私はこんな観察会が欲しい!


 探鳥会や自然観察会に参加してみたらがっかり,と言う経験はありませんか?
 どうして面白くなかったのか? 何にがっかりしたのか?
 より良い観察会を求め,辛口批評と提言をします。


探鳥会/観察会のココがいや!

・話し相手がいない!
 ちょっとドキドキしながら参加した,初めての観察会。サテ,集合場所に着いてみると……あれれ?同年代の人がいない! なんか,気楽に話せる雰囲気の人がいないなぁ……。お喋りしているおじさん達も,なんか,妙にマニアックで,服装や道具を揃えている。ジーンズにスニーカーで参加したら,なんか,浮いてる感じ。あー,どうにかしたい,この居心地の悪さ。

・マニアックな話はやめて! 特殊用語はやめようよ
 とある探鳥会。おじさん達に声を掛けられる。「あんた,初めて?」……「あ,いや,他の探鳥会なら参加したことあるんですが」……「そーか。で,あんた,何種見た?」……「え!???」……「鳥だよ,鳥」……「はあ……」……「俺はこないだ,250種になったよ(胸を張る)」……「はー,すごいですね」……。
 次は,別のおじさん。「ちょっとこの写真,見てみな。これ,なんだと思う?」……「なんですか?」……「ツメナガだよ。これはさぁ〜……」……延々と自慢話。で,「ツメナガ」って,何?
 観察が始まると……。「この辺はブトが多いなぁ……。ずーと向こうにモズがいるけど,ありゃ,タダモズだなぁ。あ,コシアカの巣,プロミナーに入れたから,見てね。」
 何なんだ,こりゃぁ〜!!

・集団で歩けばフィールドも荒れる
 大都市近郊での探鳥会は,参加者の数も多い。ふと気がつくと100人を越えていたり……。そんな大集団が,細い山道や,河原の藪の中を移動したら,そりゃ,もう大変。
 少人数に分けてくれないと,歩くのも大変だし,解説を聞くのも大変。
 「探鳥会に参加しない」,と言うポリシーを持った人の中には,こんな大集団で観察しても,鳥が逃げちゃうし,フィールドが荒れる,と言う問題を指摘する人もいます。1人が花を1本折ったとしても,そんなにインパクトがないけど,100人の集団が100本折ったら,やっぱり,問題じゃないの?という意見も。
 だとしたら,あの,珍しい鳥のいる場所にゾクゾクと集まってくるバードウォッチャー。あれだって,すごい「集団の暴力」だと思うけど……。

・たとえ興味がなくても,大切にしてよ
 探鳥会の集団が通った後,道端の花が踏みつぶされたり折られたりしていることがあります。そりゃ,いくらでも生えている「雑草」だから,ちょっとぐらい大丈夫,と言う言い分もあります。でも,その草の花を楽しみにしている人もいるのだし,その花の蜜を目当てにしていた虫もいる。さらに,その虫を目当てにしていた鳥もいたかも知れない。自然は循環する。鳥だけ可愛がっていい気分になるのは,ちょっと疑問です。
 それから,観察しながら採集している「野草観察会」もあるんですね。驚きました。採集行為は,よほど気をつけてコントロールしないと,ただの「乱獲」になってしまいます。次に観察する人のことや,来年のことを思うと,そんなことはできないと思うのですが……。次に観察するのが自分達だったりしたら,どうするんでしょう?
 野外での天体観望会。闇に乗じて?けっこうゴミが残るんですよね。きれいな星は,きれいな地球から眺めたいですよね。
 自分の観察目的以外のものにも,やさしくして欲しいですね。

・「探鳥会」で花を見てたら怒られた
 マジで怒られました。本当の話です。「ここは探鳥会なんだから!」と。
 虫を観察して文句を言われたこともあります。「私は鳥を見に来たんです。なんで虫を見るのですか!」と。
 逆に聞きたい気分です。「なんで,鳥以外のものを見てはいけないの?」。
 せっかく興味を持っているのに,何の権限があって規制するのでしょう?
 でも,最近は,面と向かって文句を言う人は少なくなりました。
 でも,いまだに,「この人は何をやってるの?」と,奇妙なものを見るような視線を浴びることはあります。
 自分の興味の無いものに対して冷たいのは,分からなくはないけど,ちょっと悲しいですよね。

