水を汚したのは誰?

対象年齢:小学校高学年以上。
       CODについては,おとなの人がきちんと説明しましょう。
       おとながデモンストレーションするなら,小学校低学年からOK。


今回は,ちょっと予算がかかります。
でも,予算をかけたなりの結果が出てくると思います。
私は,ちょっと工夫して観察をおもしろくするのが好きなんですが,今回はキットをそのまんま使います。でも,材料のほうを,工夫してみることにします。

【用意するもの】
・水質検査キット。
いろいろなものが出ていますが,まず,COD検査キットを使いましょう。

写真のものは,共立理化学研究所(03-3721-9207)で出しているもので,値段は5回分で800円です。
東急ハンズなどで売っていますが,売っているお店が見つからなかったら,メーカーに直接,問い合わせてみてください。
・透明な使い捨てコップか,白い紙コップ。
・お料理用の計量カップや計量スプーン。

【観察しよう】
 まず,CODとは何なのか,説明します。
 CODは Chemical Oxygen Demand の略で,日本語では「化学的酸素要求量」と言います。
 環境庁の「湖沼水質調査」の指標としても,使われています。
 簡単に言えば,水の中に含まれている汚れ(おもに有機物の汚れ)を,おおまかに数値化したものです。

 CODの測定原理は簡単です。水の中に強力な酸化剤を入れると,水中の有機物などの汚れに結合して酸素を与えます。汚れが多いほど,酸化剤が使われて減ります。そこで,残った酸化剤の量をはかれば,どのぐらい酸化剤が汚れにくっついたのか,わかります。この,汚れによって使われた酸素の量がCODなのです。


  これは観察会で使っている解説パネルなんですが,これでわかりますか?


 では,キットの説明書にしたがって,水のCODを測ってみましょう。

・近くに池や沼などがあるなら,その水を汲んできます。
・きれいな水の代表として,ミネラルウォーターや水道水を使います。
・家庭排水の材料として,コップ1杯の水に醤油を1滴(=約0.05ml)たらしたものや,洗濯機の「洗い」の直後の排水を水道水で10〜100倍に薄めたものを用意します。

・用意した水をコップに入れ,色やにごりを観察します。
・測定キットでCODを測ってみます。

……どんな結果が出ましたか?

【でも,どうして?】(ちょっとくわしい説明)
 いま,湖や沼の汚れ……特にCODの増える汚れの原因の半分以上は,家庭排水だと言われています。食べ物は有機物です。醤油だけでもかなりCODが増えることがわかると思いますが,油脂類は,醤油よりも少ない量で,醤油よりもCODを上昇させます。洗剤も有機物です。しかも,油脂類を多く含みます。洗剤や,食事のあとの油汚れなどは,CODを上昇させる大きな原因になっています。
 水道法では,基準項目の1つとして,CODが10mg/l以下と定めていますが,現在では「快適基準」として推奨される,3mg/lをクリアするようにしている水道事業者も多いようです。環境庁が「好ましい」とする水質基準も3mg/lですが,現在,この基準をクリアしている湖沼は,全測定箇所の4割程度です。
 きれいな水でも,CODがゼロでない場合があります。わき水などでも,CODが2mg/lぐらいになることがあります。
 我孫子の水道は,CODが0〜1mg/lでした。地下水をブレンドしているのだそうです。

 CODは,あくまでも水の汚れを大まかに知るためのものです。酸化剤の反応しない無機物や,少量でも人間に有害な毒物を調べることはできません。酸化されない汚れ……硝酸体窒素や,一部のリン酸化合物などは,CODで測ることはできません。窒素もリンも,「富栄養化」の原因ですし,人や動物の排泄物の混入……特に街の中の水面では,トイレの排水とも関係があります。こうしたものは,別の測定方法を使って,さらに調べる必要があります。

【もう少し観察してみよう】
 もし,水の汚れに興味を持ったら,COD以外の測定キットを使って調べてみるのもいいでしょう。
 また,近くに小さな池などがあったら,そこの水を月に1回ぐらい調べて,変化を調べるのも,おもしろいと思います。
 上野の不忍池では,夏にはハスが,水中の有機物を取り込みながら育ち,冬になるとたくさんの水鳥が来て,鳥に餌をやる人もたくさん訪れます。夏の終わりごろ,ハスが枯れはじめる直前のCODは,7〜9mg/lですが,1〜3月ごろには20〜50mgl/lになります。環境庁の調査でいちばんCODの高い手賀沼でも19mg/lですから(1998年調査),環境庁の調査の対象となっていない,小さな池や沼でも,いろいろと問題があるようですね。

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