映画 日記   (2009年3月15日から)     池田 博明 


 
 映画日記で扱った作品

2009年3月〜6月に見た 外 国 映 画 (洋画)
見た日と媒体 作  品        感  想     (池田博明)
2009年5月14日

DVD
ロンゲスト・ヤード

USA
1974年
(日本公開1975年)
121分
 アルドリッチ監督の傑作。興行的に大ヒットしました。
 ポール・クルー(バート・レイノルズ)はもとプロ・フットボールのクォーター・バック。女(アニトラ・フォード)のヒモに成り下がって生活していたものの、そんな生活から抜け出そうと女の車を奪って飛び出す。しかし、女は警察に通報、烈しいカー・チェイスの翌日に逮捕されたクルーは刑務所に入る。18ケ月の刑期をさっさと終らせて釈放を考えていたクルーだったが、所長(エディ・アルバート)はクルーの知恵を万年2位の看守チームの強化に役立てようとしていた。一方、チーム・リーダーの看守長(エド・ローター)はクルーの存在が面白くない。
 所長はクルーとの会話から囚人チームを作ってセミプロとして登録、そのチームと八百長試合をやって一勝させようと計画する。やがて、クルーがいかさまでプロを追われたことが判ってくる。いかさまの理由は父親の老後の生活を保証するためだったが、父親は死んでしまったのだ。正々堂々と看守を殴れるとあって次第に囚人チームには怪力のメンバーが集まります。
 所長は試合の途中で、クルーに21点差で負けろと指示、反抗すれば密告屋アンガー(チャールズ・タイナー)の便利屋(ジム・ハンプトン)殺人の共犯にして20年はくらいこませるぞと脅します。
 前半で互角に闘っていた囚人チームはクルーの気のないプレーでズルズル負けていき、21点以上差がつきます。それをきっかけにクルーは看守チームが囚人チームへ暴力を振るわないという条件で所長と取引をしたはずなのに、所長は看守長に逆の指示を出していました。看守長は堂々と戦って勝つつもりだったのに鼻白みますが、所長の指示には逆らえません。
 差がついたうえに看守たちの暴行で傷つくチームメイト、黒人グランヴィル(ハリー・シーザー)が退場するときの捨てゼリフ「お前を信用したのが間違いだった」がクルーを目覚めさせます。
 再びグランドに戻ったクルーは、一途な突撃をくり返し、次第にチームメイトの意気を高めていきます。とりわけ暴力的な看守ボグダンスキー(レイ・ニッツケ)の急所を狙ってボールをぶつけて倒し、終了寸前にタイムアウトの繰り返しで差をつめていき、劇的なタッチダウンを決めて1点差で勝利します。
 所長を殴って30年服役しているオヤジ(ジョー・カップ)と肩を組んで会場を去るクルーの後ろ姿がストップ・モーションになってエンド・タイトル。
 キャストは、もとアメフトのプロという設定のネイト(マイケル・コンラッド)、ポップ(ジョン・ステッドマン)、ラセムッセン(マイク・ヘンリー)、アイスマン(ジム・ニコルソン)、刑務所秘書(バーナデット・ピータース)、マワベ(パーヴィス・アトキンス)、ロトカ(トニー・カチオッティ)、アナウンサー(マイケル・フォックス)、ボス(ジョー・カップ)、巨人サムソン(ディック・キール)、ウォーデン(モート・マーシャル)、レヴィット(トニー・リーズ)、インディアン(ソニー・シックスキラー)、怪腕ショックナー(ボブ・テシエ)、スプーナー(アーニー・ホイールライト)、店員(ペッパー・マーティン)。

     映画川柳「殴る蹴る ラフ・プレーにも ルールあり」飛蛛
2009年5月11日

DVD
賭博師ボブ

フランス
1956
(日本公開1989)
98分
 ジャン・ピエール・メルヴィル脚本・監督、オーギュスト・ル・ブルトン共同脚色・台詞、アンリ・ドカエ撮影、モニク・ボノ編集、エディ・バークレイとジョー・ボワイエ音楽の秀作。白黒作品。
 賭博師ボブ(ロジェ・デュシーヌ)は既に引退していました。強盗の疑いをかけられた事件もあったのですが、体を張って人を助けたことから警察署長(ギイ・ドゥコンブル)はボブに一目置いていたのです。モンマルトル界隈でボブを知らない者はいません。ボブはある日、ひとりの若い女アンヌ(イザベル・コーレイ)を拾います。女給からダンサー、娼婦へと不満も言わずに転落していく娘に魅かれたボブは、自分を慕っている若者ポール(ダニエル・コーシー)を紹介します。
 やがて、ボブはカジノの一晩の上がりが8億フランになり、それが早朝、金庫に収蔵されるという情報を耳にします。最後の大仕事と、ボブは旧友の金庫破りのプロフェッショナル、ロジェ(アンドレ・ギャレット)と組んでスポンサーを依頼し、人を集め、リハーサルをして臨みます。
 しかし、ほんの小さなほころびが事態を大きく動かします。ポールはアンヌに軽い気持ちで計画をしゃべっていました。チンピラのマイクはアンヌと情事を共にしたときに、アンヌから情報を聞きます。金に困り情報屋になっていたマイクは警察署長に通報しようとします。
 マイクの様子に不安になったアンヌはボブにすべてを話します。ボブはポーロを叱り、ポーロは裏を取ろうと動いていたマイクを射殺します。しかし別に、金の情報をもたらしたカジノで働くジャン(クロード・セルヴァル)は愛人からエレベータを停止する仕事の大金の出所を聞かれて襲撃計画を話してしまいます。女は取り分が少ないのに不平を言い、匿名で警察署長への密告を勧めます。署長はボブの大仕事を信じることができませんが、裏を取りに動きます。
 一方、ボブは久し振りのカジノで博打に手を出してしまい、勝ちつづけます。夢中になったボブがふと気づくと襲撃予定の時間になっていました。あわてて換金を申し出て表へ出ると、ちょうど仲間が着き、到着した警察との銃撃戦があり、ポーロが撃たれて倒れたところでした。
 ボブの腕のなかで息を引き取るポーロ。署長に逮捕されたボブ。いい弁護士なら無罪放免もありうると警察官に言われて、ボブはスター弁護士なら損害賠償が請求できると呟きます。

     映画川柳「署長来た 伝言はなじみの店の イヴォンヌに」飛蛛
2009年5月日

DVD
グッバイ、レーニン!

ドイツ
2004年
117分
 グッバイ、レーニン川本三郎さんの『現代映画』(2009)のなかで、力を入れて紹介されている映画のひとつ。ベルリンの壁の崩壊を昏睡で知らなかった母親(カトリーン・ザース)に知らせまいと奔走する息子アレックス(ダニエル・ブリュール)の姿を描きます。ヴォルフガング・ベッカー監督。
 心臓発作で倒れた母親は8ケ月の間、昏睡状態。その間に東西ドイツの様子は一変してしまいます。意識を取り戻した母親に再び発作をおこさせないように、ショックを与えないため、息子はテレビのニセ番組を友人と一緒に作成して母親をだまし続けます。西側に人々が出たニュース映像に西側から難民が来たというナレーションを付して、意味を反対にしてしまったり。しだいに息子自身が虚構の世界で理想の社会主義社会を創り上げていきます。
 母親が娘や息子に夫のことでウソを言っていたことを告白する場面があります。夫は好きな女性ができて西側に亡命したのではなかった、妻や子ども達宛ての手紙もひっきりなしに来ていたことが分ります。それらの手紙を母親は読まずに戸棚の裏に隠していたのでした。夫を追いかけて亡命する予定だった母親は子供を連れての亡命をあきらめてしまったのです。その告白の直後に母親は倒れます。そして危篤の床に父親が訪れます。その前に病院で母親はベルリンの壁が崩壊していたことを息子の恋人に聞いています。
 母親が最後まで息子のウソを信じていたような描写がされていますが、おそらく母親は最後に息子にだまされたふりをしたのだと思います。それが思いやりだと思ったでしょうから。

     映画川柳「旧マルク 交換日を過ぎ 紙切れに」飛蛛

【参考文献】
川本三郎『現代映画 その歩むところに心せよ』(晶文社、2009年)
2009年5月1日

DVD
ジェイン・オースティンの読書会

USA
2007年
106分
  20年も連れ添ってきたのに突然夫から新しい女ができたからと離婚されてしまったシルヴィア(エイミー・ブレネマン)を慰めようと、友人のジョスリン(マリア・ベロ)やバーナデッド(キャシー・ベイカー)はオースティンの小説の読書会を始めます。オ−スティンには6冊の長篇があるので、6人のメンバーを集めます。シルヴィアの娘アレグラ(マギー・グレイス)はすぐに決定、フランス語の教師でフランス風を意識しオースティンには一家言をもつブルーディ(エミリー・ブラント)を加えて、あと一人。偶然ジョスリンに魅かれてオースティンを読む決意をしたSFオタクの男性グリッグ(ヒュー・ダンシー)。読書経験を社会的なものにする読書会のような試みは日本ではあまり活動がありませんが、アメリカでは広く行なわれている活動のようです。
 2月『エマ』、3月『マンスフィールド・パーク』、4月『ノーサンガー寺院』、5月『自負と偏見』、6月『分別と多感』、7月『説得』とおもな担当者を決めて読み進むうちに、それぞれの事情や人間関係が変わってきます。小説から学んだり、影響されたり、実人生と関わらせながら6人は小説を読みこんでいきます。
 結婚をめぐるドラマは古くて新しいものです。シルヴィアと夫ダニエルはいったん離別してお互いに新生してよりをもどします。アレグラは同性愛者でスカイ・ダイビングで知り合ったコリンを友人にしていたのに、コリンが作家教室で自分たちや友人たちをネタに小説を書いていることを知って別れ、イエップ先生を相手に変えます。独身主義のように見えたジョスリンはグリッグを受け入れて結婚、ブルーディは教え子と一線を越えそうになりますが、「ジェインならどうする?」と考えて思いとどまり、繊細さとは無縁だった夫をオースティン読者に変えます。バーナデットは七人目の夫を得ます。
 ちなみに『高慢と偏見』が、『自負と偏見』と訳されているあたり、訳者の見識だと思います。中野好夫の『自負と偏見』がとびっきりの名訳ですし、高慢というのはそれぞれの心理を考えますと語感が違います。
 グリッグが熱心にジョスリンに薦めるSFはル・グインの『闇の左手』や『天のろくろ』です。他にクラークやスタージョン、ディックもいいと話します。好みの傾向から、グリッグのややフェミニスト傾向のある、優しい性格が感じられます。ノートンやティプトリー・ジュニアなど男名前なのに女性作家もいると紹介されます。
 このような脚本ならば書いたひとは絶対に女性と思ったらやはり、監督も初挑戦のロビン・スウィコード。カレン・ジョイ・ファウラーの原作もあるそうです。

       映画川柳 「読書会 いまにも生きる 婚活を」飛蜘
2009年4月24日

DVD
ウォーリー

USA
2008年
98分
 ディズニー&ピクサー・プロ作品。汚染された地球で黙々とゴミを片づけるロボットがいる。それがウォーリー。ある日、宇宙から探査ロボットがやって来ます。怪しいものを見つけるとすぐに攻撃する気の荒いロボットはイヴ。ウォーリーは次第にイヴが気になり始めます。イヴは小さな植物を発見すると反応して、マザーシップを呼び、宇宙ステーションへ持ち帰ります。ウォーリーはイヴが誘拐されたと思い込み、イヴを救出しようと追いかけます。宇宙ステーションでは人間が自動化された生活をしていますが、地球に光合成をする植物が芽生えたのをきっかけに帰還する予定になっていました。しかし、帰還プログラムは人々を欺く計画で、実際にはその命令は中止されているのです。艦長は人類のふるさと、プログラムに抵抗して、地球に帰還する夢を実現しようと努力します。
 前半ほとんどセリフがありません。しかし、ちょっとした仕草や動きで意味が分ってしまうところが最大の見どころです。『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』、『未知との遭遇』など偉大なSF映画に対する敬愛の念がよく表現されています。

     映画川柳「植物の 芽生えが示す 復活力」飛蛛
2009年4月20日

Cosmic出版

DVD
そして誰もいなくなった

USA

1945年
97分
 ルネ・クレール監督がハリウッドでクリスティーの名作を映画化した白黒作品。日本公開は非常に遅れて1976年で、そのとき東京で見たことがあります。
 殺人が起こり、犠牲者が増えると、次第に疑心暗鬼になってお互いが一触即発の関係になります。そのあたりがよく描けています。原作と異なるラストですが、戯曲版に従っていて、これはこれで納得のいくものになっています。脚本ダドリー・ニコルズとルネ・クレール。
 犠牲者は、マザー・グース「十人のインディアン」に従って、“喉をつまらせた”皇子ニキータ(ミシャ・オウア)、“寝坊した”執事の妻(クイニー・レナード)、“そこに残った”将軍(C・オーブリー・スミス)、“自分を二つに割って”執事ロジャース(リチャード・ヘイドン)、“ハチに刺された”ブレント(ジュディス・アンダーソン)、“法律の大学院に入って”判事クィンキャノン(バリー・フィッツジェラルド)、“燻製のニシンに飲まれ”医師アームストロング(ウォルター・ヒューストン)、“大熊に抱かれ”探偵ブロア(ローランド・ヤング)、“まる焦げになり”探検家ロンバード(ルイス・ヘイワード)、 “首を吊って”秘書ヴェラ(ジューン・デュプレ)の十人。その他に送迎の船の船員(ハリー・サーストン)が登場します。
 殺人者を成敗するという目的なら、なにも歌に見たてる必要はないわけですから、これはまったくのファンタジーとして見るべきでしょう。

