消えるインク?

対象年齢:小学校中学年以上。
       おとなの人が手伝ってあげれば,小学生未満からOK。


 花をあつめて,色水あそびをしたことはありますか?
 花の色が服についてしまうと,色を落とすのが大変で,洗濯するときに困っちゃうけど,これから紹介する色水は,すぐに色が消えるから,お母さんも安心?


 身近な植物で作る,「消えるインク」です。

#子供の頃,「スパイ手帳」で遊んだことを思い出したお父さん,いるかな?

【用意するもの】
・ツユクサの花。
 ツユクサは6〜9月ごろに花を咲かせます。午後になるとしぼんでくるので,朝のうちに花を集めましょう。


 これがツユクサの花。

・筆(ふで)または綿棒(めんぼう)
・画用紙(がようし)など
・小皿(金属製はだめ)
・ろ紙(または吸い取り紙)。薬局で売っている「ろ紙」でも,文具店で売っている「吸い取り紙」でも,コーヒー用の白いフィルターペーパーでもよい。
・酢またはレモン汁(つまり,酸性の液),重曹(じゅうそう:アルカリの試薬として使う)

【やってみよう】
 ツユクサの花を,画用紙などにこすりつけて,なにか書いてみましょう。
 きれいな青い色が出ます。

 ツユクサで書いた絵に,たっぷり水をふくませた筆や綿棒で,水をぬってみます。すると……
 みるみる色がうすくなります!


 ツユクサの花で,画用紙に色をつけてみたところ

 …これに水をつけると……


 さーっと色がうすくなります。


 ツユクサの花がたくさんあつまったら,この「消えるインク」を,紙にしみこませて,保存してみましょう。
 作りかたはかんたんです。ツユクサの花びらをろ紙にこすりつけて,たっぷりと色をしみこませて,かわかしておきます。まっ青な紙ができます。使うときは,紙をちぎって小皿に入れ,少量の水で色をとかします(あまり大量の水を使ってはいけません)。



【でも,どうして?】(ちょっとくわしい説明)
 着物のことに詳しい方は,ピンと来たと思います。
 これは,友禅染めの下絵に使う,「青花」の技法そのものです。「青花」で書いた下絵は,水で洗うと簡単に消えてしまいます。
 本物の「青花」の場合,ツユクサの変種で花びらの大きい,オオボウシバナを原料に使います。オオボウシバナの色素もツユクサの色素とまったく同じです。オオボウシバナの花の色を和紙に染み込ませた「青花」は,滋賀県の特産品です。

 もう少し,理科っぽい説明を加えましょう。
 ツユクサの色素は,アントシアニン系色素で,マグネシウムを含んだ分子構造の,コンメリニン(commelinin )と言います。「コンメリニン」と言う名前は,ツユクサの学名Commelina communisから取ったのでしょう。この色素は酸性では安定で,アルカリ性になると緑色になります。コンメリニンは水で薄めると退色する特性があり,これを経験的に知っていた染色職人たちが,友禅染めの下絵用染料として利用していたのです。コンメリニンの分子構造がわかったのが1983年のことですから,昔の人の知恵って,すごいですね。


 では,もういちど,実験。ツユクサで紙に色をつけて……

 ↓重曹をとかした水をぬってみると……


 ……青緑色になった部分,わかりますか?

 アントシアニン系色素は,植物にごく普通に見られる色素で,分子構造により赤〜赤紫〜青系統の色になります。色素の構造によって,酸やアルカリで色が変わるものもあります。いちばん身近なアントシアニン系の色は,紅葉やブルーペリーの色でしょうか?

【もう少し観察してみよう】
 おなじようなアントシアニン系の青い花でも,アサガオの花やアジサイの花などは,ツユクサと違う特性をもっています。色水を作ってみたり,酢や重曹でどう変化するか,しらべてみましょう。。

→「身近な自然で遊ぼう」目次へ
→Home