LON / LAT 座標系
● (EISEI.30) LON / LAT 座標系 (1994年 3月16日) ---------------------------------------------- さて、前編(29)の「Mブロック」をもう一度ながめてみましょう。 +-------------------------Message Block--------------------------+ |M QST *** AO-13 Transponder Schedule *** 31Jan94 - 04Apr94 | |Mode-B : MA 0 to MA 90 | | |Mode-BS : MA 90 to MA 120 | | |Mode-S : MA 120 to MA 145 |(- S transponder; B trsp. is OFF | |Mode-S : MA 145 to MA 150 |(- S beacon only | |Mode-BS : MA 150 to MA 180 | Alon/Alat 180/0 | |Mode-B : MA 180 to MA 256 | | |Omnis : MA 230 to MA 30 | Move to attitude 240/0, 04Apr94 | +----------------------------------------------------------------+ この中の「MA」については本編(22)で詳細に述べました。 そこでは計算ばかりで わかりにくい所もあったかもしれません。おなじみのCQ誌'94 1月号の特別企画 で、JA3GEP/毛利氏によりサテライト衛星通信に関する特集記事の中で「MA」など について感覚的に大変わかりやすくその概念を説明しています。必読の記事です。 「Mode-B,S」については、本編(15)で述べましたが、ご存知のように、 B ... up: 430MHz帯, down: 144MHz帯 S ... up: 430MHz帯, down: 2400MHz帯 ということです。つまり、 このモードが衛星の地球に対する相対的位置「MA」によって切り替わるわけです。 では、次に「Alon/Alat 180/0」について簡単に説明します。下記資料において、 JR1SWB/中山氏が詳しく解説されていますので、詳細はそれを参照して下さい。 人工衛星は "コマ" と同じように自転しているわけですが、その回転の軸の方向 は恒星系に対して常に一定である、という天文学上の法則(ジャイロスコープ)が あります。従って、地球の周りを公転する衛星のアンテナ(のビーム方向)は、 宇宙空間において常にある一定の方向を向いているのです。 本編(24)で調べたように、一般に、衛星は遠地点(Apogee)でゆっくりと飛行しま すので、その場所で地球と交信しやすいように衛星アンテナを地球方向に向けて (近地点(Perigee)ではアンテナは背中を向く)おけばよいように考えられますが 実際には、衛星への電源供給のための太陽電池パネルに充分な太陽光線を与えな ければならず、衛星の姿勢を数ケ月ごとに変える必要があって結果としてビーム 方向が変わることになるのです。 上記の「Alon/Alat」は、この衛星アンテナのビーム方向と地球との3次元的な 位置関係を表すもので、「Lon」は 経度(Longitude)、「Lat」は 緯度(Latitude) を意味しています。 「Lon」は、衛星の軌道を含む平面上での方位を表し、近地点から地球の中心を 見る方向(地球から遠地点を見る方向)を【0度】、そして、遠地点から地球を 見る方向を【180度】とします。角度は、軌道面を天の北極(本編(20)参照) から見て反時計回りに計ります。 「Lat」は、衛星アンテナのビーム方向と、衛星の軌道面とのなす角を表します。 たとえば、ビーム方向が軌道面上にあれば【0度】、ビーム方向が軌道面の垂直 上方であれば【−90度】、軌道面の垂直下方であれば【+90度】です。 さて、上記の「Alon/Alat 180/0」を読み取ってみましょう。'94 1/31〜4/4 の 間はまさに遠地点で衛星アンテナが地球を向く絶好のチャンスであることがわか ります。'94 4/4 からは「Alon/Alat 240/0」に変わることが、上記Mブロック の最下行のコメントからわかります。 Lon【240度】ということは、MA約【170】ということですから、本編(24) を見ると、衛星が遠地点で秒速 1.58[km/s] に対し、MA176地点では 2.13[km/s] となります。 なお上記Mブロックに、「Omnis : MA 230 to MA 30」 とありますが、これは 衛星が近地点を飛行しますので、無指向制(Omni)アンテナに切り替えて、運用 されることを意味しています。 ところで、この衛星AO-13は、1996年に大気圏に再突入し、消滅することが 確実視されています。この大役を果たしたAO-13(PHASE3-C)に代わり1996年 春に新たな衛星『PHASE3-D』が打ち上げられる予定になっていて、この新衛星 『PHASE3-D』は、AO-13に比べ次の点が改善されることになっています。 ・大出力のトランスポンダーと大利得のアンテナを使用 ・3軸制御により常にアンテナを地球に向ける ・地上側での軌道計算、アンテナの方位仰角制御が不要 ・使用周波数の増加 ・高速デジタルトランスポンダー登載 ・デジタルカラーカメラシステム登載 etc 日本(JAMSAT)からは、このフルカラーカメラ登載SCOPE計画に参画 しており、随時、その内容が紹介されています。 ================================================ 参考資料:JAMSAT Newsletter No.96 ('86 5/25) JR1SWB/中山氏記事 :CQ '94 1月号 JA3GEP/毛利氏記事 ================================================ 《補足》 『PHASE3-D』は、2000年11月16日に『AO-40』として打ち上げられました。 AO-40 の指向性アンテナは、AO-13 とは 180度反対で、スピン軸の方向と 同じ側(モータの噴射する方向)にあるので留意する必要があります。 ALON/ALAT とは衛星のスピン軸の方向を表現するものです。つまり、ALON は 地球の中心から近地点を見た方向を基点の 0度とし、左回りに考えて 地球の中心から遠地点を見た方向が 180度となります。 ALAT はスピン軸 の向きが軌道面の上を向くと【正】に、下を向くと【負】になります。 例えば、ALON/ALAT=0/0 の方向は、衛星の軌道面上で地球の中心から衛星 軌道の近地点を見た方向(遠地点から地球を見た方向)に一致します。つ まり AO-40 では、ALON/ALAT=0/0 の時に 遠地点において指向性アンテナ が地球を向きます。
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