     映画川柳「ひとつ減り ふたつ減りして いなくなる」飛蛛  
 
2009年4月15日

DVD
少女ムシェット

フランス
1967年
(日本公開は1974年)
81分
 少女ムシェットはたったひとりで世界と闘っています。彼女は密猟者アルセーヌに「(自分の周囲の)世界が嫌いよ」と告げますし、青春を謳歌する同級生に土くれを投げつけて敵意を露わにします。コロンブスが新大陸を発見したときの讃歌を教師に無理矢理歌わされますが、アルセーヌが小屋で泡を吹いて倒れたとき、ムシェットはその歌を歌います。
 貧しい家で病気の母親の世話をし、生まれたばかりの弟の世話をしているムシェットには友人もいませんし、信頼すべき人物もいません。まったく孤立した少女で、彼女はこの世界に押しつぶされそうになっています。ブレッソンの表現では、「犠牲者」です。最期まで彼女に救いは訪れません。近所の老婆がくれたドレスを体にまとわらせて転がり続け、三度目に池に落ちて自殺します。ブレッソンは敬虔なカトリックだったそうですが(カトリックの戒律では自殺は禁じられている)、フランスでセーヌ川に飛び込んで自殺する人はかなり多く、もっと自殺する人が多くならないことが異常でさえあると言っています。

     映画川柳「教室に 木靴の音が コツコツと」飛蛛

 アルゴス・フィルム&パルク・フィルム配給。タイトル・バック(オープンとエンド)にモンティヴェルディの『聖母マリアの夕べの祈り』より「マニフィカト」、ブレッソンによれば、「映画をキリスト教信仰で包んでいるわけです」。
2009年4月15日

DVD
バルタザールどこへ行く
フランス
1966年
(日本公開1970年)
95分
 ブレッソン監督がドストエフスキーの『白痴』の挿話から得た物語に基づく一篇。アルゴス・フィルム配給。中心となるBGMは、シューベルトのピアノ・ソナタ20番。1973年ごろ、キネマ旬報読者の映画評仲間で、My Best Filmsを選出したときにGYAさん、こと村上知彦氏がベスト・ワンに推薦していたことを覚えています。私は『蜜の味』を挙げていました。
 バルタザールはロバの名前。マリー(アンヌ・ヴィアゼムスキー)が幼い頃に農場主がもらってきたロバです。所有者が次々に変わります。それら所有者が関わる事件を串刺しのようにつなでいくのがロバのバルタザールです。マリーから不良少年ジェラール(フランソワ・ラファルジュ)、浮浪者アルノルド(ジャン=クロード・ギルベール)、サーカスの“賢いハンス”役、再びアルノルド、穀物商(ピエール・クロソウスキー)、再びマリー、そしてジェラールに奪われて死。ロバの取り上げ方に作為性が大きく、考え過ぎの描写が煩わしいため、私には納得のいかない作品です。

     映画川柳「《次第に慣れて》 爆竹も ロバをおどかす 悪徳も」飛蛛

 ドナルド・リチーは語る。ブレッソンは「モデル」が表現するものを描いた、見る人が自分で意味を探すことができる。
2009年4月13日

Show time

主任警部モース
消えた装身具
欺かれた過去
邪悪の蛇
有罪判決

各 103分
 Show Timeで「主任警部モース」を配信していることが分かったので、さっそく会員登録して、未見だった回をチェックしました。
 画面は小さくて不満はありますが、1回200円程度で見られるのはレンタルDVDなみです。
 第4回『消えた装身具』は原作があります。中年および老年女性のパワーが印象的な一篇。男たちがなんとなく哀れに思えます。モースは離婚経験のあるツアー・ガイドのシーラにシンパシーを感じます。
 第10回『欺かれた過去』ではクリケットが紹介されます。モースはクリケットに否定的な印象を述べます。もと学友の若き美人妻に惚れます。犯罪の蔭に「金と愛」があるという原則を確認する結果となります。
 ジョン・マッデン監督の第12回『邪悪の蛇』は前半、移動カメラがスムーズに動き、緊張感を高める傑作でした。
 第24回『有罪判決』は解放措置を試みる刑務所内での囚人の殺人という難しい状況での捜査になります。
 内容紹介は主任警部モースの記録の各回に書き込みます。

     映画川柳「仕事のみ 部下に休暇を 取らせない」飛蛛 
2009年4月7日

DVD
スリ
フランス
1959年
72分
ロベール・ブレッソン脚本・監督。ブレッソンが、『抵抗』(1956年)に次いで製作した作品。カミュの『異邦人』のように、母の死に目に会う無為無職の青年ミシェル。スリの瞬間に生きがいを感じるものの、周囲に警官の目を感じて、いき苦しくなる。イタリアのミラノに脱出、ロンドンなどで働いた後で、パリに戻って来る。親友のジャックの女友達ジャンヌの窮乏を目の当たりにして、再びスリを働くが、警察のおとり捜査で逮捕されてしまう。そして、彼は自分のジャンヌに対する愛情に気付く。

     映画川柳「犯罪を 許されてあり 神の無き」飛蛛

 特典に収録された諸篇:ブレッソン監督はTV番組「Cinepanprama」のインタビューで(1960年)、「理解する以前に、男を取り巻く環境を感じて欲しい。環境が不安や病をもたらす。泥棒のかもしだす違和感や孤独を描きだしたい。(あなたの作風の本質は演劇的なものの拒絶ですと問われて)私が演劇において拒絶しようと心がけているものは物真似、身ぶり、声色による表現です。(「役者の演技を嫌います。普段のままでもダメ。役者を消し去ります。日常より表現を弱めます」と指摘されて)違います。俳優を無意識行動に委ねさせる。普段も無意識行動は多い。(大衆が映画で見たがるものにソッポを向いていますと批判されて)撮り終えたら観客に混じって楽しみたい。来るべき映画表現はますます演劇から離れていきます」。このインタビューでは男女のインタビュアーは遠慮なくブレッソンに攻撃的な質問をしかけていて、ブレッソンの本音を引き出しています。日本の場合の大監督に聞く、遠慮がちの、無内容な質問とは異なります。
 バベット・マンゴルト監督の『「スリ」のモデルたち』(2003年。この場合のモデルはブレッソンの言う演技者のこと)には、ブレッソンの言葉「映画に不可欠なのは人間です。即興的にとらえた視線は至上のものです」が引用されています。ジャック役で出演した生物学者ピエール・レマリーは、「ブレッソンは何テイクも撮影して、演技者がセリフの意味を忘れる瞬間を求めていた、演技はこまかく指示されていた、中立性を保つためだった」。その中立性が解釈の自由さを生むと言います。息子が俳優になるのではと心配していたレマリーの父親に映画を見た友人が「息子さんは演技をしていません」と言ったそうです。レマリーは完成した映画を見ておらず、ブレッソンが演技を望まなかったと言います。
 ヒロイン、ジャンヌを演じたマリカはブレッソンから抑制することを学んだ、彼は動作を支持するだけで心理は説明しない、自分は子供だからそれに従うだけ、ブレッソンは意思喪失の人間を求めていたと証言します。マリカが保管していた台本によれば、最初にブレッソンが想定した題名は『不確実』。
 メキシコに暮らすミッシェル役のマルタンはブレッソニア(ブレッソン調)を語ります。ときどきブレッソニアの作品があり、例えば『クレーヴの奥方』と証言、撮影のエピソードでは、「階段を登る場面を40テイク撮影して自我が弱まった。内的緊張が目や手に反映される」と言います。モラヴィアは『スリ』を「敏捷な手のラスコーリニコフ」と評しているそうです。
 『カッサジ』では、『スリ』で技術指導をしている奇術師カッサジがカミソリの刃を一枚ずつくわえこんだ後、糸につないで吐き出す妙技、客から次々に腕時計や札入れ、ネクタイをスリ取る美技を見せます。
2009年3月31日
ハピネット・ピクチャーズ

DVD
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか

英国
1980年
188分
  原題 Why Didn't They Ask Evans?。脚色パット・サンディーズ、製作総指揮・監督ジョン・ディヴィーズとトニー・ワームビー。LWT制作。制作ジャッゥ・ウィリアムズ。
 トーマス医師(バーナード・マイルズ)とゴルフ・ボールを打っていたボビー(ジェイムズ・ウォーウィック)はールの行方を追い、崖下で瀕死の男を発見します。彼の最期の言葉は「なぜ彼らはエヴァンスに頼まなかったのか」。ボビーは牧師(ジョン・ギールグッド)の息子で教会のオルガン弾き。友人のバッジャー(ロバート・ロングデン)と共同でポンコツ車修理事業をしようとしています。
 ボビーは、知己の伯爵令嬢フランキー(フランチェスカ・アニス)と電車で出会います。検死審問で死者の妹のケイマン夫人(ミッツィ・ロジャーズ)は自殺の心当たりがないと証言します。何か言葉を遺さなかったかと問われて、ボビーは手紙で男の最期の言葉を伝えると、毒入りビールで生命を狙われます。教会の礼拝に出席せざるえを得なかったボビーに代わって死者の見張りをしてくれたロジャー(リー・ローソン)が怪しいと、フランキーはジョージ医師(ロウランド・ディヴィズ)と組んでニセの自動車事故を起こし、ロジャー家に寄宿します。邸には、ロジャーの勝気な義姉シルヴィア(コニー・ブース)、気難しい兄ヘンリー(ジェイムズ・コッシンズ)はロジャーが言うには“麻薬中毒”。近所に麻薬中毒患者を収容するビン底眼鏡のニコルソン医師(エリック・ポーター)の邸宅があります。ボビーはフランキーの運転手に変装して探りを入れます。夜間に療養所に侵入したボビーは逃げ出してくる女に会います。写真の女でした。ニコルソンの妻モイラ(マデリーン・スミス)だと言います。彼女は夫に迫害されていると訴えます。邸で開催されたパーティに招かれた探検家アラン・カーステアーズが浮上して来ます。崖から墜落死したのはこの男ではないのか。彼はいったい何を探ろうとしていたのか。麻薬中毒で入院しようと準備していた矢先にヘンリーが密室で自殺。
 調査していくうちにガンを苦にして自殺したという大富豪サヴィッジの金が、船旅で知り合ったテンプルトン婦人に遺された事情が絡んでいるらしいことが明らかになってきます。
 ボビーとフランキーは窮地に陥りながらもなんとか助けあって危機を脱出します。他のキャストは牧師館のメイド・グラディス(ドリス・ヘア)、アランの情報を教えるリヴィングトン夫人(ジョーン・ヒクソン)。

       映画川柳 「犯罪で 怪しくふるまう 無実者は」飛蜘
 
2009年3月31日
ハピネット・ピクチャーズ

DVD
七つのダイヤル

英国
1981年
262分
 原題 Seven Dials Mystery。脚色パット・サンディス、監督トニー・ワームビー。LWT制作。トミーとタペンスものではありません。
 ワイバーン荘に宿泊していた八人は寝坊の当主ジェリー・ウェイド(ロバート・ロングデン)を起こすのに、八個の目覚まし時計を買って、部屋のあちこちに置きました。翌朝、ジェリーは起きてきません。執事が見に行くと亡くなっていました。クロラールの過剰摂取でした。奇妙なことに時計は七個が一列に並べられていて、1個は無くなっていました。
 帰宅した邸の持ち主ケイタラム卿(ジョン・ギールグッド)の娘アイリーン“バンドル”(チェリル・キャンベル)は、「ジェリーは殺された」と言っていたジェリーの友人で外務省のロニー(ジョン・ヴァイン)が撃たれて倒れる最期に遭遇してしまいます。ロニーの最期の言葉は「セヴン・ダイヤルズ、言ってくれ。ジミー・セシジャー」でした。別邸に住んでいるジェリーの妹ロレイン(ルーシー・ギターリッジ)が邸にやって来ます。捜査はロニーの友人のジミー(ジェイムズ・ウォーウィック)とバトル警視(ハリー・アンドリュース)が中心で進んでいきます。
 ジェリーのボスであるビル(クリストファー・スコウラー)が協力。他の登場人物はオズワルド卿(レスリー・サンズ)、オズワルド卿の妻レディ・クート(ジョイス・レッドマン)、政治家ジョージ・ローマックス“スケソウダラ”(テレンス・アレクサンダー)、伯爵夫人(ルーラ・レンスカ)、オズワルドの秘書ルパート“ポンゴ”(ジェイムズ・グリフィス)、トレッドウェル(ブライアン・ワイルド)、陽気なヴェラ(ヘンリエッタ・ベイナーズ)など。
 独自の推理で行動する活発なアイリーンが魅力的ですがそれも同じ調子の繰り返しなので、飽きてきます。長過ぎます。

       映画川柳 「七人の 祖国を守る 勇者たち」飛蜘
2009年3月30日
ハピネット・ピクチャーズ

DVD
おしどり探偵
秘密機関


英国
1983年
116分
 
 原題 The Secret Adversary。ロンドン・ウィークエンド・テレビジョン制作。原作はアガサ・クリスティー、パット・サンディス脚色、トニー・ワームビー監督。音楽はジョセフ・ホロヴィッツ。撮影マイク・ハンフリーズ、編集レイ・ヘルム。製作補ロン・トライ、製作者ジャック・ウィリアムス。
 冒頭はルシタニア号沈没の混乱。第一次世界大戦が終わって、軍を退役したトミー(ジェイムズ・ウォーウィック)と従軍看護婦だったタペンス(フランチェスカ・アニス)は出会い、二人で冒険家協会という広告でもだそうかと相談していました。喫茶店でそれを聞いたウィンテントン氏(ジョージ・ベイカー)が仕事を依頼しますが、タペンスがふと聞き覚えたジェーン・フィンという名前を持ちだすと、彼は怒り出し、そして、翌日消えてしまいました。タイムズにジェーン・フィンについて情報求むと広告を出して応じたカーター氏(ピーター・バークワース)から、その謎の女は魚雷で沈んだルシタニア号でアメリカの特使の密書を受け取ったらしいことが分かります。戦争を引き起こす恐れのある密書だといいます。後で、ゼネストや革命に関する密書らしいことが分かります。
 フィンを手がかりに捜査を始めた二人は、途中トミーが監禁されたり、船に乗船していたリタ夫人(オナー・ブラックマン)のメイドに変装したタペンスの正体が割れたり、怪しい人物が次々に現れます。ジェーンの従兄だというアメリカの富豪ジュリアス(ガヴァン・オーハーリニ)、カーター氏の友人で王室顧問弁護士ジェイムズ卿(アレック・マックコーワン)、悪人の巣窟でトミーを助けるアネット嬢(トリア・フラー)、組織のナンバー1のクラメリン(ジョン・フレイザー)などなど。組織の黒幕にはブラウンという男がいるようです。いったい誰がブラウンなのでしょうか。派手な撃ち合いを伴うカーチェイスがあります。
 リタ夫人のいるホテルの給仕アルバート(リース・ディンスデイル)がタペンスをサポートします。