・リーダーって何をする人なの?
 とある探鳥会。「エー,皆さんより,リーダーのほうが鳥を見つけるのが早いですから,リーダーの前を歩かないように。リーダーが鳥を見つけましたら〜,皆さんにお見せしますから。」……これは,はっきり言って,カルチャーショックだった。でも,みんな,言いつけを守っていた。なんで小学校の遠足みたいなことをするのかしら,と不思議に思っていたら,なんでも,参加者全員に,均等に同じ鳥を見せるための策なんだそうです。人によって,見られたりみられなかったりした鳥がいると,参加者が不公平感を訴える(?)と言う理由のようです。
 でも,リーダーは,鳥を見つけて参加者にお見せして,名前を教えるだけでいいのかしら?
 いまだに疑問です。

・リーダーとウマが合わないと悲惨
 自然観察会の印象の良し悪しの半分以上は,人間関係で決まると思います。だから,周囲の参加者に気分を害するような人がいたり,まして,リーダーとウマが合わない場合は,悲惨です。
 私が企画している観察会の場合,1グループに案内役のリーダーを2人以上つけています。
 こうすれば,気に入らないリーダーで悩む確率は,半分ぐらいになります。
 こういうのは,やっぱり,自分が観察会に参加してみないと,なかなか分かりません。

・「常連」と言う名の壁
 特に小規模の観察会の場合,リーダーの周囲を「常連さん」が取り囲んで,なかなか話を聞けないことがあります。一般に公開している探鳥会/観察会なら,こうした「内輪話」のノリは,是非とも避けて欲しいと思います。
 と言いつつも,「やぁ,お久しぶりぃ」などと,つい,顔見知りと気楽に話し込んでしまうことも多いのが現実。「常連」とリーダーの談笑は,解散後に。あるいは,常連さんに,観察を案内する側を手伝ってもらう,と言うのも1つの手ですよ。

・恐怖の「鳥合わせ」
 探鳥会の最後で,観察した鳥の「おさらい」をすることを,「鳥合わせ」と言います。辞書を引くと違う意味が乗ってるけど,それはさておき……。
 これが,自分が見なかった鳥の名前がポンポン出てきて面食らうことがあったり,司会の人が「じゃ,今日はこれだけですね」と,終わらせようとした瞬間,「私は○○を見ましたよ」などと,おもむろに切り出す,イヤミな人がいるんですよね。
 探鳥会によっては,観察した鳥の数を記録しているところもあって,「さぁ〜何羽出ましたかぁ?」の声と共に,競り市のように数が増えてゆく。これもまた,最後のほうになって大きい数を言う人が出てくる。リーダーも負けじと(?),「○○年前には×百×十×羽出ましたよ」などと,妙に細かい。……これが観察記録として残るんだから,ちょっと考えてしまいます。

・炎天下の無言集団
 初夏から初秋にかけて,干潟や河原など,日陰のない場所の探鳥会に行くのは,すごく大変です。とある干潟の探鳥会では,参加者もリーダーも,黙々と望遠鏡を覗いて観察。言葉数も少ない(これだけ暑けりゃ,誰だって喋りたくなくなるかも)。こんな「苦行」を推しても得るものがある,と思える人なら,まだ耐えられるかも知れないけど,意志薄弱な私には向かないなぁ。

・服の色で喧嘩を売られた?
 時々怒られるんです。派手な色の服を着ていると。「鳥が逃げるじゃないか!」と言う理由。驚いたのは,都市公園など,周囲にきれいな服を着た人が歩いているような場所でも,服の色にいちゃもんをつけてくる人がいること。こんな場所で,服の色にこだわって,意味があるかどうか,疑問です。都市部の公園緑地でフィールドベストや迷彩服などを着ているセンスも,ちょっとねぇ……。都市公園での観察なら,普段着プラス少々の装備で,じゅうぶんに楽しめます。
 むしろ,狩猟期の山の中では,間違って撃たれないように,ある程度目立つ色の服を着ていたほうが安全ではないでしょうか。まずは身の安全です。

