三日月より細い月を見よう

対象年齢:小学校中学年以上。
       おとなといっしょにやるなら,小学校低学年からOK。


 江戸時代まで,「月」は,カレンダーを作るときに,たいへんたいせつなものでした。
 月のみちかけ1回ぶんの時間が,だいたい30日。
 これを「ひと月」としていました。
 夕方の西の空に,ほそい月がさいしょに見えたときが,1か月のはじまり。
 その,ほそい月のことを「新月」とよんでいました。
 「新月」の2日あとに見えるのが「三日月」。
 ですから,むかしの人は,三日月よりもほそい月を,しっかり観察していたのですね。

 では,わたしたちも,「新月」の観察にチャレンジしてみましょう。


【用意するもの】
 「天文年鑑」など,月の位置やかたち(月齢…げつれい…)がわかるデータブック,
 方位じしゃく。双眼鏡があるとべんり。

【観察しよう】
 まず,新月の日をしらべ,その日の「日の入り」の時刻と,「月の入り」の時刻をしらべます。
 西のほうの空が,地平線近くまで見える場所に行きます。
 空がスカッと晴れているほど有利です。
 日の入り時刻ごろから,月をさがします。
 ……見えるでしょうか?

 うまくいくと,データブックに出ている「新月」の時刻からから24時間以内の月を見ることができます。
 天文学では,太陽と月の「黄経(こうけい)」がそろった時刻を「新月」と言います。かんたんに言うと,太陽と月が同じ方向にあるときを「新月」として,その1日後が月齢1.0,2日後が月齢2.0……とします。
 月齢が1.0になる前の月が見えることもあります。たとえば,午前1時ごろに「新月」だったら,その日の夕方に月を見ることも,できるかもしれません。

 また,できるだけほそい月が見たい,と言うだけなら,新月の前の明け方をねらうのも手です。
 明け方のほうが空気がすんでいて,有利なのです。


  これは月齢2.0…「新月」から48時間たった月です。

 ☆参考までに,私の見た,いちばんほそい月は,新月の19時間前です。

【もう少し観察してみよう】(ちょっとくわしい説明)

 この観察には,ちょっとしたコツがあります。天空上の月の通り道(白道と言います)と太陽の位置関係によって,月が見やすい季節と見にくい季節があります。特に見やすいのは,1〜4月ごろの夕方の空,8〜11月ごろの明け方の空です。図を参考に,太陽と月の位置関係を確認してください。

春分のころと秋分のころの夕方の西の空。
太陽と月の位置関係は,これだけちがう。

 日本で明治5年まで使っていた「旧暦」は「太陰太陽暦」。
 月の満ち欠けを1ヶ月とし,太陽の運行を示す二十四節気(立春,春分,夏至など,1年を24の「節気」に分けたもの)で修正を加えていました。
 イスラム暦は完全な「太陰暦」。月の満ち欠けだけで暦を作ります。
 「太陰」とは月のこと。どちらの暦も,夕方の西空に,細い月が見え始めた日を,その月の「1日」とします。日本では月の欠け具合を見て日付けを知り,「三日月」「半月」「満月」などの言葉があったり,お月見をする風習があります。イスラム世界では,太陽の出ている間の飲食を禁ずる「ラマダン」の一ヶ月が終わり,次の月の第1日目を意味する細い月が見られると,盛大にお祝いをします。
 天文学的な「新月」は,月と太陽が同じ方向に並ぶことですが,暦の上では,その直後,夕方の西の空に初めて現れる月を「新月」と呼びます。この「新月」を見ることには,大事な意味があったのですね。

→「身近な自然で遊ぼう」目次へ
→Home