       映画川柳 「大戦後 ロシア革命 影落とす」飛蜘
2009年3月30日

DVD
赤ちゃん泥棒


USA
フォックス

1987年
  実弾の入っていない拳銃を武器にコンビニ強盗を繰り返し、刑務所に出たり入ったりしている男ハイ(ニコラス・ケイジ)と、記録係・婦人警官の妻エド(ホリー・ハンター)は、結婚する。エドは赤ん坊を望んでいたが不妊症と判明して落ち込む。家具販売業者ネイサン・アリゾナ(トレイ・ウィルソン)に五つ子が誕生したニュースを見て、一人ぐらいならと赤ちゃんを盗む。一方、下水管を通って泥の中から出てくる脱獄したムショ仲間ゲイル(ジョン・グッドマン)とエヴェル(ウィリアム・フォーサイス)は、ハイのトレーラーハウスに居候。
  ハイは上役グレン(サム・マクマレィ)とその妻ドット(フランセス・マクドーマンド)の訪問を受ける。彼らの騒々しい子供たちにエドはうんざり。さらにハイはグレンのスワッピング要求を断って殴り倒し、クビになってしまう。
 ハイはドラッグストアでオムツを盗んで警察に追跡されるが、なんとかかわしたものの、ゲイルに銀行強盗に誘われて大弱り。グレンは新聞記事を見てネイサンの赤ん坊だと気づき、赤ん坊をよこせと迫る。それを盗み聞いたゲイルたちはハイから赤ん坊を取り上げ、金儲けをしようと計画。奪われた赤ん坊を取り返そうとハイとエドは必至になる。一方、一匹狼のマンハンター、レナード・スモールス(ランドール・テックス・コッブ)はネイサンに賞金の増額を要求、返事を聞かずに赤ん坊探しに出ていた。赤ん坊が可愛いくなったゲイルたちは強盗の途中で赤ん坊をときどき置き忘れる。三つ巴の大格闘がくりひろげられるのだった…。何とか赤ん坊を守ったハイとエドは自分たちは親にふさわしくないと赤ん坊をネイサンのもとへ返しにゆくのであった。
 ジョエル・コーエン監督、製作イーサン・コーエン、脚本コーエン兄弟、撮影バリー・ソネンフェルドの“躁状態”のコメディ。丸腰でも窃盗犯人をガンガン狙い撃ちする警官やマシンガンをぶっ放す賞金稼ぎなど荒くれぶりがマッドです。

       映画川柳 「手留弾 ピンを抜いたら 十秒後」飛蜘
2009年3月23日

DVD
華氏451

ユニヴァーサル

1966年
112分
 レイ・ブラッドベリのマッカーシズム批判の原作をフランソワ・トリュフォーが監督した異色近未来SF。人々は双方向のテレビで管理され、教育されています。主人公モンターグ(オスカー・ウェルナー)の妻リンダ(ジュリー・クリスティー)はその生活に慣れています。モンターグの仕事は消防士ですが、耐火設計の家になった今では消防士の仕事は火を消すことではなく、本を焼くことです。本を読むことはいまや反社会的行動なのでした。ある日、モンターグに妻とそっくりで断髪のクラリス(ジュリー・クリスティ二役)が接近してきます。
 クラリスは本に情熱を持ち、テレビも見ていません。関心をもったモンターグは次第に本の面白さに目覚めて行き、とうとう昇進を拒否して辞職する決意をします。最後の出動につきあわされた彼が向かったのは自分の家でした。妻が密告したのです。本をけなす隊長に火炎を浴びせたモンターグは殺人犯として追われる身となりました。クラリスに教えられた古い鉄路の先に「本の人々 ブック・ピープル」の村がありました。当局でし立てた身代わりが射殺されたモンターグは、アラン・ポーの小説『怪奇と幻想の物語』の暗誦を始めるのでした。  原作者ブラッドベリは最後のブック・ピープルのシーンを誉めていますが、クラリスが原作では16歳だったのに映画ではジュリー・クリスティの二役で大人の女性になっていることと、モンターグを探す空飛ぶ男たちの特殊撮影ミスには落胆したと証言しているそうです。特殊撮影は三人の男たちを釣るワイヤーがはっきり映っています。拙劣というほかない撮影でした。近未来とはいえ、田舎の屋敷などは伝統的なデザインで、自然もいまのままです。オスカー・ウェルナーの鬱屈した表情が映画のトーンを暗くしています。
 本好きには登場する本が関心のまとです。モンターグが最初に電灯の笠から見つけるのは『ドン・キホーテ』でしたし、自宅で最初に読むのは『ディヴィッド・コッパーフィールド』でした。妻の友人たちに読んで聞かせるのもたぶんこの小説。
 燃やされる本はたくさんありますが(Wikipediaでリスト・アップされていました)、表紙がはっきり映るのは、署長が《実存しない人間の物語は読んだものを不幸にする》《矛盾する幸福が描かれている》という、『オセロ、ヴェニスの商人』、『ヴァニティ・フェア』、『ボヴァリー夫人』、『ル・モンド・ア・コート』、『不思議の国のアリス』。哲学書に関する署長の見解は《小説よりもっと悪い。自分は正しく他の者はバカだと主張する。あるときは人間の運命は決定されると説き、時代が変わると選択の自由があるという。流行にすぎぬ》。自伝の類については《虚栄を満足させる道具と化す》。『ロビンソン・クルーソー』、アリストテレス『倫理学』、『サルバドール・ダリ画集』公開禁止になったジャック・リヴェット監督の『修道女』のスチル写真、『カイエ・デュ・シネマ』誌(表紙はゴダール監督の『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグ)なども燃やされる。
 モンターグの自宅で焼かれるのはマーク・トゥエイン『トム・ソーヤーの冒険』、フランツ・カフカ、ジョン・オハラ、ジャック・オーディベル『マリー・デュボワ』、メルヴィル『白鯨』、モリエール『ドン・ジュアン』、レオナード・マッターズ『切り裂きジャックの謎』、ツルゲーネフ『父と息子』、ジャン・ジュネ『泥棒日記』、ヘンリー・ミラー『プレクサス』、『ジェイン・エア』、サド『ジュスティーヌ』、ポール・Gegauff『Rebus』、サリンジャー『ライ麦畑で捕まえて』、クノー『地下鉄のザジ』、デフォー『ペスト』、暗黒叢書のTeves『In ze Pocket』、ナボコフ『ロリータ』。本文のページが焼け落ちて行くのが『カラマーゾフの兄弟』『ロリータ』、オーウェルの評論『ラッフルズとミス・ブランディッシ』、ロシア語のなにか、中国語の何か。
 秘密図書館が焼かれる前にモンターグがこっそり盗む本のタイトルは『カスパー・ハウザー』。トリュフォーはカスパー・ハウザーの物語の映画化を企画していたのだが、 結局「アヴェロンの野生児」の記録の方を『野性の少年』として映画化した。
 最後に紹介される「ブック・ピープル」は、スタンダール『アンリ・ブリュラールの日記』、プラトン『国家』、ブロンテ『嵐が丘』、バイロン『海賊』、バニヤン『天路歴程』、ベケット『ゴドーを待ちながら』、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』、ディケンズ『ピクウィック・ペーパーズ』、ブラッドベリ『火星年代記』、サルトル『ユダヤ人』、オースティン『高慢と偏見』、マキャヴェリ『君主論』など。老人が遺言として少年に口移しで教えているのはスティーブンソンの『ハーミストンのウィア』。

       映画川柳 「平等に 愚民政策 テレビにて」飛蜘



2009年3月〜6月に見た 日 本 映 画 (邦画)
見た日と媒体 作  品        感  想     (池田博明)
2009年6月25日

DVD
人斬り与太
狂犬三兄弟

1972年
東映
86分
 監督・深作欣二、撮影・仲沢半次郎、音楽・津島利章の『現代やくざ・人斬り与太』のスタッフが、『人斬り与太』同様にノーメイク、ノーレフ、手持ちカメラで製作した意欲作第二弾、助監督に沢井信一郎。脚本は松田寛夫・神波史男。37年ぶりに再見。
 六年前のことだ。村井組の暴れもの・権藤(菅原文太)は対立する組の組長(須賀不二男)を刺殺してムショ入りした。刑期を終えて出所すると、出迎えたのは弟分の大野(田中邦衛)だけだった。出所すれば大幹部と目論んでいたのに、村井組(内田朝雄)は新生会会長・佐竹(渡辺文雄)と手打ちをして、すっかり暴力沙汰を避けていたのだ。
 面白くない権藤は大野と一緒に組の店のあがりを略奪、代貸・五十嵐(室田日出男)から注意されると、バーを無理矢理支配下に置いて売春、稼ぎをかすめとっていた。六年前に権藤に顔を切られた志賀(今井健二)は復讐の機会を狙っていた。賭場で出会った蛇使いのフリーのやくざ・谷(三谷昇)を仲間に入れ、強姦した素人娘・道代(渚まゆみ)を店に置く。娘に客を取らせようとしても拒否して暴れまくる。道代から着物を取り上げて素裸にしたものの、翌日、気がとがめ、着物を与えて追い出す。しかし、道代は勤めていた工場がつぶれていて、谷に連れられて戻ってくる。道代にラーメンのチャーシューを分けてやる権藤。
 大野が新生会からの借金の取り立てで困っている鉄工場社長(河合絃司)を連れてくる。取りたてにきた新生会の連中を暴力で追い払った三兄弟は社長から礼金50万円をふんだくる。外に出ると新生会が意趣返しに駆けつけて来ていた。追われて、谷は新生会員に捕えられ、拷問に会い、殺される。ボロ切れのようにバーの前に棄てられる谷、死に際に権藤に「わいは列組んだの初めてや、面白かったぜ」と言う。
 村井組に抗議に来る佐竹。権藤は代貸に指をつめろと言われて、ドスを甲に突き立てる。仰天する組員たち。佐竹は「面白い見世物を見せてもらったが、こんなことではすまない」と言い捨てて去る。権藤は村井組長に佐竹を殺せと言われりゃ、すぐにでもブっ殺しますぜと迫るが、村井にそんな気は無い。
 怪我の治療の途中で酒を飲もうとする権藤、止める道代と大野。とうとう大野とも喧嘩して彼を追い出してしまった権藤は、どしゃ降りのなか、志賀を待ち伏せ、さしの勝負をする。結局、志賀を撲殺する。巨乳の女を連れ帰った権藤は娘の前で女を抱く。朝になると娘は去っていた。あげた着物がきちんとたたまれていた。
 志賀殺しで、佐竹の許に村井が金を持ってわびを入れに来る。村井は権藤を始末する段取りも付けたと言う。
 一方、バーの権藤の許へ大野が来る。大野は権藤に銃を向けるが、撃たずに組長からの命令だと明かす。権藤を匿おうとする大野は自分の家に帰り、金を工面しようとする。TVからは天地真理「ひとりじゃないの」が流れ、母親(菅井きん)は南無妙法蓮華経を唱える。不具の弟が稼いだ金を持ち去ろうとして大野は弟と母親に殴り殺される。そこへ入って来た権藤。言葉も無い。
 村井組長の自宅。権藤が忍び込む。「大野は母親に殺された。親が子供を殺すなんて」と権藤。組長を射殺。逃げて、閉館した映画館・銀映座に逃げ込む。佐竹は村井組に権藤の隠れ場所を通報。村井組が武装して映画館を取り囲む。権藤の銃は弾切れした。撃ちこまれる銃弾。やがて運び出される死体をじっと見つめる道代。ちなみに映画館の破けた看板は深作欣二監督「博徒外人部隊」。
 ラーメンを食べる道代。テロップが出る。「数ヶ月後、この女は狂犬の血を引く子供を産んだ」と。渚まゆみに一言もセリフが無いし、道代という名前も呼ばれることが無い。

     映画川柳「横町へ 裸で飛び出す 田舎娘」飛蛛
2009年6月20日・21日

土曜ロードショー

21:00〜23:05(後篇は23:20)
刑事一代


2009年
テレビ朝日
3時間半位

  副題は「平塚八兵衛の昭和事件史」。脚本は長坂秀佳・吉本昌弘、演出は石橋冠。一度も昇進試験を受けなかったが、警視にまでなった警視庁捜査一課・平塚八兵衛(渡辺謙)の事件簿を八兵衛が記者に語る。妻役は原田美枝子。二夜連続で描く。
 「帝銀事件」の名刺捜査から八兵衛は平沢貞通(榎木孝明)へたどりつく、平沢の長女(木村多江)の証言を得るために自分の子供の写真を利用し、妻に死なれたとウソをつく。本部から名刺班には小樽への旅費を出さないといった妨害を受けるが、捜査主任が金を工面してくれる。しかし、逮捕後は八兵衛の手を離れてしまう。
 銀座そごうデパートの「警備員殺人事件」(1958年)で容疑者を勘でシロと判断し、同じ職場の別人(杉本哲太)に当たりを付けた。相棒となった石崎(高橋克美)も一緒だった。犯人の妻(余貴美子)からアリバイ証言を崩す。しかし、物証のはずのコートからルミノール反応が出ない。コートは防水加工だったこと、その場合は反応が出ないことを実験で明らかにする。後ろ盾に常に、八兵衛を信頼してくれる課長代理・加山(柴田恭平)がいた。
 「吉展ちゃん事件」(1963年)で身代金を渡す地点で犯人を逃した後、捜査本部は解散、継続捜査班に八兵衛が呼ばれる。第一容疑者・小原保(萩原聖人)は幼少時の破傷風で片足が不自由なうえ、完璧なアリバイがあった。ここまで前篇。
 権威と闘う刑事だったが、徹底的な地取り捜査が八兵衛の基本。ひとつひとつ事実に当たっていくとアリバイは崩れていった。別件逮捕で小原の拘置可能期間はたった10日間、自供に追い込むことができない。しかし、最後の最後で宿泊地点の供述を翻したところで、突然の本庁からの取り調べ中止命令。人権に配慮してのことだった。FBIへの声紋鑑定の案が出た。その録音の雑談のなかで小原は日暮里の火事を山手線から見たと言う。その日が脅迫電話の日だった。小原が自分で東京にいたことを認めてしまったのだった。「もし人の道に外れたことをしていたのなら、保に天罰を下して下さい」という母親(佐々木すみ江)の言葉を伝えると、小原が自白を始めた。母親にこれ以上迷惑をかけたくない一心で小原は罪を認めなかったのだ。八兵衛は小原のために握りめしとナス漬けを持参する。刑の執行直前に小原は八兵衛に伝言を残した。「真人間になって死んでいきます。ナスの漬物おいしゅうございました」と。
 相棒だった石崎が末期ガンで入院。吉展ちゃん事件の功労で石崎は警視総監表彰をうけたが死んだ。後篇はほとんどこの事件を描く。
 「三億円強奪事件」(1968年)にも中途から関わったが、単独捜査を主張する八兵衛と複数犯を主張する本部はくい違い、時効前に捜査指揮官を辞した。
 退官後、八兵衛は小原保の墓参りに行く。保は小原家の墓の脇に埋められていた。母親と一緒の墓に埋葬されなかったのだ。八兵衛は保に謝る。八兵衛は昭和54年、66歳で永眠。

