レピーターとデジピーター


● (No.691) レピーターとデジピーター (2011年1月2日)
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ご承知のように VHF, UHF での通信範囲は見通し距離内に限られます。これでは
交信の機会が制限されますので、その中間に無線中継所を設けて、離れた局同士
特にモービル移動局同士が交信できるようにした概念をレピーターと言います。
無線中継局そのものをレピーター局と言います。つまり、レピーター局側におけ
る受信電波 f1 の復調信号を送信電波 f2 の変調入力とし、移動局の相互間通信
を可能としています。変調方式は通常、FM です。

 

レピーターでは電波を 2波同時に使用し送信受信が行われる関係から、送信受信
の周波数に間隔が空いています。 430MHz帯では 5MHz、1200MHz帯では 20MHz と
周波数差が決まっています。また、レピーターの送信機は、適正な受信入力が加
わった時のみ電波が発射されるように、 CTCSS という方式で制御されています。
(Continuous Tone Coded Squelch System) この方式では、低い周波数 (88.5Hz)
の連続変調波を併用し、この CTCSS信号を検出することにより送信機を ON にし
ています。難しそうですが、実際は無線機に TONE 設定をしておくことにより、
自動的にこの周波数差と CTCSS信号が考慮されるので、利用者は普段意識するこ
となく運用することができます。

このレピーターの概念のデジタル版がデジピーターです。主にデジタル衛星通信
で使われる言葉です。無線中継所を人工衛星、モービル移動局を固定局(移動局)
に置き換えるとわかりやすいと思います。衛星通信には、通常のアナログFM,SSB
交信の他に、デジタル信号(AFSK, FSK, PSK, CW)を、人工衛星に積まれたトラン
スポンダー(変換機)を中継して行うデジタル通信の概念です。これは、一昔前の
地上パケット通信(RBBS)でも同様の概念がありました。

 

デジピーターには、TONE, CTCSS はありません。そのまま AFSK, FSK, GMSK信号
を一般に異なる周波数帯(V/U, L/U 等)で送信受信します。変調方式は周波数帯、
通信速度も含め人工衛星によって決まっています。現在デジピーターを利用でき
る人工衛星は、ISS(国際宇宙ステーション), NO-44, AO-51, CO-65 の 4機です。
ISS が最もデジピートしやすい衛星です。NO-44 は衛星からの信号が弱く、また
衛星に日が当たっている時のみ可能です。ISS は夜でも可能です。AO-51, CO-65
は 9600bps衛星で、しかもアップリンクが L帯でドップラーシフトが大きいので
デジピートは技術的に難しく、上級者向けの衛星といえます。 ISS と NO-44 は
1200bps衛星です。

信号の送信受信には、ハードTNC という機器を使う場合と、サウンドカード経由
で いわゆるソフトTNC と呼ばれる AGWPE, UISS ソフトを組み合わせて行う方法
がありますが、いずれにしてもある決まったフォーマット形式に従い行います。
通常 地上RBBS の場合は「CONNECT (コールサイン)」とし相手局にコネクトして
通信が始まるわけですが、デジピーターの場合は概念が異なります。 ハードTNC
を使用する場合は、まず UNPROTO コマンドを通信ソフトで設定します。例えば、

 ISS   ... UNPROTO CQ VIA RS0ISS-4
 NO-44 ... UNPROTO CQ VIA W3ADO-1
 AO-51 ... UNPROTO CQ VIA PACB-1
 CO-65 ... UNPROTO CQ VIA JQ1YTC

CQ の部分は簡潔にこのままでよいのですが、VIA の後ろが重要です。 この部分
の記述は人工衛星によって決まっていて、各衛星のトランスポンダーを中継する
際のポイントとなります。あと、PC --- TNC, および TNC --- RIG(無線機)間の
通信速度も事前に設定する必要があります。 前者のコマンドは、ABAUD, 後者の
コマンドは HBAUD です。自局では、常に ABAUD は 19200, HBAUD は衛星に合わ
せて、HB 1200, あるいは HB 9600 としています。現在はソフトTNC を使用する
のが主流となっていて、通信の操作性も格段にアップしています。
                                                   
参考までに次の衛星周波数リストの右欄に、衛星コールサインを記しています。

 http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/satslisj.htm

この中の衛星コールサインの末尾に、-11, -12 と付いているのは、WiSP という
通信ソフトに設定する場合の衛星コールサインで、これも各衛星ごとに決まって
います。こちらの衛星は、PacSatプロトコルという概念に従った衛星で、さらに
上級者向けの衛星といえます。

ところで、デジタル人工衛星には APRS という概念もあり、これも所定のフォー
マットに従って送信することになっています。日本語では自動位置情報レポート
システムとも言いますが、APRS については ここで説明することは難しく、次に
簡潔にそのフォーマット形式と関連のサイトにリンクを張ってあります。

 http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/numbr677.htm


《参考文献》
 JARL アマチュア無線ハンドブック CQ出版社
 パケット無線ハンドブック (ダイナミックハムシリーズ6) CQ出版社


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