元期 簡易計算法



● (No.802) 元期 簡易計算法 (2013年7月3日)
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FITSAT-1(NIWAKA)
1 38853U 98067CP  13181.98190682  .02715420  11811-4  15008-2 0  2990
2 38853  51.6286   7.6320 0012559 281.0769  78.8836 16.18546131 42226

元期通日 13181.98190682 について考えてみます。

まず 元期 1.*** は 1月1日+0.***日、31.*** は 1月31日+0.***日、そして平年
の 59.*** は2月28日+0.***日、・・・、平年は 6月30日までで181日経過してい
るので、元期 181.*** は 6月30日+0.***日となります。

上記の FITSAT-1(NIWAKA) の TLE元期 0.98190682=23時33分57秒(後述) なので
元期 13181.98190682 は、結局 2013年6月30日+0.98190682日、つまり6月30日の
23時33分57秒UTC、日本時間で 7月1日午前8時33分57秒となります。

[簡易計算法]
                                                  +----------------+
この元期通日 181.98190682 を解析してみます。      |  1月     (閏年)|
小数点より上が その年の日数なので、181 より       |  2月  31 ( 31) |
小さい整数値(180以下の数)を右表から選びます。     |  3月  59 ( 60) |
すなわち 151 であり 6月となります。181 から       |  4月  90 ( 91) |
151 を引くと 30 となります。つまり、6月30日       |  5月 120 (121) |
となります。 小数点以下の数値に、次のように       |  6月 151 (152) |
時間の定数をかけると、時分秒が計算できます。      |  7月 181 (182) |
                                                  |  8月 212 (213) |
  0.98190682 x 24 = 23.56576368 ... 23時          |  9月 243 (244) |
  0.56576368 x 60 = 33.94582080 ... 33分          | 10月 273 (274) |
  0.94582080 x 60 = 56.74924800 ... 57秒          | 11月 304 (305) |
                                                  | 12月 334 (335) |
この3行の面倒な掛け算のところを、JE1CVL局は       +----------------+
Excel を使って次のように簡単に求めています。

> 0.98190682 を Excel のセルに入れて、セルの書式で 「時刻」 を選択する。
つまり、セル右クリック → セルの書式設定 → 「時刻」 → OK → 23:33:57

天体や衛星の軌道力学を研究する際、ユリウス日を計算する場面が多くあります。
ユリウス日の起算日は、BC(紀元前)4713年1月1日正午(世界時)です。ユリウスは
紀元前100年頃のローマ皇帝として有名なシーザーです。 BC5000年~BC4000年と
いえば日本では縄文文明、アジアでは黄河文明、そしてエジプト文明、インダス
文明等の古代文明が栄えた時期です。ユリウス暦という直接にはユリウス日とは
関係がない暦の概念もあります。ちなみに、現在私たちが使っているのは太陽暦
(グレゴリオ暦)です。 「天文年鑑(誠文堂新光社)」 や 「理科年表(丸善出版)」 に
これらのことが簡潔に解説されています。

ユリウス日(Julian Day) の起算時点は、BC(紀元前)4713年1月1日12:00UTC です。
本日 2013年7月3日0時UTC のユリウス日を関係のWebで調べると、2,456,476.5日
となりました。現在ではユリウス日(JD)の数値が大きすぎるので、ユリウス日か
ら 2400000.5日を引いた準ユリウス日 (Modified Julian Day, MJD) を使うこと
があります。つまり準ユリウス日(MJD)とユリウス日(JD)の関係は 次のようにな
ります。 MJD=JD-2400000.5  準ユリウス日の起算時点 0.0日は、1858年11月
17日0:00UTC です。つまり本日(7/3)の準ユリウス日は、56,476.0日となります。

ところで上記、衛星TLE元期通日 「13181.98190682」 の時刻の部分 「0.98190682」
を、Excelセル書式設定で簡単に変換する JE1CVL局による方法を紹介しました。
「13181」 の部分 「13」 は 2013年の下二桁を表しています。日付の部分 「181」 を
Excelセル書式設定で簡単に変換する方法を、私 JE9PEL/1 が以下に紹介します。

「181」 をセルに入力して単に 右クリック→セルの書式設定 → 「日付」 としても
「1900/6/29」 と表示されるだけです。これは Excelのセル日付表示(シリアル値)
が、1900年 1月1日を起点として、この日を 「1」 としているからです。ではなぜ
6月30日ではないのでしょうか。それは 1900年は閏(うるう)年で、2月が1日多い
ので、1900年の181日目がちょうど 6月29日だからなのです。 つまり、1900年の
6月30日は、1月1日から数えてちょうど 182日目にあたるということになります。

【訂正】

 1900年は閏(うるう)年ではありません!
 
