・咲枝)、高岡健二(泰子と恋仲の青池歌名雄)、小沢栄太郎(二十年前の殺人事件に詳しい多々羅放庵)。金田一はよりを戻して一緒に暮らしたいという放庵の五番目の妻おりんへの手紙を代筆し、峠でおりん婆さんに遭遇した。しかし、豪雨で足止めされた宿屋(井筒屋)の女将からおりん婆さんは既に死んでいるはずだと聞く。湖の傍に建つ放庵のあばら小屋に警官(東野英心)と取って返した金田一は吐血の痕や毒草サワギキョウなどを発見する。第2回から手毬唄に見立てた殺人が起こるが、唄と殺人が結びつけられるのは第3回後半。被害者はすべて女性。
 『真珠郎』(三回)の脚本は安藤日出男、撮影は森田富士郎、スタッフはもと大映、監督は大洲斉。大学の講師・乙骨に中山仁、椎名に原田大二郎。生物学者の鵜藤に岡田英次、姪の由美に大谷直子、真珠郎に早川絵美。原作は昭和11年刊の由利探偵もので金田一は登場しないが、原作者の許可を得て登場させましたという断り書きが出る。

 テレビ東京制作の上川隆也が金田一耕助を演ずる作品は吉田啓一郎監督、美術や照明スタッフは映像京都だが、ビデオ撮影の平板な映像である。第1回は『迷路荘の惨劇』、吉田監督の演出は手堅いもののケレン味はない。第2回は『獄門島』。脚本は第1回と同じ西岡琢也、監督も吉田啓一郎。和尚の「きちがいじゃが仕方が無い」という台詞が無い、三姉妹ではなく三つ児にしている(演ずるのは三倉マ菜・佳奈)、早苗(高島礼子)が介護している老人の正体を変更しているといった違いがある。島の寺や崖、森などロケーションが適切に選択されていた。

参考文献「映画秘宝MOOK 金田一耕助映像読本」(洋泉社、2014年)
 
2015年4月18日~5月16日



毎週土曜
NHK総合
21:00
64



NHK
2015年
55分
 原作・横山秀夫、脚本・大森寿美男、演出・井上剛。第1回「窓」。D県の県警広報官・三上(ピエール瀧)は難題を抱えていた。記者クラブから交通事故を起こした当事者氏名を匿名にしたことへの激しい抗議、一週間後に迫った長官視察の段取り、視察が取り上げた昭和64年1月6-7日に起きた少女誘拐事件、三か月前に娘が醜形恐怖症から家出したこと。昭和64年は昭和が終わる最後の年で7日間しかなかった。その最後に起きたロクヨン事件は身代金を奪われ、少女も殺された上に犯人も不明という未解決事件で、時効が迫っていた。少女の父親・雨宮(段田安則)は妻も亡くし、視察を拒否。しかし、三上の立場としてはそれではすまない。記者クラブのデスクに特ダネ情報を流すことで抗議をかわそうとするが、デスクは逃げて失敗、クラブ記者の抗議は激化する(実は事故の関係者が交通安全委員会会長の娘だった)。
 第2回「声」。ロクヨンの自宅専従班だった幸田(萩原聖人)がなにかメモを残しているらしい。三上はその内容を知るために過去の捜査班の人々に聞いてまわる。科捜研の日吉が泣いていた。その後に彼は警察を辞職していた。犯人の電話の声を録音し損なっていたことが判明する。日吉を責め箝口令をしいた班長に抗議したのが幸田だった。長官視察を雨宮は受け入れてくれたが・・・・。
 第3回「首」。幸田が失踪し、三上は元班長・漆原(きたろう)から叱責される。刑事部長(中原丈雄)は長官視察は警視庁の部長を天下りポストにする意図だと話し、視察ボイコットを続けさせよと意見する。三上は本部長に直談判し、部長ポストはノンキャリの理想だと主張するが、本部長は取り合わない。上司の指示を無視して実名報道に踏み切り、すべてを曝け出して記者に向き合う三上に記者たちも信頼を置いた。そんななか、視察前日、雨宮が行方不明になり、ロクヨンの犯人だろうか「佐藤」と名乗る男の脅迫電話が入った。
 第4回「顔」。県警は目崎かすみ誘拐事件が狂言の可能性があると判断、匿名発表にするものの、記者クラブはそれではすまない。三上は実名を探り、記者には実名を伝えたうえで報道協定への協力を要請する。県警は記者発表に捜査二課長を当てる。刑事部長が発表に出席しない対応に記者の不信感は募る。三上は捜査車に乗り込み、逐一、事件を広報に伝える。
 第5回「真実」。誘拐犯はロクヨンのルートを辿って目崎を誘導しているようだ。なぜロクヨンなのか。参事官(柴咲俊夫)はこれはロクヨンの犯人のあぶり出しだと告げる。やがて、先導車にかすみが補導されたと連絡が入る。三上は記者クラブや父親の目崎に娘確保を伝えようとするが、参事官はそれを阻止する。いったい何が起こっているのか。翻弄された三上がやがて知った真実は驚くべきものだった。

