キミの五感にチャレンジ!

対象年齢:小学校低学年から。
       おとなが指導すれば小学生未満からOK!


 キミはジュースやコーラは好きかな?お店に行くと,いろんな飲みものがあるけど,よく見ると,「無果汁」,つまり,くだものをぜんぜん使っていないのに,オレンジ味やグレープ味のする飲みものも売っている。どうやって,くだものが無いのにくだものの味がするのかな?……そのひみつを,キミの鼻や口をつかって,しらべてみよう。

【用意するもの】
・ジュース(なるべく果汁のすくないもの)やコーラ,サイダー,牛乳など。
・バニラエッセンス,シナモンなどの香料。デパートやスーパーマーケットの製菓材料売り場や香辛料売り場に売っています。フルーツフレーバーなどがあったら,それも買ってきて,実験してみましょう。
・コップ(透明なもの),スプーンなど。

【観察しよう】

まずは,色を観察
 缶入りの飲みものだと,なかなか色を見ることがありませんが,コップに入れて,色をじっくり見てみましょう。

左はどんな味がするか,なんとなくわかりますよね。
「無果汁」のグレープ味のソーダです。
右はどうでしょう?
「はちみつレモン」?それともスポーツドリンク?

色から味が想像できるもの,できないものがあります。

においにだまされた?
 では,いくつかジュースを用意して,だれかと,こんなクイズをしてみましょう。
 目かくしをして,鼻をつまんで,色とにおいがわからないようにして,味だけで何のジュースか,当てるのです。
 ジュースをちょっとぬるくする(20℃ぐらい)と,味がわかりやすくなります。

 ……どうですか?
 「無果汁」のジュースだと,甘さとすっぱさしか,ちがいがわからなくなります。
 ……つまり,おもに「におい」と「色」で,ジュースの味を感じていたのですね。
 ほんものの「100%果汁」だと,甘さとすっぱさのバランスのほかに,すっぱさのもと(「酸」といいます)の種類もちがうので,リンゴ,ブドウ,オレンジ,みんな,ちょっと味がちがうことがわかります。

 それにしても,においがわからないと,「無果汁」の飲みものは,ずいぶん甘く感じます。
 炭酸の入った,コーラやサイダーは,どうなんでしょう?
 そこで……


炭酸にだまされた?
 炭酸飲料の炭酸をぬいて,ほんとうの甘さを,炭酸の入っていないジュースとくらべてみましょう。
 やはり味がわかりやすいように,飲みものはぬるくしておきます。
 炭酸飲料のほうは,コップに入れてスプーンやわりばしでかきまぜ,炭酸をとばしておきます。

 ……炭酸飲料が,びっくりするほど甘くて,「酸」が少ないことがわかります。
 炭酸は,シュワシュワっときもちのよいアワを出すだけでなく,水にとけて,すっぱい味も作っていたのです。


においでだまそう
 においって,食べものや飲みものの味を決める,大事な役目を持っていることが,わかってきましたね。
 それでは,においをつけて味をごまかす実験もしてみましょう。

1.甘すぎるミルクが平気で飲めちゃう
 まず,ミルクに砂糖を入れて,「これはちょっと甘すぎるよ…」と言う甘さにしてください。
 つぎに,それにバニラエッセンスを2,3滴,入れると……
 あれ?たしかに甘いけど,「甘すぎる!」とは思わなくなります。
 ……バニラの香りのするプリンとかクッキーなどは,「甘すぎる!」と感じた,砂糖入りのミルクよりも,さらに甘いのです。ですから,バニラの香りで,「これは甘い食べものだ!」と,脳がかってに決めてしまうので,平気になってしまうのです。

2.においのミスマッチ
 しょっぱい味の飲みものに,甘いお菓子に使う香料を入れると,ものすごく変なものになります。
 これでイタズラができます。
 うすい塩水を作って,バニラエッセンスをたらして,だれかに飲ませてみましょう。
 口に入れるまでは,甘いにおいがするので,甘い飲みものかと思ってしまいますが………