 > グレゴリオ暦法では、閏年を次のように決めている。
 > 1. 西暦年号が4で割り切れる年を閏年とする。
 > 2. 例外として、西暦年号が100で割り切れ400で割り切れない年は平年とする。
 > 3. よって、1900年は閏年ではない。
 > http://www.nao.ac.jp/faq/a0306.html       (国立天文台)
 > http://support.microsoft.com/kb/214019/ja (Microsoft)
 > http://support.microsoft.com/kb/214058/ja (Microsoft)
 > http://support.microsoft.com/kb/JP106339  (Microsoft)
 
 しかし、Excel のシリアル値は、次図のように 1900/2/29 が存在しています!
 これは Excel のバグか? しかし、ここで述べている 「元期 簡易計算法」 の
 内容には影響はなく、下記の Excelファイルでも正しく計算結果を算出します。
 
   


[閏(うるう)年 判定法]



数式 =IF(A1="","",IF(OR(MOD(A1,400)=0,AND(MOD(A1,4)=0,MOD(A1,100)<>0)),"閏年","平年"))

Excelで 1900/2/29 が存在するのはバグとも思えますが、「元期 簡易計算法」で
記述している内容、および 下記の Excelファイルについては影響がありません。


では、話しを元に戻して 先ほどの 2013年6月30日のシリアル値を求めてみます。
セルに 「2013/6/30」 と入力してから 右クリック → セルの書式設定 → 「標準」
とすると 「41455」 と出ます。この 「41455」 が2013年6月30日のシリアル値です。
2013年は閏年ではなくて平年なので、41455-181=41274 が、2012年12月31日の
シリアル値となります。つまり、2013年1月1日のシリアル値は 41275、2013年の
181日目の 6月30日のシリアル値は 41455 など、元期通日の日付に常に 「41274」
を足した数値を セルの書式設定 → 「日付」 として変換すれば、2013年の年月日
として正しく表示されるということになります。

具体的には、Excel の数式を使用すると 簡単にこの変換をすることができます。
A1セルに元期通日の日付を入力し、B1セルに変換後の日付表示をさせたい時には
あらかじめ B1セルに 「=A1+41274」 と埋め込んで、 セルの書式設定 → 「日付」
としておけば、A1セルに数値を入力するたびに、B1セルに瞬時に2013年の年月日
が表示されます。

    


[参考]
さらに Excel の数式を駆使して、xlsファイルを実現しました。

  A7 ... 衛星TLE の元期通日
         右クリ→セルの書式設定→数値→小数点以下の桁数,8桁
  B7 ... 元期の年日(小数点より左側, 整数部)を抽出
         =INT(A7)
  C7 ... 元期の時刻(小数点より右側, 小数部)を抽出
         =A7-B7
  D7 ... 年数を表示(4桁)
         ="20"&LEFT(B7,2)
  E7 ... 月日を表示 (上述参照, +42004 で2015年用)
         =RIGHT(B7,3)+42004
  F7 ... 時刻を表示 (右クリ→書式設定→時刻,種類選択)
         =C7





Simple Calculator of Epocktime


毎年、E7セルで、前年の日数 "平年なら365, 閏年なら366" を、4万… に加えて
その年用の xlsファイルとします。

  2013年用 ... 41274
  2014年用 ... 41274+365=41639
  2015年用 ... 41639+365=42004
  2016年用 ... 42004+365=42369
  2017年用 ... 42369+366=42735  (前年2016閏年)
  2018年用 ... 42735+365=43100
  2019年用 ... 43100+365=43465
  2020年用 ... 43465+365=43830
  2021年用 ... 43830+366=44196  (前年2020閏年)
  2022年用 ... 44196+365=44561
  2023年用 ... 44561+365=44926


[参照] ユリウス日
http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/numbr712.htm


[補足]
2013年7月3日に書いたこの記事の基になった衛星 FITSAT-1 は、その翌日7月4日
に信号の送信を停止し、その直後 大気圏再突入し消滅しました。10cm^3 の衛星
では CW の他に、5.84GHz, LED と大胆な発想で 私たちをいろいろと楽しませて
くれました。ありがとうございました。

Subject: [amsat-bb] FITSAT-1 (NIWAKA) became a shooting star
From: tanaka, JA6AVG
Date: Thu, 04 Jul 2013 16:56:27 +0900

Dear Ham friends,

FITSAT-1 has decayed on 4th July 2013.
The last signal was received by JA0CAW at 03:07(UT).

I appreciate all hams who joined our experiments,
helped our operations, and sent me many reports.

I could make many friends in the world and enjoyed
through FITSAT-1. Though FITSAT-1 became a shooting
star, I am very happy now.
Thank you very much again all Ham friends.

Very Best 73,
de Takushi
--
Takushi Tanaka, JA6AVG
FITSAT-project
Fukuoka Institute of Technology


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