 全5回の土曜ドラマ。原作も読了ずみ。
2015年12月8日



DVD
レンタル
寄生獣
完結扁




東宝
日本テレビ
2015年
118分
 実写版(映画館での公開は2015年4月25日)。新一は寄生獣を見分け、人間が襲われる前に殺戮していた。五体を寄生させていた三木(ピエール瀧)にも勝った。
 東福山市役所内で広川(北村一輝)たちは新一をどうするかを話し合っている。田宮良子(深津絵里)は、新一とミギーは重要な実験だと主張し、殺すことに反対する。
 原作とは異なり、記者・倉森(大森南湖)は妻を亡くし、娘と二人暮らし。田宮良子に新一の偵察を持ちかけられ、恋情を抱いて引き受けている。しかし、尾行に気づいた新一から良子は自分を利用しているだけだと教えられる。そのうえ新一に仲間を殺されて邪魔者の殲滅を図った広川の配下に娘を殺されて、復讐を誓う。
 一方、良子も広川の配下に狙われる。良子が外出している間に倉森は良子の赤兒を盗み、かつて妻子とよく行った東福山市動物園へ良子をよび出す。SWATが市役所を包囲すると同時に、倉森から通報を受けた平間(國村隼)率いる警官隊が動物園に到着。良子は新一に「預けたいものがある」と連絡。
 復讐を宣言する倉森から良子は赤兒を取り戻すが、警官隊に撃たれ、死ぬ。直前に赤兒は新一に預けられた。
 一方、SWATは市役所の寄生獣を殲滅したが、最強の後藤(浅野忠信)によって全滅させられる。駆けつけた新一は後藤に追われる羽目になる。逃げる新一をミギーの波動を手がかりに後藤は追って来る。ミギーは新一と分離して自分を囮にして後藤と戦う。
 ミギーの最期を見て新一は放射性ガレキの処理場へ逃げ込む。傷ついた新一を手当に里美が駆けつける。二人の一夜の翌朝、新一はミギーの一部が右手に残っているのに気づく。「後藤が来る」。
 処理場で最終決戦が始まる。放射性物質の付着した鉄で後藤を刺し、後藤に侵入したミギーの撹乱でかろうじて勝利した新一だった。
 寄生の形態が落ち着いたらしく平和な日が戻ったある日、ミギーは新一に別れを告げ、長い眠りに入る。街を散歩中に里美は殺人鬼の浦上(新井浩文)に拉致される。右手は元に戻ってしまい、ミギーはいない。 「俺のほうが人間としてまともだ」と主張する浦上に、里美は抵抗する。新一は愛するものを守るために浦上に跳びかかる。
 寄生獣は人間に寄生して生きることができる、実際には弱い生き物なんだという主張がリアルに感じられる。殺し合いを続ける人間のほうが残酷な生き物であった。

 完結扁は寄生獣が人間に対する存在意義を主張する場面が多かった。寄生獣が人間への殺戮を繰り返すのが日本国内に限定されていること、被害が急速に終息に向うことなどは不自然な点である。
2015年5月4日



DVD
レンタル
寄生獣





東宝
日本テレビ
2014年
109分
 実写版。原作のほぼ前半を映像化。登場人物を減らし、人間関係を描く時間を減らして、アクション場面を担保している。田宮良子(深津絵里)を原作の数学教師から理科教師へと変更しており、良子が「ミギーと新一の結合を興味深い実験だ」として守ろうとする姿勢を納得させている。新一の父親は以前に死亡したとされていて、母子家庭という設定だが、そのため新一の変身を母親(余貴美子)自身がそれとなく感じるという展開になっている。
 イヌへ寄生した仲間との闘いは省略され、加奈や宇田は登場しない。腕への移動を提案するのは本実写版ではラーメン店の店主。
 原作やアニメでは、Aが学校に乗り込んで来て殺戮を繰り広げるが、実写版ではAは警察官。夜の飲み屋街で新一と闘い、新一に刺されて死亡寸前だったが、たまたま買い物帰りに立ち寄った新一の母親に取り付いてしまう。母親は家に帰宅して新一の心臓を刺す。ミギーは新一の心臓を修繕する。その際に小細胞が全身に散らばり、新一の身体能力を高めたというのが原作の展開だが、実写版ではほとんど説明されない。
 島田秀雄(東出昌大)は新一の監視役にと学校へ送り込まれていたが、新一が母親を乗っ取ったAを倒し、涼子が離任するという日、島田は裕子に頼まれて美術室でモデル役を務めていた。そんななか、いたずらで島田の髪の毛を抜いた裕子はその動きに驚く。島田は8人の美術部員を殺戮しようとする。里美(橋本愛)が投げた整形剤があたり、島田は思うように変身が出来なくなる。新一は隣りのビルからミギーを弓に変えて鉄の矢を放つ(原作では石つぶて)。
 一方、広川(北村一輝)は市長に当選。寄生獣の食料確保計画を進めようというのだ(具体的な計画は話されない)。寄生獣のリーダー・後藤(浅野忠信)は自分たちに与えられた指名は「(ヒトという)種を食い殺せ」というものだと宣言。そのころ、警察もSWATを出動させていた(SWAT隊長役は豊原功補)。
 脚本・監督は山崎貴。
2015年4月14日

6月5日

9月9日



レンタル
寄生獣
セイの格率



各30分
日本テレビ
2014年

 深夜に放送されたアニメ作品。原作は岩明均。残虐描写を抑制して見せない演出だがじゅうぶんに恐い。アニメ版では副題に文学作品の題名を援用している。
 Stage1:変身。 米村正二脚本、清水健一絵コンテ・監督。泉新一の右手に寄生した地球外生物は、脳に侵入するつもりが新一がなにかの侵入に気付いて右手をしばったため、失敗。右手にとどまることとなった。一方で脳に侵入した寄生獣は、次々にヒトを食い殺していた。身近な人間から喰い始めるから恐ろしい。世界各地で起こるミンチ殺人が、話題になり始める。新一の右手は、イヌに侵入した仲間と戦う羽目になる。右手は新一の生命を救うためではない、寄生獣自体が生き残るために戦うのだ。(原作の第1話「侵入」・第2話「野獣」)

