2003年6月に聴いたCD

チャイコフスキー 交響曲第5番
セル指揮 クリーブランド管
(SRCR 9867)

誰でも知っている名曲の、好みは分れますが、私はベストの演奏だと思っている名演奏。そして第4楽章に派手にリードミスがあることについては、2000年9月に聴いたCDでご紹介しました。ところが孫弟子さんによると、第1楽章にも「リード・ミスに限りなく近い発音不良」があるとか。以前からどこだろうと思っていたのですが、ついに発見。9分26秒あたり、楽譜でいうと330小節のFの音が変です。1オクターブ上の音がいっしょに出てしまっていますね。第2クラリネットはお休みなので、出したのはマルセラスでしょう。ああ、すっきりした(笑)。(2003.6.2)

ショスタコーヴィチ 交響曲第10番/ブリテン シンフォニア・ダ・レクイエム
ラトル指揮 フィルハーモニア管/バーミンガム市響
(EMI CDM 7 64870 2)

録音は1993年。興味深く聞きましたが、私の求めるショスタコーヴィチではありませんね。正確ではあっても軽いリズムは、ショスタコーヴィチ的でしょうか。軽く透明な音響は、ショスタコーヴィチ的でしょうか。私の好みでは、否です。鋼のような演奏が、この曲にはふさわしいと思います。ブリテンは、素晴らしい演奏だと思います。(2003.6.15)

サンクトペテルブルク交響楽団演奏会
6月17日 サントリーホール

指揮はアレクサンドル・ドミトリエフ、曲は、ウェーバーの「オイリアンテ」序曲、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番、チャイコフスキーの交響曲第5番です。私の席はB席で、2階左の後ろから3列目。ウェーバーが始まった瞬間、オーケストラのほの暗く無骨な音色にまず耳をとらわれました。野暮ったいといえばそうなのですが、力強くそれなりに性能のいいオーケストラ。特に低弦には並はずれた力があります。プロコフィエフは、序奏が素晴らしくゾクッと来ましたが、良かったのはここまで。ソリストのイングリット・フリッターはリズム感にも力感にも欠け、低調でした。チャイコフスキーはいちばん期待した曲ですが、どうもリズム感に欠ける野暮ったい演奏。木管の質にばらつきがあり、とくにファゴットが低調なのが足を引っ張りました。しかし低弦の力で、それなりに聞かせてくれました。アンコールはチャイコフスキーとグラズノフの二曲。指揮者が良ければ、チャイコフスキーの交響曲などかなり聞かせてくれそうなオーケストラですね。(2003.6.17)

ドレスデン・フィル演奏会
6月20日 東京芸術劇場

指揮はギュンター・ヘルビッヒ、曲はベートーベンの交響曲7番、ブラームスの交響曲第1番という重量級。私の席はA席で、3階ステージ向かって左側テラスの最前列。私好みの席です。ベートーベンが始まってすぐに、このオーケストラがなかなかの機能性と名技性をもったオーケストラであることが分りました。CDで聴くケーゲルの指揮する演奏ほどの水準ではないとしても、名オーケストラのひとつであることは間違いないようです。ヘルビッヒの指揮も、奇をてらったところのない正統的なもので、欠点というものがありません。楽章の間でタクトをおろさず、客に耳障りな咳の嵐を許すことなく、緊張感の続く演奏をしてくれました。入念でありながらも、70歳を超えているとは思えないほど颯爽とした指揮ぶりです。良い指揮者ですね。ブラームスはさらに充実した演奏。第2楽章の始めの方で、オーボエのソロにミスがあったのは残念でしたが、これを唯一の例外として、管楽器のソロもなかなか。特にホルンは、すばらしい出来でした。アンコールは、エグモント序曲とハンガリア舞曲第5番で見事に決めてくれました。いいコンサートでした。これで8000円はお買い得です。(2003.6.17)

ドヴォルザーク 交響曲第4番/5番/6番
ケルテス指揮 ロンドン響
(DECCA 473 798-2)

先日、ある人のご厚意で、1969年にケルテスがクリーブランド響に来演したときのドヴォルザークの交響曲第6番の録音を聴くことができました。ちょっとショッキングなくらいの名演奏で、クリーブランドの団員たちがセルの後任にケルテスが就任することを切望していたという理由がよく分りました。この演奏は、1966年のもの。コスモポリタンでシンフォニックなスタイルは似ていますが、やや穏やかな表情を見せる箇所が多くなっています。4番、5番ともに好演で、7/8/9番以外の交響曲を聴きたくなったという人には、第1におすすめできるお得な2枚組です。余白には、管弦楽作品が3曲収められています。(2003.6.26)

ブラームス ピアノ曲集
ポゴレリチ(pf)
(POCG-1624)

ポゴレリチのブラームス。興味をそそられますね。ブラームスのピアノ曲には、全体に過度に内省的なところがありますが、この演奏はそれがさらに誇張されています。しかし重苦しいのではなく、とても透明感のある演奏。これはいいですね。有名な作品118-2の間奏曲には、思わず耳を奪われました。(2003.6.28)

スカルラッティ ソナタ集
ポゴレリチ(pf)
(POCG-1623)

なぜか、ポゴレリチを続けて聴きました。そもそもこれらの曲についてはホロヴィッツ以外の演奏を聴いたことがありませんので、ちゃんと評価はできないのですが、ホロヴィッツが音色の変化で聴かせる演奏だとしたら、こちらは音色の魅力こそ一歩譲りますが、ダイナミック・レンジの大きさとテンポの変化で聴かせます。現代のスカルラッティ演奏としては、こちらの方が人気が出そうな感じはします。(2003.6.30)