・自慢話は良くもあり,悪くもあり
 探鳥会や観察会は,同行の士が集まる場所でもあります。興味が近いんだから,話も合いやすい……と思ったら,そうでもなかったりすることも。
 とにかく多いのは,どこで何を見たという類の自慢話。最初のうちはいいけど,回を重ねるにつれ,閉口してきました。でも,これが「珍鳥情報」の交換の場になっていたりするらしい。いわゆる「珍鳥」を追いかける人には,情報源にもなっているのかな。その他にも,写真を人に見せて歩く人とか,知識自慢の人とか。
 必要な人にとっては有用な情報でも,必要としない人にまで押しつけられては価値がないんです。



提言!こんな観察会に参加したい

・観察会の楽しさの半分は,人との交流
 観察会の楽しさの,かなりの部分は,人間関係で決まります。案内役の人はもちろん,参加した人も,観察会では,意識して人と人とのコミュニケーションを大事にするようにしていただければ,かなり印象が変わると思います。特に初めて参加した人にとっては,案内役の人や他の参加者は,ちょっとマニアックで知識豊富な人(つまり,自分とは別の世界の人),と言う印象が強いようです。そんな人たちの中に飛び込むのには,正直言って,かなりの勇気がいります。その勇気に応えられるような対応をお願いしますね。

・すべての年齢層にやさしい観察会を
 観察会の案内役は,大抵はアマチュアの観察者。人の前に立って話す「プロ」ではない場合が多いのです。自分の「趣味」でやっていることだけに,どうしても,自分の趣味と近い人や,自分と年代の近い人と,仲良く話してしまう傾向はあります。
 でも,一般公開で開催されている観察会では,もう少し意識して,いろいろな年齢層の人たちのことも考えてください。いま,観察会や探鳥会では,ものすごい勢いで高齢化が進んでいます。東京では,探鳥会参加者の平均年齢が60歳を越えているところもあります。
 年配者には年配者向けの,若い人には若い人向けの,子供には子供向けの配慮が必要です。こうした配慮のない観察会に参加して失望してしまった人だって,少なくありません。自然観察の「入り口」である自然観察会の敷居が高くては,困ります。

・どんなことをするのか,ちゃんと予告してね
 意外と忘れられているのが,予告。ひとくちに「自然観察会」とか「探鳥会」と言っても,その内容は千差万別。「観察会をします」だけでは,何をするのかわかりません。探鳥会でも,「こんな鳥を見ます」だけでは,初めて参加する人には,ちょっと不安。もっと具体的に内容を告知してくれると,もっと参加しやすいんですけどね。

・観察コースや時間も,ちゃんと教えてよ
 さて,勇気を出して,観察会の集合場所に着いたとしましょう。ここでも,ちゃんと観察コースや観察内容,終了時刻,注意事項などを,きちんと紹介して欲しいのです。初めて参加した人は,不安なのです。不安を取り除くためにも,ていねいに予定を教えて欲しいですね。終了予定時刻や観察コースなどがわかれば,不幸にして道に迷ったときにも,心強いでしょう。何をするかわからないまま,黙って連れて行かれたら,誰だって怖いですよね。

・スマートに観察するために
 どんなときでも,確実に守らなければいけないのは,フィールドマナー。特に大人数の観察会になると,ただでさえ自然環境へのインパクトを与えやすい情況なのに加え,つい,気が緩んで,インパクトがさらに大きくなったりします。

 楽しくなければ,観察会に参加した甲斐がない。
 楽しいだけじゃ,観察会に参加する価値がない。

・次世代につながれ!自然観察の輪!
 観察会の多くは,アマチュアのボランティアによって運営されています。地域に根ざした活動は,「プロ」の自然解説者や専門家の解説とはまた,ひと味違った楽しみがあます。ホームグラウンドを持って活動している強みですね。でも,どこのアマチュアの活動でも問題になっているのが,後継者作り。すばらしい活動をしている場所でも,その中心人物がいなくなったときのことを思うと……。ですから,常日頃から,後継者作りをしっかりやって欲しいですね。息の長い活動をするためには,世代交代は大切です。

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