 Stage2:肉体の悪魔。寄生獣は自分をミギーと呼んでくれという。安直なネーミングだが、名前に価値を認めないからだ。近くに「仲間がいる」とミギーは警戒する。仲間のひとりが自分の腕にミギーを寄生させようという提案をする。しかし、ミギーは拒否して新一を救う。新一を救ったのではない、単にミギーは「移動に確信が持てなかったからだ」と答える。(原作の第3話「接触」・第4話「殺気」)

 Stage3:饗宴。新任の数学教師として新一の学校に赴任してきた田宮良子に寄生した寄生獣は新一を研究したいし、自分は人間として生活を続けたいと言う。しかし彼女のセックスの相手をした(そのため良子は妊娠する)Aはミギーと新一を敵とみなし、学校に乗り込んできた。他の生徒を肉の壁にして、戦いを有利に運ぼうというミギーの計画を、拒否した新一は廊下にバリケードを作る。しかし、それは新一自身の退路を断つことになるのだった。どうなる新一?(原作の第5話「勉強好き」・第6話「田宮良子」・第7話「襲撃」)

  Stage4:みだれ髪。田宮良子の妊娠が職員会議で問題となり,良子はさっさと辞職する。良子は去り際、新一と対面するが、「まじっている。貴重な研究対象だから」と新一とは闘わない。「まじっている」とはどういう意味だろうか、新一は悩む。良子の母親は良子が異形の者に変わっていたことに感づいたために、殺される。寄生獣は一瞬で正体を感づかれたことに驚く。一方、新一の母親の右手のやけどの痕は、幼い新一が油を浴びるのを助けたときのものだった。新一の母親は彼の様子がおかしいことに気付くが、新一はなんとかごまかす。新一の両親がリラックスの旅行に出かけることになる。(原作の第8話「種」・第9話「母親」)

  Stage5:異邦人。寄生獣が乗りうつった少女は乗せてもらった自動車が事故を起こして体が壊れてしまった。シートベルトをしていた運転手に寄生したものの、男性を制御できない寄生獣は海岸で女性の体を捜していた。
 新一の級友・長井は不良の光夫たちに暴行を加えられていた。人間にだけある「献身」の気持ちを意識した新一は長井をかばう。しかし、右手の能力を発揮させないため殴られっぱなしだ。光夫の彼女・加奈はそんな新一に興味を持ち,新一の異常に気付く。村野里美が暴行されかかる。なんとか彼女を救おうとする新一。里美は新一に惚れ直す。一方、旅先で新一の母親は寄生獣に殺された。自宅に戻った母親は躊躇する新一の心臓を貫く。(原作の第10話「こだわり」・第11話「別れ」・第12話「胸の穴」前半)

 Stage6:日はまた昇る。ミギーは新一の心臓になり身体を補修する。父親は桜崎の病院に収容されていた。寄生獣の襲撃を恐れた新一は急きょ父親に会いに行く。父親は妻が目の前で変身した事実を目撃していたが、医師や警官に信子が翌日チェックアウトしたと聞かされ、自分の目撃を悪夢と思い始めていた。新一は事実を告げることができない。病院のそばの民宿に泊まり、警戒を続けた。ミギーは新一を補修した代償として一日のうち4時間は眠る必要があった。そんななか新一は仲間の感覚を捉えた。やつらが来たと感じた新一は浜辺へ走る(第12話「胸の穴」後半・第13話「出ない涙」・第14話「仲間」前半)。

 Stage7:暗夜行路。仲間は口から胸にかけて寄生したとき、海に落ちて仮死状態になったため,脳を人間のまま残した宇田だった。ホテルに努めている宇田は新一への協力を約束する。ミギーは新一を補修したとき、自分の小片が全身に散らばり、制御不能となったが、肉体に異常な能力を与えた可能性を告げた。宇田から化け物が現れたと聞き、岬に急ぐ新一が出会った寄生獣は母信子の形をしていた。ミギーが眠ってしまったため自分で戦わざるをえなくなった新一は、相手の動きを読めるようになっていることに驚く。戦いの結果、新一は勝った。彼は西福山の自宅へ戻った。新一は眼鏡を外した (原作の第14話「仲間」後半・第15話「消えた30%」・第16話「旅の終わり」)

 Stage8:氷点。良子は新一を探るために島田秀雄を学校に送り込む。島田は新一を見張るだけのようだ。島田にミギーの睡眠習慣を気づかれてはいけないと判断する。加奈は新一と間違えて島田に声をかけてしまう。車にはねられて死にかけた子犬を道路から拾う新一を見て里美は新一がやさしさを失っていないと感じるものの、死んだ子犬をゴミ箱に捨て「死んだ犬はイヌの形をした肉にすぎない」と言う新一を里美はやはり変わったという。自分が精神的に強く冷淡になりミギー化しているのに新一は戸惑う(原作の第17話「変貌」・第18話「人間」・第19話「島田秀雄」)。

