しし座流星群と HROFFTプログラム


● (No.294) しし座流星群と HROFFTプログラム (2001年 11月17日)
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宇宙・天文分野等で良く知られている、私の地元にある「横浜こども科学館」
(財団法人横浜市青少年科学普及協会)において、先日 11月11日に、過去3年間
の「しし座流星群」の出現を正確に当てた天文学者、デイビッド・アッシャー
博士(イギリス)が招かれ、「しし座流星群と秋の星座」と題する講演会が大盛
況のうちに催されました。

ご存知のことと思いますが、今年も「しし座流星群」の流星雨が日本の各地で
観測できることが予想されています。母彗星は「55P/Temple-Tuttle彗星」で、
33年ごとに世界各地で流星の大出現を見せており、アッシャー博士などの専門
家によると、日本では 11月19日(月)の明け方 2時〜4時頃(JST) にかけ、特に
活発な活動が予想されています。

この流星を電波観測するためのプログラムとして,「HROFFT」(大川一彦 氏作)
が知られています。私のホームページでも紹介している「FFTDSP」プログラム
は DOS上で動くものですが、この「HROFFT」は Windows上で動作する、今や、
日本の流星電波観測の標準ともなっているソフトです。

この「HROFFT」プログラムは、新しい OS の Windows-XP 上でも正しく動作す
ることを確認しました。基本的に流星観測用のソフトなので、表示オーディオ
周波数が 600〜1200Hz の間のみなのですが、10分ごとに 画像ファイルとして
自動的に保存されるなど、使い易くなっています。

このプログラムの最新バージョンは、作者の大川氏にメール等で直接コンタク
トを取って入手する必要がありますが、前バージョン(HROFF0531) のものは、
和歌山県にある「みさと天文台」のホームページからダウンロードすることが
できます(下記)。「FFTDSP」と同様に、この「HROFFT」プログラムを Windows
上で利用し、人工衛星のビーコン信号を FFT処理し画像化することができます。

本日(11月17日)の衛星AO-40 の 2401.323MHz USB(+/- doppler) MBビーコンを
受信した時の画像ファイルを、下記 URL に登録してあります。 MBビーコンの
特性である二つある突起のうちの一つの変移が、綺麗な縞模様として表示され
ています。(800Hz付近を表示。もう一つの突起は 1600Hz付近にある。) また、
画像を見るとわかるように、13:56(JST) のところで ドップラーシフトの増減
が切り替わる瞬間のめずらしい現象がとらえられています。


《参考URL》  みさと天文台 (和歌山県)   http://www.obs.misato.wakayama.jp/  みさと天文台「HROFFT」プログラム (下記補足参照)   http://tl2.obs.misato.wakayama.jp/radio/50M_FFT_tmp/  日本流星研究会   http://www.nms.gr.jp/  横浜こども科学館 (宇宙・天文ニュース、人工衛星情報)   http://www.city.yokohama.jp/yhspot/ysc/ysc/ysc.html 「FFTDSP」プログラムの紹介   http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/numbr177.htm 「HROFFT」プログラムの受信画像 (衛星AO-40)   http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/11117hro.gif 《補足1》 HROFFTプログラムを ダウンロードする際に、下記URL「みさと天文台」に登録 してある次の3つのファイルを同時にダウンロードして下さい。(リンク切れ)   http://tl2.obs.misato.wakayama.jp/radio/50M_FFT_tmp/    Hroff0531.exe    Create.txt    Header.txt HROFFTプログラムは、この Create.txt と Header.txt の両方を最初に読み込 んで初めて起動します。従って、この3つのファイルを同じフォルダに置いて から、HROFFT を起動して下さい。 なお、Create.txt は 各種設定値の保存用ファイルなので、手を加える必要は ありません。 Header.txt は、HROFFT画面上部のヘッダー部分用ファイルなの で、使用者個々の情報をエディタ等で次のように編集しておきます。 1行目は、画像保存用の gifファイルの観測地認識記号(例 XX) を書きます。 これにより、10分ごとに自動的に保存されるファイル名は、 XXmmddHHMM.gif となります。(mm:月, dd:日, HH:時, MM:分) 流星電波観測に使用しない場合 は何も記入せず、1行目は改行するだけでよいでしょう。 2行目から6行目までは、使用者が自由に記入できます。観測者名や観測地等 を記入するとよいでしょう。なお、1行は半角75文字以内です。 無線機のオーディオ出力を、PC のライン入力 またはマイク入力にケーブル接 続し、受信信号が正しく同期すると、HROFFT画面にその信号を描画していきま す。HROFFT画面上部の f2(Low) と f1(high) を、600Hz-1200Hz の範囲で適宜 設定します。 さらに 画面上部左側の Signal欄は、サウンド入力信号のレベルを表していま す。流星電波観測には 60〜80程度が適しているようです。 入力レベルが大き いと解析画面全体が青や赤などの色が付き、解析が不能になりますので、受信 ボリュームを絞るようにします。 その右隣りにある Signal-Lebel欄は、信号レベル値を調整するためのもので、 ここの値に 1/10 を乗じた値が入力信号に掛け算されます。解析画面が、入力 信号レベルで調整できない場合は、ここの数値を小さくして調整します。 ところで、この HROFFTプログラムを Windows2000 上で起動すると、テキスト 部分が潰れて表示される、という情報があります。それに対する対応策はわか りません。もし、HROFFT の作者:大川一彦 氏に問い合わせを希望する場合は 大川氏のメールアドレスをご連絡できますので、自局宛 にご連絡下さい。 《補足2》 HROFFT のバージョンを 061 に上げて、衛星AO-40 の MB ビーコンを受信して みました。AO-40 の周波数スペクトルの特性の2つある突起の軌跡を、車輪の 轍(わだち)のように綺麗な島模様として捉えることができました。(下記画像) 轍の中心にある暗黒の筋が、衛星からの送信中心周波数(ダウンリンク)のドッ プラーシフトを伴う軌跡です。この時の受信周波数は、無線機の固定表示で、 2401.3407MHz USB でした。 HROFFT画像のその暗黒部の中心のオーディオ受信周波数は、17時17分JST 頃が およそ 1kHz です。 受信表示周波数が 2401.3407MHz の USB で、音声周波数 が 1kHz ということは、この時実際に受信していた周波数は、USB の特性から 2401.3407+0.001=2401.3417 MHz ... (a) ということになります。 ところで、衛星の MBビーコンの公称周波数は 2401.323MHz で、Calsat32 や WinTrak3.5 等の軌道計算ソフトによる この時刻のドップラーシフトの表示は +19.1kHz だったので、衛星の送信周波数(ダウンリンク)のドップラーシフト を伴う理論値は、 2401.323+0.0191=2401.3421 MHz ... (b) となります。 この (a)と(b) の差の 2401.3417−2401.3421=−0.0004 MHz=−400 Hz は 誤差の範囲で、Drake 2880 コンバーターの内部調整は ほぼ正確にできている と言えるでしょう。

《参考文献》   流星電波観測ガイドブック (RMG編集委員会) CQ出版社


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