● (EISEI.16) ループにおけるドップラーシフト (1993年 11月21日)
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さて、本編(15)のように周波数を設定しても実際に交信することは、まず普通は
うまくいきません。実際には、ドップラーシフトを考慮してアップリンク周波数
を微調整しなければならないからです。ものの本には、「ダウンリンク周波数を
固定してアップリンク周波数をドップラーシフトを考慮しながらツマミを上下す
ればよい」としか書かれていなくて、確かにそうすればいずれは自局の声が聞け、
交信もできるようになるのですが、これだけではどうも自分に納得できません。
本編(13)、(14)において理想化した条件で簡単にドップラー効果について調べて
みましたが、アナログ通信の場合は、実際に動いている地球上から電波を送信し、
高速で移動する衛星のトランスポンダーを介し、逆ヘテロダイン方式に従い異な
る周波数に変換された電波を再び地上で受信することになります。今一度ドップ
ラーシフトについて、地球が静止している理想的条件で考えてみたいと思います。
θ゜.......衛星の移動方向と受信者方向とのなす角 (衛星)S' ← S
v[Km/s]...衛星の地球に対する相対的速度 __.____._
c[Km/s]...電波の速度 / θ/
fu[MHz]...観測者の発信する実際のアップリンク周波数 / /
fd[MHz]...観測者の受信する実際のダウンリンク周波数 / /
fuo[MHz]..衛星の受信する観測者からのアップリンク周波数 / /
fdo[MHz]..逆ヘテロダインにより衛星から観測者に向けて / /
発信するダウンリンク周波数 / /
とします。 //
.
本編(13)、(14)と同様に考えると、 O (観測者)
fuo=fu×(c+vCOSθ)/c、fd=fdo×c/(c−vCOSθ)
の2つの式が得られます。
ここで、逆ヘテロダインの和の周波数をFとすると、fuo+fdo=F だから、
F=fuo+fdo=fu×(c+vCOSθ)/c+fd×(c−vCOSθ)/c
=fu+fd+(fu−fd)×vCOSθ/c となり、移項してfuを求めると、
《fu=F−fd+(fd−fu)×vCOSθ/c》
という式が得られます。この《式》の右辺第3項が、いわゆるドップラーシフト
と呼ばれるものです。さらに、この式を変形して次の式が得られます。
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【fu=F×c/(c+vCOSθ)−fd×(c−vCOSθ)/(c+vCOSθ) 】
あるいは、
【fd=F×c/(c−vCOSθ)−fu×(c+vCOSθ)/(c−vCOSθ) 】
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ここの式変形は、7L1FPU/中田国芳氏に参考になる助言をいただき、それ
を元に自局なりに解釈してまとめました。上記【式】から、fu が予測できます。
さっそく平成5年11月17日(水)、JST18:40過ぎから、FO-20の
JAモードのループテストにて観測実験をしてみました。同時に7N1JVW/
藤田忠義氏とのQSOも計画していましたが、こちらは不調に終わりました。
時 刻(UTC) 方 向
+-------+-----+----------------+-----------+----+
| \ | REV | AOS TCA LOS |AOS TCA LOS|仰角|
+-------+-----+----------------+-----------+----+
| 11/17 |17691| 0939-0947-0956 | 5-290-209| 50|
+-------+-----+----------------+-----------+----+
ダウンリンク周波数として、435.870[MHz]が空いていましたので、ここを固定し、
逆ヘテロダインの 145.930[MHz] 付近を上下し、自局のドナルドダックのループ
音声を追いかけ、そのアップリンク周波数を観測しました。
v=7.3[Km/s],c=3×10^5[Km/s],fd=435.870[MHz],F=581.800[MHz] です。
JST (LSB)MHz (LSB)MHz KHz
+------+----+-----------+-----------+------+
| 時刻 | θ | fu予測値 | fu観測値 |シフト|
+------+----+-----------+-----------+------+
| 18:41| 20 | 145.9366 | 145.9317 | 6.6 |
+------+----+-----------+-----------+------+
| 18:43| 30 | 145.9361 | 145.9315 | 6.1 |
+------+----+-----------+-----------+------+
| 18:45| 45 | 145.9349 | 145.9313 | 4.9 |
+------+----+-----------+-----------+------+
| 18:47| 90 | 145.9300 | 145.9295 | 0.0 |
+------+----+-----------+-----------+------+
| 18:50|135 | 145.9251 | 145.9212 | -4.9 |
+------+----+-----------+-----------+------+
| 18:53|150 | 145.9239 | 145.9205 | -6.1 |
+------+----+-----------+-----------+------+
| 18:56|160 | 145.9234 | 145.9193 | -6.6 |
+------+----+-----------+-----------+------+
〈考察〉 AOSからTCAにかけて見込み操作であわてていて、音質がかなり
ドナルドダックでしたので、表のとおり、もう少しfu予測周波数に
近い周波数で実際にはアップリンクすべきでした。
TCAからLOSにかけては落ち着いて操作でき、fu観測周波数は
fu予測周波数に近いものとなっていて、ほぼ完全に自分の声として
聞こえていました
表のドップラーシフトの項は 約±6KHzほどですが、実際には仰角等
の条件も加味する必要があり、計算上この中にはかなりの誤差を含む
ものと思われます。
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