 Stage9:善悪の彼岸。立川裕子は島田の似顔絵を描く。光夫たちは加奈が島田に関心を持っていると誤解し、島田を空地へ連れていく。島田が不良たちを始末するのを恐れた新一はなんとか争いを止める。一番喧嘩の強い男・矢野の拳に力を加えたのだった。一方、島田に関心をもった裕子は彼の顔が硬球が当たって欠けたり、別人の顔に変化したりしたことを目撃してしまう。彼女の兄は警視庁の犯人の似顔絵かきで自宅に寄生獣の顔が鋏に変身した絵を持ってきていた。裕子は美術室に島田を呼び、直接尋ねる。授業中に教室で島田の殺意を感じたミギーと新一は?(原作の第20話「兆し」・第21話「観察」・第22話「亀裂」)。

 Stage10:発狂した宇宙。島田を捜す新一。美術室で絶体絶命の裕子は美術室から持ち出した整形剤薬品をぶつける。切断したビンから出た液体が顔にかかった島田は元の顔に戻れなくなる。窓から脱出した裕子は襲われて下に落下。樹木に当ってケガを免れる。3年3組に戻った島田は生徒の殺戮を続ける。新一は別棟の屋上から石を心臓に当て、島田を倒す。犠牲者は17人。政府は対策会議を開き、油井博士に怪物の見分け方を聞く。体の一部を取り外すと動く性質を利用して、髪の毛を抜くことで分かるという(原作の第23話「混乱と殺戮」・第24話「一撃」・第25話「波紋」)。

 Stage11:青い鳥。加奈は草原で怪物たちに襲われたとき、王子が現れて自分を救ってくれるという夢を見ていた。王子さまは新一である。加奈は新一の髪の毛を抜く。髪の毛は動かない。暴力団の事務所に殴りこむ寄生獣の筋肉マンがいて、拳銃や刀剣に対してどう対処できるかのテストだった。殺戮のあとで筋肉マンは中年男に変身した。里美とデートする新一。キスをする二人を加奈は目撃していた。加奈の街の市長候補に広川剛志が立候補していた。演説車の上の6人は全員寄生獣だった(原作の第26話「少女の夢」・第27話「演習」・第28話「平和な日」)。

 Stage12:こころ。加奈は新一を感じることが出来る。しかしその能力はかえって寄生獣に近づく危険を高める。新一はミギーが眠っている間に、パラサイトの話を加奈にする。しかし、加奈は完全には信じなかった。加奈は自分だけが新一を感じることができる、新一ひとりが自分の王子様だと信じ切っていた。加奈が念じる信号が強まっていることを知って、新一はミギーの変形を見せようと加奈を呼び出す。しかし、加奈が新一の信号と信じて接近した相手は人を食っている寄生獣だった。駆けつけた新一は一瞬遅く、加奈は胸を貫かれていた。加奈を殺した寄生獣を退治したものの、新一の心は晴れなかった。葬儀の席で涙も出ないのだ。「人間じゃない」という声が響く。光夫が「なぜ加奈を守ってやれなかったんだ」と言いがかりをつけてくるが、新一は強く殴り返すことはできなかった(原作の第29話「加奈」・第30話「超能力」・第31話「赤い涙」)。

 Stage13::悲しみよこんにちは。田村玲子こと良子はパラサイトたちの会議で新一のことは自分に任せて欲しいと言う。いったい新一にどんな能力が付いたのか、人間の探偵・倉森を雇い偵察させる。しかし、探偵には特段の観察が出来なかった。玲子は産んだ子を乳母に預けて育てていた。泣く赤ん坊を泣くのをやめさせるのに「調教」などという不用意な言葉を使ってしまう。玲子は不良に頼んで新一に喧嘩を売らせる。新一は全員を打ちのめす。加奈が亡くなった倉庫を訪れた新一だったが、ミギーは後をつけて来た探偵に気付く。変化したミギーが目撃された。ミギーは彼を殺すと宣言する(原作の第32話「田村玲子」・第33話「目撃者」)。

 Stage14:利己的な遺伝子。新一は唯一の味方・宇田に探偵のことを話した。喫茶店では倉森を前にして田村玲子が捜査報告書を読んでいる。 玲子は報告書の内容を信じられないと言う。 新一は、自分たちのことは誰にも話さないでほしいと頼んだ。 玲子から呼び出しがあり、新一は東南大学に行った。大学の屋上で待ち合わせだという。学生の玲子は階段教室座席に赤ん坊を寝かせ、「動物の利他行動とその疑問点」というテーマの講義を受けていた。屋上で新一と田村玲子は顔を合わせる。戦いになれば玲子は赤ん坊を盾に使うと宣言。女子学生たちが屋上に来るという邪魔が入って、その場は何事もなかった(原作の第34話「鉄とガラス」・第35話「名前に無頓着」・第36話「悪魔の面影」)。

 Stage15:何かが道をやって来る。倉森は、ビデオカメラを駐車場の男女に向けた。ミギーは、この駐車場が、広川市長がからんだ寄生生物の食事場だと読んだ。寄生獣の男を始末したことで、新一たちは広川たちを敵にまわしたことになる。倉森は、自分はか弱い人間で自分の身を守ることもできないからと言って、録画ディスクを処分し去って行った。新一は寄生獣を一匹ずつ退治すれば勝てると考えた。寄生獣の三木が新一を襲撃するために接近して来た。ミギーは「3人!」と言いながら、四時間の眠りに入ってしまう。学校から離れた場所に新一は移動した。四時間の時間をかせがなければならない。追跡してきた三木。 あと2人はどこにいるかわからないと新一が言うと、やつ1人の体に3匹だとミギーは言った。(原作の第37話「食堂」・第38話「敵対」・第39話「刺客」・第40話「司令塔」)。