    映画川柳「犯人に 心もあれば 親もある」飛蛛 
2009年6月2日-6日

DVD
トリック2
第1話〜11話

2001年
テレビ朝日・東宝

23:15〜

各28分〜60分
 『トリック』第2シーズン。DVDは「やむ落ち」場面を復活した超完全版。
 第1話から第3話はepisode1「六つ墓村」。脚本・蒔田光治、演出・堤幸彦。
 第1話「六墓」。上田教授(阿部寛)のもとに六つ墓村の旅館、水上荘の主人・田島(石井宣一)が毎年1月11日に宿泊客に死人が出るという謎を解いて欲しいという依頼が来る。無理やり、奈緒子(仲間由紀恵)を誘って旅館に出向く二人。なんにでも「お」を付ける番頭・平蔵(渡辺いっけい)に迎えられた。他にも推理作家・栗栖貞子(犬山犬子)とアシスタント・藤野(堀つかさ)、県会議員の亀山(徳井優)と鶴井(長江英和)が泊まる。
 四百年前に村に逃げ込んだ落ち武者を殺した、そのたたりだと話す山伏(和田勉)と手まり唄を唱える女(あき竹城)も出現。実際は臆病だという栗栖を守ろうと部屋の外に張り込んだ二人だったが、栗栖は死亡。さらにその助手・藤野もしばらくあとで急死する。

 第2話「落ち武者の謎」。訪れた医師(白木みのる)の診断では栗栖は心臓麻痺、藤野は毒殺だという。矢部刑事(生瀬勝久)と石原刑事(前原一輝)が捜査に入る。平蔵が隠している秘密とは旅館の主の娘・美佐子が許婚者を振って失踪した事件らしい。美佐子の恋愛相手は平蔵だったが、身分違いをおそれて待ち合わせ場所に行かなかった平蔵の前から、彼女は忽然と姿を消してしまったのだ。座敷わらしの怪のトリックは二酸化炭素、絵の落ち武者の人数が減るのは機械的なトリックだった。手まり唄の「おわらしの戸開き」はわらし淵だと見当をつけて、その場所の洞窟内を探検する二人だった。

 第3話前半「手毬唄の謎」。洞窟では酸素が薄い。穴に落ちた二人を救出に来たのは旅館主・田島だった。これまでの事件のトリックを明らかにする二人。そして真犯人があきらかになる。穴の中で発見された白骨は女性だった。

 第3話後半から第5話はepisode2「100%当たる占い師」。脚本・蒔田光治、演出・堤幸彦。
 第3話後半。百発百中の占い師・鈴木吉子(銀粉蝶)はある男に右に行きなさい、左に行けば不幸になると告げている。彼女は未来が見えるという。信じない男は左に曲がる。すると、居眠り運転の車にはねられる。
 奈緒子は商店街の福引で一等を当てた後、上田の訪問を受ける。上田は占い師の正体を暴こうと提案する。占い師に言われたのと逆のことをやってくれというのだ。もちろん奈緒子は断る。しかし、上田は福引には一等の金の玉はもともと入っていない、しかし一等を当てた女がいたと追及。奈緒子は調査せざるを得ない。
 占い師は石段を登ってはならない、さもないと大事なものを無くすと奈緒子に告げる。奈緒子は石段を登るが何も起きない。しかし、上田が失踪してしまった。矢部刑事に連絡して一緒に占い師のいた場所へ行ってみると、吉子の家に招かれたという長部(伊藤俊夫)に会う。長部に同行して占い師の家に行くと、未来説明会で吉子は未来を予言したというビデオを見せる。

 第4話。奈緒子はビデオに操作の後を発見。邸内を探索した奈緒子と矢部は台所で縛られているマツ(絵沢萌子)を救う。カバンの中のお金を横取りしたというのだ。奈緒子は最初、カバンの中にはドライアイスが入っていたと推理する。ウソ発見カードを利用して、やくざを脅し、マツを助ける奈緒子。奈緒子は自分にも予知能力があるとみんなに奇術を見せる。上田が一瞬出現する。現在から未来への抜け穴、つまり時間の穴を見つけようという瀧山(光石研)が二人に協力を申し出、鈴木吉子の後をつけ、離れの蔵で「怨」「呪」の箱を開く。吉子が開けるなと予言した「叫」の箱を開いた瀧山は無線機に叫びを残して消えた。吉子は箱は全部今夜中に運び出すことになっていると言う。奈緒子と矢部は「叫」ぶの箱を発見できない。長部に奈緒子は先を読むトリックを説明する。
 納屋では箱が戻っていて、瀧山が倒れて死んでいた。吉子は時間の穴に落ちたのだと言う。奈緒子は叫ぶの箱が消えたトリックを解明する。吉子の提案で奈緒子とと吉子の予知能力対決が行われる。毒入りのコップを当てるという対決だ。最後に残った毒入りコップを奈緒子が飲む羽目に。

 第5話。毒が入っているかもしれないコップを飲めない奈緒子。対決に負けてしまった。しかし、実は毒ではなかったのだ。吉子のトリックに引っかかったのである。信者たちに責められて、奈緒子は破れかぶれの予言をする。それが外れれば磔だ。しかし、予言は当たる。かくれて見守っていた上田が助けたのだった。信者たちに詰めよられて絶対絶命のとき、幹部・清水(升毅)が自分に任せてくれと奈緒子らを引き取る。清水はすべては仕組まれたウソだった、もう止めると言う。しかし、逃走途中で吉子に見つかる。清水は時間の穴に落ちて、身体がねじえれて死亡。いつも長部が抱えていたカバンの中身はニセ札だった。いったい彼は何ものか?問いただす奈緒子に長部は占い師によって殺された婚約者の復讐に来たのだと言う。
 吉子に見つかり、会場に引きずりだされる。マツが吉子にもうもう止めるように助言する。育ての母親だったのだ。マツは吉子を反省させようと毒を飲む。吉子と奈緒子は信者の前で再び毒入りコップの賭けを行うことになる。奈緒子が無毒なコップを取る。次いで長部も無毒のコップを・・・のはずだったが、彼は苦しみ出す。残ったコップを吉子は安心して飲む、奈緒子が止めるのも聞かず。
 自分の手を汚さず吉子と清水を殺すという長部の復讐は遂げられたのだった。脚本・太田愛、演出・木村ひさし。

 第6話-7話はepisode3「サイ・トレイラー」。脚本・太田愛、演出・木村ひさし。
 第6話。人面タクシーに乗り込み失踪した婚約者・京子を探してくれ、物質に残った意識の痕跡をサイ・トレーリングを喧伝している深見(佐野史郎)が本物かどうかを確かめてくれと商社員・岡本(池内万作)の依頼。深見は上田が拾った財布の落とし主を当てさせる。奈緒子のマジックは馬鹿にされる。テレビの上田の番組「どんと来い超常現象」に出演、京子は既に殺害されている、四人の失踪者を発見する代わりに一千万円を支払えと言う。金の工面に困る一同のもとに、小早川京子の叔父(田山涼成)が現われ、生死に関わらず見つかるなら金を出すという。
 深見は京子以外の三人の死体をサイ・トレーリングで発見する。死者の意識が残るゾーンがあり、不本意に死んだ場合はゾーンに意識が強く焼きつけられると説明する。死と恐怖を追跡する悪魔の力がある、京子の身近な人間に殺人者がいるのだと・・・。京子の捜査を遅らせる深見。霧の夜、一同の前に人面タクシーが出現し、すり抜けて消える。

 第7話。タクシー消失のトリックを解明する奈緒子。タクシーを運転したのは深見だと推理するものの、深見はそんなことをしても利益が無いと主張する。奈緒子は各人の行動から深見と岡本の共犯説を主張、しかし、岡本が窓から落下死、深見も椅子の上で脈が無かった。死の力におびえた叔父は京子の死体を発見し、快楽殺人鬼の正体が明らかになる。深見は京子の父親だったのだ。そして、全体が壮大な計画的復讐だったことが明らかになる。

 第8話 episode4「天罰を下す子」

 第 話 episode5「妖術使いの森」


    映画川柳「手のこんだ 復讐の罠 つぎつぎと」飛蛛 
2014年1月4日

テレビ朝日
21:00〜23:12
トリック 劇場版2


テレビ朝日・東宝
2006
110分

 堤幸彦監督、蒔田光治脚本。富毛村から来た青年は子供の頃行方不明になった美紗子が孤島で生きていることが分かったが、手紙に殺されるとあった、救出してほしいと、上田教授(阿部寛)に依頼。上田は山田(仲間由紀恵をを誘い、孤島に渡る。島は霊能力者の筐神紗和子(片平なぎさ)に支配されていた。紗和子は箱を使った移動マジックであの世とこの世を往復していた。教団の合言葉は「よろしくネ」。
 反対派の島民を信用させた大岩の崖上への移動のトリックは? 箱の部屋の仕掛けの中に幽閉されていた美紗子(堀北真希)を救出し、富毛村へ戻ったまではよかったが、富毛村には紗和子から巫女を返さなければ村には災いが起こると予告文が届いていた。村人は上田に助けを求める。富毛村にはガスが噴き出る富毛沼があった。美紗子は昔、その沼の側で体験した過去を思い出した。
 紗和子が村を消しに来る前に山田は村人の協力を得て村を消すことを提案する。鏡を使った窓枠マジックで教団を騙すトリックはうまくいった。しかし、紗和子によって村は消されてしまった。村人は山田を信ぜず、紗和子に村の財宝を提供しようとする。山田は止めに入るが、紗和子は箱脱出バトルを提案、紗和子が1分後に消失した箱の中に入って1分後に火をつけられる。山田は燃える箱のなかから脱出できるのか。
 
2009年5月27日-29日

DVD
トリック
第1話〜10話

テレビ朝日・東宝
2000年7月7日〜
23:09〜
金曜ナイトドラマ

各47分
 テレビ朝日の連続ドラマ。辛口の映画評論家・小林信彦が絶賛していました。確かに面白い。

 第1話から第3話」(脚本・蒔田光治、演出・堤幸彦)はepisode1「母之泉」。枕はフーディニーの透視術暴露。
 第1話。奇術師・山田奈緒子(仲間由紀恵)はドサ回りの舞台を解雇されてしまった。「人前で笑ったこともない」という愛想のなさでは客受けが悪いのだ。そんなとき、雑誌で、日本科学技術大学(ニホン・カギダイと略される)の物理学者・上田次郎(阿部寛)がほんものの超能力者を賞金付きで求めていると知って、応募してみることにする。奈緒子は封筒から百円玉を抜き取る手品を見せる。彼女の能力に感心した上田は大学の事務長・大森の娘・美和子(伊藤裕子)を新興宗教「母之泉」から取り戻すために、教祖の霧島澄子こと“ビッグ・マザー”(菅井きん)のインチキを暴いて欲しいと持ちかける。もちろん奈緒子は断る。「あんたがやればいいじゃないの」という訳だ。虚勢を張っている上田は超能力の裏を見抜く能力が無いのだった。上田の目の前で30万円の小切手を破り捨てた(奇術で)奈緒子だったが、明日返しに行こうかなと思っている矢先、上田は奈緒子のアパートに来て、滞納していた下宿代まで支払っていた。しかたなく、奈緒子は上田と一緒に田舎の「母之泉」へ乗り込むことになる。
 教祖は新参者が封筒に書き入れた悩みを次々に当てて信頼を得ていたが、奈緒子はこれを「ワン・アヘッド・システム」という奇術だと説明する。事務長の娘は息子の死は自分に責任があると自責の念にとらわれており、教祖の能力に疑いを持っていないため、説得に耳を貸そうとしない。それに、山を降りた元信者が不可解な死を遂げているのだ。上田も中空に出現した教祖から四日後に死ぬと宣告されていた。
 奈緒子は明日もう一度封筒の内容を当てる試験を申し出て不正を暴くという。そして、その時がやって来た。
 
 第2話。奈緒子が急に出した封筒の中に書いた内容“貧乳で困っています”を教祖は見事に当てた。彼女は本当に超能力者なのか。会場で何かの匂いがしていたことに奈緒子は気づいていた。探ってみると、それはアルコールだった。封筒をアルコールでなぞっていたのだ。
 息子の呪いを気にする美和子に奈緒子は亡くなった息子さんの言葉を聞いてみればいいじゃないですかと提案し、天国の息子へ宛てて手紙を書かせる。しばらくすると同じ封筒の中に息子からの返事があった。けれども、奈緒子はこれは封筒を二重にした奇術だったと説明する。
 二人は美和子を連れて脱出、上田は追手を空手で倒す。車で逃走したはいいが、車は途中でガス欠。逃げ込んだ民家の主・青木(河原さぶ)は息子が教団に入信し、脱出しようとして死んだという経験から、三人を匿ってくれた。「今夜死ぬ」と宣告された美和子を守って寝ずの番をした二人だったが、深夜急に眠気を覚えた奈緒子が翌朝隣で寝ていた美和子を起こそうとすると、彼女は亡くなっていた。警官たち(生瀬勝久、前原一騎)たちは部屋に一緒にいた奈緒子にいったんは手錠をかける。しかし、美和子の遺書が発見され、毒物を飲んだ自殺だったということになる。

