衛星AO-40 のドップラーシフト


● (No.237) 衛星AO-40 のドップラーシフト (2000年11月23日)
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本日(11/23)は、衛星からの信号も受信せずに、皆様からいただいたコメントを
もとに、ひたすら紙の上で計算をしておりました。 その結果、ご指摘のとおり
の計算結果が出ましたので、皆様からのメールを交えながら 以下に報告いたし
ます。

JE9PEL/1 脇田 wrote:

> 本日(11/21)も、ひたすら 衛星AO-40 を追いかけていました。 11月16日の打
> ち上げ直後から毎日ビーコンを聞いていて、感覚的に その信号強度が落ちて
> きているような気がしているのですが...?  それとも軌道要素からずれてき
> ているだけなのでしょうか?
> ところで、本日も6時間ほど 400bpsビーコンの周波数を繊細に合わせていて
> 前から気が付いていたのですが、衛星が地球から離れるにつれて デモジュレ
> ーターがフィットする地上側の受信周波数が少しずつ上がっていきます。 
> 下記が本日の約2時間ごとの周波数と衛星までの距離の関係です。 救急車が
> 離れていくと そのサイレンの音は小さく聞こえていく、というドップラーシ
> フトの変化に反するように思うのですが? 何か勘違いをしているのかな?
> 
>        09:55 JST    145.8968 MHz    21500 km
>        10:55        145.8969        29500
>        11:30        145.8970        33500
>        13:40        145.8973        41000
>        15:40        145.8972        39500


JA3GEP/6 毛利氏 wrote:

> 脇田さん、
> さきほどANS325.01を読んでいて思ったのですが、AO-40の信号強度の変化は、
> 衛星が姿勢を変え始めている、というのと関係するのでしょうか。
> テレメトリーが読めていませんので、的外れかもしれません。


JF6BCC 今石氏 wrote:

>  救急車が離れていくとサイレンの音が「小さく」なるのは、ドップラーシフ
> トとは関係ないですよね (^^;)、音が「低く」なるのであって。 また、実際
> に救急車のサイレンのドップラーシフトは、救急車が近くを通り過ぎる ほん
> の数秒の間に、高い周波数から一気に低い周波数に落ちてしまうのであって、
> その後ダラダラと下がってしまうことは(救急車が とんでもない加速をしな
> い限りは)無いと思いますが…。
>  ドップラーシフトの量は、相対距離の大小ではなく、その変化量に関連しま
> すよね。 距離が大きくなる=衛星は遠地点に近づく=ケプラーの法則により
> 衛星の軌道上の速度が落ちる=相対速度は下がってくる=シフト量は減る と
> 言うことで、正しい変化だと思います。


JF6BCC 今石さんのご指摘のとおりです。上記の '小さく' という単語を '低く'
という単語に差し替えます。 また、相対距離の大小に関係ないこともご指摘の
とおりです。 観測者からみて衛星がどんどん離れつつあるのに... という意味
のつもりだったのですが、この考えにも誤りがあることに気が付きました。


JA6BX 江崎氏 wrote:

>  ドプラー偏移は、観測者から見た衛星の見かけの速度によって決まり、距離
> とは無関係と言えます。
>  脇田さんが観測された各時点の衛星の概算速度を、私のQTH を基点で出して
> みました。 横浜とは少し違うとは思いますが、概念と傾向を理解する上では
> 充分かと考えます。 +が遠ざかる方向で、−は近づく方向です。
> なお、QT(V5.0) で計算したドプラー偏移も付記します。 
> 
> 09:55 JST    145.8968 MHz    21500 km    180km/min    -459Hz
> 10:55        145.8969        29500       126km/min    -322Hz
> 11:30        145.8970        33500       101km/min    -257Hz
> 13:40        145.8973        41000        30km/min     -77Hz
> 15:40        145.8972        39500      -101km/min     +71Hz
> 
> 以上から、衛星が遠ざかるにつれて見かけの速度が落ちていることで、ドプ
> ラー偏移も小さくなることが説明できます。 ただし、15:40 JSTの時点では、
> 遠地点を過ぎており地球に向けて接近中ですから、ドップラー偏移がプラス
> 方向で、周波数は更に高くなって居るはずですが、脇田さんの観測結果とは、
> 一致しません。


この 15:40JST の受信周波数はミスタイプでした。 この行のデータは削除しま
す。 他の 4行のデータは正確ですので、これをもとに話しを進めます。今から
7年前の次の記事に、ドップラー偏移について 自分で詳細に解析していました。

  http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/eisei13.htm
  http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/eisei14.htm
  http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/eisei15.htm
  http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/eisei16.htm
  http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/eisei24.htm

eisei13.htm において、【f = fo * c / (c + Vs)】  という結果を紹介してい
ます。 ここで、f は 観測点における受信周波数、 fo は 衛星から送信される
周波数、 c は電波の速度(光の速度)、 Vs は 衛星の その地点での速度 です。
Vs は、+が遠ざかる方向で、−は近づく方向とします。また、eisei24.htm に
おいて、『MAの変化による衛星AO-13の飛行速度』 と題する記事の中で、AO-13 
の速度を「ニュートン法 (逐次近似法)」を用いて詳細に求めました。 

今、衛星AO-40 も、この AO-13 と同じ長楕円軌道を描くものと仮定します。
そして、c = 3 * 10^5 km/s、 fo を AMSAT-NA発表の AO-40 のミドルビーコン
周波数 145.898MHz、 Vs を下の数値として、上記の【f = 式】に代入して計算
をしてみました。 大雑把な計算ですが、上記の観測結果とだいたい合致してい
ます。

   MA     Range(km)    Vs(km/s)  Frequency
   44     29729.4      3.37      145.8964
   66     36740.8      2.50      145.8968
   88     41295.3      1.96      145.8970
  110     43751.1      1.66      145.8972


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