 Stage16:幸福な家庭。探偵の倉森が家に帰ると人の気配がない。倉森の妻と子供が殺害され、探偵事務所が放火された。男女の寄生獣のしわざだった。一方、三木と戦った新一は司令塔の役割が不完全な頭を切り落として勝利したかと思えた。しかし、三木は右手に戻り、寄生獣は後藤の正体を現した。凶暴な後藤からやっと逃げた新一は倉森一家惨殺事件を知り、父のことが心配になり父に電話を入れた。そして家から逃げてほしいと言った。父は理由を話すように言ったがそんな余裕はない。とにかく怪物が来るから逃げるようにと説得した。倉森自身ではなく家族を殺してしまう失敗を田村玲子は人間の感情を理解していないと非難する。寄生獣の仲間たちは田村を余計者と感じ始めた。「わたしたちが発する最も強い波長は「殺意」あるいは「敵意」だからな」と、玲子はそう言った。玲子の周りに草野たち3人の寄生獣が来た。一方、妻子の復讐を誓い、平間に当てて手記を書いた倉森は警察の監視下を抜け出し、玲子のアパートに向った(原作の第40話「司令塔」・」第41話「完全体」・」第42話「小さな家族」・第43話「小さな家族②」・44話「性急に」)。

 Stage17:瀕死の探偵。玲子を仲間じゃないと感じた草野たち3人が玲子を囲んでいる。玲子は寄生獣に個性が生じたことに驚いていた。戦いは玲子が自分を分身させて相手の体内に潜伏する手段を取ったことで勝ち残った。その間に玲子の赤ん坊を誘拐した倉森は玲子を翌日の「ひかり第一公園」へ呼び出す。玲子は新一の自宅で新一からの連絡を待ち、新一を同じ公園へ導く。尋ねて来た里美が玲子と出会い、彼女も公園へ導かれる。
 倉森が赤ん坊を放り投げようとすると玲子は倉森を刺し、赤ん坊を取り戻す。柵から下へ転落した倉森は駆けつけた平間に「田村玲子が白い服で、抱いている赤ん坊の肌着に血がついていることを伝えた。平間は、協力者の名を聞き出そうとするが、協力者が家族を奪われたということだけを伝えると、赤ん坊を殺さなくてよかったと言って倉森は息絶えてしまった。 刑事たちは公園の中を散らばり玲子を探す。平間は広川たちに警察の動きがつかまれていないか心配する。 その頃、新一は赤ん坊を抱いた玲子のいる場所に着いた。(原作は第44話「性急に」・第45話「冷血の戦い」・」第46話「となり町の公園」・第47話「人の子の親」)

 Stage18:人間以上。雪が降り始めた公園で田村玲子が待っていると、そこに新一があらわれた。赤ん坊を抱いた玲子の姿を見た新一は怒りがこみあげてきた。玲子は「我々は人間とひとつだ。かよわい存在だ」と主張する。彼女は「後藤とは戦うな。彼は無敵だ」と助言する。警察と戦うことも逃げることもできたはずなのに玲子は平間らの銃弾を受け、新一に赤ん坊を預けて「死んだ」。里美も駆けつけて来た。公園の事件は報道されなかった。
 連続殺人鬼の浦上は敵意を感じる特殊な能力を持ち、警察の実験台として使われた。浦上は新一に関心を持つ。浦上は「俺の目をまっすぐ見させろ」と要求する。新一は、ミギーの存在を隠し通す事ができるだろうか。(第47話「人の子の親」第48話「ただいま」・第49話「お見合い実験」)

 Stage19:冷血。新一を見ていた浦上はようやく口を開いた。 ・・・・違うな 一瞬、新一の眼の奥に何かが混じっているように見えた。 しかしそれは、気のせいだったと、浦上は言った。新一と父・一之はあと数日警察の監視下、ホテル住まいを強いられる。玲子の子供が人間の赤ん坊であることがわかれば、それなりの施設で育てることになると、平間は答えた。平間は新一に協力を求める。
 東福山市の庁舎の内外で平間と山岸が指揮する機動隊が配置についた。機動隊の様子を見た広川市長は、これは警官隊ではないと言う。浦上はモニターでは分からないという。人間のDNAを持つ器官を判別するセンシング・モニターには、頭蓋骨が写らない女性の映像が写った(原作は第50話「凶器」・第51話「針路」・第52話「包囲」) 。

 Stage20:罪と罰。官庁から避難する7名の列。機動隊員は寄生生物の女の前に割り込み、女を立ち止まらせた。隊員が放った銃弾女の心臓に命中した。女は頭を寄生体に変形させ反撃しようとしたが、苦しんだ末、息絶えた。センシング・モニターを察知した寄生獣は流れ弾で機器を破壊した。浦上の識別や山岸の勘で寄生獣は少しずつ殲滅されていったが,浦上は後藤を見ると、大声で叫びながら逃げた。途方もない怪物だと浦上は怖れる。後藤は銃弾で全身穴だらけになっても、まったく血が出ていない。何か金属が触れあったような音がする。撃ちこんだ散弾が逆に隊員たちに放たれ、隊は全滅した。別の隊が議場に入ると、そこには広川が演台に立っていた。「やあ 諸君」と広川は話し始めた(原作は第53話「口火」・第54話「制圧」・第55話「寄生獣」)。