 第3話。奈緒子は前夜キジ汁を出した青木が教団の信者だったことを突き止め、この自殺は巧妙な殺人であると告発する。「お前らがやったこと、ぜんぶお見通しだ」と。三たび奈緒子と教祖の対決、奈緒子が書いたふたケタの数字を当てようというのだ。右手のひとさし指を賭けた奈緒子はまたも敗北する。空手を使って上田は逃げ出し、奈緒子も続くが、二人はすぐに捕まってしまう。上田は奈緒子をここに引き込んだのは自分だ、代わりに自分の命を取れと申し出る。そんな提案の理由は・・・「俺にも世間体があるだろ」、奈緒子「悪人相手にミエ張ってどうするんですか!」。奈緒子は縛られた手を縄抜けの術を使って抜け出す。数字当ての会場で二人はなぞ解きを試み、上田は無意識の心理操作で説明する。上田は教祖に会いに行く。奈緒子の母、書道家の里見(野際陽子)は故郷で原因不明の熱病に苦しんでいた。
 一方、青木と会った奈緒子は上田を自分が殺すことになると伝えられる、その直後に、吹き矢で青木は殺された。夜の式場で、再び奈緒子と教祖の対決。空中浮揚させられた上田を猟銃で撃てという。奈緒子は鏡のトリックだと喝破する。鏡を撃ち割った瞬間、教団の参謀・津村(山崎一)は幹部に集会の中止を宣告、教祖は津村に「もう止めよう」と告白、毒を噛んで自殺する。死ぬ間際に、教祖はほんとうに人の心を読める人間がいるのだと言い、仕立てあげられた組織について話し、奈緒子の思い出を見る。奈緒子の奇術師の父親(岡田真澄)はほんものの霊能者に殺されたんだと言う。
 警官は水道管から毒物を発見したと伝える。津村はビッグ・マザーを失った人々に何が残ったんだと言い捨てて連行されていく。奈緒子「ほんものの霊能力者はいるんでしょうか」、上田「あれは彼女の負け惜しみだよ」。
 途中で寝てしまった奈緒子を背負って家まで送った上田は空中に浮かされていたときに自分が送ったサイン(嘘をつくとき鼻を動かす)に気づいてくれたことに礼を言う。奈緒子は「?」。なぜ鏡のトリックと気づいたかと問う上田に、奈緒子は「時計をしている手が反対だったから」と。
 別れ際の二人のセリフは「貧乳のことは忘れたほうがいいぞ」、「巨根の弊害に比べれば小さな問題だ」。可笑しい。

 第4話・第5話はepisode2「まるごと消えた村」。枕はエッフェル塔消失。
 第4話。演出・保母浩章。宝女子(ほうめご)村から突然ひとが消えた。警察公安課長(中丸新将)が上田へ相談に来た。食堂に勤めていた奈緒子は上田から調査の相談を受ける。橋を隔てて、離れ島にその村はあった。村民消失の報告をした前田巡査は、この村出身の超能力者・ミラクル三井(笹井英介)が村民を消失させたのだという。
 前田巡査と上田、奈緒子は村へ入るが、やはり家には誰もいない。ストーン・ヘンジがある。上田は子袋を表したものだという。奈緒子は少女を目撃し、ミラクル三井に出会う。三井は前田巡査を消してみせ、彼の過去も一緒に消してしまった。連絡を受けて矢部刑事が応援にやって来る。あまり役には立たないのだが。夜中に上田は古い曼荼羅図を発見、しかし窓越しに仮面の者を見て気絶。
 翌朝 ビデオテープに三井が上田の首を消すトリックが映って映っていた。奈緒子が押入れの引き戸を開くと、そこには上田の首なし死体があった。
 
 第5話。逃げ帰ろうとした二人は橋が消えているのに気づく。奈緒子は本当に死体が上田だったかどうかいぶかしむ。矢部と二人で死体の○根ぶりを比べてみるが、よく分からない。再び現れた三井を前に奈緒子はカードを消すマジックを見せるが、三井は嘲笑し、ストーンヘンジを一挙に消してみせる。さらに奈緒子も消すと言う。マントをかぶせられた奈緒子はどこか知らない処へ来ていた。奈緒子は例の少女に出会うが、少女は「わたしは死んでいなければならない」と告げて逃げる。民家に戻ると、家には上田が居た。彼は監禁場所から見知らぬ女によって助け出され、家に戻って来たと言う。二人は事態を推理する。女が重大な秘密を打ち明けると指定した約束の場所へ行くと、女は話しかけたものの急に恐怖に駆られて消えてしまう。
 村民は消えてはいない。常に自分たちは監視されているのではないか。上背のある死体は前田巡査で、自分たちと行動を共にした前田巡査は実は偽物だったのではないか。実はミラクル三井は村民によって操られているのではないか。いったい何のために。
 25年ごとに起こるという災禍を防ごうと村民たちは少女の生贄を捧げる儀式をしていたのだ。真相に迫った二人に村民たちが迫る。どうやって、この危機を脱出すればいいのだろう。そして生贄に捧げられた少女はなぜ生きて、逃げまどっているのだろうか。

 第6話・7話はepisode3「パントマイムで人を殺す女」、呪術師殺人事件とでも呼ぶべきもの。枕は、大正時代に牛の刻参りで男を呪殺したとされた女は呪いによる殺人は不可能とされ罪を問われなかったという話。脚本・林誠人、演出・大根仁。
 第6話。母からの速達が奈緒子に届いた。その直後、上田に呼ばれた奈緒子は結婚紹介所から来たという女の写真を見せられる。ばかばかしくなり帰ろうとしたとき、矢部刑事が黒坂美幸(佐伯日菜子)を伴い、霊能力でこれから人を殺すから、警察に監禁して欲しいと言ってきた、ついては彼女を保護してほしいと依頼に来た。美幸を大学内の上田の秘密の実験部屋に監禁すると、突然、美幸は梅木龍一を絞め殺す仕草をして、崖の下を探せと指示する。上田は5km先の崖下で絞殺された死体を発見。ベルトから指紋が出るし、被害者が握っていた髪の毛は美幸のものだった。現場でトラックにひかれそうになった奈緒子はゴミ収集トラックを利用した殺害方法を推理するが、美幸に偶然に頼り過ぎた推理の欠陥を指摘される始末。午前5時に空間から取り出した1本のナイフで誰かを刺す仕草をして、全身に返り血を浴びた美幸は男の名を竹下文雄と言った。  

 第7話。同日同時刻に刺殺された男は竹下だった。指紋も返り血も被害者のものと一致したという。奈緒子は共犯者がいると推理。血液を入手したのは竹下が採血されたクリニックらしい。血液が盗まれていた。刺殺の目撃者の老婆は美幸を犯人と指摘する。
 第三の鉄パイプによる松井和彦の殺人を上田は止める。
 奈緒子の母が上京して来た。奈緒子はオートロックのマンションに住んでいるとウソを言っていたので、上田のマンションを一時借用。部屋中の健康器具をマジックのため体を鍛えると言い訳。上田が部屋に来て、TVで「哲この部屋」を見た。上田は双子の番組を観て真相に気づく。美幸には双子の姉妹がいるはずだ。美幸本人を呼び出して質すと、あっさり認める。姉の美幸は霊能力を信じないなら二人を監禁すればという提案をする。そして、監禁された部屋で松井を銃殺がふさわしいと狙う。矢部刑事が用意していた携帯電話に松井から「殺さないでくれ」と連絡が入る。そして銃弾の音。携帯電話に殺人の瞬間が録音された。
 奈緒子は電話機にジーッという音が入っているのに気づく。松井の部屋に行ってみると、飼育中のナマズに餌をあたえるタイマーの音だった。タイマーの設定時刻は午后1時。奈緒子は美幸が犯行を行ったのは1時だったと断定する。その後、パソコン操作で2時45分に電話が入るように仕掛けたのだ。美幸は「この場、全員を殺してやる」とすごむ。十年前に保険金殺人で父親を殺された。私たちは復讐を誓ったのだ。
 妹は姉は自分に霊能力があると信じていただけだ、妹は犯行は自分がやったと自白する。すると、姉は冷たく言い放つ。「その通りよ。私はやっていないわ」。裏切られた表情を見せた妹は血を吐いて死んでしまった。妹を毒殺したのか。姉は自責の念で自殺したんでしょと言う。どこまで美幸の犯行を立証できるものだろうか。
 帰宅した奈緒子のボロ・アパートに母の手紙が残されていた。「元気に暮らしているようで安心しました」と。なぜ母は本当の寄宿先が分かったのだろうか、いぶかしむ奈緒子であった。このボロアパートは池田荘と言って、家主が池田ハル(大島蓉子)。
 
 第8話はepisode4「千里眼の男」。枕は三船千鶴子の千里眼実験。脚本・林誠人。演出・木村ひろし。
 第8話。家賃を滞納している奈緒子は家主から「ラドンびっくり人間コンテスト」に出演して優勝し、伊香保温泉一泊二日の旅を譲るよう強要される。町の共同浴場のイベントで、他愛もない芸人が次々登場、奈緒子はゾンビ・ボールで好評を博するが(客は奇術より奈緒子の脚線に関心を集中している)、途中で音楽を入れたテレコを蹴とばしてしまい、テンポが乱れ、隠れ糸が切れてしまう。その後に登場した千里眼・桂木弘章(橋本さとし)は客の書いた数字を次々に当てて拍手喝采。審査員でなぜか参加していた上田に奈緒子は数字当てのトリックを教える。
 桂木の千里眼はそれに留まらなかった。無料相談と称して相談者の家の様子を透視し、分銅を売りつける。「コールド・リーディング」という誘導尋問を利用した読心術。インチキ透視だと分銅を50万円で買わされた老人の告発があり、老人がお礼にと用意している福引当選の伊香保温泉二泊三日の旅の魅力もあり、桂木に勝負を挑んだ奈緒子だったが、自分の家の間取りまで透視され、しかも確認に観客が押しかけ、すっかり恥をかく。奈緒子は一昨日に出た幽霊による事前調査のせいだと判断する。間取り図を見ていた上田は豊胸パッドの位置が違うのに気づく。机上に置いておいたのはゾンビボールの半球だったのだ。それが置かれていた時に部屋に来たのは宅配便業者だけ。
 奈緒子は上田に囮になってもらう。間取りを宛てて欲しいと申込をした後で部屋に来た宅配便業者を拉致し、連絡不能にして勝負を挑むのだ。ところが、それでも桂木は上田の間取りを当ててしまう。
 奈緒子は間取り図を見てある間違いに気づいた。そしてその原因を推理し、三たび桂木に挑戦する。上田と奈緒子の描いた絵を当てさせるのだ。次々と当てて最後の図、桂木の描いた図は「箸」、しかし奈緒子の図は「橋」だった。助手(大坪佳代)がアイマスクに仕込んだ通信機を通じてメッセージを送っていたのだ。 関西弁の助手の「橋」を「箸」と聞き間違えたのだ。不正を暴かれて矢部刑事に連行されていく桂木の傍に、千里眼で病気が治ると宣託され分銅を買っていった車椅子の少年が近づく。少年「ぼく死んじゃうの」、桂木はこう答える。「そうだよ、先生はインチキだからね」。その様子を目撃した上田と奈緒子の二人は唖然とする。

 第9話・10話はepisode5「黒門島」。枕は沖縄のユタはシャーマンであるという話。脚本・蒔田光治、演出・堤幸彦。
 120年に一度東の海からシニカミが出現するという伝説のある島がある。
 上田は島の霊能力者は薬草を利用しているという文化人類学者からもらった媚薬をジュースに入れて、奈緒子に飲ませる。けれども、奇妙だと思った奈緒子はジュースをすり換えていた。媚薬を飲んだのは上田だった。
 アパートの部屋で亀にレースをさせている奈緒子のもとに死んだはずの父親から電話がかかってくる。さらに奇妙な封書が届き、文面には“びっくりするような未来をあなたにもたらす”男が現れると予言してあった。スタンプ偽造のトリックを解いて奈緒子が向かった先にいたのは予知能力ブラザーズと名乗る黒津次男(鴻上尚史)・三男(正名僕蔵)であった。彼らは沖縄の黒門島(“獄門島”のもじり)から来た。その島は母の出身地で、奈緒子に償いを求めるという。また、16年前の父親が死亡した事件の犯人は君がよく知っている人だと言う。奈緒子は島への誘いを断るが、二人はまたの再会を期待するという。
 母親に電話で問い合わせるがその答えは要領を得ない。父親は昭和59年に水中脱出マジックで脱出に失敗したのだ。アパートの奈緒子に父親からの電話が来る。父親は電話を通してトランプ手品をやってみせる。外に出ると暗闇に父の姿が浮かび上がり、そして消えた。
 奈緒子は上田に会って事情を話す。上田は媚薬がカリボネという花から採取されると言い、その島は最近死にかけているらしい、理由は不明だと話す。さらに、父親の声は誰かが最近、君に刷り込んだもので、姿はプロジェクターによるものだと推理する。
 黒瀬兄弟は奈緒子に巫女が逃げ出して霊たちを怒らせたのだが、その巫女は奈緒子の母親で決められた結婚相手を嫌って逃げだしたのだ、君たちはカミヌウリ(巫女)の家系なのだ、母親の代わりに君に戻って欲しい、アナーキーな儀式を経て巫女になるのだと話す。 
 奈緒子は長野県へ里帰りをして母親に会う。母親は父と駆け落ちしたことを認める。奈緒子は水中脱出の失敗は扉を開く鍵を盗まれたことだと推理して、問いただすが母親は「昔のこと忘れたの」と答えるのみ。母親が開いてはならないといった土蔵のなかの宝箱のなかで脱出箱のカギと「剛三が里見へ出した手紙」を発見する。その手紙には島の復讐で、自分はいちばん愛する者、娘に殺されるだろうと書いてある。
 カギを盗んで父親を殺したのは自分だった! 奈緒子は東京で上田に会った後、黒津兄弟とともに飛行機で島へ飛ぶ。

