衛星SO-35(SUNSAT)の継承


● (No.257) 衛星SO-35(SUNSAT)の継承 (2001年 2月5日)
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  SUNSAT-3>BLN7SO-35:Omedeto Amsat OSCAR-40, 73 de Sunsat OSCAR-35

これは、私が最後に(2000年12月1日)、衛星SO-35(SUNSAT)から受信したデジタル
メッセージです。便りの無いのは良い知らせ、という訳ではないのですが、今年
になって 一度も衛星SO-35にアクセスしないうちに、今回の機能停止の突然の知
らせを聞いて、後悔しています。 (2001年1月19日停止、2月1日公表)

このメッセージは、昨年の11月16日に新しく打ち上げられた 衛星AO-40に対する
各国の言語による祝電メッセージの一つで、私が代表して 衛星SO-35の管制局の
南アフリカの担当者に依頼し、日本語(ローマ字)として送信してもらったもので
す。その他、次の国の言語のメッセージがデジタル信号として流れていました。

オランダ語
(南アフリカ) BLN0SO-35:Gegroet Amsat OSCAR-40, 73 van Sunsat OSCAR-35
ドイツ語   BLN1SO-35:Gruesse Amsat OSCAR-40, 73 von Sunsat OSCAR-35
英語     BLN2SO-35:Greetings Amsat OSCAR-40, 73 from Sunsat OSCAR-35
フランス語  BLN3SO-35:Salutations Amsat OSCAR-40, 73 de Sunsat OSCAR-35
スペイン語  BLN4SO-35:Saludos Amsat OSCAR-40, 73 de Sunsat OSCAR-35
イタリア語  BLN5SO-35:Saluti Amsat OSCAR-40, 73 de Sunsat OSCAR-35
ポルトガル語 BLN6SO-35:Saudacoes Amsat OSCAR-40, 73 de Sunsat OSCAR-35

なぜ南アフリカがオランダ語なのか、ご存知ですか? この文面を amsat-bb に
流したところ、その国に住む某局から次のような説明を受け取りました。南アフ
リカのオランダ語は、11個もある公用語のうちの一つで、現在のケープタウンに
1652年に Jan van Riebeeck という人物が最初に足跡を残して以来のオランダに
由来しているそうです。

南アフリカのことについてほとんど知らなかったので、この時、辞典でも調べて
みました。 (『日本語大辞典』(講談社)より抜粋)

 南アフリカ共和国 (Republic South Africa)

   アフリカ南端の国。 首都プレトリア。 もとオランダ系移民の開拓地
   であったが、二十世紀初めからイギリス連邦に併合。1961年共和国と
   なる。 世界一の金産出国。 ダイヤモンド・クロム鉱の産出も多い。
   農牧業は、羊毛・小麦・果実などが中心。
   面積 122.1万 km^2。 人口 3322万 (1986年現在)。

衛星SO-35 の管制局が、他の新しく打ち上げられた衛星の祝電メッセージを信号
として流すということも楽しいイベントでしたが、このようにそれをきっかけに
いろいろなことに関心を引き出させてくれたことも印象に残っています。

また、テレメトリ送信に関する個人的な質問にも、管制局は詳しく解説をしてく
れました。その詳細は、私の下記URLに永久に残しておくことにします。

http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr204.htm (デジタルモード)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr205.htm (頻出質問事項)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr206.htm (テレメトリ受信)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr207.htm (テレメトリ解読)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr208.htm (テレメトリ解析)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr209.htm (テレメトリ周期)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr223.htm (循環バッファ)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr224.htm (ドップラー偏移の補正)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr230.htm (本日のデジタル衛星)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr231.htm (本日のデジタル衛星)
http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr238.htm (世界各国のメッセージ)