 Stage21:性と聖。広川は、増えすぎた人間は生物界のバランスを守るため、その数を減らすべきだと言う。 寄生生物が生態系のピラミッドの頂点におさまればバランスがとれるのだ。隊員たちが撃った弾で広川は体じゅう穴だらけになった。 そしてそのまま後ろに倒れた。「これ・・・人間ですよ」。屋上まで駆け上がった山岸は、隊員たちに左右に散るよう指示するが、後ろを振り向くとそこには誰もいなかった。屋上のドアから現れたのは後藤だ。対決のあと、後藤は立ち去った。新一に決闘を約束して。後藤に対する恐怖で新一は動揺する。里美の家の前で急に里美を抱きしめる新一。自分の行動に嫌悪して夜の公園で一人ベンチに座る新一。ミギーと話をしていると、そこに里美が現れた。キスを交わし結ばれる二人。後藤のいない遠くへ行くのも悪くないとミギーは新一の考えに同調する(原作は第55話「寄生獣」・第56話「首」・第58話「ヒーロー」)

 Stage22:静と醒。朝、里見の家を出た新一が自分の家に帰ろうとすると、ミギーが後藤を感知した。後藤は車に乗っている。新一も車を盗み,人家の少ない山間の村へと向かった。後藤の車にミギーは車で体当たりしたが,後藤は死ななかった。後藤を森へおびき寄せ,ミギーは、硬質化されていないと思われる頭を切り離し、5つの寄生生物でできている後藤の統制を崩す作戦をたてた。一回だけの機会だったが,新一の火による攻撃で一瞬油断した後藤の首をミギーは切った。しかし,切り口が浅かった。新一の体から離れたミギーの意識は薄らいでいる。ミギーは死んだ。逃げろと命令された新一は右腕を失った悲しみに深く傷ついた。一人住まいの美津代と名乗るおばあさんに、新一は助けられた。美津代は村に奇妙なことが起きていると話す。ゴミを捨てる輩がいる。みんなで何日も徹夜で見張っているが、見張っていない日に限って棄てていく。後藤による殺人が起こる。新一は自分を追ってきた後藤と対決しなければ多くの人が死ぬと、闘う決意をする。美津代は生きよ、逃げよと助言するが,新一の決意は変わらなかった。夜,月明かりの中を新一は錆びついた鉈を手に外へ出た(原作は第58話「ミギー」・第59話「老婆」・第60話「覚悟」)

 Stage23:生と誓。後藤のいる場所にあてもなく、森の中を探す新一。後藤はバケモノの姿で眠っていた。新一が鉈を打ちこむと後藤は覚醒し,新一と対面する。絶対絶命の新一。美津代のあきらめるな,考えろという言葉が思い出される。新一は機動隊の銃弾を受けた後藤の脇腹から血が流れていたことを思い出した。手元にはゴミの山に刺さった鉄の棒がある。そして新一がねじこんだ鉄棒に付着していた毒物のせいで、後藤の体を構成する寄生細胞たちが分離しようとした。体から血を吹き出しながらも、後藤は新一の方に向かってくる。後藤の体内に同居していたミギーが新一の右腕に戻って来る。 ミギーは後藤の攻撃をかわし、体に切れ込みを入れた。後藤の体は破裂した。砕け散った後藤が次第に集まりかけている。復活か死か,それは五分五分だとミギーは言う。新一は別種の生き物を殺さないという選択をしかける。それが人間としての感情だからだ。しかし,やはり怪物を復活させてはならない。新一は鉈を振り上げた。村で怪物の死体が発見されたと大騒ぎになっていた。鉈が戻っていた。 (第61話「異形」・第62話「朝」))

 Stage24:寄生獣。寄生獣の騒ぎはなぜか収束した。夢の中でミギーは別れを告白。街で里美と一緒にいた予備校生の新一は浦上に気づいた。浦上は里美を拉致。あるビルのエレベーターに乗り込む浦上。
 屋上では会社員とOLのカップルがいた。里美を拘束する浦上に気づいた会社員は声をかけるが、振り向いた浦上にナイフで切りつけられて死亡。 OLは里美の目の前で刺される。 返り血が里美にかかる。 遅れて屋上に着いた新一。屋上の端で、浦上は里美にナイフを突きつけている。 里美を放してやってほしいと頼むが、放すはずはない。 新一は、どんな目的があるのか尋ねる。 「寄生獣」における浦上の役割は?浦上は人間こそが共食いで生き,殺し合って生きている獣だと主張する。里美が浦上を批判する。あなたが普通の人間でなんかあり得ないと。浦上は里美のほうが壊しがいがあると言う。新一は浦上にとびかかる。
 新一がふと下を見ると、右手は里美の腕をつかんでいた。 “ 間に合った・・・ ミ・・・ミギー! ” 新一は里美を引き上げて、そのまま仰向けに倒れこんだ。 新一の上では、里美が意識を取り戻しかけている。 “ ありがとうミギー・・・ おまえはやっぱり生きている ”(原作の第63話「日常の中へ」・」第64話「きみ」)
2015年3月1日