 第10話。上田は奈緒子の母親に尋ねる。書道家の母親は門がまえの中に「火」がある漢字を書き、これは聖地を表しますと言う。
 奈緒子は島(ロケ地は宮古島)で黒い衣装を着せられ、香をかがされ、儀式にのぞんでいた。相手は島一の根をもつ本家の元男、二人は島民から酒をかけられ、まぐわいの儀式に進む。しかし、初夜の寝どこで奈緒子は元男の股間を蹴り、逃げだす。
 島には上田が来ていた。さらに、バカンスを楽しむつもりの矢部刑事と石原刑事も来ていた。そして母親の里見も戻って来ていた。
 黒津次男は「この世には汚してはいけないものがある」と言う。奈緒子たちは昔の海賊が隠した島の財宝にからむ暗号札をめぐって、黒津の本家と分家の争いがあるのに気がつく。元男は奈緒子は自分とは相性が悪いといい、秘密の暗号札を奈緒子に託し、自分は偽物を持つ。
 脱出用に用意されたゴムボートでいったんは逃げようとする上田と奈緒子。しかし、大事を託された奈緒子はその責任感から浜へ戻る。すると、浜には殺された元男の死体があった。不審に思ったとき、島民たちが現れ、元男殺害の犯人にされてしまう。
 暗号札を並べるとSの門に火の文字となった。そして、札を裏返すと、「元男を殺したのは次男と三男だ」とあった。矢部刑事も駆けつけて事件は解決。
 正しい暗号札を並べてひっくり返すと財宝の隠し場所が示された。財宝は120年に一度潮が引いて出現する砂浜だ。早速掘る上田が見つけたものは「財宝は争いをもたらすので処分した」という文字の刻まれた石碑だった。浜が海に沈む時刻が迫る。
 エンド・タイトルに主題歌を歌う鬼束ちひろが登場し、テーマソング「月光」を歌う。

    映画川柳「ヒンニュウ? 言葉の意味が 一瞬飛んだ」飛蛛
2009年5月26日

DVD
69 sixty nine

東映
2004
114分
 脚本は宮藤官九郎、監督は『フラガール』の李相日。原作はエンタープライズ入港反対闘争の後、佐世保で高校3年生だった村上龍の『69』(1987)。時代の雰囲気が良く出た原作です。四方田犬彦に、高校紛争を描いた映画は『高校さすらい派』以外、ほとんどないと指摘されていましたが、本作が付け加えられました。
 コーヒー牛乳がまぶしい時代だった。佐世保北高校の3年“ケン”こと矢崎剣介(妻夫木聡)は、「ランボー」「クリーム(ロックバンド)」「フェスティバル(フォークソング)」などのアイテムに魅かれ、バンドのドラマーで、女と遊んだという作り話の名人。「ゴダール」ばりの映画を作ろうという計画を思いつき、主演女優を引き抜きに英語劇部に押しかけ、「シェイクスピアなんかつまらん」と宣言して、英語劇部の“レディ・ジェーン”松井和子(太田莉菜)の関心を引くことに成功する。太田は宮崎あおいを洋風にしたような日本人とロシア人の混血。
 撮影器を借りに高校の社研に行くが、長崎大学生に映画のテーマを聞かれ、口ごもっていると馬鹿にされ、屋上の「バリ封」(バリケード封鎖)を計画し、全共闘ではなく「バサラ団」と命名して深夜に学校に忍び込むことを計画する。仲間を集めた当日、女子更衣室により道してしまう一党ではあったが、学校中に《想像力が権力を奪う》などの落書きをし、屋上に垂れ幕を掲げ、便意を催した仲間には校長室でウンコまでさせた。翌朝、登校してきた生徒や教員たちは仰天する。
 全校生徒が後片付けするなか、ケンや山田正ことアダマ(安藤政信)はウンコに思想はあるかなどと論じていた。
 事件当夜、赤いペンキだらけで帰宅した途中を不審尋問された時計屋の岩瀬学(金井勇太)から芋づる式に一味が明らかになってしまう。取り調べの刑事(国村隼)はなかなか自白しないケンを説得する。絵描きの父親(柴田恭平)は、「卑屈になるなよ、真摯でしたことだ。堂々と処分を受けて来い」と助言、母(原日出子)がついて行って、ケンは無期謹慎の処分となる。
 学級担任(岸部一徳)はときどき家庭訪問に来る。謹慎中のアダマの自宅に英語劇部の“アン・マーグレット”佐藤と“ジェーン”松井が来たと聞き、怒ったケンだったが、恋文を出したのは佐藤の方だった。
 アダマは真剣に卒業式粉砕闘争を計画していた。ケンはフェスティバルを企画していた。アダマたちが大学生に利用されていると知ったケンはその計画をぶっ壊す。大学生に追われたケンとアダマ、BGMは由岐さおりの「夜明けのスキャット」で、橋から川へ飛び込んで逃げる。
 ケンの口癖は「楽しく生きたもんが勝ちばい」。
 フェスティバルの幕あきで佐世保工業の美人(水上あさり)のエロ・ダンスを企画したケンは、彼女のパトロンを気取る工業の番長(新井浩文)にスゴまれ絶対絶命。父親に助けを求めると、父親は知り合いの誰かに連絡してくれた。ほんもののヤクザが間に立ってくれて、トマト・ジュースで手打ち。ヤクザはケンの父の昔の教え子だった。
 校内でバンドのチケットを売って教師たちに咎められたケン。そこへ全校放送が入る。いつもパシリの岩佐の声だ。学校側に、マス・ゲームと運動場の掃除中止を要求する。続いかけた曲が“オー・チン・チン”。体育教師(嶋田久作)は「お前たちはクズ。死んでも治らん」と評する。しかし、マスゲームと運動場の掃除は中止された。
 フジカシングルエイト(8ミリ)で映画の撮影中。松井「冬になったら海に行かん? いまの気持も消えてしまうとやろか。うちはキスしたことなかとに、恋の歌、好いとっとよ」と言う。ケンは一緒に冬の海を見に行こうと承諾する。
 9月の学校祭の名称は「朝立祭」だった。
 その後、岩佐は歌手を目指したが挫折、アダマは全共闘に入て活動の後、佐世保商業の醜女“ゴリラ”と結婚、俺は“レディ・ジェーン”と結婚、アメリカで生活・・・・・というのも創り話か。

    映画川柳「69年 いちご白書と ベトナム戦」飛蛛
2009年5月11日

ビデオ
喜劇・女売り出します

松竹
1972
88分
 森崎東脚本・監督の傑作を、シナリオ採録のため再見しました。
 家内に見せていなかったことが判り、一緒に見たところ、普段は森崎作品を見たがらない家内も気に入ったようです。「人情話だね」と言い、特に市原悦子の「かあさん」のセリフ回しに感動していました。
 私見では森崎さんの作家性とともに映画のリズムが見事に合った最高傑作だと思っていますし、どの場面も生き生きとしており、目が離せません。BGMとして使われている音楽も見事です。撮影(吉川憲一)と美術(佐藤之俊)はいつもと同じなのですが、録音・調音・照明・編集がいつものスタッフと違っています。ただ、それがどのくらい作品に変化を与えているのかは判りません。
 ヒロイン浮子(うわこ)を演ずる夏純子の美しさは際立っています。それにふだんは脇役でしかない、鳥子役の瞳麗子や、礼美役の秋本ルミも好演しています。ちなみに、1972年は森崎さんは『生まれかわった為五郎』(1月)、本作(2月)、『女生きてます・盛り場渡り鳥』(12月)と傑作を輩出した年でした。
 見ると元気が出る作品です。DVDでシネマスコープ版を出して欲しいのですが。

    映画川柳「左きき 知らずに 財布をスリ取られ」飛蛛
2009年5月9日

録画
配達されない三通の手紙

松竹
1979年
130分
 原作エラリー・クイーンの『災厄の町』を、日本に置き換えた脚本は新藤兼人。監督は野村芳太郎。撮影は川又昂。この作品の前に野村監督は 『砂の器』(1974年)、『八つ墓村 』(1977年)『事件』(1978年)『鬼畜』(1978年)を撮り、後で『震える舌』(1980年)『わるいやつら』 (1980年)『真夜中の招待状』(1981年)『疑惑』(1982年)など松竹大作映画を製作・演出しています。
 山口県を舞台に長門銀行の頭取・唐沢家で起こる事件と殺人。出演者は、かなり豪華で、唐沢家の当主・佐分利信、その妻・乙羽信子、長女麗子・小川真由美、次女紀子・栗原小巻、三女恵子・神崎愛、次女の夫・片岡孝夫、その妹智子・松坂慶子、従弟ボブ・蟇目良、記者・竹下景子、検事・渡瀬恒彦、医師・小沢栄太郎、署長・滝田裕介、判事・稲葉義男、警部・蟹江敬三、善吉・米倉斉加年、智子の母・北林谷栄。娘たち三姉妹の名前になんの関連もないのが不自然な感じがします。麗子・紀子・恵子という名前には命名した親の一貫した考えが反映されていません。原作は読了済みでしたが、内容はすっかり忘れていました。
 また、後で素人探偵のコンビが、調査してすぐに分る事実、つまり失踪中だった婚約者・夫の事情がはっきり確認されないままドラマが進み、殺人事件が起こってしまうのはいかにも不自然ですが、なにごともスキャンダルを恐れて表ざたにしようとしない父親の威力ということで、強引に納得させられるものでしょうか。
 本作のみどころは、悪女役を演じている松坂慶子です。ミステリーとしてはすぐに仕掛けが判ってしまいますが、謎解きで見る映画ではないと思います。

    映画川柳「帽子箱 危険な手紙 入れたまま」飛蛛
2009年5月8日

日本テレビ
金曜ロードショー
東京タワー、オカンとボク、時々、オトン

製作委
2007年
144分
 フジテレビがドラマ化した田中裕子がオカンを演じた西谷弘演出作品を見ていました。映画化は傑作『バタアシ金魚』の松岡錠司監督、そして撮影が名手・笠松則通だったので、期待して見ました。
 松岡監督は、ゆっくりした時間を描こうとしたように思えます。東京の喧噪ぶりは描かれませんし、「ボク」(オダギリジョー)の多忙な様子も後景に退いて出てきません。
 テレビ版では流行歌の「東京」が繰り返し使われていましたが、映画には出てきません。
 むしろ、オカン(母親)が東京へ出て来てからよりも、出て来る前の場面、樹木希林が演じる前の、樹木希林の娘である内田也哉子が演じている部分の方に比重があります。
 さびれてゆく筑豊の炭鉱町に対するノスタルジーを強く感じました。ただ、それは東京の生活とあまりにも異なるものなので、断絶してしまっています。したがって中途半端な浮遊感で終ってしまいます。後半では、抗ガン剤治療の苦しさが印象的でした。
    映画川柳「借金を 全額返済 大祝い」飛蛛
2009年5月1日
〜6月20日

テレビ朝日
23:15〜
名探偵の掟

テレビ朝日
2009年
各54分
 東野圭吾原作の珍ミステリーをテレビ化。本日はすでに第3章。毎週金曜日深夜に放映。
 原作の味をテレビでかなり出そうと努力していますが、それが成功しているかどうかは微妙です。名探偵の推理やミステリーのパターンを笑いのめそうとする作品なので・・・・・。
 捜査側のコンビ、天下一大五郎(松田翔太)と警部・大河原番三(木村祐一)、女刑事・藤井茉奈(香椎由宇)、森山瑞希(ちすん)、慶太(入江甚儀)。
 第一章「雪原独居老人殺人事件」壁神小枝子(奥貫薫)、壁神辰哉(森本亮治)。
 第二章「口の字館 会社社長愛人密会殺人事件」町田恵子(伊藤かずえ)、桃川好美(黒坂真美)。
 第三章「遺体のそばに何やらアレっぽい文字が書き残されていた殺人事件」王沢友美恵(伊藤裕子)、王沢洋子(紫吹淳)
 脚本は大石哲也(1章・2章)、山岡真介(3章)、演出 は宮下健作、常廣丈太。
 チーフプロデューサー(五十嵐文郎:テレビ朝日)、プロデューサー(関拓也:テレビ朝日、高野渉:テレビ朝日) 、協力プロデューサー(菊池誠:アズバーズ)、制作協力・アズバーズ、制作 ・テレビ朝日。
 最終夜は・・・