この2行目の「頻出質問事項」は、次のSO-35のホームページにあった「FAQ」を
翻訳したものです。

http://sunsat.ee.sun.ac.za/index.html

南アフリカの ステレンボッシュ(Stellenbosch)大学 の電気学科と電子工学科の
教官と学生たちによって、1991年に 衛星SO-35(SUNSAT)の構想が初めて語られた
ことが述べられています。そして、その目的として次の項目が上げられました。

(1)実際的な作業に基づく高度な技術により、南アフリカの科学技術産業を供給
   しながら、大学の大学院学生に役立つ電子学的発展の範囲を広げること。
(2)有益な地球の画像を撮ることのできるマイクロ衛星を製作することで、国際
   的な関心と大学の科学的な共同作業を活性化すること。
(3)学校(小中高)の生徒たちに、科学と技術の興味を創造すること。

1999年2月23日 に打ち上げられ、わずか2年の間でしたが、世界各国の無線家に
も愛用された衛星SO-35の当初の計画は、技術的な目的の達成はもとより、特に
(3)における 南アフリカの子供たちに科学技術への啓蒙を行うことも含め、完全
にその目的を果たしたと言えます。

私がこの「FAQ」を翻訳していて最も印象に残った部分は、次の個所です。

 [9. SUNSATに課せられた他の学校プロジェクトと外部実験について] - - - - -

 SUNSATは、学校の子供たちに科学技術を促進することと、国際的に強力な関係
 を確立することを目的として、次の実験を実施します。

 (1)衛星の音響と温度の実験は、ダーバン(Durban)のジョージキャンベル技術
    高校によって提案されました。感度の良いマイクロホンから成り、衛星の
    構体の振動を検知します。また温度センサーはトレーの内部の温度を測定
    します。重力ブームの展開の監視、温度の変動による熱膨張ノイズ、反動
    軸の回転音の実験は、SUNSAT地上チームを援助するでしょう。

 (2)ステレンボッシュにある レーニッシュ(Rhenish)女子高校は、CMOS電子装
    置への放射線のダメージを監視する実験を提案しました。その目的は、た
    くさん作られた衛星上の回路のCMOS論理ゲート上の放射線の影響を調査す
    ることにあります。二つの同一のCMOSの集積回路が互いに比較されます。
    その一つは太陽電池パネルと衛星本体の間にあり、もう一つはトレー構体
    によって遮蔽されたままになっています。

 (3)微粒子衝突探知実験は、ケープタウン ペニンスラ(Peninsula)専門学校に
    よって提案されました。その目的は、衛星の先端プレートに取り付けられ
    たセンサーを使って、衛星上の小隕石の衝突を探知し頻度を測定すること
    です。

 (4)マレーシアのケバンサン大学は、物質科学学部によって開発されたガラス
    炭素の標本の宇宙における温度と伝導率を測定する物質露光実験を提案し
    ました。

 (5)SUNSATはまた、通常の時と明るい状態の時でフルカラー画像を映し出すこ
    とができる補助小型組立式 CCD(充電連結装置付き)TVカメラを載せます。
    これは底部トレーに置かれ、電源オンの時に Sバンド受信システムの設備
    を持つ誰もが、地球のリアルタイム画像を中継することができます。

 (6)最後にSUNSATに、主に学校の子供たちを対象に、衛星に 8秒間までの短い
    メッセージを送信させる 電子的 "パロット(Parrot:鸚鵡)" があります。
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日本も含め諸外国のアマチュア衛星の開発の目的に、未来を担う子供たちの教育
に主眼を置いた国は他にあるでしょうか? これが今後の私たちに課せられた課
題と言えるでしょう。 衛星SO-35のこれまでの活躍は、今後の各国のアマチュア
衛星の発展に多くの影響を与えるものと確信しています。

追記 : 機能を停止した衛星SO-35ですが、約30年後に大気圏再突入が予想されて
     います。 その間、ずっと地球を廻り続けています。

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Name : JE9PEL/1 脇田美根夫
Mail : je9pel@jamsat.or.jp
URL  : http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/
QTH  : Yokohama, Japan
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