テレビ朝日(山形テレビ)
21:00~23:30

小さいおうち



松竹
2014年
120分
 山田洋次監督作品。日曜洋画劇場で放映。
 山形の米沢から東京山の手へ奉公に出て平井家で女中をすることになったタキ(黒木華)は赤い瓦屋根の小さいおうちで、いろいろなことを目撃・体験する。奥様・時子(松たか子)の夫は玩具会社の常務。会社の若い社員・板倉正治(吉岡秀隆)が台風の夜に家に泊まることになる。それ以前から板倉に好意を持っていた時子は、感謝のキスをする。戦局がきびしくなるなか、社長は板倉に会社にとっても都合の良い見合いを薦める。見合いの仲立ちをする羽目になった時子。板倉の下宿を訪れて帰宅する時子の様子に危機感を強めるタキ。やがて丙種合格の板倉にも召集令状が来る。本籍地・青森の軍隊に向う一日前、板倉の下宿を訪ねようとする時子をタキは必死で止める。託された手紙を持ってタキは出かけた。板倉宛ての逢引の手紙にもかかわらず、板倉は屋敷に来なかった。女中を雇うご時勢ではなくなり、山形へ帰省したタキは終戦後、東京で屋敷を探すものの、空襲で屋敷は燃えてしまい、時子たちも防空壕で亡くなっていたことを知る。
 年老いたタキ(倍賞千恵子)は健史(妻夫木聡)にノートに書いた自伝を見せる。タキの死後、遺されていたノートや手紙を健史は探し出した遺族に返却する。そこで初めて、タキが抱えていた秘密を知ることになる。
 山田洋次監督作品としては、『母べえ』と同様の戦争中の庶民を描いた作品である。健史の視点からみると、満州事変以後の日本で「うきうきした気持ち」で過ごせたはずはない、南京陥落に手放しで庶民が喜んでいるのはおかしいということになる。しかし、それが戦争の風景であり、そんな背景のなかでも着々と悲劇は進行していたのだというのが、監督のメッセージだった。板倉が「自分が死んだら、それはタキちゃんと奥様のためだ」と言うと、タキは「死んではいけません」と声を荒げる。タキが大きな声を出すのはこのときだけ。この一言に監督の思いがこめられていた。
2015年2月5日~2月12日


NHK Eテレ
23:00
岩井俊二のMOVIEラボ




NHK
2015年
各45分
 第4回「ホラー」(2015/01/28)。ホラー映画の歴史をたどり、映像製作者の若者たちと作品のコツをつかもうとする。<恐怖その1 モンスター>映画の原点は『狼男』『ドラキュラ』『フランケンシュタイン』、ドラキュラ役者の魅力が指摘される。<恐怖その2 ゾンビ>『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』1968年が起点。<恐怖その3 オカルト>『ローズマリーの赤ちゃん』、ベトナム戦争反対やヒッピー文化などアメリカが内省的になっている時代の産物と指摘(岸野雄一)、『エクソシスト』キリスト教の教えに反する悪魔崇拝の展開、世界映画ベスト5に入る傑作(岩井)。<恐怖その4>『悪魔のいけにえ』『オーメン』『キャリー』『死霊のはらわた』『13日の金曜日』などスプラッターもの、<ポイント・オブ・ビュー>とは主観ショットのことで『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『REC』、<Jホラーの衝撃>『女優霊』『リング』『呪怨』脚本家・小中千昭の理論「幽霊はしゃべらない」等、恐怖映画を作る技法を提示、<1分スマホ映画>。
 他のゲストに清水崇(映画監督)・三輪ひとみ(女優)・樋口尚文(評論家)。
 第5回「ドラマ PART1」(2015/02/05)。「ドラマ」とは人物の行動を描くものである。<人生を描く 『市民ケーン』>では冒頭の9分間でケーンの人生を表したニュース映画を流す。その後の物語はその説明になっている。<スライス・オブ・ライフ>人生の断片を描くことがドラマである。小津『父ありき』では、父と子のふれあいを人生における一断面を描くことで表している。『秋刀魚の味』では結婚式を直接描くことなく結婚を描く。<短いシークエンスを重ねて描く人生 『ガープの世界』>ジョージ・ロイ・ヒル監督の技法は『フォレスト・ガンプ』にもつながった。<ハリウッド・ドラマ作品の転機 『ゴッドファーザー』>コッポラはイタリアの匂いを映像で表現した。セリフを減らし映像で語る。『PARTⅡ』は作家の映画になっていた。<日本における映像主義>岩井俊二が高校生のときに(1980年に岩井は17歳)、テレビで見て衝撃を受けたというのが、佐々木昭一郎『四季 ユートピアノ』。『アンダルシアの虹』も一部を紹介。岩井は真似しようと試みたが箸にも棒にもかからないものしか出来なかったという。ゲストの大林宣彦監督は「(佐々木作品は)映像に流されていない。物語がある。物語が足りなかったのでは」と指摘する。中尾幸世の表情を見たゲストの常磐貴子は「素敵」と感想を述べる。1分スマホ映画(ドラマ篇)では『あくる日』『Never Forget』『何をさがしてたの?』『扉が開く』『大晦日』が紹介された(私見ではどの作品も頭でっかちだった。作品を言葉で表現しようとすると可能な話になってしまっている。それでは、映像が絵解きになってしまって面白くない)。
 第6回「ドラマ PART2」(2015/02/12)。<岩井俊二が選ぶ戦争映画1>『地獄の黙示録』。ベトナム戦争を総体として描こうとした。<岩井俊二が選ぶ戦争映画2>『ディア・ハンター』。ロシアン・ルーレットに凝縮される戦争。アメリカ映画はベトナム戦争をいろいろな映画で描いてきた。<PART2 映画で戦争を描くことについて>、人間の本能を利用するエンターテキンメントが戦争映画だ。1分スマホ映画は前回同様の出来だった。
2015年2月1日