    映画川柳「ミステリーの 約束が生む 迷推理」飛蛛
2009年5月1日

録画
(4月23日0時
CS東映映画チャンネル)
北陸代理戦争


東映

1977年

105分
 深作欣二監督、高田宏治脚本、中島徹撮影の、先の展開が読めない傑作。
 公開当時、見ていませんでした。『仁義なき戦い』後に適応放散した作品のなかの一本で、実録ヤクザ映画路線の最終作品。福井を舞台に大阪と京都のやくざの代理戦争に進んで身を呈して暴れまくる川田登(松方弘樹。モデルは川内弘で本作完成後に射殺された)を中心に個性豊かな脇役総出演で画面から目が離せません。女優も野川由美子(川田の女きく)や高橋洋子(きくの妹)、中原早苗(安本の妻)が強気の女を演じて目が離せません。日本海の荒海と寒風きびしい雪が華を添えます。
 深作さんも『現代やくざ・人斬り与太』ばりに、スタッフと一緒にアイデアをつめこんで、嬉々として撮っている感があります。臆病で情けない地元北陸の親分衆は「和服姿」なのに対して、大阪や京都から乗り込んでくる暴力団は「スーツ姿」、対比が際立ちます。
 昭和43年、川田ノボル(松方)は、親分・安本(西村晃)を首まで雪に埋めて周囲をジープで走り、利権を独占する親分を脅喝。安本は万谷(マンタニ。ハナ肇、好演!)に登の始末を命令、万谷は北陸進出を目論む大阪の金井組(千葉真一、組長なのに『広島死闘篇』の大友勝利みたいです)と手を組み、喫茶店で川田を襲撃。警察が駆けつけて一命をとりとめた川田は葬儀車の棺桶で脱出、小料理屋の女将・仲井きく(野川由美子)とその弟・隆士(地井武男)の計らいで輪島に匿われる。隆士の属する金沢を仕切る谷中組組長(織本順吉)は大阪のやくざと闘う気はない。万谷は川田の救命を条件にきくを抱く。一方、雪を体にすりこむ川田は重傷の身を案じて止めるきくの妹ノブ(高橋洋子)と結ばれる。
 傷が回復した松方は富安組を襲撃、組員(岩尾正隆。西田良は誤記)をリンチして万谷の居所を突き止める。京都の吉種組(中谷一郎)の賭場に乗り込み、川田は日本刀で万谷の左手を切断、中谷一郎は刀を素手でつかんで川田を止める。川田はすごむ組員(成瀬正)を斬殺して刑務所入り。
 服役中に刑務所内でもと金井組員にリンチされそうになった川田は、もと谷中組組員・竹井(伊吹吾郎。最初は渡瀬恒彦だったが、最後のシーンを撮影中の事故で運転していた渡瀬は瀕死の重傷を負って降板)に助けられ、竹井から組長谷中が暗殺され、隆士が金井組の支部長になったと聞かされる。
 金井組幹部(曽根晴美)から出所後にノボルを殺れと命じられた隆士。登は時間をズラして出所し、竹井と花巻(矢吹二朗)を仲間に加え、万谷に詫びを入れると同時に、ノブと結婚、金井組と対立する浅田組傘下の岡野組(遠藤太津朗、成田三樹夫、林彰太郎ら)を味方につける。岡野は川田に自分の名前は出すなと釘をさすが、川田らは適宜、岡野の名前をチラつかせて相手を脅し、勢力を拡大していく。
 金井組幹部(曽根晴美・野口貴史ら)を車ごとユンボで潰し、最後には爆殺。川田は龍ケ崎組長(天津敏)に兵隊を借りようとするが断わられるので、日雇い労務者を集めて、見せ組員で金井を脅す。銃を準備して出入りに備えた金井組を岡野は警察に通報し、凶器準備集合罪で逮捕させる。
 隆士は、金井組組員(小林稔侍・広瀬義宣・榎木兵衛)にノブを拉致させ、川田を呼び出すが、川田に返り討ちに遭う。縄を解かれたノブはそばにあった出刃包丁で隆士を刺殺。ノブは警察に自首する。
 きくは隆士の墓参りで母親代わりに育てた弟妹の運命を嘆く。川田は岡野の盃を受け舎弟となるが、万谷には岡野への裏切りを唆す。ノブを拉致した金井組の残党を金で釣り、岡野組長の女となったきくの店で大暴れさせ、岡野に事件の裏に万谷ありと匂わせる。川田は岡野に心臓発作の仮病で入院した万谷を訪ねさせる。報復を恐れた万谷は、川田に跡目を譲り引退。さらに、川田は金井組の残党を雪に埋めた海岸に岡野を案内、竹井に命じて“雪で運転を誤り”、ひき殺させた。岡野 は、「こんな芝居にはだまされんぞ。オノレは盃ゆうもんをどない思とんねん」と詰め寄るが、川田は「飢えた狼にゃ、盃も茶碗もありゃせんですよ。事と次第じゃ親兄弟だって食い殺しますわ」と答える。
 岡野たちが去った後、きくは川田に「うちの負けや。でも、なんか・・・・スッキリしたわ」と去って行く。死体をスコップで掘り出し始末しようとする川田たち。
 ナレーションがかぶさる。「俗に北陸三県の気質を称して越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師と言うが、この三者に共通しているのは生きるためにはなりふり構わず、手段を選ばぬ特有のしぶとさである」。唖然とする幕切れである。

       映画川柳 「風呂アチチ 飛び出す親分 肝ったま」飛蜘
2009年4月19日

DVD
ガリレオΦ
フジテレビ
2008年

90分
 原作は東野圭吾の『ガリレオの苦悩』所収の「操縦る」「落下る」。脚本・福田靖、演出・西坂瑞成。放映日は2008年10月4日(土)の2時間スペシャル番組。見逃してしまっていました。
 「エピソード・ゼロ」として、湯川(福山雅治)が内海刑事と知り合う三年前の事件を描きます。友永スチールの社長・幸正(蟹江敬三)は中学卒業で金属加工会社を興し、発展させたものの、脳梗塞で倒れ、現在は車椅子生活で、後妻の娘・奈美恵(香里奈)が介護をしていました。海岸の邸の離れには前妻の息子(波岡一喜)が住み始めていました。突然おしかけてきて職は無い、借金はある、素行は悪い、迷惑な息子でした。突然、息子がなにかに後ろから撃たれたようです。離れのガラスが割れ、炎が上がります。火事場から収容された遺体の傷から殺人事件と判断されますが、草薙(北村一輝)には殺人方法が分かりません。大学時代に自分にかけられた容疑を晴らしてくれた湯川に協力を求めます。
 事件に関心を持ち、ワトソン役をつとめる湯川研究室の塩野谷あかり(長澤まさみ)が、マジメ学生のキャラに内心疑問を持っている女子学生として、コメディ・リリーフ的な活躍をします。“ビキニ美女がうようよ”という言葉に魅かれて海岸に出かけていく男たちに対抗して、塩野谷があたしも超ビキニを持って来ましたと強がる姿や、奈美恵に女の子らしさを指摘されて戸惑う姿がなんとも可笑しい。  真相が判明したときのある種の切なさも見どころです。  学生時代の湯川と草薙は別の役者(湯川役は三浦春馬)が演じます。

        映画川柳 「なぞ解きを 求めて証拠を 見せつける」飛蜘
  
2009年4月17日

DVD
スカイ・クロラ
日本テレビ
バンダイ
ワーナーB

2008年
122分
 「クロラ Crawler」とは這うものという意味ですが、なぜそのような名を与えられているのか、映画のなかで説明されることはありませんでした。
 函南(かんなみ)優一は戦闘機の前の所有者・栗田仁朗のことを問い質します。その謎が物語を引っ張ります。なぜ優一たちが戦闘をしているのかは、なかなか明らかになりません。「子供の」パイロットたちがタバコを吸ったり娼婦を買ったりするのが日常的に行われていて、社会もそれを許容しているようです。
 後半で、草薙水素(すいと)の口から、戦争は平和を維持するために必要なものだから、ゲームとしての戦争が成立し、ティーチャーのように絶対に勝てない敵=父親を存在させる必要があると説明されます。また、遺伝子技術で誕生したキルドレは、死んでも別の思春期の身体を借りて再生するため、子供時代の過去を持ちません。永遠に青春の終わりなき日常を生きることがキルドレの人生です。その永遠の青春を戦争に捧げる人生なのです。この認識はかなりニヒルなものです。優一は突撃の前に「いつも通る道でも、違う所を踏んで歩くことができる。いつも通る道だからって、景色は同じじゃない。それだけではいけないのか。それだけの事だから、いけないのか」と自問しますが、この認識は唐突に思えます。
 ポーランドのクラコフ市をモデルにした夜の街は、『うる星やつら2』の夜の街の雰囲気です。
 『スカイ・クロラ』はほとんどの評論家に評価されていません。キネマ旬報で評価したのは大久保賢一(1位)、石飛徳樹(2位)、北川れい子(5位)の三人のみ。『崖の上のポニョ』の十七人に比べると少ない数です。

        映画川柳 「スペアでも まっすぐほおる 指揮官は」飛蜘

 石井朋彦(プロデューサー)・西尾鉄也(作画監督)・永井一男(美術監督)がオーディオ・コメンタリーでは、画面の意図とアニメ技術を詳細に語っています。ほとんど動きがないような画面で感情を表現する些細な仕草がドラマを作っています。
2009年4月10日 CS日本映画専門 ドリフターズですよ!全員突撃
東宝・渡辺プロ
1969年

88分
 東宝のドリフターズ・シリーズ第五作にして最終作(1969年4月)。脚本・佐々木守によるナンセンス・アクション。和田嘉訓監督。
 冒頭から人魚の風子(梓みちよ)率いる赤黒のマントに身を包む女性ギャング団の銀行襲撃と、黒いスーツの自称ギャングのドリフターズ、血桜親分(スマイリー小原)率いる組(子分は左とん平・小松政夫)の取引き、三つ巴に追っかける警官集団。しかし、結局、ヤクはメリケン粉、紙幣はニセ金。騒ぎに便乗する孤児院出身の少女ピッピ(西崎緑)。なにかとつきまとって厄病神となるピッピをなんとか追い出そうとするサスケ(いかりや長介)ほかドリフの面々。風船をつけて飛ばしてしまおうなどというアイデアもあります。ゼロ戦(加藤茶)だけはピッピを守る役回り。コマ落としの追っかけは完全に無声喜劇映画のノリ。
 五人はピッピがハワイの富豪の孫娘で10万ドルの賞金がかかっていることが分かり、ピッピを連れてハワイへ飛ぶ。オバケ(荒井注)とフロク(高木ブー)は美女軍団に色仕掛けでだまされピッピを横取りしようとする。

        映画川柳「ナンセンス ドリフターズの ミスセンス」飛蛛
2009年4月9日

CS日本映画専門
危険な女

日活
1959年
57分
  原作は松本清張の「地方紙を買う女」。脚本・原***、監督・若杉光夫。白黒作品。緊密な構成でよくまとまった佳作。テレビ初放送。
 ある晩、駅前のスタンドでわざわざ甲府版を買おうとした女、潮田芳子(渡辺美佐子)に作家・杉本竜吉(芦田伸介)は関心を持ちます。その女が新聞の連載小説を楽しみにしていると言ったからです。その小説を書いているのが杉本でした。ところが、その女を探し出して会ってみると、自分の小説には関心が無いようです。その日の新聞に載っていた竜雲峡の男女心中事件と芳子との間になにか関係があるとにらんだ竜吉は、雑誌記者の石井篤子(高友子)の協力を得て、素人探偵と化して調査し始めます。芳子には病気で施設に入居している夫(下元勉)がいました。さらに、彼女は心中した男・正田咲次(大滝秀治)に脅されていたようです。心中相手は正田の愛人・福田ウメ子でした。
 次第に真相に近づいたと感じた竜吉は、芳子と篤子と三人で伊豆の山中への旅に出かけます。

        映画川柳「毒がある サンドイッチを 食べるなと」飛蛛
2009年4月9日

NHK総合

0:45〜1:34
私の声が聞えますか
植物状態からの帰還

NHK
48分
  NHKスペシャルの一篇。植物状態からの回復は絶望的と思われていた。しかし、最近の研究により、脳の回復力に期待が持てるようになった。
 脊髄に沿って埋め込んだ電極から脳に微弱な電気刺激を繰り返し与えることで、脳の機能回復を図る方法(日本大学医学部附属病院・脳神経外科、山本隆充教授)や、脚や首などに刺激を与えつづける方法(筑波記念病院・紙谷克子名誉教授)が試みられている。
 電極方法で回復しつつあったのは、19歳の杉原彩さん。十五歳のときに倒れ、脳炎により意識不明になった。15分間の刺激を一日8回繰り返す。三ケ月後、図を書けるようになり、七ケ月後、キイボードで曲を弾けるようになった。
 佐藤貴之さん(28歳)は事故で植物状態になった。電極刺激後、七ケ月後に顔をしかめるようになり、9ケ月後笑顔を見せ、1年後に話せた。
 筑波記念病院では、神澤成治さん(49歳)は6週間のプログラムで咀嚼可能にまで回復。
 フランスのリエージュ大学では、麻痺状態の患者が脳の画像診断で意味のある音を聞き分けていることを突き止めた。また、ベルギーのティーネン病院では睡眠導入剤のゾルピデムが摂取後2時間程度は復帰効果があることが分ってきた。
 本日の「ためしてガッテン」も、介護の際の脳の可塑化を指摘していた。失われた脳の機能を残った別の脳が司るようになることがあり、そのための刺激が工夫され始めている。使わないと脳の機能は衰えるが、それとは逆に使うことによって機能を新生することが可能だというのは、重要な発見であった。
 介護だけでなく新生児の脳の発達にとっても母親の言葉かけなど耐えざる刺激が重要だと思わされた。

        映画川柳「服を着る 電話に出るし 手も使う」飛蛛
2009年4月8日

NHK総合
19:30〜
終のすみか

NHK総合

25分  
 クローズアップ現代のNo.2720。副題は「有料老人ホーム破たん続出」。
 千葉県市川市のある施設は170人の収容能力がある。入居費は三千万円で管理費はひと月十四万円。ひとり2LDKだが、不動産会社、医療会社と転売されていくうちに、医療サービズや施設改修などが悪化していった。不動産会社は前所有者から18億円で購入し、投資ファンドへ30億円で売却、毎年2億円を 20年支払う長期賃貸契約を結んでいたが、死亡退居者が少なく、新規入居者が充分見込めず、2億円の支払いが不能になった。
 秋田県仙北市では80名収容の施設に30名しか入居せず、9ケ月で破産した。全国展開の計画だったが必要資金30億円のうち自己資金が6億円足らず。行政には経済の専門家はおらず、会社を評価するシステムも構築されていない。