【もう少し観察してみよう】(ちょっとくわしい説明)
 「匂い」も「味覚」の一部を担っている。この実験では,自分たちの感覚器を使うことで,感覚についての発見をすることを目的としています。私達が「おいしい!」と感じるとき,味だけではなく,鼻からの匂いの情報,目からの視覚情報なども統合して,感じているんだな,と再認識していただけると思います。(「おいしさ」には,誰とどこで食べるか,とか,体のコンディション,その人の生活習慣など,さまざまな要素も絡んでくるものですが,ここでは感覚器からの情報だけに絞って考えてみます)

 あなたは,カップ1杯のコーヒーに,砂糖をどのくらい入れますか?
 細身のスティックシュガー1本なら3g,砂糖の濃度は約2%と言ったところ。
 ところが,缶コーヒーの中には,この数倍の糖分が含まれています。
 甘い甘い,と言いながら,それでもなんとなく飲んでしまう,甘い缶コーヒー。
 よく考えると不思議ですね。

 「缶コーヒー」=「甘ったるいもの」と言う認識が,脳のどこかに出来ているのかも知れませんよ。

 さらに,コーラなどの炭酸飲料では,糖分濃度が10%を越えるものも珍しくありません。
 甘さは冷却や炭酸などによって感じにくくなっているため,上記の実験のように,少しぬるくして,炭酸を抜いてやると,無炭酸のものよりはるかに甘い,炭酸飲料の「甘さ」に気づくわけです。

 でも,甘いものばっかり飲んでいると体に悪い,と言うのは早計です。栄養的には,もっと糖分含量の多い食品は,いくらでもありますし。知らないうちに糖分をたくさん摂ってしまうことを,よく認識すればいいのです。ジュースとともに取り入れた当分は,血糖値に響きます。血糖値が上がると,空腹感が抑えられます。夏場,ただでさえ食欲の落ちる時期に,子ども達にしっかり食事を取らせたかったら,食事前のジュースは極力避けたい,と言った策が取れるわけです。
 また,「糖分10%」は,思ったほどクレイジーな数字ではありません。それを越える糖度の果物も,たくさんあります。
 それに,砂糖は即効性のエネルギー源でもありますので,上手な使い方を考えてください。

 ダイエットのため,1日2,3杯しか飲まないコーヒーの砂糖を抜く,と言う人もいますが,カロリー的にはたいした数字にはなりません。むしろ,砂糖の甘さを感じやすくなる食習慣が作られる効果のほうが大きいように思います。甘くないコーヒーが許せない人は,無理に砂糖を抜いてストレスを感じるよりは,少しずつ砂糖の量を落としてみてはいかがでしょう。実は,ちょっとぐらい砂糖の量が減っても,そんなに違いを感じないのです。砂糖の量を10%減らして1週間。さらに次の週は10%減らして,……と言う風に,1ヶ月ぐらいかけて,コーヒーに入れる砂糖を半減させると,違和感なく落とせます。こう言う方法も,味覚の特性を生かした方法なのです。

 さて,味覚には匂いも大きく関わります。
 バニラやシナモン,カカオなどのフレーバーは,甘さを連想させます。フルーツ系のフレーバーは,酸味,爽快感を演出します。バニラ系の香りで,心理的に食欲を抑制するダイエット用品も売られているくらいですから,「匂い」も馬鹿になりません。嗅覚は,人間の,もっとも動物的,本能的な感覚の1つだと言われています。例えば,「この食べもの,腐ってないだろうか」と,クンクン匂いを嗅いでみたりしたこと,あるでしょう。本能的に危険予知をしようと言う行動なのですね。嗅覚は本能的であるために,なかなか理屈でねじ伏せにくい面があったり,本人も気づいていない,匂いによる情動効果などもあるようです。嗅覚は古典的機能でありながら,未解明な部分も多く,脳研究のフロンティア領域として研究されている分野でもあります。匂いで人の感情をコントロールしたり,ストレスを和らげたりするる効果もあるようですが,将来,こうしたことが理論的に解明される日が来るかも知れません。

 「匂い」も,食生活の味方につけて,上手に調理し,おいしく食べたいものです。

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