レンタル
競輪上人行状記


日活
1963年
99分
 寺内大吉の原作を大西信行・今村昌平が脚色、西村昭五郎の監督デビュー作、音楽は黛敏郎、撮影は永塚一栄。白黒作品。
 伴春道(小沢昭一)は法明院(青梅市にあるらしい)の跡継ぎだが、葬式専門のビジネス化した寺が嫌だと家を出て、体育の教師になっていた。家出した幸子(伊藤アイ子)を保護したところだった。幸子に声をかけたのは法明院の近所のブラック婆(武智豊子)から寺の跡を継いだ兄が死んだことを聞かされる。帰宅してみると葬儀の準備の真っ最中だった。葬儀屋・色川(加藤武)や甥の芳醇(高原駿雄)が準備していた。春道が密かに想いを寄せていた嫂のみの子(南田洋子)も相変わらず美しかった。
 父親(加藤嘉)からはみの子と結婚して寺の跡を継いでくれと頼まれるが、春道は断る。世間では法明院は犬の葬式を引き受けてなんとか営業していて犬の肉を居酒屋(初井言栄)に下す始末。寺の再建資金を集めようと檀家回りをする春道は檀家の人々が金を出さない現実に直面した。春道が夏休みを利用して檀家回りをしている間に、父親は勝手に学校に退学願を出してしまっていた。抗議しようとしたが、折悪しく父親も死んでしまう。葬儀の夜、寺の跡を継ごうと決心し、求婚したみの子から春道は美千代が父親との間に出来た子だと打ち明けられ、怒ってみの子を追い出してしまう。
 色川に誘われて競輪で儲ける味を覚えた春道は競輪にのめりこんでいく。やがて借金地獄に陥ってしまう。ノミ屋(深江章喜)に支払う金もなくなり、取り立てから逃げる始末。
 これが最後と賭けたレースで大穴を当てた春道は逆に大損した辰代(渡辺美佐子)に誘われる。辰代は自殺の道連れにしようと春道を誘ったのだった。毒ジュースを誤って落としてしまい、春道は助かる。
 大金で寺を買戻し、みの子に別れを告げ、出たり帰ったりしていた幸子を伴って春道は最初からやり直そうと、まずは青森に向うことにしていた。数年後、競輪上人として競輪場で予想屋として説教を説く春道と彼に付き添う幸子の姿があった。
 他のキャストとして春道の同僚教師に小山田宗徳。
2015年1月6日~2月日



23:15~

徒歩7分




NHKプレミアム
各29分
2015年
 前田司郎原作、中島由貴演出。連続8回。制作統括は山本敏彦。
 第1回「踏み出せ!家の外に」(1月6日放映)。小さなアパートに引っ越して来た依子(田中麗奈)。実家の母親が配るようにと用意してくれた蕎麦を隣人に配ろうとするが、引越し蕎麦を理解しない隣人(菜葉菜、平野勇樹)でギクシャクする。アパートの1階に店を出しているお弁当屋の女主人(石野真子)は盛んに野菜炒め弁当を勧める。引越しの手伝いに来てくれた妹・美紀(鮎川桃果)は仕事をしない姉を批判する。依子は大学在学中から付き合っていた元彼の光一(福士誠治)のアパートに押しかけるが彼には既に別の恋人がいた。依子の郵便受けには田中靖夫という署名の手紙が届けられる。
 第2回「いつもあなたは急」(1月13日放映)。田中の手紙は依子に対するラブレターだが、依子には覚えがない。大学のゼミの田中君かと推理するがはっきりしない。妹はヨーロッパに旅立ってしまう。世界から貧困をなくす活動をしたいと宣言して。孤独になった依子はアパートの薄い壁を通して聞こえる隣人の会話が気にかかる。寂しさがこみあげてくる。
 第3回「正直、悪い気はしなかった」(1月20日放映)。夜中に依子のドアの前に立つ男を隣室の咲江が目撃。ストーカーを心配する彼女は一晩泊まって様子を見てくれることになる。待つ間、会話がかみあわない二人。12時近く、田中(田中圭)が来る。思い切って話しかけてみると応答が頓珍漢。前の住人だった彼女と勘違いをしてラブレターを投函していたことが分かる。依子は自分のストーカー行為を思い省す。
 第4回「私って悪い女よね」(1月27日)。アルバイトを探す依子。面接で落ち続けてスナックにようやく受かったものの、コスプレ週間になにかコスプレして来るように言われて、喪服を着ていき、断られる。その夜、光一にも「二度と来ないでくれ」と言われ、落ち込む。咲江に来てもらって慰め合ったものの、トイレに入ったところで衝立が倒れてドアをふさぎ、出られなくなる。依子が自宅で喪服を着て、藤圭子の「夢は夜開く」を練習する場面がある。
 第5回「」(2月3日)。これ以降は未見。展開が遅すぎる。



シェイクスピア作品の映画化やその関連の映画は除く。
それらは別ファイルになっている。→ 『シェイクスピアの劇と映画


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