        映画川柳「老人の 生命軽き 不動産」飛蛛  
2009年4月8日

CS日本映画専門
ドリフターズですよ!冒険・冒険また冒険

東宝・渡辺プロ

1968年
84分
  2009年4月8日午前10時から放映。脚本・松木ひろし、監督・和田嘉訓。撮影など技術スタッフは『前進〜』とは異なります。シリーズ第三作。撮影・内海正治、美術・育野重一、編集・岩下広一、照明・山口虎男など。1968年当時の時代風俗、大学紛争・街頭パフォーマンス・アングラ演劇・フーテンなどを盛り込んでいますが、表層的で、かなり皮肉な視点で取り上げられています。
 チョロ(加藤茶)は大学紛争を目撃、大学附属病院建設工事の現場から角材を盗んで、一本百円で学生に売り、さらに砂利を10個三百円で売るものの、機動隊との乱闘に巻き込まれ、学生と一緒に逮捕されてしまいます。工事現場で働いていた丸角(○□)組のチュー(荒井注)とブー(高木ブー)も砂利売りに荷担し逮捕、予備校生のコウジ(仲本工事)も工事現場の長アンテナ(いかりや長介)も、どさくさで逮捕されてしまいます。
 警察から釈放されるとアンテナは全学連の委員長に間違えられ、女子学生の出迎えを受けますが、他の四人は無職。チョロはみんなと相談して、金設けの算段にボディ・ペインティングのパフォーマンスを実施します。リズ(野川由美子)が裸OKと飛び入りしようとしますが、警察が来て逃走。次に、アングラ演劇でひと設けを企てます。女優募集のポスターを見る女性として酒井和歌子と内藤洋子が特別出演。女優に応募してきたのは真理アンヌと小山ルミ。これも、コント55号の飛び入りに見せ場をさらわれます。
 学生委員長を気取って演説していたアンテナも、暴力団に因縁をつけられた事件をきっかけにニセモノが露見して無為徒食に。アンテナはドリフの面々に風船旅行を提案します。八丁組の組長・宗月五郎(藤村有弘)のもとへ連れられる途中でリズが隠れ家へ合流。巨大気球の実験と風船作りに奔走するドリフ。海岸の波消しブロックに綱をかけたりするドリフと警備員(左とん平)のコマ落としのドタバタがあるが、無意味なアクションで、かなり無惨な印象がぬぐえません。よみうりランドの乗り物で飛行訓練をするドリフの面々。コーヒー・カップで飛行訓練というのもチープな感じです。ランニング・シャツの色は加藤茶は赤、注は白、工事は黄、ブーは青。長介はオレンジ色。
 リズから気球の話を聞いた宗月五郎は五億円の金の密輸をたくらみ、飛行計画にゴンドラを提供、底に砂金を仕込みます。一方、国会議員・大河内(藤田まこと)も売名でスポンサーを申し出ます。いよいよ出発の日、自衛隊の演習で爆撃が始まるなか、ゴンドラに大河内とリズとチョロを乗せて気球が飛び始めてしまいます。自動車で気球を追跡する八丁組とアンテナたち。組長は地雷に触れて爆発、瀕死で撃った銃弾がゴンドラと気球を繋ぐ綱を切り、ゴンドラは湖に落下します。  ラストは40年後。老人になったドリフたちは「冒険・冒険」と歌いながら、筏で湖の底をさらい続けて金を探しています。ちょうど半分をさらい終えたそうです。ラストの老人の歌は皮肉な響きがして、ここだけ怪作。

         映画川柳「若者の 純粋な夢 持ち上げる」飛蛛 
2009年4月7日

CS日本映画専門
ドリフターズですよ!前進・前進また前進
東宝・渡辺プロ

1967年
89分
 ビデオが発売されていない東宝のドリフターズ・シリーズが放映されました(1980年代にビデオが出たらしい)。2009年4月6日午前10時から放映。既に以前にも衛星放送で放映されたようです。脚本・松木ひろし、監督・和田嘉訓のシリーズ第一作。残念ながら、ギャグが不発で散漫な出来である。
 暴力団・黒汐組の解散式が行なわれている。代貸は小池朝雄。受付をしているのは組長の娘・里子(酒井和歌子)。ドリフターズの面々はアンテナ(いかりや長介)が兄貴分で他は下っ端。チョロ(加藤茶)は別に、解散の日に組に入れて欲しいと申し出てくるお調子もの。解散式場に乱入した茶を追い出そうとするドリフの面々と賄い場でのお握りの投げ合いなど子供だましの騒ぎがある。
 組が解散したのでドリフたちは色々な仕事につこうとする。映画のエキストラでは監督(なべおさみ)の指示に従わないし、靴磨きは神風組の銀(鈴木和夫)と鉄(広瀬正一)に因縁をつけられ、追い立てられてしまう。
 美女を社員に出張マッサージ業を営んでいるという赤スーツのチョロ(加藤茶)の口車に乗って、脚占い師(財津一郎)から5万円で借りた廃事務所を根城に「何でもコンサルタント業」を立ち上げてはみたものの、無節操な方針の会社に仕事の依頼はほとんど無い。チョロが取ってきた仕事、犬の散歩、子守り、借金取り撃退の泣き男なども金にならない。「俺を親分と呼べ」と威張っていたチョロも自分の事務所に警察の手が入って、無職になってしまう。そのうち、国会議員・大河内(藤田まこと)のフラッパー娘ミッコ(大原麗子)がまいこんで来て、自作自演で誘拐されたと偽り、父親から遊び金を取ろうと計画。否応なくつきあわされた形になったドリフの面々は考えもなく右往左往する。大河内は芸者との浮気を隠すために、アンテナを一時雇い、大河内の妻(浦島千賀子)・女中(武智豊子)にマージャンの集まりだと偽証させる。ミッコの狂言電話を盗み聞きした神風組の銀と鉄はミッコをさらってひともうけしようと企む。別に黒汐組のもと代貸・諸越(小池朝雄)は麻薬取引で金を受け取ると神風組の金(天本英世)を殺し、その死体入りのトランクをアンテナに押し付ける。ドリフの面々は神風組の事務所からミッコを救出する一方、死体の処理に困ってあれこれ誤魔化す方法を考えるものの、ことごとく失敗する。小荷物にして発送すると、あて先を間違えて戻って来る、山に埋めようとすると住民に勝手に穴を掘るなと怒鳴られる、建築途中のビルはスト決行中、駅のホームでは駅員に酔っ払いを置き去りにするなと注意される。病院の霊安室では火災訓練で出してしまう。ボートで領海を出て監視船に連れ戻される、道路工事を装うと水道管を破る。ようやく、やくざの喧嘩にからんで駆けつけた救急車に死体入りのトランクを押し込んでごまかす。
 チョロとヤッコ(松本めぐみ)は親元へ帰りたがらないミッコを袋詰めにして大河内に返す。アンテナも花屋に勤める里子に説得されて事情を説明に来るが、全員誘拐犯の容疑がかけられていて逮捕されそうになる。しかし、そこへ神風組の銀から身代金要求の電話が入り、嫌疑が晴れる。大河内は「何でもコンサルタント」事務所を改装開店、暴力団更正のPRに利用しようと計画する。開店祝いの席から、ドリフの五人は逃げ出すのだった。
 海辺の砂浜で「前進」音頭を歌う五人を追って女たちが来た。アンテナを囲むヤッコ、ミッコ、里子。狂喜するアンテナ、悔しがるチョロ、あきれるブー、チュー、コージ。これは夢かも。  タイガースがゴーゴー喫茶で「シーサイド・バウンド」「モナリザの微笑」を歌う。監禁所でのラジオからはタイガースの「僕のマリー」が流れてくる。
 この映画は、北杜夫原作『怪盗ジバコ』をメインに1967年10月に上映されて大ヒットした。

        映画川柳「赤スーツ 蝶ネクタイに  カンカン帽」飛蛛

 製作は渡辺晋・五明忠人、撮影・中井朝一、美術・竹中和雄、録音・吉沢昭一、照明・穏田紀一、整音・下永尚、音楽・山本直純、編集・藤井良平、製作担当者・島田武治、監督助手・小谷承靖。
2009年3月25日

DVD
誰も知らない

シネカノン
テレビマンユニオン

2004年

141分
  是枝裕和脚本・編集・監督。引っ越し荷物のトランクから子供が出てくる冒頭で仰天しました。その直後のシークエンスは、タマネギをきざむ小学生の長男、目がツンとします。カレーを作っているのです。素晴らしい導入部で引きこまれました。2時間以上の上映時間がアッという間に過ぎてしまいます。
 母親(YOU、好演!)が出て行ったきり帰って来なくなり、子供たち四名で生活せざるをえなくなる。それでも、長男以外は部屋から外へ出なかったため、誰にも知られなかった・・・。この子供たちがともかく生き生きしています。長男・明(柳楽優弥)、長女・京子(北浦愛)、二男・茂(木村飛影)、二女・ユキ(清水萌々子)。特にユキの自然さには舌を巻きました。柳楽優弥がカンヌ映画祭で最優秀主演男優賞を受賞しましたが、他の三人も名演です。是枝監督は、子供たちが現場に来てから、台詞を口立てで伝えて、その場で撮影に入るという方法で撮影したそうです。そのリアリティがよく出ていました。
 素晴らしい描写が続きますが、ただひとつ、納得のいかないのは、高校生でいじめられっ子の沙希(韓英恵)の描き方です。子供たちにシンパシーを感じ、参加してきますが、高校生なら状況の異常さを放置してはおかないのではないでしょうか。この娘が子供たちが外とつながるわずかな糸の一本だったのですから、彼女が部屋の中に入ってきたところで、外のいわば社会の風が入ってくる、そのことによる変化を痛切に期待したのです。
 ところが、彼女は波風を立てることをしません。子供だけの生活が破たんせずに続くと考えていたとしたら、ずいぶん鈍感な女性だということになります。その鈍感さに腹が立ちます。自分の親や、児童相談所、福祉事務所、あるいは警察など、いろいろと相談先を考えて当然だと思うのですが、もくもくと死体遺棄にまで付き合ってしまう神経というのがどうにも納得できません。他の人々は、その関係の薄さや幼さから子供たちの状況をきちんと理解できないのは、仕方がないと納得できます。
 最初から外界の人々に見つからないように生活する様子が、サスペンスを生み出していたのですから、いざ見つかってしまったときに、何も起こらないというのはどうにも変だと、裏切られた気持ちです。

       映画川柳 「コンビニの 捨てる弁当 命綱」飛蜘

 柳楽優弥のその後を見ると、最優秀主演男優賞の受賞は本人のためにはならなかったと痛感します。

【参考書】 川本三郎『現代映画 その歩むところに心せよ』(晶文社、2009年)では、『誰も知らない』について、“子供たちは仲良く手をつなぎながら遠くへ、遠くへと去ってゆく。まるで別の世界へ行くように。
 彼らは、捨てられたのではなく、われわれのほうを捨てているように見える。”と、書いています。
 川本さんは、いじめられッ子の高校生の少女も、わたしたちを捨てる子供たちに加えています。
2009年3月22日

DVD
容疑者Xの献身

東宝
2008年
128分
 東野圭吾原作の直木賞受賞作品の映画化。『魔球』のころからの東野圭吾ファンとしては昨今のブームはうれしい限りです。岡嶋二人の作品も映画化されて欲しいものですが。  『容疑者Xの献身』は原作を読んだときに、これは映画にふさわしい作品だなという感想を持ちました。テレビの『ガリレオ』シリーズも楽しかったし、劇場版には期待していました。
 総じて原作をよく生かした脚本(福田靖)と演出(西谷弘)だと思います。原作を知っているものでも納得できる展開でしたし、途中で石神(堤真一)がストーカーと化してしまうように思える場面も迫力がありました。
 真実を明らかにしても誰も幸福にならないというものの、殺人を偽装するためにもうひとつの殺人をしてしまう天才・数学者の乾いた精神には恐怖を覚えます。彼の完全犯罪をくつがえすのが、女性の良心であり愛情だったという結語でしめくくられる展開は原作の精神をよく生かしたものだと思いました。
 残念なのは石神の高校での授業風景が二度出てきますが、どちらも生徒の態度が授業をまったく無視して机に坐ったりして騒いでいること。この授業崩壊のイメージは古い。図式的すぎます。真の授業崩壊は、生徒が聞いているように見えて実は何もしていないような風景にこそあります。石神は首をつろうとするほど追いつめられていたという設定なので、授業崩壊の程度もひどかったとは思うのですが、あれほど生徒が騒いでいる状態では教師として勤めていられるはずがありません。
 湯川学の活躍する次作もこのスタッフ・キャストによる映画化になるのでしょうか。楽しみです。

         映画川柳 「規則的 時計を持たぬ ホームレス」飛蜘

【参考文献】  東野圭吾『容疑者Xの献身』『聖女の救済』『ガリレオの苦悩』(文藝春秋社)
2009年3月21日

DVD
おくりびと

TBS・松竹

2008年
130分
 滝田洋二郎監督作品、脚本は4月から山形市の東北芸術工科大学の教授になる小山薫童、撮影は“森崎組”の浜田毅。『おくりびと』のDVDが数日前に発売になりました。
 小林大悟(本木雅弘)と佐々木(山崎努)の納棺の所作を見ているうちに、死が決して忌避すべきものではないと思わされる作品でした。死はだれにも来るものですし、私たちはみおくる立場になることもあれば、みおくられる立場になることもあるのです。死が怖いものだという気持ちが薄くなっていきます。火葬場の職員・平田(笹野高史)が言う、「死は門だな、と。死ぬということは終わりじゃない。そこをくぐりぬけて次に向かう。まさに門です。わたしは門番として、ここでたくさんの人を送ってきた。いってらっしゃい、また会おうねって言いながら」と。脚本の小山氏も取材のなかでこの言葉をもっとも大切にしているようでした。
 滝田監督の演出は、本木と山崎の会話の後にまったくセリフのない百合子(余貴美子)のカットが入るとか、妻・美香(広末涼子)の微妙なリアクションをとらえるとか、たいへん繊細なものでした。
 『おくりびと』の主要登場人物にはなにかしら過去に傷があります。大吾には父親の出奔、佐々木には妻との死別、百合子には子供を棄てたつらい過去。死者にもそれなりのつらい人生がありました。女として生きたかった男、孤独な死をむかえた老婆、息子に仕事を継いでもらえなかった銭湯のおかみ、子を棄てた父親などなど。
 しかし、美香だけは過去が描かれていない。このことは重要です。妻は、《現在》そして《未来》の象徴なのでしょう。子供を宿し、夫の仕事に誇りを持つ未来の象徴として彼女は存在するのです。「美しすぎる妻」、広末涼子はまさに適役でした。

         映画川柳 「いしぶみを つきる命と 握りしめ」飛蜘

【参考文献】  百瀬しのぶ『おくりびと』(小学館文庫,2008年

シェイクスピア作品の映画化やその関連の映画は除く。
それらは別ファイルになっている。→ 『シェイクスピアの劇と映画


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