草野球人の中には日頃カロリーを気にしている方もおられるでしょう。このカロリーは、つまり「エネルギー」のことであり、一般的に食事であればどのくらいエネルギーを摂取したか、という意味で用いられる単語です。 運動の場合には、どのくらいの仕事量をこなしたかという意味で、本来ならジュールという単位が用いられるべきですが、カロリーの方がまだまだ馴染みの深い単位なので、食事についても運動についてもカロリーを使って話を進めましょう。(学術的には両者ともジュールの単位を用いることになっています。) まず食事のカロリーですが、これは一般に、糖質1gあたり4.0kcal、脂質1gあたり9.0kcal、蛋白質1gあたり4.0kcalとして計算されます(1)。(ジュールだとそれぞれ17.0kJ、38.0kJ、18kJとなります。) 米や肉、卵、牛乳などほとんどの食素材は成分が分析され、糖質や脂質、蛋白質をどんな割合で含んでいるかがわかっていますから、そこから1回の食事の摂取カロリーが計算できるわけです。最近ではファミリーレストランのメニューにカロリーが表示されていますし、加工食品であれば容器や包装に成分分析表が表示されていますから、面倒でなければ毎回の食事で摂取するエネルギーは把握することができます。 さて草野球人が気になるのは、「いったい野球という運動は、どのくらいエネルギーを消費するスポーツなのか」ということでしょう。(財)日本体育協会のデータ(2)を参考にしてみましょう。
まず練習では、投手は 0.1101kcal/kg/分 のエネルギーを消費します。これは1分で体重1kgあたり0.1101kcal消費することを意味しています。同様に捕手は 0.1012kcal/kg/分、野手は 0.0835kcal/kg/分です。 単位が分かりづらいので、実際の試合に換算してみましょう。1試合2時間として、体重ごとのエネルギー消費量を表にしました。(単位:kcal/試合)
体重 62kg で外野手である私の場合、一試合で約372kcalを消費することがわかります。これは脂肪でいえば 42g分、糖分でいえば 93g分のエネルギー量に相当します。このデータでは打撃や走塁で消費されるエネルギーが含まれているかどうかは定かではありません。また、試合状況や季節などによっても大きく変動しますから、単なる目安と考えてください。 さて、野球以外のスポーツと比較するとどうでしょうか。サッカー(70分間)、ラグビー(50分間)、マラソン(3時間)と比較してみましょう。(単位:kcal)
投手や捕手は他の球技と比較しても、ほぼ同等もしくはそれ以上のエネルギーを消費するポジションであることがわかります。内・外野手はサッカー、ラグビーの6〜7割のエネルギー消費です。草野球が年配層でも楽しめる理由はここにあるのでしょう。 さてそれでは、野球一試合で消費するエネルギー量は、マラソンの何分に相当するのでしょうか。
外野手の場合、計算上、21分間のランニングで一試合分のエネルギーを消費します。また、この数字を逆に考えれば、例えば 47.5分走るスタミナがなければ、投手として一試合投げきることはできないということになります。実際には、野球には攻守交代がありますし、精神的な疲労もありますから、必ずしも正確な数字とはいえませんが、練習の際のランニング量の目安ぐらいにはなるかもしれません。 (初版2000.3.26)
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